営業職に求められるパーソナリティの変化
営業職に求められる能力は経営環境の変化とともに変化し、かつ営業職に求められる能力は高度化してきています(太田、2002;横田、2006など)。顧客と良い関係を築ける営業担当者が優秀とされた「御用聞き営業」の時代から、顧客の課題を聞き出すヒアリング力、課題に応じたソリューションを考える企画力などが求められる「ソリューション営業」、顧客が気づいていない課題を見つける洞察力や、それを顧客に示す指摘力が求められる「インサイト営業」の時代へと。
では、本当に企業で評価される営業職のタイプは時代によって異なっているのでしょうか。当社では、実際の営業職従事者のパーソナリティ検査OPQデータを用いて、
①営業職にはどのようなタイプが存在するのか
②そのタイプへの評価は時代によって変化するのか
③業界によってタイプの評価変遷に違いがあるのか(対象業界「商社」と「証券」)
を検証しました。
1999年から2017年の19年間に当社が依頼を受けたパーソナリティ(OPQ30因子)と評価の関係分析のうち、一般社員販売・営業職従事者のデータ(N=35,987)を用いて営業職のタイプ分類を行った結果、営業職を以下の4つのタイプに分類することが出来ました。

次にこれらのタイプが年代によってどう評価されているのかを検証しました。

【結果】
-高評価者に占める「典型」と「論理」の割合は、その他に占める割合よりも大きい
-「タフ」「着実」は評価されにくい
-この傾向は99~08年も09~17年も同様である
全体でみると、年代による評価傾向の違いは見られないという結果が得られました。

【結果】
●商社
-最も変化したのは「典型」。99~08年では有意差はないが高評価者の割合が高かったが、09~17年では有意に評価されなくなっている。
-「着実」は各年代で見たときにいずれも評価されない傾向にあるが、高評価者同士の年代比較を見ると「典型」の高評価者が減った分「着実」が増えている。
商社では、年代によって評価されるタイプに変化が見られました。商社の中で必要な人材に変化があったことがうかがえます。
●証券
-高評価者同士の比較で、「典型」の割合が増加している。
-「論理」は99~08年では評価されていたが、09~17年では評価されなくなっている。

証券でも、年代による評価の違いが見られました。しかし、商社とは異なり「典型」が評価されるようになっています。
このうち、「典型」と「論理」は営業職全体で見たときにはどの年代においても評価されていました。共通しているのは、「相手に働きかけるコミュニケーション」と「上を目指し即断即決する」能力です。これらの要件はそもそも優秀な営業職に必要不可欠な要因であると考えられます。
また、商社で評価される傾向が見られた「論理」と「着実」に共通しているのは、「データを読み解き考える」能力と「先の計画を立てる」能力です。商社においては、頭脳や段取り力が評価されるようになってきているようです。特に総合商社では仕事内容が単なる卸売から複数の企業が介在するプロジェクトのとりまとめへと変化しています。プロジェクトを円滑に進めるためには、物事の進捗を把握し、計画通りに進める能力が求められるため、「着実」が高評価者の中での割合を増やしていると考えられます。
一方、証券は「典型」が評価されるようになっています。証券は扱う商品に差がないため、売れるかどうかは営業担当者と顧客の信頼関係によるところが大きいと考えられ、そのためコミュニケーション能力とエネルギーに長けた「典型」が評価されるのは納得が行きます。しかし、それは今も昔も変わらないはずであり、「論理」が減った要因とは考えにくいです。一つの仮説として、リーマンショックが関わっている可能性が挙げられます。2008年のリーマンショック後、証券業界は全体的に落ち込みました。そんな時期には、考えるよりもとりあえず行動できるエネルギーを持った人が生き残り評価されるのではないでしょうか。この証券業界の変化については、より業界背景を鑑みた検証が必要であると考えています。

