コラム

人事コンサルタントの視点

リーダーシップとマネジメントの違い

「リーダーシップ」と「マネジメント」という言葉は、書店のビジネス書コーナーなどで非常に頻繁に目にするキーワードです。変化が激しいといわれる昨今、組織の持続的な成長のためにリーダーシップやマネジメントが重要であることは疑いの余地がありません。一方で、両者の違いや使い分け方を改めて問われると、明確に説明するのが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、SHLが提唱するコーポレート・リーダーシップモデルを例に挙げながら、リーダーシップとマネジメントの違いや、それぞれの役割について整理します。

SHLコーポレート・リーダーシップモデル

    SHLコーポレート・リーダーシップモデルでは、リーダーの役割を4つの機能に分け、次のように定義しています。
  1. ビジョンを作る:現状を批判的に分析し、前進するためのアイデアを生み出す(戦略)
  2. 目標を共有する:戦略がもたらす変化に自ら適応し、説得力を持ってビジョンを周囲に伝える(コミュニケーション)
  3. 支援を得る:戦略遂行に必要な行動をとるよう人々を動機づけ、協力を得る(人)
  4. 成功をもたらす:効率的な業務遂行やビジネスセンスで目標を達成する(オペレーション)
    これらの役割を遂行するために、2つのリーダーシップスタイルが定義されています。
  • トランスフォーメーショナル(リーダーシップ・フォーカス):仕組みを創造・発展・方向づけて、人と組織双方への影響力を通じて期待以上の成果を達成する
  • トランザクショナル(マネジメント・フォーカス):仕組みをうまく維持し、特定目的に対して安定的な成果をあげる
上記のスタイルを見ると、リーダーシップとマネジメントの概念が明確に区別されていることが分かります。では、より詳細にリーダーシップとマネジメントそれぞれの定義や活用場面を見ていきましょう。

SHLコーポレート・リーダーシップモデル

リーダーシップとは

リーダーシップとは、「人々に共通の目標・価値観・態度を持たせ、組織のビジョン達成に向けて人々に影響を与えること」と定義されます。これは単なる指示や管理にとどまらず、組織の未来を創造し、発展させ、ときには方向転換を図る「変革」を担う役割です。
リーダーシップが真価を発揮するのは、積極的かつ革新的でリスクを伴う状況、すなわち有事の際です。たとえば、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックのような想定外の事態への対応が挙げられるでしょう。このような状況にうまく対処できるリーダーは、その影響力によって組織や人々に深いコミットメントをもたらします。
ただし、リーダーが誤った方向性を示したり、方向転換に必要な影響力を発揮できなかった場合、その結果は組織全体に深刻な悪影響をもたらします。有事だからこそリスクも大きいことを考慮しなければなりません。

マネジメントとは

マネジメントとは、「既存のシステムを維持し、計画・組織化・監督・ルーチンの維持・逸脱への対応を行うこと」と定義されます。マネジメントの主な役割は「安定」と「効率」の確保です。
マネジメントは、通常業務における安定運用を目指す性質を持っています。すなわち、日々の業務の中でこそ、その真価が発揮されます。優れたマネジャーは、組織の秩序を守り、目標達成に向けて着実に進捗を管理します。
また、マネジメントには、組織の規律を乱す要因に対して厳しい姿勢を持つことも求められます。組織から与えられた権限や役職の力を適切に用いながら、仕組みを維持し続けるための指示・監督を行う側面も、時には必要となるでしょう。

マネジメントとは

リーダーシップとマネジメントの違い

ここまで、SHLコーポレート・リーダーシップモデルの考え方に倣い、リーダーシップとマネジメントを区別してきました。両者の違いを図にまとめると、次のようになります。

観点 リーダーシップ マネジメント
定義 人々に共通の目標・価値観・態度を持たせ、ビジョン実現に向けて人々に影響を与えること 既存のシステムを維持し、計画・組織化・監視・ルーチン維持・逸脱対応を行うこと
主な役割 新しい方向性の創造・発展・変革 業務の安定運用・効率化・秩序の維持
発揮場面 積極的・革新的・リスクを伴う 日常的・ルーチン・比較的リスクが低い
失敗した場合の影響 組織全体に深刻な悪影響(方向性の誤り等) 部分的な悪影響(業務効率の低下等)
他者への影響の仕方 自発的な共感・目標共有による動機付け 権限や役職による指示・監督
必要性 組織の変革・成長・ビジョン実現に不可欠 組織の安定・効率的運営に不可欠

おわりに

リーダーシップとマネジメントは、組織運営の両輪です。両者は隣り合わせにあり、どちらも組織の成功には不可欠ですが、役割や発揮場面、影響範囲などが異なります。
そのため、社内にリーダー/マネジャー向きの社員は果たしてどのくらいいるのか、客観的なアセスメントを通じて現状把握を行うことが大切です。
SHLコーポレート・リーダーシップモデルに基づくポテンシャル測定に関心がある方は、
ぜひハイポテンシャル人材の発掘と育成に関するご提案をご覧ください。

参考文献
https://www.researchgate.net/publication/315386724_The_SHL_Corporate_Leadership_Model_v2

森山 蓮

このコラムの担当者

森山 蓮

日本エス・エイチ・エル株式会社
HRコンサルティング4課 課長

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