本コラムでは、質問紙法の検査、360度評価、アセスメントセンターという3つのアセスメント手法を比較して、目的によって適切なアセスメントを選ぶためのコツをお伝えします。
質問紙法の適性検査
質問紙法の検査は受検者が自己申告によって自分自身の特徴を評価する手法で、様々な特徴の測定が可能です。その中でもビジネス場面においては業績との関連が見られやすいパーソナリティ測定が最もポピュラーです。この手法の最大のメリットはコストパフォーマンスが高いことです。1名あたり数千円程度で実施でき、数十分の質問紙に本人が回答するだけで、かなり広範な情報が得られます。したがって、従業員全体の特徴を大規模に調査したい場合によく用いられます。
また本人が回答しているため、結果をフィードバックした時の納得感が高い点も質問紙法の特長です。近年では、キャリア開発を目的とした面談を導入する企業が増えており、面談前や最中に自己理解を促進する情報として測定結果を活用するケースも多くなっています。 本人の潜在的な強み・弱みや、経験したことがない職務に対する活躍可能性が予測できるというメリットもあります。
一方で、質問紙法の検査結果は単なる受検者の自己認識であるため、その結果だけで能力の高低を断定することはできません。したがって、幅広い集団から能力の高い候補者群をリストアップするためには活用できますが、その中で1人を選ぶ時には別のアセスメント手法を用いる必要があります。

360度評価
360度評価は、被評価者の周囲の人(上司、同僚、部下など)が被評価者の業務上の行動を評価する手法です。被評価者について様々な立場の人が評価する事により、一面的ではない評価結果が得られます。この手法は、大きく2つのメリットがあります。
まず実際の業務上の行動を観察できる人が評価した結果のため、本人に行動改善を促しやすいという点です。特に複雑な能力発揮が求められている経営層、マネージャー層の育成施策として、評価結果を活用するケースが多く見受けられます。
もう1点は、個人のバイアスを排除できる点です。上司が付ける行動評価(プロセス評価)を人事考課に取り入れている企業が、その評価の補正をするために活用するケースです。この場合、直属の上司評価のみでは浮き彫りにならなかった被評価者の能力開発課題を360度評価によって明らかにできます。
様々なメリットが感じられる360度評価手法ですが、実施にあたり検討しなければならない課題も多く存在します。
まず、現場の負担が増える点です。仮に1,000名の管理職を対象に行う事を想定し、平均10名の評価者を設定した場合を考えると1名当たりの評価時間が15分でも2,500時間必要です。当然、事前の説明や事後のフィードバックも必要ですので、全体としてかなりコストのかかる評価手法であると言えます。したがって、目的を明確にして、対象を絞って実施することが求められます。
次に360度評価プロジェクトの運営にはかなりの専門性が必要であるという点です。評価項目は実際の職務に関連したものでないとフィードバックしても効果は半減してしまいます。また評価項目が妥当であっても、質問項目が適切でないと適切に評価することはできません。簡単なアンケートのように見えますが、実施する際には緻密に設計しないと効果が半減するどころか、誤った評価結果を基に判断してしまう等のリスクがあります。
最後に、発揮が求められていない評価項目は評価できないという点です。360度評価は、あくまでも職場での行動を基に評価されるため、役割上求められていない能力については評価根拠が不明になり、評価ができないか主観的な評価結果になる可能性があります。まだ経験していない上位ポジションや職種における活躍予測を行う為のデータとしては、参考程度に留まるでしょう。

アセスメントセンター
アセスメントセンターはグループ討議やロールプレイ演習など複数のシミュレーション演習、面接、質問紙の検査、知的能力検査などを組み合わせて実施し、受検者の実際の行動証拠を収集し、専門の訓練を受けたアセッサーが客観的に評価する手法です。職務経験の有無に関わらず評価したい能力の行動証拠を収集できる点がアセスメントセンター最大の利点です。また受検者全員に対して同一の条件で演習を実施するため、公平性が担保されています。これらの特徴からアセスメントセンターは経営人材や管理職などの選抜によく用いられます。また、これらの人材の能力開発でも活用されます。
一方で複数の演習を実施し、多面的に行動証拠を収集するため、1名当たり少なくとも半日から2日程度の時間がかかります。また多くの人手と時間をかけて行うアセスメントセンターは1名あたりの実施費用が数十万円になります。この点からも、幅広い層に実施する手法ではなく、組織戦略上の重要ポジションに絞って実施することが一般的です。
おわりに
前述の通り、それぞれのアセスメント手法はそれぞれの特徴があり、目的や対象者、評価基準に応じた使い分けが必要です。本日ご紹介したアセスメント手法についてご関心がある方は無料のダウンロード資料をご覧ください。面接におけるジェンダーバイアス
質の高い多様な人材を採用しようとする組織は、無意識の偏見が採用決定に影響を与える可能性を最小限に抑える必要があります。偏見を低減するための重要な戦略は、面接の質問すべてが仕事に関連しているようにし、個人的な質問を避けることです。性別、年齢、民族などの属性の特定グループに、他のグループよりも数多く個人的な質問をすることはさらに問題になります。
私たちの分析では、女性応募者の 42%が個人的な質問を少なくとも 1つされましたが、男性応募者では 33%だけでした。図5は、男性と女性の両方の応募者に尋ねられた様々な種類の個人的な質問の内訳です。
