コア・バリューに沿った採用プロセスを:ジョン・ルイスとHSBCの事例
公開日:2012/03/20
このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
2012年グループの新しい広報誌Connectが創刊されました。前回ご紹介した巻頭記事に引き続き、今回は同誌に掲載されている事例をお伝えします。
コスト意識の高い環境下、顧客のロイヤリティを生み出すために小売店はトップクラスのサービスを提供しようと一生懸命です。この戦略を遂行する最前線にいるのは社員です。よって、ビジネスのコア・バリューに沿った採用を行うことが必要不可欠です。
英国の大手デパート、ジョン・ルイスのリソース・マネジャーであるキャロル・ドナルドソン氏は次のように述べています。『新しい顧客はもういませんから、顧客獲得よりも顧客ロイヤリティが優先です。顧客を中心においたリソース戦略が非常に重要です。顧客との重要な関係は全て前線スタッフが担っています。』
『採用プロセスで用いるツールが我々のコア原則に沿っており、応募者全員が、合格/不合格に関わらず、頑健で一貫した、公平な経験をするようにしなければなりません。彼らがすでにお客様であればうちで買い物し続けるように、そうでなければうちのことをより知ったことで買い物をし始めてくれるよう、努力しています。』
ジョン・ルイスにとって、応募者の人数の点だけ取ってみても採用は大きな課題です。彼らの採用プロセスはSHLが設計した価値観ツールで始まります。彼らは採用プロセスを、出会いから結婚までの道のりになぞらえます。
ドナルドソン氏は次のように続けます。『目的は、スキルではなく、我々のビジネスに最も合う価値観を持つ応募者を見つけ出すことです。』価値観ツールをリアリスティック・ジョブ・プレビューと組み合わせ、ジョン・ルイスは年間36万人の応募者に対応しています。
HSBC(旧社名:香港上海銀行)には、社内や顧客、社会とどのようにやり取りするかの明確なバリューがあります。SHL・タレオ社と協力して、HSBCは、業績を推進する情報力豊かな採用意思決定ができるような、人材の統合的な評価管理ソリューションを作り上げました。
HSBCグループ組織開発長であるクリス・イェーツ氏は次のように述べています。『ピープル・インテリジェンスをよりうまく使うことが必須課題でした。今ではよりレベルの高い応募者を採用し、また、高業績者を発見・育成できるようになったことで、競争上の優位性を持つことができています。さらに、プロセス全体に渡る時間とコストの効率化が実現できました。』
ドナルドソン氏とイェーツ氏は、2011年10月ロンドンで初めて開催されたLINK(SHL主催のクライアント対象カンファレンス)の基調講演者でした。カンファレンスには英国の人事専門家が数多く参加され、ピープル・インテリジェンスを通じての業績向上について活発な議論が交わされました。
特に一般消費者に対してビジネスを行う会社では、応募者イコール顧客と考えなければなりません。本コラム第55回・第56回でもご紹介したSHL調査によれば、回答者1600人のうち、『採用でいやな経験をしたことがある』人が半数(49%)。そのうち、結果として『その会社からもう買わない』と答えた人は5人に1人(18%)でした。本人だけではありません。いやな経験をした人の3分の1(36%)が家族や友人に不満を漏らし、また、10人に1人(9%)がブログやSNSなどを通じて不満を発信しています。そして、『もし友人や家族の誰かがいやな経験をしたことを自分に話してくれたら、自分も今後その会社から買わないだろう』と答えた人は77%いました。影響は計り知れません。

このコラムの担当者
堀 博美
日本エス・エイチ・エル株式会社