OPQ日本語版の開発秘話
SHLのパーソナリティ検査OPQは世界で最も利用されている人事テストの一つです。
1988年に日本語版がリリースされてから、様々なテストバッテリーに組み込まれ、数多くのリポートが開発されました。今では日本の採用テストとして定着しています。
この質問紙がどのように日本に導入されたのか、当時の採用テストを取り巻く環境や日本企業のニーズ含めご紹介いたします。 まずは人事テストからはじめましょう。
この人事テストを開発するにあたっていくつかの原則があります。
公平性を追求すること。受検者に対して公正で公平な測定を行うために細心の注意が必要です。人事テストが実施される場面の多くは受検者の人生がかかっている重要な場面ですから。
科学性を追求すること。人事テストの開発は科学的手法を用いなければいけません。心理学、行動科学などの学問的成果を背景に一定以上の信頼性と妥当性の根拠を持ち、その開発プロセスは合理性と透明性を確保する必要があります。
個人の人格を尊重すること。不当な差別とならないことはもとより、テスト実施に伴う情報管理、プライバシー保護が必須です。
OPQの日本語版開発が計画された1980年代の日本には、人事(採用)テストにおけるこのような原則は明文化されていませんでした。
一つ目は性格を統計的測定量として取り扱うことができるか。二つ目は性格が変化するとしたら長期雇用を前提とする日本企業にとって将来の活躍を予測できるか。三つ目は性格テストの得点にスクリーニングの根拠となる妥当性があるか。
そこで問題視されたのは次の二つです。
一つは、性格を分類する基準として精神病理を用いること。本来は医師が患者の依頼に基づいて行うことを企業の人事部が採用という強い立場で行うことの問題です。二つには、性格テストを使いたいとする考えの中に「排除の思想」があること。一般の健康な人に対して精神的不適応の確率を調べ、その人を排除しようという考え方の問題です。

また、サビル博士はモデルづくりに際して汎文化性(特定の文化からの影響を受けにくい性質)を強く意識していました。SHLが創業からわずか10年で世界30か国まで広がった理由は、サビル博士の汎文化性を実証したいという強い情熱のおかげかもしれません。
もうおわかりかもしれませんが、このモデルに基づいて開発されたパーソナリティ検査がOPQ(Occupational Personality Questionnaires)です。
OPQの性格モデルはあらゆる国、文化、組織、役割、職務などに対応できるよう設計されています。ある仕事を進める上で求められる行動がわかったら、その行動のために有利に働くパーソナリティ因子を確認することで仕事とパーソナリティとの適合度を捉えることができます。あくまでもある仕事に対するある個人のパーソナリティ上の適合度を予測するものであり、そこに精神的不適応者を排除する意図は全くありません。仮にある仕事に対してある人のパーソナリティが適合しなかったとしても、それはその仕事だったからであって、別の仕事であれば適合するという適材適所の考え方に基づいているのです。
そこで、OPQの日本語版では新しい一つの尺度と、既に英国で運用されていた新しいモデルが導入されました。
新しい尺度は「マネジメント資質」です。この尺度は日本企業の部長職に対する大規模な妥当性研究によって開発された尺度です。日本で部長職として活躍している人材のパーソナリティ研究によって導かれました。日本企業の総合職として経営幹部まで上り詰める人の特徴を一つの尺度で表現しています。
新しいモデルは9項目の「マネジメント・ビヘイビア」です。マネジメント・ビヘイビアとはSHLが開発した企業活動を行う時に必要な能力要素です。現在のマネジメント・コンピテンシーに置き換えられるものです。このモデルは世界共通のモデルですが、当時の総合職採用においても採用基準として違和感なく扱えるものでした。
1988年に日本語版がリリースされてから、様々なテストバッテリーに組み込まれ、数多くのリポートが開発されました。今では日本の採用テストとして定着しています。
この質問紙がどのように日本に導入されたのか、当時の採用テストを取り巻く環境や日本企業のニーズ含めご紹介いたします。 まずは人事テストからはじめましょう。
人事テストの原則
人事テストとは、企業が自らの人事目的で利用するテストを言います。採用選考や従業員の選抜、能力開発などで利用されます。この人事テストを開発するにあたっていくつかの原則があります。
公平性を追求すること。受検者に対して公正で公平な測定を行うために細心の注意が必要です。人事テストが実施される場面の多くは受検者の人生がかかっている重要な場面ですから。
科学性を追求すること。人事テストの開発は科学的手法を用いなければいけません。心理学、行動科学などの学問的成果を背景に一定以上の信頼性と妥当性の根拠を持ち、その開発プロセスは合理性と透明性を確保する必要があります。
個人の人格を尊重すること。不当な差別とならないことはもとより、テスト実施に伴う情報管理、プライバシー保護が必須です。
OPQの日本語版開発が計画された1980年代の日本には、人事(採用)テストにおけるこのような原則は明文化されていませんでした。

