公開日:2025/11/14
はじめに
2024年10月に日本版のサービスを開始したInsight Platformの新しいソリューション「High Potentialレンズ」が2025年12月にリリースされます。
High Potential レンズは、ハイポテンシャル人材の発掘と育成を目的としたソリューションです。現在の日本企業における最重要の人事課題であるリーダーのサクセッションプランを中長期的な視点で行うためには、次のリーダーとなる後継者だけでなく初任管理職や管理職候補者を含めた幅広い層のリーダーシップポテンシャルを客観的にとらえる必要があります。ハイパフォーマーであることだけで優れたビジネスリーダーになれるわけではなく、ましてや従来の属人的なリーダー選抜では、新しい時代に適応するリーダーを見出すことは困難です。このような環境下で、世界では科学的に次世代リーダーを見極める動きが広がっています。
今回は、Insight Platformの新サービス「High Potentialレンズ」 が切り拓く、ハイポテンシャル人材発掘・育成の新しい形を紹介します。
ハイポテンシャル人材発掘の難しさ
SHLの調査によると、高業績者のうちリーダーとして活躍できる人材は15%に過ぎません。良いプレイヤーが即ち良いリーダーになるわけではないことを私たちは経験からよく知っています。しかしながら、依然として目立った成果と上司からの推薦に基づく昇進が一般的で、ハイポテンシャル人材プログラムを実施している企業においてもハイポテンシャル人材を特定するために客観的なアセスメントを用いている企業は半数ほどしかありません。
ハイポテンシャル人材を構成する3つの要件
- SHLは2005年に行った大規模な調査からハイポテンシャル人材に求められる3つの要件を次の通り特定しました。
- アスピレーション(Aspiration):組織のより高い役割や責任を担いたいという意欲、上昇志向
- 能力(Ability):経営幹部などの上位層のリーダーとして活躍するための能力
- エンゲージメント(Engagement):企業や組織への共感や愛着心
ポテンシャルを可視化するInsight Platform
SHLの Insight Platform は、個人のアセスメント結果を統合・可視化し、組織全体の人材を俯瞰できる人材データプラットフォームです。アセスメントデータをもとに、個人レポートと「インサイト」と呼ばれる集団可視化ダッシュボードを生成し、様々なフェーズのタレントマネジメント(配置、育成、後継者計画)における深い洞察を提供します。
このプラットフォームに搭載されるソリューションパッケージがレンズです。レンズにはアセスメント、個人レポート、インサイト(集団可視化ダッシュボード)が含まれます。
High PotentialレンズはInsight Platformでハイポテンシャル人材の発掘と育成を行うためのレンズです。
「High Potentialレンズ」とは
High Potentialレンズは、次世代リーダー候補を科学的に特定し、その育成までを支援する包括的なソリューションです。
- このレンズでは、次の3つのアセスメント※を使用します。
- パーソナリティ検査OPQ32r(Occupational Personality Questionnaire):職務上の行動特性を測定
- モチベーションリソース検査MQ(Motivation Questionnaire):仕事上の動機づけ要因を測定
- 認知能力検査Verify Interactive G+:帰納的推論、演繹的推論、数値的推論の側面から一般能力を測定 ※タレントセントラル搭載科目と同じです。
- これらのアセスメントから次の4つの個人レポートを出力します。
High Potential Assessment Report
アスピレーションと能力の総合得点を算出し、受検者がどれだけハイポテンシャル人材に合致しているかをとらえるリポートです。アスピレーションはビジネスリーダーに共通する6つのモチベーションリソースと2つの行動特性によって算出します。能力は変革型リーダーに求められる4つのコンピテンシーと執行型マネジャーに求められる4つのコンピテンシーの両方を勘案し算出されます。加えてエンゲージメントを面接で評価するためのヒントが記載されています。
https://www.shl.com/products/product-catalog/view/hipo-assessment-report-2-0/Unlocking Potential Report
リーダーシップコンピテンシーの開発を目的としたフィードバック用のレポートです。SHLのスキルタクソノミーであるUniversal Competency Frameworkに基づく20項目のコンピテンシー項目についてポテンシャル得点を算出し、強みと弱みを具体的な行動レベルに落とし込みフィードバックします。経営層レベルにまで対応する能力開発のヒントが記載されており、受検者が結果を読み、自ら能力開発計画を作成できるよう設計されています。
https://www.shl.com/products/product-catalog/view/hipo-unlocking-potential-report-2-0/MQ Candidate Report
モチベーションリソース検査MQのフィードバック用レポートです。18項目のモチベーションリソース因子に対する意欲への影響度合いを文章によって説明しています。結果の解釈に専門知識は必要ありません。
https://www.shl.com/products/product-catalog/view/mq-candidate-motivation-report/Verify Interactive G+ Candidate Report
認知能力検査Verify Interactive G+のフィードバック用レポートです。各測定項目別の得点と一般能力についての得点が掲載されています。結果の解釈に専門知識は必要ありません。
https://www.shl.com/products/product-catalog/view/verify-interactive-g-candidate-report/
High Potentialレンズの次世代リーダー発掘・育成における効果
High Potentialレンズの特徴は、人材の発掘だけでなく育成までを一貫して支援する点です。このソリューションの活用により以下のような効果が得られています。
フィンランドの産業向け設備の自動化技術を提供するValmet社ではこのソリューションを導入した結果、リーダー人材のパイプラインが強化され、選抜後のリーダーの成功率が向上しました。
FSCS(英国金融サービス補償制度)はこのソリューションに加え360度アセスメントを実施した結果、現状の後継者パイプラインが不十分であることが明確になり、リーダー育成の方法を改善しました。継続的な改善の結果、ハイポテンシャル人材として特定された人材のほぼ半数は上級幹部へ昇進し、客観的なアプローチにより経営陣の女性比率が57%まで増加しました。
これらの事例は、ハイポテンシャル人材の発掘・育成を科学的に行うことが単なる人事施策の質的向上ではなく、経営・事業戦略を遂行するための戦略投資であることを示しています。
日本企業の次世代リーダー発掘・育成に向けて
現在、多くの日本企業がサクセッションプランの導入、次世代リーダー育成プログラムの改善を進めています。急激に変化する経営環境に適応できる新しい経営リーダーを育てていかなければならないという強い危機感がその動機になっています。従来の経営リーダー選抜方法に対する主な問題意識は以下の3つです。
- 経営リーダー要件の不明確さ:年功や過去の職務成果を重視する文化の中で、リーダー要件に基づく登用の仕組みが定着していない。
- 主観的な選抜:上司の推薦や印象に左右され、客観的な人材情報に基づいた選抜が行われていない。
- 場当たり的なリーダー育成手法:候補者を真のリーダーに育成するための重要なポストが定義されておらず、育成のための戦略的な異動をおこなう仕組みも存在しない。
加えてContextual Leadershipレンズを利用すれば、育成のための重要ポストのコンテクスト(リーダーが解決しなければならない課題)を明確にできるため、各ハイポテンシャル人材の育成に適したポストを客観的に特定することも可能です。
おわりに
SHLのハイポテンシャル人材ソリューション「High Potentialレンズ」がサクセッションプランや次世代リーダー育成に対しては、どのように貢献できるかについて述べました。
人材のポテンシャルをとらえ、パーソナライズされた能力開発を行い、一人ひとりの個性を企業の成長につなげること。これがタレントマネジメントの目指す形であり、私たちはInsight Platformを通じてこの取り組みを支援したいと考えております。
このコラムの担当者
清田 茂
日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員