資料ダウンロード

パーソナリティ検査OPQのご案内

OPQ(Occupational Personality Questionnaires)とは、受検者のパーソナリティの傾向から様々なポテンシャルを予測する、SHLが世界150か国でご提供しているアセスメントツール(適性検査)です。採用・育成・選抜・配置・異動など、あらゆる人事場面における判断を科学的にサポートします。詳細は、ダウンロード資料をご覧ください(全13ページ)。

こんな方におすすめ

OPQのご利用シーン
OPQの特色
選べる受検形態、様々なオプション帳票、価格

ダウンロードはこちら

「やってみなはれ」精神で日本の園芸業界での新たなビジネスモデル展開などを成功させたサントリーフラワーズ。創業以来、持続的に新たな商品やビジネスを創り出してきました。今後のさらなる成長のため、継続的に次世代を担う人材が集う会社とすべく、社員のキャリア開発を強化しました。社員のキャリア自律を支援する取り組みについてご紹介します。

※本取材は2023年1月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

サントリーフラワーズ株式会社

事業内容

花苗・花鉢、野菜苗・野菜青果、および切花の開発・生産・販売

業種

水産・農林業

従業員数

60人(2022年)

インタビューを受けていただいた方

竹舛 啓介 様

サントリーフラワーズ株式会社
経営企画部 部長

インタビューの要約

少数精鋭の組織ながら、フルバリューチェーンで幅広い事業を展開している。そのため多様なキャリアパスがあるものの、社員一人ひとりに自らキャリアを描く機会が不足しており、組織として効果的な支援ができていなかった。また、採用時の求める人材像も総花的で自社に相応しい個性に欠けていた。
マネージャーによるキャリアビジョン面談を実施。それに先立ち、社員一人ひとりの自己理解促進のためにアセスメント(万華鏡30)をほぼ全社員に実施。アセスメント活用のための研修や全マネージャー参加のキャリアビジョン実現支援会議を開催。
社員のアセスメント結果の分析から、求める人材像を定義。求める人材を高い精度で採用するために、面接評価シートを作成し、面接者トレーニングも実施予定。
マネージャーにキャリアビジョンの重要性が浸透し始めた。今後は社員がキャリアについて本来あるべきオーナーシップ・自己裁量感を持つことができるよう、引き続き取り組んでいく。

多様なキャリアパスがある会社。 課題は、次のビジネスを生み出す人材育成と求める人材の科学的採用。

サントリーフラワーズは従業員約60名で、国内園芸事業(花苗・野菜苗)・切花事業(含む海外)・青果事業・海外ライセンス事業と幅広い事業を展開しています。かつ、新品種開発・品質保証・生産SCM・マーケティング・営業とフルバリューチェーンで事業を行っていますので、社員には多様なキャリアパスがあります。

各事業部のマネージャーは創業期からビジネスに関わってきた人材が中心となっており、今も新事業やビジネススキームを生み出し続けています。しかし、次のリーダーを育てる仕組みは整備されていない。非連続の視点、新しいチャレンジをする発想を求められる場面は限定的です。では何から着手するか。私は、キャリアを考える中で自分が何をしたいか、どうありたいかということを考えていくことが、仕事のやりがいを高めるとともに、非連続な発想のチャンスになると思いました。例えば、「私は人事の仕事が楽しいからもっと深めたい」では今の延長線上ですが、もっと根本的な「自分は植物の良さによって人生を満たされている。そうした価値を世の中の人にもっともっと届けたい」といった自身の価値観とキャリアが結び付けば、事業の新しい成長・変革の力になると考えました。また、「自分が何より嬉しい瞬間は、身近な人が笑顔になったとき。」といった自身のやりがいを見出し、それを実現できる仕事に携われば、当然仕事が面白くなり、一人ひとりの成果もより大きくなると考えました。

多様なキャリアパスがある会社。 課題は、次のビジネスを生み出す人材育成と求める人材の科学的採用。

同時に、より現実的な課題もありました。採用において求める人物像が明確ではありませんでした。面接者をお願いしたマネージャーに「どんな人を採用したいのか」と聞かれても、例えば、「自主性が高い人、協調性が高い人」など、どこの会社にも当てはまる内容を答えている状態でした。会社のどこにどのような人がいるのか、どんな人が活躍しているのかを科学的に把握して、そうした人材を採用できる仕組みを作りたいと考えました。

