DEI施策で真の変化を起こす方法(2/3)
公開日:2021/07/05
このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるSHL Group Ltd. がお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループHPのプレスリリースやブログなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
ダイバーシティとインクルージョンに、エクイティ(公平性)を加えた「DEI」の推進に取り組む企業が増えています。DEI施策がなぜ失敗をするか、どのようにアプローチすべきかを解説したSHLグループHPブログを全3回にわたってご紹介しています。今回は第2回です。
2021 年 2 月 23 日 エリン・クラスク
前回はDEI施策がなぜ失敗するか、成功するために「人」が重要であることをお伝えしました。今回は、人材ライフサイクル全体にわたって標準的な「プロセス」を持つことが、多様でインクルーシブな職場を作る土台を築き、DEI施策を持続させることにどのように貢献するかを解説します。
人材ライフサイクルについて、標準化された、もしくは一貫した強固なプロセスを持たないことは、DEI 施策の成功に対して大きな障壁となります。採用担当者と配属先マネジャーの相互理解がないと、本来は合格するはずの候補者が一貫性なく、不正確にスクリーニングされてしまいます。
インタビューが標準化されていないと、選抜の決定にバイアスが入り込む可能性があります。オンボーディングに一貫性がないと、エンゲージメントは変化しやすくなり、離職率が高まります。サクセッションプラン(後継者育成計画)における客観的なデータの欠如は、昇進において体系的な不平等の悪循環を生み出します……このリストはさらに続きます。
インクルーシブな人材戦略を立案するためのチェックリスト
標準的な DEI 施策を人材ライフサイクルの各段階に組み込み、定着させる必要があります。現状を把握するには、以下の各段階のチェックリストを参照してください。
読み進めながら、次の点を確認してください。この領域における組織の戦略を明確に説明できますか?この戦略は、どのように多様でインクルーシブな文化を促しますか?この戦略は組織全体で一貫して実行されていますか? そして最も重要な点として、最前線のリーダーはこの戦略を明確に説明できますか?
- 採用: 多様な人材プールから候補者を調達し、応募するように惹き付けます。
- 従業員の選抜: その役割で成功する可能性が最も高い候補者を客観的に特定すると同時に、魅力的な候補者体験を提供します。
- オンボーディング: 新入社員が戦力化するために必要なツール、リソース、トレーニング、時間、チャンスを提供します。
- エンゲージメントとリテンション(定着化): 成功の条件を明確にして必要なリソースを提供したり、インクルーシブで支援を惜しまない文化を育くんだり、強力なリーダーシップスキルを育成したり、キャリアアップのチャンスを提供したりします。
- 能力開発: OJTやトレーニング、他者からの学びを通じて、スキルと能力を身につける機会と手段を提供します。
- パフォーマンス管理: 各自に自分の目標とパフォーマンスのレベルを理解させ、定期的にフィードバックをします。
- 人材レビューとサクセッションプラン: 組織内の人材について現状を評価し、より高いレベルの職務を担う意欲とポテンシャルを持つ優秀な人材を特定します。
インクルーシブなプロセスを構築するためのステップ
あなたの組織が標準プロセスをまだ持っていない場合は、以下の基本的なステップから始めてください。
- 各職務または職務グループ毎に、成功するために必要な責任と能力を示した正確なジョブディスクリプション(職務記述書)を作成します。
- 人材を育成し、多様な人材を継続的に調達するチャンスを提供するために、すべての求人情報を社内外に掲載します。
- 多様な候補者プールを確保するために必要な時間と労力を費やし、目的的な調達をします。
- 標準化された構造化面接ガイドを組織全体で一貫して使用します。
- 面接を担当するマネジャーに、客観性を確保するためのトレーニングを義務付け、採用プロセスにおいて偏見(バイアス)を避ける方法を教えます。
- 組織全体にわたるコンピテンシーモデルを活用して、ビジネスと人材の戦略を一貫したものにし、人材について話し合う際の共通言語を提供します。
- 学習や能力開発の取り組みを活用し、DEI施策を教え強化するための土台を作ります。
- 個人に対する金銭的なインセンティブをインクルーシブな職場の指標に結びつけます。
- エンゲージメントやその他の組織調査に、インクルーシブな職場づくりに関わる項目を含めます。
- 取締役会がある場合は、取締役会の構成が、従業員の集団と、サービスを提供している集団の多様性を反映するようにします。
インクルーシブな人材戦略がうまくいっていない場合の対処法
すでに標準的なプロセスをもっているにもかかわらず、効果が得られていない場合は、以下の点を確認してください。
- 標準プロセスは組織全体で一貫して行われていますか?何故行われていないのでしょうか?
- すべての人事業務に DEI 施策が組み込まれていますか?
- 人材の意思決定と能力開発の取り組みに、どのような客観的なデータ (アセスメントなど) を組み込んでいますか?
- DEI に関して、どのようなゴールや期待を表明していますか?リーダーにはどのような責任があるのでしょうか?
標準的な人事プロセスは客観性と公平性を改善し、多様性を高めます。多様性はDEIの第一歩ですが、インクルージョンの文化がなければ失敗します。多様性のある組織にするためには、組織内の誰もが歓迎されている、耳を傾けられている、と感じなければなりません。
そのためにまずできることは、例えば、ある共通の特性や経験をもつ従業員グループを作ること、文化的な違いを会社として祝う機会を設けること(黒人歴史月間やプライド月間など)、DEIへのコミットメントを会社の声明として出すことなどです。
しかし、それだけにとどまりません。真の成功は、組織の文化と環境が変化することです。多様な意見、視点、アイデアが尊重される雰囲気はありますか?そのような雰囲気を作り、インクルージョンを促すためには、以下の点を考慮するとよいでしょう。
- リーダーは、多様でインクルーシブな労働力を持つことに戦略的な利益があると信じていますか?
- 従業員へのインセンティブは、多様でインクルーシブな労働力を持つことを強化していますか?それとも弱めていますか?
- どのように進捗状況を測定し、多様な従業員の意見を集めますか? (例:エンゲージメントサーベイ)
- リーダーはどのように見えますか?誰もが「(リーダーの中に)自分のキャリアパスを示してくれるような人がいる」と思えるようになっていますか?
- DEIについて社外、社内にどのようなメッセージを伝えていますか?メッセージを実行していますか?
多様性のすべての側面が重視され、尊重され、活用される文化を醸成することは、多様な人材を保持するために重要です。文化の変化を促すようなDEI 戦略の最初のステップは、前回お伝えしたように、リーダーを関与させ、組織全体のDEI推進者のネットワークを活性化することです。
次に、今回お話しした、一貫した標準的なプロセスによって、この活動を勢いづけ、従業員が努力を続けやすくなるようサポートします。
原文はこちら。
https://www.shl.com/en/blog/how-to-make-real-change-with-your-dei-efforts/
当社のアセスメントサービスをご利用いただいている方にとっては、採用や選抜において標準的なプロセスを作るというのは、馴染みのあるアプローチだったのではないでしょうか。次回はDEI推進のために「テクノロジー」をどのように活用するかについて取り上げます。

このコラムの担当者
廣島 晶子
日本エス・エイチ・エル株式会社 主任