能力テストと性格テスト
1980年代の半ば、当社創業者の清水佑三氏は新しい人事テスト事業を開始すべく、労働省(現在の厚生労働省)で適性テストを担当する専門官に人事テストに関する見解をたずねました。その専門官によれば、人事テストは能力テストと性格テストに分類でき、適切な能力テストは採用選考での利用に差支えはない。能力テストの測定対象ははっきりしており、様々な情報を扱う総合職において言語や数理の能力と職務成果との関連は合理的に説明できる。しかし、性格テストについては慎重な検討が必要との指摘を受けました。そこで指摘されたのは三つの疑問です。一つ目は性格を統計的測定量として取り扱うことができるか。二つ目は性格が変化するとしたら長期雇用を前提とする日本企業にとって将来の活躍を予測できるか。三つ目は性格テストの得点にスクリーニングの根拠となる妥当性があるか。
排除の思想
また、当時使われていた性格テストの中には、病理学に基づき精神的な面での社会的不適応に関心を持っていたものもあり、このようなテストを採用場面で用いることはテスト事業者だけでなく、利用する企業側にも責任が問われるべきとの指摘もありました。そこで問題視されたのは次の二つです。
一つは、性格を分類する基準として精神病理を用いること。本来は医師が患者の依頼に基づいて行うことを企業の人事部が採用という強い立場で行うことの問題です。二つには、性格テストを使いたいとする考えの中に「排除の思想」があること。一般の健康な人に対して精神的不適応の確率を調べ、その人を排除しようという考え方の問題です。