また、男性の面接官は、女性の面接官よりも、応募者に個人的な質問をするようです。応募者が女性の場合、男性面接官の 43%近くが個人的な質問をしたのに対し、応募者が男性の場合、個人的な質問をした男性面接官は 35%だけでした(図6)。
面接担当者が職務に関係のない質問をする時、面接の予測力は低下し6、採用決定にバイアスがかかる可能性があります。さらに国によっては、企業組織が法的リスクにさらされます。上記の分析結果のように、あるサブグループのメンバーが他のサブグループのメンバーよりも頻繁にそのような質問をされる場合、これらの効果は増幅されます。
面接エクスペリエンスを改善するための提言
この白書では、面接における応募者エクスペリエンスを評価するためのフレームワークと指標について説明しました。面接エクスペリエンスは、応募者エクスペリエンス全体の中で最も影響力があるため、採用リーダーは最大限の注意を払わなければなりません。今後に向けて、私たちは、企業組織および採用リーダーに対して以下のことを推奨します。
1.「面接エクスペリエンス」を測定して追跡する
私たちの分析では、多くの面接官が会話中に適切なエチケットを示さず、応募者の全般的なエクスペリエンスに影響を与えていることが示されました。面接の会話の多くはデジタル プラットフォームを使用して実施されています7。採用リーダーは、面接の分析に役立つ『面接 インテリジェンス プラットフォーム』とその機能に投資する必要があります。リアルタイムもしくはオフラインで面接が見えるようにし、面接エクスペリエンス全体を追跡することに役立ちます。
2. 面接のやり方を組み立てる
構造面接が職務の成功を最も予測する採用アセスメントであることはわかっています8。企業組織は、様々な部署や職務プロファイルに渡って、構造化された面接のやり方を取り入れるようにする必要があります。一貫した面接エクスペリエンスを提供しながら、質の高い人材を採用することに役立ちます。『面接 インテリジェンス プラットフォーム』は、構造面接のやり方に従っているか、つまり、どれくらいの面接官が実際の会話中にこれらの慣行に従っているかの追跡を支援します。
3. 面接官トレーニング
面接官は面接中、企業組織のブランド大使として動きます。組織は面接官をトレーニングし、面接の実施方法に関するベストプラクティスを身に付けさせるための積極的な措置を講じる必要があります。面接のトレーニングは現実的なシミュレーションを通して実施できます。また、作業フローの中で自動的なフィードバックが返されて面接官が学ぶことができる学習方法(learning-in-the-flow of work)を使用するのもよいでしょう。
- Huffcutt,A.I., & Arthur, W. (1994). Hunter & Hunter (1984) revisited: Interview validity for entry-level jobs. Journal of Applied Psychology, 79, 184-190.
- The Virtual Interview Is The New Resume: What You Need To Know, https://www.forbes.com/sites/forbesbusinesscouncil/2022/05/05/ the-virtual-interview-is-the-new-resume-what-you-need-to-know/
- Levashina, J., Hartwell, C. J., Morgeson, F. P., & Campion, M. A. (2014). The structured employment interview: Narrative and quantitative review of the research literature. Personnel Psychology, 67(1), 241-293.
原文はこちらからダウンロード可能です。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/insights-on-your-candidate-interview-experience/
本連載、特に第3回と第4回の分析結果をご覧になっていかが思われたでしょうか?
日本ではもっとポジティブな結果になるのではないか、と思いたいところですが、どうでしょう。
オンライン面接が定着してきた昨今、面接の中身を可視化することが以前よりやりやすくなりました。応募者にとってのより良いエクスペリエンスを作り出し、自社の採用ブランドを高める努力が一層必要なのではないでしょうか。
今、話題沸騰中のChatGPT。あらゆる業務を効率化できるツールとして、様々な分野での活用がはじまっています。本コラムでは、ChatGPTが人事業務をどのように改善できるかについて、その可能性を考えていきます。ChatGPTとは
ChatGPTは、OpenAIが開発した人工知能技術を用いた自然言語処理のモデルです。大量のテキストデータを学習し、人間と同様の言語理解能力を備えています。ChatGPTは、テキストベースの対話システムとして利用され、自動的に情報を取得し、言語による対話を展開することができます。例えば、カスタマーサポートや言語翻訳などの分野で利用され、人と同様の自然な対話を可能にすることで、多くの人々にとって便利なツールとなっています。何ができるのか
ChatGPTは、テキストデータを学習して文章の作成、要約、修正などを行います。対話システムでの自然な応答が得意です。また、Web上のテキストデータから、数十億もの単語を収集し、自然言語処理のためのデータセットとニューラルネットワークを構築し、自然言語処理のモデルをトレーニングします。多様な分野の知識を持つことができます。
