2011年大学卒業予定者は、企業が求める対人スキルに欠けている
公開日:2010/09/07
このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループのネット配信「SHL Newsletter」や広報誌「Newsline」、HPから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
今回は、イギリスにおける新卒採用に関する話題です。
- ただし、彼らは実務的な課題遂行スキルに優れています。
- 企業は学歴に頼るだけではいけない、という結果が示されました。
SHLの研究によれば、2011年度大学卒業予定者は、仕事の成功に必要な対人スキルに欠けているようです。
この結果は、TARGETjobs社によるイベントUndergraduate of the Year Awardsに登録した650名強のパーソナリティ・プロファイルに基づいたものです。SHLはこの賞のスポンサーをしている新卒採用企業8社(金融から技術まで幅広い業界を網羅)と協力し、これらの会社が新卒採用で何を求めているかを調べました。8つのコンピテンシーリストのうち、最も重視された4つは、「計画・実行」「分析・解釈」「人とのやり取り・プレゼンテーション」「支援・協力」でした。
結果は著しい対比を示しています。パーソナリティ・プロファイルによると、学生はこれら4つのコンピテンシーのうち最初の2つに優れていますが、後の2つでかなり低いという結果でした。つまり、体系的に整然と段取りを組む、分析的に考える、などの実務的スキルは非常によいですが、他者とコミュニケーションをとってうまく協力していく、ということになると苦労するようです。
これらの結果は、「影響スキルとコミュニケーションスキルが多くの新卒者にとっての課題である」という2006年のSHL研究結果が繰り返されたものです。
SHLマネージング・コンサルタントのハワード・グロスベナーは次のようにコメントしています。「非常に興味深い状況です。2011年卒業予定者は、企業が最も重視するものについて非常に優れているか、非常に劣っているか、のどちらかです。中庸がありません。さまざまな授業やプロジェクト、アルバイトなどのバランスをとっていく必要性がますます高まっていることを考えると、学生の主な強みが課題遂行や問題解決にあることはおそらくあまり驚くことでもありません。驚いているのは、多くの学生がビジネスで必要な対人スキルを未だ欠いたままでいることです。政治家や実業家がいろいろ言っていますが、状況はここ4年間、ほとんど変化していないように思われます。
大学生は仕事経験や学業以外の活動への参加を通して、これらのコンピテンシーを開発すべく努力しなければならない、という結果が再度示されました。これはまた、採用企業にとっても、エンプロイアビリティ(雇用され得る能力)の指標としてもはや学歴に頼ることはできない、という警告です。採用担当者は入社後すぐに仕事を進められるようになるために必要なスキルをもつ大学生を見つけられるよう、より深く掘り下げて調べる心構えでいなければなりません。」
日本の新卒採用基準として最もよく挙げられるのは「コミュニケーション力」だと思います。「日本人は控えめで自分の意見を表立って主張しない、以心伝心の文化」という先入観から、私はこれはある意味、日本特有の傾向であると思っていました。この記事を読んで、最初、ヨーロッパでもそうなのか、と意外に感じた次第です。
考えて見れば、ITの発達などで学生に「人と接する」経験がどんどん少なくなっているのは世界的な傾向なのかもしれません。もしくは、ヨーロッパで求められているコミュニケーション能力に協力関係・支援関係の構築まで含まれていると考えれば、「チームワーク」で分があるのは日本?

このコラムの担当者
堀 博美
日本エス・エイチ・エル株式会社