アセスメントによる自己理解の支援とマネージャーによる面談。 全マネージャー参加のキャリアビジョン実現支援会議も実施。

各事業部を率いるマネージャーはビジネス推進力が極めて高く、人や組織にも関心がある。しかし、実務に追われ部下育成に時間を割きづらい状態。それは認識したうえで、今回の取り組みを推進するためにはマネージャーが担い手になることが不可欠なことから、意義や狙いの説明をしっかりと行うことを強く意識しました。そのうえで、マネージャーによるキャリアビジョン面談を実行しました。

社員はこれまでキャリアという言葉について説明をうけたり、考えたりする機会がほとんどなかったため、急にキャリアビジョンと考えようと言われても困ってしまうことは言うまでもありません。そこで、まずは万華鏡30を通して自分の価値観や仕事の癖、特徴を知ってもらうことにしました。受検は任意でしたがほとんど全員が受検し、受検後に開催した日本エス・エイチ・エルによるアセスメント結果活用の説明会には、経営陣も含め多くの方が参加しました。

また、2022年12月には全マネージャーが参加する「キャリアビジョン実現支援会議」を立ち上げました。部署に関わらず35歳以下の社員全員について、1人当たり30分ずつ、どんな強みや課題、ビジョンを持っているか、これから何を経験してもらい、どう育成すべきかを話し合います。例えば、「成長がS字カーブに来ているので部署横断プロジェクトのリーダーを任せてみよう」、「環境をかえて新しいチャレンジをしたら良いのではないか」など。サントリー在籍時に立ち上げた同様の会議を参考に企画を立案しました。個々人を深く理解するだけでなく、他部署を含めたメンバーを普段からしっかり見ており、良い育成やマネジメントをしているマネージャーから刺激を受けられることがこの会議の良い点です。

データ数が少ないアセスメント結果を分析し、求める人物像を定義する。

アセスメントの受検を案内する際に、結果を採用基準作成の参考情報と使うと伝えました。結果データの分析方法は日本エス・エイチ・エルに相談しました。約60名の会社なので部署ごとの統計的な検定が難しい状態でしたが、最終的にクラスター分析を行いました。分析結果から求める人物像として2つのタイプを定義し、そうしたコンピテンシー特性を見極める為の面接評価シートを作成しました。23年2月には、面接者トレーニングも実施を予定しています。実際の採用での活用はこれからですが、私たちの会社で自身の個性を活かし、よりやりがいをもって働ける方と出会える確度が高くなることを期待しています。

キャリアビジョン実現支援会議後にマネージャーに行ったアンケートを見ると、キャリアビジョンの重要性が理解できたという回答が多く、ようやくスタートラインに立てたと感じています。「もっと対象を広げて実施しよう」という声も出ていて、この会議は今後も発展していきそうです。また、キャリアビジョンや職務経歴といった人材プロフィールを整理し、並行して今後はあるポストにはどういう人材が必要なのかも組織全体の共通認識としてまとめていきたいですね。そして、この会議で話し合った内容をもとに人員配置などが行われることによって、マネージャー自身も人・組織の取り組みに対する自己裁量感を高め、人の育成にますます積極的に取り組むようになることを期待しています。

マネージャー以外の社員からはキャリアビジョン面談中に万華鏡の結果を互いに共有して相互理解が深まったという声を聞きました。今はまだマネージャーに結果を開示するかどうかは本人に委ねていますが、今後は自然と共有されるような、より心理的安全性の高い組織にしていきたいと思っています。少しずつ階段を上っている状態ですが、社員がキャリアについて自己裁量感を持ち、新たな挑戦ができるように、引き続き取り組んでいきたいです。

日本エス・エイチ・エルは、一人ひとりの特徴をとらえ、解像度を上げることにこだわっている会社だと思います。自分自身も一人ひとりの個性を大切にすることを人生の柱にしているので、信頼できます。その上で科学的なアプローチをとるので、再現性や納得性が高いです。また、仕事をきちんと進めていく風土があるので、今後も一緒に仕事をしていきたいですね。加えて、日々新しいことを教えてくれます。2カ月後に同じ課題を相談したら、新たな提案をしてくれるのではないでしょうか。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

