ケーススタディ:シェル石油開発
公開日:2009/11/30
このコーナーは、イギリスのSHLグループが季刊で配信している「SHL Global Newsletter」などの中から記事をピックアップ、日本語に翻訳してご紹介するものです。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
前回のパプア・ニューギニアでの事例に続き、今回は、(事例としては少し古いですが)ナイジェリアでの採用の事例をご紹介します。こちらも石油関連企業です。
ナイジェリアのシェル石油開発は、採用について大きな問題を抱えていました。300人の募集に対して40000人の応募者が来るのです。SHLと協力し、公平で安定した、職務関連性の高い、しかも採用担当者という人的資源を効率的に利用した、自動化された多段階の採用プロセスを開発しました。採点可能な応募用紙などのツールは、他の技術と関連させると、大規模採用に直面する企業に極めて有効です。
ナイジェリアのシェル石油開発の採用スタッフは、毎年、次のような問題に直面していました。
- 300人の募集に対して40000人以上の応募がある。
- 応募者全員を公平に扱わなければならない。
- 応募者が選抜プロセスのどの段階にいるか、たどれるようにしなければならない。
- テスト情報の機密が決して外部に流出しないよう常に確認しなければならない。
会社はこれらの問題解決を支援するために、統合・自動化された採用システムが必要であると考えました。
テストの実施と受検者データの保管策をベースにした最終的なシステムが1998年夏に正式に導入されました。シェル石油開発の多段階採用プロセスは、公平で安定した、職務関連性の高いもので、しかも採用担当者という人的資源を効率的に利用したものです。
プロセスにはいくつかの段階があります。
第1段階
受検者は最初に、シェル石油開発ナイジェリアのコア・コンピテンシーをベースにした応募用紙に記入します。この応募用紙は構造化されており、受検者のスキルや経験、志向する働き方が会社の要件にどれくらい合っているかを基に、応募者を選抜できます。
第2段階
第1段階の合格者が、コンピューター上でテストを受けます。
第3段階
次はコンピテンシー面接です。合格者は最後に健康診断を受けて、採用となります。
応募用紙が自動的に処理されて採点されるため、採用担当者の負荷は大きく低減しました。
- 選抜プロセスを通して、応募者への案内レターや不合格通知レターはシステムが自動的に発送します。テストや面接のスケジューリングもシステムが自動的に作成します。
- それぞれの受検者について、コンピテンシー面接用のガイドが自動的に作成されるので、より客観的な面接が行えます。
- 受検者がテストを実施しやすいよう、タッチ・スクリーン技術が使われています。
以上の結果、受検者と実施側の両方の立場にとって、効率的で使いやすい全プロセスとなりました。受検者の情報の全てがシステムに保存されるだけでなく、シェルの人事担当者がモニター・リポートを出力してある応募者がプロセスのどこにいるか追うことができます。ナイジェリアのどの地域の出身者であっても全ての応募者に公平公正な採用を行うという方針を確保するため、この点は特に重要な要件です。
シェルが直面する問題の多くはナイジェリアに特有のものですが、大量の応募者をどのように扱い、応募プロセスの進捗状況をどのようにモニターするかという問題は、大規模採用を行う多くの起業に共通のものです。
構造化された応募用紙などのツールは、他の技術と関連させると、公平かつ客観的で費用対効果が高く、法的に正当化できるやり方で最良の応募者を選抜しなければならない、という状況下で極めて有効です。
300人の募集に対して応募者が4万人というと、倍率は130倍以上!!
テキストの中で「ナイジェリアのどの地域の出身者であっても」という箇所の原文は、「from all States and Local Government
Areas within Nigeria」です。それぞれの地域から選りすぐられた人材がその土地土地の役場や有力者の推薦を受けて応募してきているのかも、と想像しました。公平性、アカウンタビリティが非常に重要であることがうなずけます。

このコラムの担当者
堀 博美
日本エス・エイチ・エル株式会社