人事の仕事をどのように改善できるか
ChatGPTが言葉をうまく扱い文章を作成できることはわかりました。ここでChatGPTに人事の仕事をどのように改善できるかをたずねると、以下の返答がありました。2.面接の自動化:ChatGPTを用いると、面接の一部を自動化することができます。例えば、ChatGPTを使用して自動的に質問を作成し、応募者の回答を分析することができます。これにより、人事担当者の負担を減らすことができます。
3.従業員のトレーニング:ChatGPTは、従業員のトレーニングにも使用されています。例えば、ChatGPTを使用して自動的にトレーニング資料を作成することができます。また、ChatGPTを使用して従業員が質問に対する回答を学習することができます。
4.パフォーマンス評価の改善:ChatGPTを使用することで、従業員のパフォーマンスを自動的に評価することができます。これにより、人事担当者がより正確かつ公正に評価を行うことができます。
これらの方法により、ChatGPTは人事の仕事を効率的に改善することができます。
このようにChatGPTは回答しましたが、これは私の質問に対して自然な文章で答えたにすぎませんので、ひとつひとつ内容を吟味してみましょう。

本当に業務改善につながるか
1.人材選抜における応募者のスクリーニング履歴書やエントリーシートのテキストを自動で読み込み評価する仕組みは以前からありました。2000年にリリースした当社初のオンラインアセスメントツール玉手箱にも履歴情報として自由に記述されたテキストを読み込み自動評価する機能を搭載していました。ChatGPTは無料で使える汎用的なツールですので、自由記述の自動評価がより一般的になっていくだろうと考えられます。
2.面接における質問と評価の自動化
ChatGPTは人との自然な会話が得意ですので、応募者に適した面接質問を作り、質問に対する回答から次の質問を作ることはできます。この際に重要なのは面接で応募者のどのような能力、適性、スキル、コンピテンシーなどを評価するかです。面接基準についてのインプットがなければ適切な評価はできません。面接基準をChatGPTに作成させることも可能ですが、そこで作られた面接基準が本当に適切なものかについては人による判断が不可欠です。また、ChatGPTが正しい評価すると信じるのは非常に危険です。AIは本当の意味で人の評価をしているわけではないということを忘れずに、評価結果とその根拠となる情報を人の目で確認する必要があります。
3.トレーニング資料の自動作成
トレーニング資料をChatGPTに作らせるのはよい使い方です。GPT4では、手書きの情報を読み取り、そのままの形でhtmlを書くことができるようになりました。Eラーニングのコンテンツを作らせることもできると思います。
4.パフォーマンス評価の改善
従業員のパフォーマンス評価を自動化するには、評価の対象となる情報が必要です。ChatGPTに読み込ませるための評価に関する情報の収集とその整理を人がするのであれば、敢えてChatGPTに評価をさせるまでもなく人が評価したほうが早く効率的です。評価をする際に最も時間がかかるのは、評価関連情報の収集です。情報収集はChatGPTに任せることができないとすれば、評価に関する業務改善は期待できません。
おわりに
ChatGPTは誰もが使えるAIとして画期的なツールです。発展途上の道具はどのようなものであっても注意して使わなければいけませんが、使わない人と使う人との間には大きな生産性の格差が生まれてしまうでしょう。人事の仕事は多くの個人情報や機密情報を扱う仕事ですので、安全に十分配慮して新しい道具の新しい使い方を発明していただきたいと思います。私も試行錯誤を続けていきます。 適性検査のフィードバック面談を通じた従業員の能力開発について本コラムでも何度かお伝えしてきましたが、今回は、面談中に明らかになった「ポテンシャルの発揮度」に応じた能力開発の方法をご紹介します。
面談を通じて「その能力が仕事で発揮された(またはされなかった)事実があるか」を確認すると、「ポテンシャル(適性検査の結果)」と「発揮度(面談の結果)」から、被面談者の能力を以下の4つに分類できます。どこに分類されるかによって、能力開発に向けた対話や支援の仕方が変わってきます。
対処戦略を持っている能力(ポテンシャル-・発揮度+)
苦手意識を持っているにもかかわらず、実際の仕事場面では発揮できている能力です。本人が何らかの理由でこの能力に必要性を感じており、意識して行動を取っていると言えます。この能力を開発する場合は、発揮し続けるにはどうすればよいか、さらにレベルを高めることができないかを話し合います。また、なぜ発揮できるようになったか、発揮する意欲をどうやって保ち続けているかを掘り下げると、後述する「好きでもないし、行動もしない」能力を発揮する際のヒントが見つかる可能性があります。
「なぜ発揮できていると思いますか」
「さらに能力開発するには、どうすればよいと思いますか」
「どのような時に発揮しよう、発揮しなければならない、と思いますか」
発揮された潜在能力(ポテンシャル+・発揮度+)
ポテンシャルが高く、発揮もできている能力です。今の仕事でより大きな成果を生み出すために、どのようにこの能力を使うべきか、うまくいっていない仕事や課題にこの能力を生かせないかが対話の中心になります。「どのような場面で発揮すると効果的だと思いますか」
「この能力をさらに伸ばすには、何が必要だと思いますか」
「いま抱えている問題や課題に対して、この能力をどう生かせますか」

未開拓の潜在能力(ポテンシャル+・発揮度-)
