適性とは
公開日:2021/04/09
今年も当社の新入社員研修の講師を務めることとなり、研修準備をしながら仕事を再認識するよい機会だなあとつくづく思いました。この準備で当社にとって最も重要な概念について復習する機会がありましたので、本コラムはそのことについて述べます。
その概念とは、「適性」です。当社の新入社員が必修科目の人事テスト(Occupational Testing)理論で、最初に学ぶのがこの適性についてです。
自社の適性を持つ人を見つける場合は、活躍している人や定着している人の性質を調査によって見つけます。活躍する人たちとそうではない人たちとの違い、長期間意欲的に働く人たちと早期に意欲を失い退職する人たちとの違いを説明できる能力や性格を調査します。この調査を行う上で重要なことは、妥当性と調査の実行可能性を踏まえて、対象となる適性の抽象度を調整することです。
例えば、自社適性という一つの概念を作るためには全社員を対象に、活躍度合と相関がみられる性質を調べるのですが、様々な職種や職場環境の社員を十把ひとからげで調べても相関の見られる性質はまず見つかりません。職種や職場ごとに活躍するために必要な職務遂行能力が異なるからです。この場合、類似している役割や環境ごと(部門や階層、職種など)に分類して調査を行います。限界まで細分化すると全ポストの調査となるのですが、必要なサンプル数や手間の観点から全ポスト調査は非現実的です。実際に調査可能で妥当性の確認できる、ちょうどいい分類で適性を定義します。
SHLは適性を能力(Ability)とパーソナリティ(Personality)、意欲(Motivation)から捉えるための様々なアセスメントツールを開発してきました。既に廃版になってしまいましたが、かつては部品組み立て作業の適性を測定するためのユニークなアセスメントを持っていました。そのアセスメントは、複数の部品(鉄板、ボルト、ナット、ワッシャー)と工具を受検者に提供し、見本品(組み立て後の製品)と同じものを制限時間内に作らせるというものです。正しく構造を把握し、適切な手順で適切な部品を手際よく組み立てることが求められます。得点は定められた採点方法により特定の基準グループを比較集団とした偏差値が算出されます。
職務適性とは職務遂行に関わる適性です。仕事に求められる能力や資質を持っているかどうか、仕事に求められる能力を素早く習得できるかどうかを決めるものです。職務ごとに適性を定義する必要があります。一般的には、同じ職務に従事する集団に対して能力検査、性格検査を実施して、能力評価、活躍度合、業績等のパフォーマンスデータと検査結果データとの相関分析を行い、適性を定義します。
ここでコンピテンシーとの違いについて申し上げておきます。職務適性とコンピテンシーはいずれも職務遂行能力につながる概念です。適性は職務遂行能力を構成する性質(潜在的な能力や性質)の測定によって捉えるものであり、パフォーマンス予測に用いられます。コンピテンシーは成果創出のために発揮された(顕在化した)行動によって捉えるものであり、パフォーマンス評価に用いられます。
組織適性とは組織適応に関わる適性です。社員の定着、意欲、やりがいに関わります。組織風土に合った価値観を持っているかどうかが影響しており、組織になじめるかどうか、上司や職場で一緒に働く人たちと馬が合うかどうかを決めるものです。厳密な調査とアセスメントを用いた評価を行うよりは、インターンシップなどでその職場を体験したり、職場を訪問して複数の社員と対話したりすることで組織適性を評価することが一般的です。
その概念とは、「適性」です。当社の新入社員が必修科目の人事テスト(Occupational Testing)理論で、最初に学ぶのがこの適性についてです。

適性とは
適性とは、特定の役割や環境に適した性質のことを指します。単なる性格や能力における個人差を説明するものではなく、職務の成功や組織への適応に影響を与える性質です。重要なのは、特定の役割や環境に適したという部分です。特定の役割や環境、つまり職務や職場、一緒に働く人たちが定まることで、はじめて生じる概念なのです。例えば、おしゃべりという特徴はそれだけでみれば単なる性格の一部分ですが、新しい人間関係を作ることが仕事である営業職においては強みとなり、重要な機密事項を多く持つ秘書職においては弱みとなります。また、無口という特徴は、反対に営業職において弱みとなり、秘書職においては強みとなります。つまり、おしゃべりは営業適性であり、無口は秘書適性なのです。(これはあくまで例え話で、実証されたものではありません。)自社の適性を持つ人を見つける場合は、活躍している人や定着している人の性質を調査によって見つけます。活躍する人たちとそうではない人たちとの違い、長期間意欲的に働く人たちと早期に意欲を失い退職する人たちとの違いを説明できる能力や性格を調査します。この調査を行う上で重要なことは、妥当性と調査の実行可能性を踏まえて、対象となる適性の抽象度を調整することです。