畔取 祐介

本件はご相談から2か月間で社員受検が始まりました。竹舛様の意思決定の速さと実行力に、社員と会社に対する強い思いを感じました。アセスメント(万華鏡30)をフィードバックによる各人の自己理解促進とデータ分析による社員傾向の客観的把握にご活用いただきました。限られたサンプル数で実施した分析でしたが、結果をうまくご活用いただけた手応えがありました。今後もサントリーフラワーズのタレントマネジメントの改善のお力になれれば幸いです。

経営戦略を実現するための新たな人事組織を立ち上げた積水ハウス。
次世代を担うビジネスリーダーを計画的・戦略的に育成するタレントパイプライン構築の取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

積水ハウス株式会社

事業内容

戸建住宅事業、賃貸住宅事業、建築・土木事業、リフォーム事業、不動産フィー事業、分譲住宅事業、マンション事業、都市再開発事業、国際事業

業種

建設業

従業員数

16,616名(2020年4月1日現在)

インタビューを受けていただいた方

安信 秀昭 様
増田 貴久 様

積水ハウス株式会社
人事部 人材開発室 室長(写真右)
人事部 人材開発室 課長(写真左)

インタビューの要約

経営戦略を実行するために計画的なビジネスリーダーを育成するという課題があった。
次世代リーダー発掘プログラム「SHINE! Challenge Program」を創設し、タレントパイプラインの構築に着手した。日本エス・エイチ・エルのアセスメントを用いて、高業績かつ光る人材を効率的に選抜できた。
経営戦略の実現のため、人事制度の変革にも取り組みたい。
今後は採用や育成含めて、様々な場面で日本エス・エイチ・エルのアセスメントを活用していきたい。

人事戦略を実行するため、タレントパイプライン構築と人事制度変革に着手。

これまでオペレーショナルな業務が中心であった人事部を、10年後、20年後を見据えて経営戦略に沿った人事戦略を担う専門組織にすべく、人材開発室という新たな組織が作られました。様々な人事課題を検討する中で、まずは①タレントパイプラインの構築と②職能資格を中心とした年功序列的な人事制度の変革を、大きな柱として取り組むことになりました。日本エス・エイチ・エルに相談したのは、このタレントパイプラインです。


社長をはじめ、取締役・執行役員、そして一番のキーポジションである支店長のサクセッションプランニングが課題です。私たちは、中堅・若手クラスの中から将来のビジネスリーダーになれるような人を早期に発掘して計画的に育成する、人材プールの作成を経営層に提案しました。
この課題の背景には、過去の反省がありました。営業中心の会社ですから、これまで支店長になる人はどちらかというと業績重視でした。そこで、マネジメント能力や人格など、より多角的に評価を行い、計画的に人材を育成し、登用する必要があると考えました。

人事戦略を実行するため、タレントパイプライン構築と人事制度変革に着手。

次世代リーダー発掘プログラム「SHINE! Challenge Program」

私たちの組織が発足する少し前に、支店長養成研修「経営塾」がスタートしました。支店長や部長になる登竜門のようなもので、受講生の選抜方法は上長推薦です。1年間でリベラルアーツや行動経済学、DX、イノベーションなどを大学教授、外部有識者から学びます。幅広く勉強してもらい、その成果を支店経営に活かしてもらうことがねらいです。

続いて、35歳以下の選抜研修を新たにスタートさせました。「Sekisui House Innovators and Entrepreneurs」の頭文字をとって、「SHINE! Challenge Program」と名付けました。15名限定で約1年間、多くの外部講師や社内の最先端にいる人からインプットを得ます。普段実務に専念している人たちに、視野を広げ、視座を高めてもらい、将来の積水ハウスの価値創造を考える機会を提供しています。全体を通して外部コーディネータに伴走してもらいながら、得た知識をどう活かすかアクション・ラーニングを行います。最終的には、研修を通じて得た経営課題からビジネスプランを作成し、経営陣の前で発表します。参加者からは、日常とは異なる視座で会社を考える機会が得られた、他の参加者からよい刺激が得られたとの声が寄せられました。