ポテンシャルが高いにもかかわらず、発揮できていない能力です。まずは、適性検査の結果が正しいかどうか、改めて自己認識を尋ねて確認します。正しいと判断できれば、発揮を妨げている要因を探ります。この要因は、外的要因(発揮を求められない業務内容や職場環境)である場合と内的要因(別の能力の不足によって発揮が妨げられている)である場合とその両方である場合が考えられます。内的要因は、例えば「何事にも”主体的に率先垂範して取り組めない”のは、”情報が不足していて”自分の判断に自信が持てないから」などです。この場合は、”率先垂範”という能力の開発に取り組むために「失敗を恐れずにまず取り組んでみる」などの行動計画を立てるよりも、まず、短時間で重要な情報を収集するための”情報をとる”という能力の開発に取り組む方が効果的です。
「適性検査ではこの能力は得意であるという結果が出ていますが、どう思いますか」
「なぜ発揮できていないと思いますか」
「何があったら、より発揮できると思いますか」
対処戦略を持たない能力(ポテンシャル-・発揮度-)
本人に苦手意識があり、実際に発揮もできていない能力です。発揮するための行動計画を立てる前に、「好きでもないことを、なぜやらなければいけないか」を話し合う必要があります。「仕事だからやりなさい」と伝えるのは簡単ですが、行動が変わることはほとんどありません。この能力を発揮するメリットを本人が理解し、納得する必要があります。その際、目の前の仕事の話題からいったん離れて、本人の望むキャリアや働き方について尋ねてみるとよいでしょう。その実現に向けて、この能力が活用できないか、必要になる場面はないかを模索します。ただ、対話の結果、この能力を必要としない仕事の仕方や役割を検討するほうがよい、という結論になる場合もあります。
「この能力は、今の仕事のどのような場面で必要になりますか」
「この能力を発揮するメリットは何ですか」
「あなたの求める●●の実現に向けて、この能力をどう有効活用できますか」

以上、適性検査の結果と、そのフィードバック面談で明らかになった「ポテンシャルの発揮度」をもとに能力開発に向けた対話や行動計画の立案をサポートする際の考え方をご紹介しました。
フィードバック面談全体の進め方や注意点についてはこちらのダウンロード資料をご覧ください。
面接エクスペリエンスの知見
サンプルサイズ
60万件の面接から、3000件以上の面接をサンプルとして抽出し分析しました。インドのITソフトウェアサービス業界の10社で行われた面接であり、いずれもインド国内で実施されたものです。
分析
どのような面接であっても、適切な面接エチケットを守り、応募者中心に会話を進めることは面接官にとって欠かせません。データを分析し80%の面接官はベストプラクティスのうち少なくとも1つを行っていないことが分かりました。優れた面接エクスペリエンスを提供しておらず、妥協しています。
A)面接エチケット
70%の面接官は前述の面接エチケットの3つの指標のうち、少なくとも1つを守っていません。自己紹介は社会人として会話を始める上で基本的な礼儀です。ほぼ40%の面接官が自己紹介をしていません。
B)応募者中心の会話
企業にとって応募者ファーストの採用エクスペリエンスを設計することは重要です。従って、面接官も応募者と会話をする際には、応募者ファーストのアプローチを取る必要があります。分析によって面接官の56%が応募者中心の会話をできていないことが分かりました。特に、30%の面接官が職務や職務要件に関連しない可能性がある質問をしています。さらに、27%近くの面接官が、応募者に質問をする機会を与えていません。
面接中に行われた個人的な質問の内訳が以下の図にあります。22%の面接官は両親について尋ねており、10%近くの面接官が子供について聞いています。約8%の面接官は婚姻状況について尋ねています。
C)面接の組み立て
同じ職務の応募者に対する面接プロセスは一貫している必要があります。面接官が定められた面接のやり方に従っているかを分析しました。事前に定められた質問を使用した面接官は40%だけでした。また、面接終了後、速やかに標準化された評価基準にそって応募者を評価することも重要です。
最終的に、1つの職務の採用面接の中でさえ面接官による違い(つまり、一貫性の欠如)が確認できました。例えば、以下の図は1つの職務に対する面接で、面接官がどのような種類の質問に、どのくらい時間を使っていたかを示しています。
原文はこちらからダウンロード可能です。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/insights-on-your-candidate-interview-experience/
次回はジェンダーバイアスに関する分析結果と面接エクスペリエンスの改善方法です。
今後もこのような傾向は継続するのでしょうか。新たにどのような変化が予想されるでしょうか。
本コラムでは、SHLグループのe-Book「Navigating People Strategy in 2023」を一部抜粋し、2023 年に注目すべき人材トレンドのトップ 5 をご紹介します。
1.トップ人材が辞める傾向は続く
優秀な人材には常にチャンスがあり、不況の時であっても組織を去ることができる選択肢があります。退職は組織にとって大きな損失となり、トップ人材の定着は人事にとって非常に重要です。・人事リーダーの50%が、今後6カ月間、人材獲得競争が激しくなると予測している¹
・52%の従業員は組織に留まるかどうかに柔軟な勤務形態が影響すると回答している¹
・80%の従業員は給与がインフレに追いついていないと回答している(SHRM)
では何をすべき?給与アップ?
