コラム 人事コンサルタントの視点

スキルベース組織への移行ガイド:よくある課題とその克服方法

更新日:2026/01/23

今日の急速に変化するビジネス環境において、企業の競争力は「従業員の保有スキル」に直結しています。そのため、スキルベースのタレントマネジメントに舵を切る組織が急増しています。スキルを戦略的に活用するには、まず「スキル監査(現状把握)」を行い、次にそのギャップを埋めるための「アップスキリング・リスキリング」を実行するプロセスが不可欠です。しかし、SHLの知見によれば、多くの組織がこの2つのプロセスにおいて共通の課題に直面しています。

スキル監査(現状把握)を失敗させる4つの要因

    スキル監査は戦略立案の土台ですが、以下の要因によってデータの信頼性が損なわれ、意思決定を妨げる壁となる場合があります。

  1. 共通言語の欠如

    最も根本的な課題は、スキル定義の不一致です。例えば「コミュニケーション能力」と「顧客関係構築力」が同じ能力を指して使われることがあります。組織全体で統一された定義(共通言語)がないと、部門ごとに独自の基準で評価が行われ、データの統合や比較が困難になります。結果として、適材適所の配置や組織変革のスピードが停滞してしまいます。
  2. データの分断(サイロ化)と陳腐化

    多くの場合、スキルデータは採用、L&D(学習・開発)、評価などの各部門に分断(サイロ化)されており、連携が進んでいません。また、データの鮮度や精度もバラバラです。人事部門が全体像を把握できない一方で、現場の管理職が独自にレビューを行うといった二重構造も発生しがちです。これにより、従業員自身も「今何を持っていて、次に何を学ぶべきか」を正しく認識できなくなります。
  3. 重要なヒューマンスキルが見落とされ、十分に測定されていない

    技術革新が進む中、プログラミングや特定ツールの操作といった「ハードスキル」の測定に偏る傾向があります。しかし、長期的なパフォーマンスを左右するのは、適応力や問題解決能力といった「ヒューマンスキル(ソフトスキル)」です。これらを正しく評価できなければ、目先のニーズを満たすだけの人材戦略となり、AI導入などの不確実な未来への対応力が失われます。
  4. ビジネスと連動していない測定

    スキル監査が「測定すること」自体を目的にしてはいけません。ビジネス戦略という背景(コンテクスト)がなければ、得られたデータから「次に何をすべきか」という実用的なインサイトは導き出せません。戦略との連動がなければ、予算の確保やステークホルダーの賛同を得ることも難しくなります。

スキル監査(現状把握)を失敗させる4つの要因

アップスキリングを失速させる5つの課題

    正確なスキル監査ができても、それを具体的な能力開発に繋げる段階で多くの組織が苦労しています。取り組みを阻害する主な要因は以下の5つです。

  1. 戦略との不一致

    プログラムが失敗する最大の要因は、ビジネス戦略とアップスキリングの取り組みが連動していないことです。目指すべき将来像に必要なスキルを特定せず、汎用的なトレーニングを漫然と提供しても、それは成長への投資ではなく、単なる「コスト」として浪費されます。
  2. パーソナライゼーションの欠如

    個々の強みや課題が可視化されていないと、画一的な教育に陥ります。調査では、従業員の60%が「個別の開発計画がない」と回答しています。自分に関係のないプログラムを強制されることは、モチベーションと学習効果を著しく低下させます。
  3. 適切なツールを持たない現場マネジャー

    L&D部門が優れたプログラムを用意しても、現場のマネジャーが関与しなければ効果は限定的です。マネジャーが部下のスキル状況を把握できていなければ、日々の業務を通じた的確なコーチングやフィードバックは期待できません。
  4. 進捗が見えない

    「コースの修了率」や「受講時間」は、スキルの習得を保証するものではありません。活動量(アウトプット)を測定している組織は多いものの、それがビジネスにどう影響したか(アウトカム)を測定できている組織はわずか16%に留まります。成果が見えなければ、L&D部門は「コストセンター」と見なされてしまいます。
  5. 学習をサポートする文化がない

    組織が効果的な研修や能力開発の機会を提供していると感じている従業員はわずか35%です。従業員が新しいアイデアや仕事の仕方を取り入れようとしたものの、結局は「これまでのやり方」に戻ってしまうというのはよくある話です。研修を単発のイベントにせず、仕事の中に学習が組み込まれ、挑戦が奨励される組織文化の醸成が必要です。

アップスキリングを失速させる5つの課題

おわりに

これらの障壁をいかに乗り越え、「推測」ではなく「データ」に基づいたスキル戦略を推進すべきでしょうか。SHLではその解決策を2冊のeBookにまとめています。貴社の人材戦略を次なるステージへ進めるヒントとして、ぜひ以下よりダウンロードしてご活用ください。
Close Skills Gaps, Open Career Paths【Explore Two Essential Guides for Smarter Skills Strategies】

廣島 晶子

このコラムの担当者

廣島 晶子

HRコンサルタント 主任

入社以来、アセッサーとして延べ100名以上の管理職アセスメントやフィードバックに従事。面接・グループ討議等の行動観察評価に精通し、評価シート設計や評価者養成も多数手掛ける。現在は、SHLグループ海外拠点との連携や最先端ナレッジのローカライズを推進。グローバル認定講師として、適性検査解釈コースの講師も務める。実務現場の評価視点と世界標準の知見を融合させた、科学的根拠に基づくHRソリューションの発信に注力している。

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