アセスメントで光る人材をどう見つけるか。

「SHINE! Challenge Program」は名前の通り、イノベーターやアントレプレナーの素養がある人を探して輝かせることを目的としています。そのイノベーター、アントレプレナーをどのように見つけるのかについて、日本エス・エイチ・エルのコンサルタントに相談して、選抜方法を決めました。

基本的に人材開発室がプログラム参加者の15人を選んでいます。候補者は30歳前後から35歳ぐらいまでの社員約1,100名です。選抜基準は2つ。一つは人事考課などの実績、もう一つはポテンシャルです。日本エス・エイチ・エルのタレントアセスメント(知的能力検査、パーソナリティ検査OPQ、モチベーション検査MQ)を使ってポテンシャルを評価しています。特にOPQから算出されるマネジメント能力やアントレプレナーのポテンシャルに注目しています。

選抜基準の2つの評価を縦軸と横軸にとり(実績を縦軸、ポテンシャルを横軸)、各軸を3つのレベルに分けることで、9つの区分(9ボックス)を作り、右上の区分に入る人から15人を選んでいます。

アセスメントで光る人材をどう見つけるか。

日本エス・エイチ・エルには採用のアセスメントを長年提供してもらっており、何度も尺度や基準の見直しの相談をして、真摯に協力してもらいました。「SHINE!Challenge Program」の軸を作りたいとなったときに、他のアセスメントも検討しましたが、長年のデータ分析と活用の実績でわかったアセスメントツールの信頼性と妥当性の高さ、カスタマイズの柔軟性から日本エス・エイチ・エルのアセスメントを使うことに決めました。その後、担当コンサルタントと時間をかけて打ち合わせをしながら、選抜手法や評価軸の構造などを決めていきました。

採用でも引き続きご協力いただき、さらに進んだ人材データ分析を行いたいと思っています。また、育成の面では、現場からアセスメント結果をうまく使いたいという声もあがっています。職場風土を変革するために、上下関係や社員同士のコミュニケーションを改善したり、ダイバーシティを推進するため、アンコンシャスバイアスに気付かせたり、といった取り組みを進めています。その中でOPQ、MQを自己理解や他者理解の促進に使いたいと考えています。読みやすく、あつかいやすいレポートやユーザーインターフェイスでアセスメント結果を本人やマネジャーにフィードバックできるとありがたいですね。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 大阪オフィス 部長

岡松 太郎

中堅、若手社員の早期選抜は、今や多くのクライアントで取り組まれている重要テーマですが、SHINE! Challenge Programはオンラインアセスメントデータの活用先端事例と思います。自社で保有する業績指標(パフォーマンス)とSHLハイポテンシャルモデル(グローバル経営リーダーに必要な資質)を掛け合わせた人材選抜は、客観性と予測精度を担保できる仕組みと言えます。
また、入社時と現在でのアセスメントデータの変化や、業績、昇格スピード等の各種パフォーマンス指標との関連性など、多岐にわたり検証しながら進める機会をいただきました。
20年近く当社サービスをご利用いただいておりますので、私よりも当社サービスにお詳しい方々ですが、今後も全社的にご活用いただけるよう、支援させていただきます。

全社員にアセスメントを実施し、ポテンシャルやコンピテンシーの客観的情報をデータベース化。
あらゆる人事施策にアセスメント情報を活用している、理想科学工業の取り組みを紹介します。

※本取材は2021年3月に行いました。ご担当者の役職およびインタビュー内容は取材時のものです。

理想科学工業株式会社

事業内容

高速カラープリンターオルフィス、デジタル印刷機リソグラフのハード及び関連機器、消耗品の開発・生産・販売・保守を中心としたプリントワークソリューション

業種

機械製造業

従業員数

1,750名〔グループ全体 3,480名〕(2020年9月30日現在)