もちろん、給与や勤務形態は重要な要素ですが、トップ人材が退職する理由の1位はキャリアアップや成長のためです。そのため、人事はまず、誰がトップ人材であるか、彼らがどのような仕事に取り組むことで成長することを望んでいるのかを把握することが重要です。トップ人材のリテンションを維持するためには、組織が彼らの成長と発展を促進するような仕組みを整える必要があります。
2.燃え尽き症候群が増えている
Gallup社によると、従業員の76%が燃え尽き症候群に陥っており、SHLのデータでもパンデミック前よりも全体的にレジリエンスが低下していることが報告されています。さらに、経済的な不安が広がる中、燃え尽き症候群に陥りやすくなっている状況にあります。これは事業活動にも大きな影響を与える可能性があるため、注意が必要です。マネジャーやリーダー、そして人事はチームメンバーをより深く理解し、彼らが仕事上の何によって動機づけられるのかを確認することが大切です。従業員を支援するためにはマネジャーやリーダーの存在が非常に重要ですが、その一方で彼らが過度に負担を感じてしまわないよう注意することも忘れてはいけません。人事は彼ら自身が燃え尽き症候群の犠牲者とならないように注意する必要があります。
・人事リーダーの45%が従業員は変化によって疲弊していると回答している¹

3.従業員中心のアプローチへの移行は続く
どの組織でも従業員は最も重要な顧客です。彼らは自由に組織を去ることができます。そのため、組織は従業員にとって魅力的な仕事を提供し続けなければいけません。しかし、産業革命以来、多くの組織で従業員は十分に扱われず、企業はやる気のない、生産性の低い労働力や高い退職率に悩まされてきました。従業員中心のアプローチをとることで、組織は従業員が仕事に何を求めているかを理解し、それを提供する意味のある仕事と職場を作り上げることができます。SHLの調査によると、従業員はより良いワークライフバランスを求めつつ、目的とつながりによって動機づけられます。リモートワークやハイブリッドワークが増える中、人事には、従業員が仕事に何を求めているかを理解し、目的をどのように伝えるべきかを検討するためのデータが必要です。
・53%の従業員が、組織に彼らが気にかけていることに対して行動を起こしてほしいと回答している¹
4.育成、流動性、リテンションがより重要に
2023年はコスト削減の圧力が高まり、人事戦略の重要性が増します。今いる人材でより多くの仕事をしなければなりません。成功のためには、全従業員の人事データが必要不可欠です。全従業員に能力開発のためのフィードバックと計画立案の機会を提供し、従業員主導の能力開発計画を作ります。重大なスキルギャップを埋めるためには、必要な人材要件を定義し、組織の中からその要件に合致する人材を探す必要があります。例えば、次の営業のスター社員はカスタマーサービスの担当者の中にいるかもしれません。事業がうまく行くだけでなく、従業員が成長を実感することで、リテンションにも大きく貢献します。・人事リーダーの47%が、内部人材の育成が2023年の最優先事項の1つだと回答している¹
・人事リーダーの24%が、現在のリーダー育成のアプローチでは将来に向けたリーダーを準備できていないと回答している¹
・人事リーダーの36%が、採用戦略が不十分で必要な人材を見つけることができていないと回答している¹

5.採用とタレントマネジメントが一体化する
多くの企業で、採用とタレントマネジメントは別々に動いており、それぞれ異なるプロセスやシステム、データセットを持っていました。これによって生じる非効率や一貫性の欠如は、つい最近までは容認されていました。経済的な制約が非常に大きい中で、事業の目標を達成するためには、採用とタレントマネジメントを連動させる必要があります。採用凍結が行われている状況では、人事は組織内の人材を有効活用し、現在のスキルギャップを埋めると同時に将来に向けてスキルを開発しなくてはなりません。人材の管理・育成・リテンションのために、情報やプロセス、戦略やデータを共有することが必要です。
おわりに
上述のトレンドを踏まえ、人事戦略を立案するためには、正確で意味のあるデータが必要です。データがあれば、以下のような疑問に答えることができます。・事業戦略を実行できる人材が組織内にいるか
・スキル、人材、リーダーシップの重大なギャップはどこにあるのか
・もしも事業戦略が変化したとき、人事戦略にどのような影響があるか
・退職率はどこで問題になっており、それはなぜなのか
・将来必要となるスキルや役割に向けて、従業員を育成しているか
2023年も、データとピープルアナリティクスの重要性はさらに高まるでしょう。SHLグループではMobilizeと呼ばれる、人材データを統合・分析し、迅速に必要な知見を得ることができるソリューションを展開しています。ご興味のある方はこちらでデモ動画(英語) を確認いただけます。
¹Gartner: Top 5 Priorities for HR Leaders in 2023
© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved 事業環境が激しく変化する中で、企業の人材育成に変化の兆しが生まれています。階層別研修に代表される一律の研修から、個々の従業員がそれぞれの立場で必要な能力を主体的に獲得しながら、業務の中で能力発揮することを促す個別化された育成への移行を多くの企業が模索しています。
背景
かつての人材開発部門は、研修体系を作ることが重要ミッションでした。全従業員に対して平等に学びの機会を提供するためです。これは企業独自のスキルやネットワーク構築を促すのに最適であり、安定的な経営環境では効果的な方法であると言えます。しかしながら、環境変化が激しく常に新しい学びが必要な昨今の状況では、予め学習内容を定義することが難しくなりました。加えて、従業員の価値観が多様化し、幹部育成を前提とする研修が機能しづらくなってきました。これが、従業員が主体的な学ぶ仕組みの構築に取り組む企業が増えた理由です。成長とは