※引用文献:柳島 真理子・堀 博美(2017)営業職のパーソナリティ要件変化検証―約20年間の蓄積データによる検証― 産業・組織心理学会 第34回
では、本当に企業で評価される営業職のタイプは時代によって異なっているのでしょうか。当社では、実際の営業職従事者のパーソナリティ検査OPQデータを用いて、
①営業職にはどのようなタイプが存在するのか
②そのタイプへの評価は時代によって変化するのか
③業界によってタイプの評価変遷に違いがあるのか(対象業界「商社」と「証券」)
を検証しました。
①営業職のタイプ
そもそも営業職にはどの様なタイプが存在しているのでしょうか。1999年から2017年の19年間に当社が依頼を受けたパーソナリティ(OPQ30因子)と評価の関係分析のうち、一般社員販売・営業職従事者のデータ(N=35,987)を用いて営業職のタイプ分類を行った結果、営業職を以下の4つのタイプに分類することが出来ました。

次にこれらのタイプが年代によってどう評価されているのかを検証しました。
②全体:タイプごとの評価変遷
19年間のデータを、1999年から2008年の10年間と2009年から2017年の9年間に区分し、年代ごとの高評価者とその他営業職従事者のタイプ割合を集計、統計分析(カイ二乗検定)を実施しました。
【結果】
-高評価者に占める「典型」と「論理」の割合は、その他に占める割合よりも大きい
-「タフ」「着実」は評価されにくい
-この傾向は99~08年も09~17年も同様である
全体でみると、年代による評価傾向の違いは見られないという結果が得られました。
③業界別:タイプごとの評価変遷
営業職全体では年代による差は見られませんでしたが、業界別ではどうでしょうか。同じ19年間でも、業界によって経営環境の変化には差があったはずです。「商社」と「証券」業界で同様の比較を行いました。
【結果】
●商社
-最も変化したのは「典型」。99~08年では有意差はないが高評価者の割合が高かったが、09~17年では有意に評価されなくなっている。
-「着実」は各年代で見たときにいずれも評価されない傾向にあるが、高評価者同士の年代比較を見ると「典型」の高評価者が減った分「着実」が増えている。
商社では、年代によって評価されるタイプに変化が見られました。商社の中で必要な人材に変化があったことがうかがえます。
●証券
-高評価者同士の比較で、「典型」の割合が増加している。
-「論理」は99~08年では評価されていたが、09~17年では評価されなくなっている。

証券でも、年代による評価の違いが見られました。しかし、商社とは異なり「典型」が評価されるようになっています。
結果から見えてくる「営業職に求められるパーソナリティ要件」
営業職従事者をタイプ分けしたとき、4つのタイプに分類されました。このうち、「典型」と「論理」は営業職全体で見たときにはどの年代においても評価されていました。共通しているのは、「相手に働きかけるコミュニケーション」と「上を目指し即断即決する」能力です。これらの要件はそもそも優秀な営業職に必要不可欠な要因であると考えられます。
また、商社で評価される傾向が見られた「論理」と「着実」に共通しているのは、「データを読み解き考える」能力と「先の計画を立てる」能力です。商社においては、頭脳や段取り力が評価されるようになってきているようです。特に総合商社では仕事内容が単なる卸売から複数の企業が介在するプロジェクトのとりまとめへと変化しています。プロジェクトを円滑に進めるためには、物事の進捗を把握し、計画通りに進める能力が求められるため、「着実」が高評価者の中での割合を増やしていると考えられます。
一方、証券は「典型」が評価されるようになっています。証券は扱う商品に差がないため、売れるかどうかは営業担当者と顧客の信頼関係によるところが大きいと考えられ、そのためコミュニケーション能力とエネルギーに長けた「典型」が評価されるのは納得が行きます。しかし、それは今も昔も変わらないはずであり、「論理」が減った要因とは考えにくいです。一つの仮説として、リーマンショックが関わっている可能性が挙げられます。2008年のリーマンショック後、証券業界は全体的に落ち込みました。そんな時期には、考えるよりもとりあえず行動できるエネルギーを持った人が生き残り評価されるのではないでしょうか。この証券業界の変化については、より業界背景を鑑みた検証が必要であると考えています。

※引用文献:柳島 真理子・堀 博美(2017)営業職のパーソナリティ要件変化検証―約20年間の蓄積データによる検証― 産業・組織心理学会 第34回

このコラムの担当者
柳島 真理子
日本エス・エイチ・エル株式会社
テスト開発・分析センター