インタビューを受けていただいた方

小野 葉月 様

コーポレート本部 人事部 人事企画課 課長

インタビューの要約

人材情報に客観的な視点を取り入れるため、全社員にアセスメント(万華鏡30)を実施し、コンピテンシーやポテンシャルの情報をデータベース化するプロジェクトが発足。
全社員のコンピテンシーやポテンシャルの情報は、「プロフィールシート」として人事システム上で管理。海外マネジャー候補者プールや次世代リーダー候補者プールの作成、選抜型研修参加者の選定など、あらゆる人事施策にアセスメント結果を参考情報として活用。
今後実施したいことは、コンピテンシーとパフォーマンスに加えビジネススキルを加味した3軸での人材配置と、「スクリレ」をはじめとしたスタートアッププロジェクトへのメンバー選定にアセスメントを活用すること。

「人が人を評価する時のバイアス」を是正するため、 全社員のポテンシャル情報をデータベース化したい。

私は直販営業として入社し、営業支援スタッフ、広報、開発と様々な部門を経て、人事部に来ました。人事部では人事企画課長として着任し、人事課題を解決するための施策に着手しました。その中の一つである「全社員にアセスメントを実施し、ポテンシャル情報をデータベース化する」施策は着任後数か月で実施しました。当時、様々な人事上の課題(部長候補者の可視化など)がありましたが、課題の根本的な問題は、人が人を評価したり、登用したりするときに生じるバイアスを最小限に抑えなければならないというものでした。人が人を評価する際には、恣意的な判断や認知による歪みが必ず生じるので、それだけに頼るとどうしても不公平感が出てしまいます。人材評価を客観的に行うためには、アセスメント情報を活用する必要があります。アセスメント情報100%でもなければ、人の目100%でもない、自社にとってちょうどよいバランスに調整して、人材を評価し、育成することを目指しました。

「万華鏡30」の全社員受検を実施。

この考え方に基づき、当社の役員含め、全社員がパーソナリティアセスメントOPQ「万華鏡30」を受検しました。受検結果は賞与評価とは関係がないこと、受検結果による不利益はないことを説明して実施しましたので、社内からの否定的な反応はありませんでした。万華鏡30のフィードバック機能を使って、受検後すぐに自分の結果を見られるようにしました。今でも新入社員や中途入社社員にアセスメントを実施して、全社員のデータを維持しています。

全社員が受検した後、日本エス・エイチ・エルに職種別・階層別に社員のコンピテンシーとパーソナリティの傾向を分析してもらいました。データ分析の結果と自社のイメージには乖離がなく、納得感をもって受け入れることができました。たとえば営業職におけるハイパフォーマーの傾向なども、他社と異なる当社の事業環境が表れているな、という発見がありました。

「万華鏡30」の全社員受検を実施。

人事システム上でプロフィールシートとして管理されるほか、 本部ごとの人事施策の参考情報に。

万華鏡30の結果は、人事システム上にプロフィールシートとして格納されています。プロフィールシートには、顔写真、個人情報異動履歴、研修履歴などの人事データ、万華鏡30の結果(マネジャーポテンシャル、プロフェッショナルポテンシャル、アントレプレナーポテンシャル、チームタイプ)等が載っています。プロフィールシートは、役員とHR部門の部長、人事部の一部の社員にしか公開されていません。この結果は、選抜研修の参加者選定、海外マネジャーのプールの作成、次世代リーダー育成のための選抜などの参考にしており、人事場面で活用されています。
また、万華鏡30の結果は、各本部のHRスタッフのミーティングの中でもご説明しており、本部内での登用や異動の際などに、適宜参考情報として活用されています。

人事部が主催した、選抜型の女性管理職育成プログラム「エンカレッジ研修」。

万華鏡30の活用方法のうち、人事部で主催した研修についてご紹介します。女性活躍推進の一環として、「エンカレッジ研修」という、女性の非管理職者を対象にした選抜型の研修を、過去に2度実施しました。参加者候補は、万華鏡30のマネジャーポテンシャル得点とパフォーマンス評価点の2つの基準で選定しました。人事部が選出した参加者候補をベースに各本部が参加者を決定しました。