仕事における能力の獲得が成長です。具体的には「職務経歴書に新たに書ける項目が増えている状態」とも言えます。単なる経験の振り返りによる理解ではなく、成果創出の再現性が高まっていることが重要です。
成長を促進するために必要なこと
「ローミンガーの法則」では、人の成長に役立つ要素の7割は経験、2割は薫陶、1割が研修です。経験は人の成長に大きく影響します。そして、この経験を意味あるものにするため、薫陶や研修が必要なのです。「コルブの経験学習理論」は「経験→内省→概念化(持論化)→実践」というサイクルを通じて、経験を学びに昇華する理論です。この理論においても経験を内省するステップが必要です。
成長を促進するためには、経験の振り返りと内省が重要です。1on1面談、フィードバック面談、経験棚卸しのためのワークシート活用など様々な方法がありますが、今回はパーソナリティ検査を活用する方法をご紹介します。
パーソナリティ検査を活用した内省の促し方
>パーソナリティ検査OPQのフィードバック用リポート「万華鏡30」を使った内省の手順を説明します。 万華鏡30のマネジメントコンピテンシー(PMC)を使います。PMCは企業人の職務遂行能力を網羅的に整理した36項目のコンピテンシーモデルです。 リポートにはパーソナリティから予測される各コンピテンシー発揮可能性が5段階で表示されます。高得点(4点、5点)の項目を強み、低得点(1点、2点)の項目を弱みと判断します。以下の手順は強みに着目した内省の方法です。手順①
PMCの中から高得点を抜き出し、「発揮できている強み」と「潜在的な強み」に分類します。PMCの得点はパーソナリティからの予測値ですので、高得点のものすべてが業務の中で強みとして発揮されているとは限りません。この手順を通して、自分がどのような能力を発揮してきたかを思い出す呼び水とします。
手順②
「発揮できている強み」に分類したコンピテンシーついて、どんな場面でどのように発揮されたのか、過去のエピソードを書き出します。事実に基づき振り返ることがポイントです。実際にどのような行動を取り、どのような成果に繋がったのかを整理すると自分の特徴がどう成果に結びついたのかを明確に認識でき、自己理解が深まります。

手順③
「発揮できている強み」に分類したコンピテンシーついて、うまく発揮できなかった場面がないかを振り返り、発揮できた時とできなかった時を比較して、発揮するためにどんな条件が必要だったかを書き出します。特に他者のサポートや組織の中での役割や権限などが重要です。強みを発揮しやすい環境要因を把握すると、どういう準備が必要か明確になり、能力発揮の再現性が高まります。
手順④
「潜在的な強み」に分類したものを眺めて、将来獲得したいコンピテンシーがあるかどうかを検討します。「潜在的な強み」は現在の職務では発揮しづらいことが多く、意識的に経験を積む必要があります。目指すキャリアを念頭に開発したい項目を選択しましょう。
自分の特徴と経験を関連付けるこの方法は、経験のみの振り返りよりも自己理解を促進します。ワークシートを用意しましたので、是非ご活用ください。
終わりに
従業員が主体的に学び続けるための仕掛けの一つとして、パーソナリティ検査を活用した内省の促し方をご紹介しました。個々人が置かれている環境と課題が異なる中で、自律的な学びを促進するには本人が学びの必要性を認識する事が最も重要です。人材育成を考える一助になれば幸いです。 万華鏡30にご関心がある方は、無料ダウンロード資料アセスメントツール「万華鏡30」のご案内をご覧ください。面接エクスペリエンスの定義
「応募者エクスペリエンス」は採用業界でよく話題になる言葉ですが、「面接エクスペリエンス」に関する議論や研究文献はあまりありません。しかしながら、面接エクスペリエンスは応募者エクスペリエンスにかなり大きな影響を与えます5。
私たちは、デジタル面接におけるポジティブな面接エクスペリエンスの主要指標をいくつか設定しました (図2)。
これらの指標は、調査を通して私たちが理解した応募者からの期待と、Glassdoor や Indeed などのウェブサイトに何千人もの応募者が匿名で投稿した文章を分析することによって導き出されました。
1.面接エチケット
面接官は、面接の会話中、組織のブランド大使として行動します。就職面接は他の職業上の会話と同じであり、面接官は適切なエチケットに従うべきです。
- 自己紹介
面接官は面接の会話中に自分と所属組織を紹介すべきです。 - 傾聴力
面接官は応募者に話させ、応募者が自分の能力を最大限に発揮できるようにすべきです。 - ウェブカメラをオンにしておく
応募者がウェブカメラをオンにすることを期待するならば、面接官は自分も同じようにすべきです。
2.応募者中心の会話
面接官は、応募者中心の会話を行うべきです。応募者の時間と存在を大切にし、仕事に必要なスキルに焦点を当てた会話を維持する必要があります。
- 応募者の時間を大切にする
面接官は応募者の時間を尊重し、大切にすべきです。特に、時間通りに面接を開始し、割り当てられた時間内に評価を完了しなければなりません。 - 応募者が質問する機会を与える
面接官は、仕事や採用プロセスや組織について質問する機会を応募者にきちんと提供すべきです。 - 不必要な個人的な質問を避ける
面接官は応募者に個人的な質問をすることを避けるべきです。特に、仕事に関係のない質問をしてはいけません。個人的な質問をすることは応募者を不快にさせることがあり、無意識のバイアスにつながる可能性があります。
3.面接の組み立て
