営業のデジタル化で見落とされがちな人事的視点
デジタルビジネスが全盛期となっており、営業という仕事は手法も中身も大きく変化しています。セールスフォース社が提唱するフレームワーク「The model」は、営業組織を「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4つに分けて捉え、役割ごとのKPIを明確に設定・連携することで営業活動の効率化や改善を促す、として多くの営業組織作りで活用されています。また、コロナ禍の影響で「非接触」「オンライン」に強制的に転換したこともあり、各種ツールの導入や営業組織の改革を急速に進めている企業が多いのではないかと思います。
一方で、先述した営業組織の役割分割やツールの導入によって業績は伸びるのでしょうか?当たり前の話ですが、ツールを使うのも、各役割を担うのも「ヒト」です。ツールの導入や組織変更に合わせて、それらの環境で上手く役割を遂行する人はどのような人なのかを考える必要があります。
エネルギーが低く、計画的なタイプが稼いでいたという結果は、一般的な営業のイメージと異なり、意外性があるのではないかと思います。また、「計画性」の高得点者と低得点者では、平均で月に1,000万円以上の獲得金額の差が発生するという事実も発見できました。これは仮に営業員が100名いた場合、月額10億円の収益差が生まれてしまうという結果です。
この事例からお伝えしたいことは次の2つです。
① データを基に分析すると、時に一般的なイメージや固定概念とは異なる事実発見に繋がる
② 営業員のパーソナリティによって、業績は非常に大きく変動する
※ただし、あくまで統計的に有意な相関関係が確認されただけで、因果関係ではない。

この金融機関では冒頭に記載したような役割分担を行っているわけではなく、いわゆる顧客との関係構築からニーズを聞き取り、提案を行うという一連のプロセスを担当している営業員を対象に調査しています。「The model」のように、役割・KPIが明確になればなるほど、パーソナリティと業績の相関は強くなることが予想されます。
様々な角度から検証しましたが、紙幅の関係上、次の2点の結果をご紹介します。
① オンラインでの面談への心理的負担感とパーソナリティはかなり強い相関がある。
オンラインでの面談への心理的負担感が高い人の特徴として、自分の意見を押し付けず、相手が自ら物事を決定できる余裕を与える「説得力(負の相関)」や、自慢せず、自分の業績を話さない「謙虚さ(正の相関)」、人と相談して物事を決める「協議性(正の相関)」が、明らかとなりました。※相関係数の絶対値0.2以上をピックアップして解釈。
これらの結果は、顧客の反応が読みづらく、相手の状態に合わせて振る舞いを変えづらい、営業員からのプレゼン主体になりやすいオンラインでの面談そのものの特徴が影響していると考えられます。
※括弧内に記載した因子名は、当社OPQを受検した際に算出されるパーソナリティ因子です。

② 環境変化があっても高評価を維持している集団は「計画性」が高い。
コロナ禍の発生後でも高評価を維持もしくは評価が上昇した集団は、物事の先を予測し計画的に業務を行う「計画性」が高いことが明らかとなりました。
筆者の感覚ではありますが、オンラインでの面談は雑談が少なくなり、目的的な会話になりがちであると思います。面談で何を議論し、合意し、次に何をするべきなのかのストーリーをより意識する必要があるのです。このような環境下、先々まで考えるという「計画性」がより求められるようになっているのだと解釈できます。
デジタル化が究極的に進めば、いわゆる「販売する」という機能は不要になる可能性も秘めていますが、顧客・市場とコミュニケーションを図り、製品の改善に繋げるような機能は最後まで残るのではないかと思います。そうした職務になった時には、かなり人を選ぶ仕事になっていると想像します。パーソナリティという観点から、SHLでは引き続き調査していきたいと思います。
一方で、先述した営業組織の役割分割やツールの導入によって業績は伸びるのでしょうか?当たり前の話ですが、ツールを使うのも、各役割を担うのも「ヒト」です。ツールの導入や組織変更に合わせて、それらの環境で上手く役割を遂行する人はどのような人なのかを考える必要があります。
営業員の業績に大きく影響している要因
営業員の業績に影響を与える大きな要因の一つに、営業員のパーソナリティがあります。ご紹介するのは、ある金融機関の法人営業の事例です。エリア、顧客規模、経験年数などを揃えた営業員を対象にパーソナリティ検査OPQを実施して、各人が獲得した収益金額(月額)との相関関係を調査しました。結果は、「計画性」で強い正の相関が見られ、「積極性」では強い負の相関が見られました。エネルギーが低く、計画的なタイプが稼いでいたという結果は、一般的な営業のイメージと異なり、意外性があるのではないかと思います。また、「計画性」の高得点者と低得点者では、平均で月に1,000万円以上の獲得金額の差が発生するという事実も発見できました。これは仮に営業員が100名いた場合、月額10億円の収益差が生まれてしまうという結果です。
この事例からお伝えしたいことは次の2つです。
① データを基に分析すると、時に一般的なイメージや固定概念とは異なる事実発見に繋がる
② 営業員のパーソナリティによって、業績は非常に大きく変動する
※ただし、あくまで統計的に有意な相関関係が確認されただけで、因果関係ではない。