二つの重要な原則
この話を聞いた清水氏は新しい人事テストを作るにあたって二つの原理原則をおきました。一つは、テストが仕事の成否との関連についてのみ興味を持っていること。もう一つは、不適応の予測値を出して排除するのではなく、適応する予測値を出して登用することに興味をもつものであること。 これらの原理原則に基づいて清水氏が世界中のテストを調べ見出したのが、英国SHLのテストでした。オキュペイショナル・パーソナリティ
SHLにはサビル博士が作ったオキュペイショナル・パーソナリティという基本的な性格モデルがありました。このモデルは広範な職務行動を捉えるために英国で開発されました。開発者のサビル博士は企業の中にある仕事を研究し、その仕事ぶりの違いを検出する要因としてパーソナリティを調べるというアプローチをとりました。まさに仕事の成否にのみ関心を持つ性格モデルなのです。また、サビル博士はモデルづくりに際して汎文化性(特定の文化からの影響を受けにくい性質)を強く意識していました。SHLが創業からわずか10年で世界30か国まで広がった理由は、サビル博士の汎文化性を実証したいという強い情熱のおかげかもしれません。
もうおわかりかもしれませんが、このモデルに基づいて開発されたパーソナリティ検査がOPQ(Occupational Personality Questionnaires)です。
OPQの性格モデルはあらゆる国、文化、組織、役割、職務などに対応できるよう設計されています。ある仕事を進める上で求められる行動がわかったら、その行動のために有利に働くパーソナリティ因子を確認することで仕事とパーソナリティとの適合度を捉えることができます。あくまでもある仕事に対するある個人のパーソナリティ上の適合度を予測するものであり、そこに精神的不適応者を排除する意図は全くありません。仮にある仕事に対してある人のパーソナリティが適合しなかったとしても、それはその仕事だったからであって、別の仕事であれば適合するという適材適所の考え方に基づいているのです。
マネジメント資質とマネジメント・ビヘイビア
OPQは30項目のオキュペイショナル・パーソナリティを測定し、様々な職務に対する適合度を予測します。これは新しい人事テストのために清水氏が掲げた原理原則ですので、当社にとっては理想的なテストを日本に導入できたことになります。しかしながら、当時も今も日本企業の新卒採用では職務に定めのない総合職採用が一般的です。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長し、世界を席巻していた日本企業には、この日本型雇用に対する疑問の余地は一切ありません。せっかく仕事とパーソナリティとの関連を見出す新しい人事テストを作っても、ジョブローテーションで様々な仕事に従事する人を採用する日本企業には使い勝手の良くないテストになってしまいます。そこで、OPQの日本語版では新しい一つの尺度と、既に英国で運用されていた新しいモデルが導入されました。
新しい尺度は「マネジメント資質」です。この尺度は日本企業の部長職に対する大規模な妥当性研究によって開発された尺度です。日本で部長職として活躍している人材のパーソナリティ研究によって導かれました。日本企業の総合職として経営幹部まで上り詰める人の特徴を一つの尺度で表現しています。
新しいモデルは9項目の「マネジメント・ビヘイビア」です。マネジメント・ビヘイビアとはSHLが開発した企業活動を行う時に必要な能力要素です。現在のマネジメント・コンピテンシーに置き換えられるものです。このモデルは世界共通のモデルですが、当時の総合職採用においても採用基準として違和感なく扱えるものでした。
マネジメント・ビヘイビアの定義 一部抜粋
- 創造的思考力 新しいものの見方ができる。新しいコンセプトを作り出す能力がある。
- 統率力 スタッフの動きに注意を払い、自分からコミットし、スタッフにやる気を起こさせることができる。
- チームワーク チームにうまく溶け込める。人と摩擦を起こさずに物事を処理できる。他人との接触やコミュニケーションに自信を持っている。
- プレッシャーへの耐力 仕事上かかってくるプレッシャーを自分の中で上手に扱うことができる。感情に支配されない。
- オーガナイズ能力 仕事を進める上で計画を立てたり、人を配置したりすることがうまい。問題を予見する能力がある。
- パーソナビリティ 人に対して良い印象を与え、過度な防衛心を起こさせない。他人の人格を傷つけたり、人に無理を強いたりしない。
- 状況適応力 違った状況のもとでは違った行動をとらねばならないことをよく知っている。自分がとった行動が客観的に見て適切かどうか、眺めることができる。
- ヴァイタリティ 体力、気力に優れている。強い競争心を持ち、プロジェクトが与えられれば必ず成功させようと考える。
- 問題解決力 易しい問題よりも難しい問題の方を好む。筋の通ったものの見方ができる。問題にぶつかった時に解決に向けて合理的に推論できる。

おわりに
このようにOPQ日本語版はリリースされました。その後、数多くの日本企業で妥当性研究がなされ、様々な業種、階層、職種において職務パフォーマンスとの相関が確認されました。今日のOPQがあるのはご利用企業様のおかげです。会社を代表してご利用企業の皆様には心より御礼申し上げます。どうもありがとうございます。今後も日本産業界の発展のためOPQの改善と活用技術の開発を進めて参ります。

このコラムの担当者
清田 茂
日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員