面接内容(つまり質問)や応募者からの回答の評価を標準化するなど、面接をしっかり組み立てることで面接の質は向上します。
- 質問の標準化
当該の職務について、コンピテンシー、関連質問、および難しさのレベルは、すべての面接で一貫していなければなりません。 - 採点の標準化
面接官は、標準化された採点テンプレートを使って応募者の回答を評価し、バイアスを最小限に抑えるべきです。
面接エクスペリエンスの測定
私たちが開発したエンドツーエンドの AI を利用したシステム (つまり、SHL インタビュー インテリジェンス プラットフォーム)は、面接の録画から主要な面接エクスペリエンスの指標を抽出することに役立ちます。 図3 は、オーディオ、ビデオ、および会話のストリーミングからこれらの洞察を抽出する方法についての、ざっくりしたモデルです。
- Guide: Train your Interviewers, https://rework.withgoogle.com/guides/hiring-train-your-interviewers/steps/giving-interviewers-practice/
原文はこちらからダウンロード可能です。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/insights-on-your-candidate-interview-experience/
次回はいよいよ分析結果についてです。
コンピテンシーモデリングとは
タレントマネジメントを進める上で適切な人材要件の定義は必要不可欠です。人材要件を定義するためには、コンピテンシーに基づく職務分析が有効です。職務分析を行うことで、職務遂行に求められる重要な行動が明確になります。
職務に求められる重要な行動をコンピテンシーと呼び、特定の職務や階層、集団に求められる構造的なコンピテンシー群をコンピテンシーモデルと呼びます。職務に求められる複数のコンピテンシーを特定し、重複や抜け漏れのない構造的なコンピテンシーのまとまりを作ることをコンピテンシーモデリングと言います。つまり、コンピテンシーモデリングとは職務分析によってコンピテンシーモデルを作ることです。
職務分析の手法
コンピテンシーモデリングに入っていく前に、職務分析について少し説明します。職務分析とは、職務要件や人材要件を定義するために行う分析です。手法としては、以下5つが一般的です。
・観察
現職者が仕事をしている様子を観察します。この手法は、被観察者が観察されることを意識すると日常と異なった振る舞いをするかもしれないというリスクがあります。プロセスが観察できるような作業職にのみ有効です。
・インタビュー
現職者やその仕事についてよく知っている人に対してインタビューをします。自由面接や構造化面接、個人やグループなどやり方は様々です。どのような職務に対しても実施できます。
・参加
分析者が実際に仕事を行い、その経験に基づいて分析します。この手法はトレーニングが少なくて済むような非専門的な仕事に限られます。
・自己報告
現職者に行動の日記をつけてもらい、その日記を分析します。現職者が定期的かつ正確に情報を記入するかどうかに左右されます。
・既存情報のレビュー
既に存在する職務記述書などの情報を使用します。職務要件に関して新しい見方をもたらすことはありません。
最も簡便にできるインタビュー手法~カードソート(行動カード分類法)
5つの手法の中でどのような職務にも対応できるものがインタビューです。また、今回は複数あるインタビュー手法のうち、最も簡単に実施できるカードソート(行動カード分類法)をご説明します。カードソートはコンピテンシーカードを用いて行うインタビューです。コンピテンシーカードには、職務遂行に影響を与える行動(コンピテンシー名とその定義)が記述されています。
インタビュアーはインタビュイーに対して、全てのコンピテンシーカードを分析対象となっている職務の成功に「必要不可欠」、「望ましい」、「あまり関係しない」、「全く関係しない」の4つに分類するよう依頼します。各カードの分類理由をたずね、コンピテンシーがどのように発揮されるか、どのような影響を及ぼすかを確認し、総合的にコンピテンシーモデルを作成します。

コンピテンシーカード
SHLグループは汎用的なコンピテンシーの枠組みであるUCF(ユニバーサル・コンピテンシー・フレームワーク)を持っています。UCFは既存のコンピテンシーモデルやSHLが開発してきた数百のクライアント独自モデルの調査、様々なこの分野の研究に基づいて開発されました。3階層の構造を持っており、SHLのコンピテンシーカードはこの構造に基づいて設計されています。

・8個のコンピテンシー・ファクター
幅広いコンピテンシー領域を表す8枚のカード。職務パフォーマンスに影響を及ぼす一般的な行動のカテゴリーです。具体的コンピテンシーよりも一般的なコンピテンシーを定義づける際に役立ちます。
・20個のコンピテンシー・ディメンション
8枚のファクター・カードを細分化した20枚のディメンション・カードです。職務の具体的行動を明らかにして優先順位をつける際に用います。ディメンション・カードはUCFの20個のコンピテンシーを表しています。
・96個のコンピテンシー・コンポーネント
20枚のディメンション・カードをさらに詳細に分けたものが、96枚のコンポーネント・カードです。特定職務のパフォーマンスに影響を及ぼす様々な重要行動をより細かく定義することができます。
以下の表は、対人積極性ファクターにおける3階層の関係を表したものです。

カードソートのメリットとデメリット