この研修の特徴は体験型という点です。自分が企画したプロジェクトを現場でやってみるというのがメインプログラムです。たとえば、自分の関わっている業務の改善プロジェクトを立ち上げ、プロジェクトリーダーとして業務改善を主導しました。研修で集まる時は、プロジェクトの情報共有、参加者間で相談や相互のアドバイスを行いました。期間は約2年間。比較的若い参加者や希望者には現職の女性管理職等がメンターとしてつき、月1回程度のミーティングを行いました。 実際に、参加者数名がマネジャーに登用されました。万華鏡30を用いてマネジャーポテンシャルを勘案した選抜を行ったことで、パフォーマンス評価だけの選抜よりも予測精度が上がったと思っています。

今後は、より効果的な人材配置を行うために、コンピテンシーとパフォーマンスだけでなく、ビジネススキルを取り込んだ3軸を人材情報として活用していきたいです。コンピテンシーとスキルが一部関連する部分もあると思いますが、基本的なビジネススキルをいくつか柱にして整理し、人材配置を行う必要性を感じています。

もう一点は、人間同士の相性に着目して、シナジーを生むチームの形成を行いたいと思っています。当社は新規事業「スクリレ」を立ち上げ、今年の4月よりサービスを開始します。このようなスタートアップの事業を、どのようなメンバーに任せるかの参考情報として、人材データを使いたいと考えています。また、各職務に適した人材を登用するだけではなく、メンバー同士のシナジー効果をデータで予測できるといいですね。

日本エス・エイチ・エルには、万華鏡30だけではなく、適宜いろいろなサービスをご提供いただいています。今後も何か当社に適したアセスメントツールがあれば、ぜひご紹介いただければと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 マーケティング課 課長

水上 加奈子

まだタレントマネジメントという言葉があまり一般的ではなかった7年前、当時の人事課題をご相談いただき、全社員のアセスメント受検プロジェクトをご提案、実施することになりました。背景には、事業環境の変化による危機感と今いる従業員の方のパフォーマンスを最大限に生かしたいという強い想いがあったと記憶しています。役員の方々を始め、全従業員の方にご協力をいただき、様々な観点で分析を行い、私自身も大変勉強になりました。一過性のプロジェクトとして終わらず、7年たった今もアセスメントデータの価値と意味を適切に理解し、様々な場面で継続してご活用いただいていることを、何よりも嬉しく思います。今後も、理想科学工業の様々な人事施策の力になれるよう、精一杯支援を行ってまいります。

オフィスオートメーションからデジタルサービスの会社へと変革を続けるリコー。
なかでも新規事業創造をミッションとする組織のチーム作りに科学的な知見を活用すべく、調査研究に取り組みました。

※本取材は2023年10月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社リコー

事業内容

デジタルサービス、印刷および画像ソリューションの提供

業種

電機機器

従業員数

81,017名(連結、2023年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方

入佐 孝宏 様
稲井 麻貴 様

株式会社リコー
コーポレート上席執行役員 、リコーデジタルサービスビジネスユニット プレジデント、前 リコーフューチャーズビジネスユニット プレジデント (写真左)
リコーフューチャーズビジネスユニット インキュベーションセンター 事業創造室 BRグループ リーダー、HRBP長 (写真右)

インタビューの要約

デジタルサービスの会社へ変革を進めるリコーは、カンパニー制への移行に際して新規事業創造を組織的に行う「リコーフューチャーズ(RFS)」ビジネスユニットを設けた。
RFSの8つの事業は事業開発の進捗が異なり、また、リーダーのキャリア・人物タイプもそれぞれに特徴がある。組織能力を最大化する、リーダーを中心とするチーム編成への問題意識を持った。
リーダーのタイプによって組織がどのような影響を受けるかをパーソナリティ検査結果とエンゲージメントサーベイスコアを用いて調査した。
パーソナリティ検査結果は「顧客価値の創造をリードする人材・事業創造型のリーダー」としてポテンシャルの高い人材を発掘する際に役立てている。

