コラム

人事コンサルタントの視点

アンラーン(Unlearn)が生む、新たな成長曲線

公開日:2025/08/08

目標に向かって一生懸命に取り組んでいても、うまくいかない。その理由が過去の成功体験によってもたらされた思考パターンや行動パターンのせいだったとしたら。
その場合、かつて有効だった(そして現在も有効だと思っている)方法を見直し、新しい方法にチャレンジしなければなりません。
常套手段や得意技を手放すことで新たな学びと課題達成を後押しする「アンラーン(Unlearn)」という考え方があります。
本コラムでは、バリー・オライリー氏の著書『アンラーン戦略』(ダイヤモンド社)を参考にアンラーンの要点に触れながら、効果的に活かせる場面について紹介します。

アンラーンとは

    アンラーンは下記の3つの段階を継続的に回していくサイクルです。
  1. 脱学習(Unlearn)
    過去には有効だったものの、現在では通用しなくなった考え方や行動を手放す。
  2. 再学習(Relearn)
    新しい視点や考え方を受け入れ、それに基づいて行動を起こす。
  3. ブレークスルー(Break through)
    行動の結果から学び、自らの思考や行動様式を変化させていく。
このように、凝り固まったやり方を捨てて新しい行動を起こすことで、有効な学びが得られ、飛躍的な成長ができるという考え方です。

アンラーンとは

アンラーンのサイクル

    では具体的に何を行うのか。ここでは、各段階を有効に機能させるための条件とともに整理します。
  1. 脱学習(Unlearn)
    まず、取り組むべき課題を特定し、どこに努力を集中させるかを明確にします。次に、その課題が解決された「成功の状態」を定義します。この際、目先の範囲にとらわれず、できるだけ大きく、大胆に考えることが重要です。
  2. 再学習(Relearn)
    定義した成功の状態に到達するために、どのような行動が必要かを考え、できる限り多様な選択肢をリストアップします。このとき、「やったことがある」「できること」だけにとらわれてはいけません。やったことのないこと、できないこと、試してみたいこともすべて含めて列挙し、その中から最も有効だと思われる最初のアクションを選びます。
    選んだアクションは、結果が良くても悪くても、まずは楽しむ姿勢が大切です。踏み出した一歩や得られた成果そのものを喜びましょう。
    そのうえで、さまざまな手段を小さく、速く、低コストで繰り返し試していきます。課題解決における「正解の行動」は簡単には見つかりません。だからこそ、多くのトライを通じて効果のある行動にたどり着くことを目指します。
  3. ブレークスルー(Break through)
    再学習の段階では、数多くのチャレンジを行っているため、豊富な結果が得られます。何がうまくいったのか、何がうまくいかなかったのか──その成果を丁寧に振り返ることで、自身の思考や行動にどのような変化が生まれたか、成長を実感することができます。そしてその実感が、新たな「脱学習」への動機となり、再びサイクルが回り始めるのです。

アンラーンが効果的に活かせる場面

    アンラーンは特定の状況に限定されるものではありませんが、より効果的に活用できる場面について、以下に私の考えを整理します。
  1. ビジネスリーダーが大きな課題に直面するとき
    ビジネスリーダーは、これまでに並外れた成功を経験していることが多く、その成功体験が無意識のうちに新たな学びや戦略の構築を阻む要因となることがあります。特に、これまでのアプローチが通用しないような大きな課題に直面したときこそ、アンラーンが重要になります。
  2. 昇進・異動・転職などで環境が変化したとき
    新たな役割や働き方が求められる場面では、これまでの経験や知識が必ずしも有効とは限りません。こうした変化は、新しい学習や行動様式を取り入れる絶好のタイミングであり、アンラーンを促進するきっかけとなります。
  3. 若手社員の成長を促進したいとき
    若手社員は、先輩の成功体験や好事例、役立つ考え方を学ぶ機会が多くあります。しかし、それらを無批判に取り入れすぎると、思考や行動が固定化され、自分自身のスタイルや発想を発展させにくくなります。重要なのは、それらの知見を「必要に応じて着脱できる」状態にしておくことです。
    また、若手社員はチャレンジと失敗が比較的許容されやすい立場にあります。経営層であれば大きな失敗は避けるべきですが、若手のうちは一定のリスクを許容し、失敗から学ぶことが可能です。もしそのような環境にあるならば、失敗の影響をコントロールしつつ積極的に挑戦することは、まさにアンラーンの実践の好機といえます。

アンラーンが効果的に活かせる場面

新しいことをやるには勇気がいる

私たちは誰しも、自分にとって心地よい「やり方」を持っており、できる限りそれを使おうとします。なぜなら、それを手放すことで、不慣れで手際の悪い自分と向き合うことになり、失敗する可能性が高まると感じてしまうからです。
その結果、ときには明らかにうまくいっていないにもかかわらず、従来のやり方に固執してしまうことがあります。
しかし、大きな成果を得るためには、新しいアプローチが必要であることを受け入れ、慣れ親しんだやり方の枠を越えていく必要があります。アンラーンは、そのための心構えと、変化の中で成功するためのヒントを示してくれる考え方です。

もし、現状に閉塞感や行き詰まりを感じているのであれば、自分が無意識のうちに囚われている思考や行動パターンを一度脇に置き、新たに有効となり得る行動を考えてみることが、前進への第一歩になるかもしれません。

参考文献
バリー・オライリー 著/中竹竜二 監訳/山内あゆ子 訳(2022)
『アンラーン戦略 「過去の成功」を手放すことでありえないほどの力を引き出す』

村越 弘芳

このコラムの担当者

村越 弘芳

日本エス・エイチ・エル株式会社 副部長

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