例えば、自社適性という一つの概念を作るためには全社員を対象に、活躍度合と相関がみられる性質を調べるのですが、様々な職種や職場環境の社員を十把ひとからげで調べても相関の見られる性質はまず見つかりません。職種や職場ごとに活躍するために必要な職務遂行能力が異なるからです。この場合、類似している役割や環境ごと(部門や階層、職種など)に分類して調査を行います。限界まで細分化すると全ポストの調査となるのですが、必要なサンプル数や手間の観点から全ポスト調査は非現実的です。実際に調査可能で妥当性の確認できる、ちょうどいい分類で適性を定義します。
適性のとらえ方
適性という言葉は、英語のAptitudeを訳したものです。余談ですが、当社の総合適性テストGABはGraduate Aptitude test Batteryの頭文字をとったもので、学卒者向け適性テストという意味を持っています。元来適性という概念は能力(Ability)を示す概念でした。視力、聴力、認知能力、運動能力などを必要とする自動車運転適性といったイメージです。その後、職務と組織の複雑化や専門性の高度化により、性格や意欲、興味関心などを含む概念へと拡張されました。SHLは適性を能力(Ability)とパーソナリティ(Personality)、意欲(Motivation)から捉えるための様々なアセスメントツールを開発してきました。既に廃版になってしまいましたが、かつては部品組み立て作業の適性を測定するためのユニークなアセスメントを持っていました。そのアセスメントは、複数の部品(鉄板、ボルト、ナット、ワッシャー)と工具を受検者に提供し、見本品(組み立て後の製品)と同じものを制限時間内に作らせるというものです。正しく構造を把握し、適切な手順で適切な部品を手際よく組み立てることが求められます。得点は定められた採点方法により特定の基準グループを比較集団とした偏差値が算出されます。
適性の種類
会社が社員や応募者に対して注目すべき適性は2つあります。職務適性と組織適性です。職務適性とは職務遂行に関わる適性です。仕事に求められる能力や資質を持っているかどうか、仕事に求められる能力を素早く習得できるかどうかを決めるものです。職務ごとに適性を定義する必要があります。一般的には、同じ職務に従事する集団に対して能力検査、性格検査を実施して、能力評価、活躍度合、業績等のパフォーマンスデータと検査結果データとの相関分析を行い、適性を定義します。
ここでコンピテンシーとの違いについて申し上げておきます。職務適性とコンピテンシーはいずれも職務遂行能力につながる概念です。適性は職務遂行能力を構成する性質(潜在的な能力や性質)の測定によって捉えるものであり、パフォーマンス予測に用いられます。コンピテンシーは成果創出のために発揮された(顕在化した)行動によって捉えるものであり、パフォーマンス評価に用いられます。
組織適性とは組織適応に関わる適性です。社員の定着、意欲、やりがいに関わります。組織風土に合った価値観を持っているかどうかが影響しており、組織になじめるかどうか、上司や職場で一緒に働く人たちと馬が合うかどうかを決めるものです。厳密な調査とアセスメントを用いた評価を行うよりは、インターンシップなどでその職場を体験したり、職場を訪問して複数の社員と対話したりすることで組織適性を評価することが一般的です。
今後
VUCAの時代に加えて高齢化の進む今日の日本においては、会社が職務と組織に適した人をあてはめるだけでなく、働く人の価値観、職業観、人生観、ライフイベントなどに応じて適した職務、環境、働き方を提供する新しい会社の仕組みが求められています。今はまだ、確立された仕組みは存在しませんが、働く人の幸福に焦点をあてた取り組みの発展に期待しています。また、そのような社会への移行に私たちが貢献できるようアセスメントを応用したソリューションを強化していきます。
このコラムの担当者
清田 茂
日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員