この金融機関では冒頭に記載したような役割分担を行っているわけではなく、いわゆる顧客との関係構築からニーズを聞き取り、提案を行うという一連のプロセスを担当している営業員を対象に調査しています。「The model」のように、役割・KPIが明確になればなるほど、パーソナリティと業績の相関は強くなることが予想されます。
「オンライン」「非接触」でうまく成果を上げる人材の特徴(営業適性の変化)
今回、コロナ禍で営業適性に変化は起きているのだろうか、起きているとしたらどのような変化なのだろうかという点に問題意識を持ち、大手企業3社(サービス業、パルプ・紙メーカー、医薬品メーカー)161名に協力してもらい調査を行いました。いずれの会社も一般的な営業組織であり、コロナ禍で急遽営業活動においてオンラインツール等を取り入れざるを得なかった企業です。様々な角度から検証しましたが、紙幅の関係上、次の2点の結果をご紹介します。
① オンラインでの面談への心理的負担感とパーソナリティはかなり強い相関がある。
オンラインでの面談への心理的負担感が高い人の特徴として、自分の意見を押し付けず、相手が自ら物事を決定できる余裕を与える「説得力(負の相関)」や、自慢せず、自分の業績を話さない「謙虚さ(正の相関)」、人と相談して物事を決める「協議性(正の相関)」が、明らかとなりました。※相関係数の絶対値0.2以上をピックアップして解釈。
これらの結果は、顧客の反応が読みづらく、相手の状態に合わせて振る舞いを変えづらい、営業員からのプレゼン主体になりやすいオンラインでの面談そのものの特徴が影響していると考えられます。
※括弧内に記載した因子名は、当社OPQを受検した際に算出されるパーソナリティ因子です。

② 環境変化があっても高評価を維持している集団は「計画性」が高い。
コロナ禍の発生後でも高評価を維持もしくは評価が上昇した集団は、物事の先を予測し計画的に業務を行う「計画性」が高いことが明らかとなりました。
筆者の感覚ではありますが、オンラインでの面談は雑談が少なくなり、目的的な会話になりがちであると思います。面談で何を議論し、合意し、次に何をするべきなのかのストーリーをより意識する必要があるのです。このような環境下、先々まで考えるという「計画性」がより求められるようになっているのだと解釈できます。

まとめ
営業領域におけるデジタル化において、ツールや組織構造はもちろん重要ですが、その中にいる「ヒト」に目を向けることも重要です。営業職は他の職種と比較しても、成果に対するパーソナリティの影響が大きい職種です。新しいツールや組織構造の中で、最適な人材配置を行うために、このコラムがヒントになれば幸いです。デジタル化が究極的に進めば、いわゆる「販売する」という機能は不要になる可能性も秘めていますが、顧客・市場とコミュニケーションを図り、製品の改善に繋げるような機能は最後まで残るのではないかと思います。そうした職務になった時には、かなり人を選ぶ仕事になっていると想像します。パーソナリティという観点から、SHLでは引き続き調査していきたいと思います。

このコラムの担当者
杉浦 征瑛
日本エス・エイチ・エル株式会社 副部長