メリットは、単純で簡潔なため結果が再現しやすいこと、1時間未満の短時間でできること、カードに幅広い行動が網羅されているためインタビュー対象者が自分で行動を述べる必要がなく楽なこと、です。加えて、グループインタビューにも対応しやすく、複数の対象者が職務行動を表現するための共通言語を持つことが容易な点もメリットです。デメリットはコンピテンシーカードの記述が一般化されていることに起因する問題です。この手法だけでは実際に行われる具体的行動に落とし込むことはできません。カードの言葉が組織で使われている意味と異なっていたり、カードに実際に使われている言葉がなかったりすることがあります。
カードソートによるコンピテンシーモデリングの目的
よく行われるカードソートによるコンピテンシーモデリングには以下の4つがあります。・組織のコンピテンシーフレームワークを作る
・新しい職務のコンピテンシーモデルを作る
・既存の職務のコンピテンシーモデルを作る
・独自コンピテンシーフレームワーク/モデルの妥当性を確認する
カードソートの手順
目的によってインタビューの対象者や対象になる職務、質問や作業が変わりますが、今回は既存職務のコンピテンシーモデリング手順をご説明します。インタビューの対象者は、人事担当者、既存職務のラインマネジャーやリーダーなど既存職務の成功に必要な行動について理解している人です。所要時間は1時間~2時間。カードを広げられる大きなテーブルがあるといいでしょう。
続いて手順は以下の通りです。
・準備
インタビューの対象者にインタビューの事前説明文を送っておきます。既存の職務記述書を見直し、必要なコンピテンシーについて検討しておきます。
・インタビューの導入
プロジェクトの目的と概要、インタビューのプロセスと情報管理について説明します。
・職務の重要目的を引き出す
職務の主要な目的、職責、課題について質問し、明確にします。
・カードを選ぶ
20枚のディメンション・カードを重要度で分類します。

・選択理由と具体的な行動を確認する
「必要不可欠」と「望ましい」に分類したカードについて、選択した理由と具体的な行動について確認します。具体的な行動を検討する際にコンポーネント・カードを活用します。行動を取捨選択し、職務に適したコンピテンシーとして要約します。
・情報のまとめ
新しいコンピテンシーモデルを確認し、その職務の仕事のタイプやレベルに合致したコンピテンシーになっているかどうかを検討し、確定します。
終わりに
今回は最も簡単なコンピテンシーモデルの作成方法であるカードソートについてご説明しました。この手法をより詳しく学びたい方はぜひ弊社主催のコンピテンシーデザインコースにご参加ください、と申し上げたいのですが、このコースはお客様のご要望に応じた不定期開催のため、すぐにお申込みいただくことができません。ご興味をお持ちいただけましたら無料のダウンロード資料「コンピテンシーモデリングのためのインタビューのご提案」をご覧ください。 このコラムでは、筆者がパーソナリティ検査の解釈をする際に意識しているポイントをご紹介します。
ポイント①各項目の測定内容を理解する
項目名からの曖昧なイメージで解釈すると、適切な人物理解に繋がらないケースが多々あります。質問紙法のパーソナリティ検査では、各項目の定義や高得点者・低得点者の特徴が明文化されています。測定したい特徴を定義しないと測定が難しいからです。定義を踏まえて何を測定しているかを正しく理解すると、誤解が減ります。テストの取扱説明書にその項目を測定するための質問例が開示されていることがあります。質問例は測定結果を理解するためにとても重要な情報ですので、開示されている場合は確認してみましょう。
また次のような事を試すと、測定項目を理解するうえで効果的です。
1. 自分が人柄を知っているグループの検査結果をたくさん準備する(できれば数十件)。
2. 項目ごとに「高得点グループ」と「低得点グループ」を抽出して、各グループを見比べる。
3. 定義から外れない範囲で、2つの集団の違いを言語化してみる。
一人ひとりだとイメージが湧かない場合も、集団としてみるとどういう特徴を測定しているかのイメージがつかめます。
ポイント②項目を組み合わせて解釈する
複数の項目を組み合わせて解釈すると立体的に人物像を言語化できます。例えば、「よく考える」特徴を持っている人がいたとして、「計画的に仕事を進める」という項目も高い場合は「長期的視野に立って、じっくりと考えながら仕事を進めるのを好む」という解釈になります。同時に「フットワークが軽い」という項目が高かった場合は「長期的な視点でよく考えながらも、自分の仮説をぶつけながら情報収集する」という解釈も成立します。このように、単一項目だけよりも複数項目を組み合わせて解釈するほうが、人物像が鮮明になります。一方で、項目を組み合わせて適切に解釈するには経験が必要です。
その場合、なるべく身近な人の測定結果を、次のような手順で解釈することから始めるのがおススメです。
1. 測定結果を見ずに、普段の行動を書き出す。
2. 書き出した行動が測定結果のどのあたりに現れているかを複数ピックアップする。
3. ピックアップした項目を組み合わせて改めて解釈してみる。

ポイント③ギャップや矛盾を感じる部分を見つける
項目を組み合わせて解釈していくと、一部ギャップや矛盾を感じる部分が出てくる場合があります。例えば、「人に指示を出す行動は頻繁にとるのに、人を説得することは苦手である」という結果です。指示を出すのも、説得するのも影響力を行使する行動ですので一般的には同じような結果(両方とも高得点もしくは低得点)になりやすいのですが、そうではない場合はその人特有の経験や考え方が反映されている部分かもしれません。なぜそのような結果になったのかまでは分かりませんが、そこに着目して対話すると思わぬエピソードを聞けるかもしれません。ギャップや矛盾について気づくためのヒントとして、項目間の相関関係についてトレーニングコースの中でお伝えしています。これらの情報をヒントに前述のようなトレーニングを繰り返すことで、自然とギャップに気づくようになります。