社会課題を解決する新規事業を生み出す組織、リコーフューチャーズ

リコーは2020年にデジタルサービスの会社への変革を宣言し、2021年には経営機構をカンパニー制へ移行させるとともに、人事面ではジョブ型人事制度の導入を決定しました。現在、グループ本部と5つのビジネスユニットがあり、各ビジネスユニットが事業企画・商品企画から開発設計・生産・販売まで一気通貫した機能を担うなかで自立的にビジネスを運営しています。人事機能においてもHRBPとしてそれぞれのビジネスユニットに所属しているメンバーがいます。

リコーフューチャーズビジネスユニットは、リコーの強みである独自の技術を活用したイノベーションを通じて、新規事業を実現させつつ社会課題を解決していく組織です。現在8つの新規事業を手掛けています。もともとリコーには新しいことに取り組む風土があり、各々で活動をしていました。これら新規事業のうちの8つをひとつのビジネスユニットのなかで運営することで、ポートフォリオマネジメントを進めています。各事業の期待値や事業進捗に応じて、予算含めた投資のメリハリをつけ、事業開発に関する厳しい議論を正しく行うことができるようになりました。

社会課題を解決する新規事業を生み出す組織、リコーフューチャーズ

チームの能力を最大化するメンバーの組み合わせを科学的に検討する

8つの事業を見ていると、各チームの特徴が出てきます。例えば、コミュニケーションが得意なリーダーのチームはまとまっているけれどもアイデアが生まれにくい、かたやクリアな世界観を表現することができるリーダーのチームはまとまりが欠けているなど。これらのチームをマージすることが出来たら強力なチームになるだろうと常々考えておりました。

また、新規事業を0から1にする段階と、1から10にする段階とでは求められるリーダーシップが異なるのではないか、またリーダーが必要な経験や能力を備えていない場合には、リーダー及びリーダーを支えるメンバーのチーミングによって補う必要があるのでは、とも考えました。加えて新規事業は未経験の領域に挑むため、経験だけではなく各個人の資質も重要な要素になります。

どのようなメンバーの組み合わせであればチームの能力を最大化させられるか思索しているなかで、別のプロジェクトでリコー国内従業員約3万人を対象に実施したエス・エイチ・エルの パーソナリティ検査万華鏡30のデータを活用できないかと思い立ちました。各事業センターのリーダー数名の万華鏡30を詳しく解説していただいたところ自分が経験を通じて培った「人への見立て」と符合しており、感覚的ではなく科学的に人の資質は捉えられるだろうと確信しました。

リーダータイプとチームのエンゲージメントの関係性を明らかにする

社員直属上司である課長層とその1つ上の階層である室長層の社員の万華鏡30の結果データと2021年に実施したエンゲージメントサーベイの組織別のスコアとを用いて、統計分析を行いました。パーソナリティ検査結果からリーダーのタイプを3つに分類し、室長層と課長層のリーダーのタイプの組み合わせごとに組織のエンゲージメントサーベイスコアにどのような傾向がみられるかを確認しました。

組合せの数(対象となる組織数)が少ないため引き続き検証が必要ですが、大きく2点の発見がありました。一つは室長と課長がどちらも“ひっぱり型リーダー”(メンバーの競争心に刺激を与え、目標達成に向けてチームを引っ張る)の場合、仕事環境、具体的には人間関係の満足度が低くなる傾向があること。この組み合わせはできれば避けたほうがいいだろうと考えられます。もう一つは、同じタイプのリーダー同士で構成される組織の場合は、リーダー・経営層への信頼が低下する傾向があることでした。

調査研究の結果は、個人的な経験や感覚とも符合しました。例えば私(入佐様)はチームタイプの“アイデアマン”と“まとめ型リーダー”の傾向が強く出ており、ときに歯止めが効きづらくなるとも自認しておりますため、リコーフューチャーズの責任者となるにあたっては、私に苦言を呈することができる人材を私のパートナーに選びました。彼の万華鏡30の結果をみると、私の結果とちょうど真逆でした。やはり資質は科学的に分析することができると考えています。

「顧客価値の創造をリードする人材・事業創造型のリーダー」としてポテンシャルの高い人材を発掘するため、私(入佐様)が現在担当しているリコーデジタルサービスビジネスユニット(RDS)では結果を主に二つの場面で使用しています。一つは既にあるサクセッションプランの中でサクセッサーとなっている人材の資質を改めて確認する場面。もう一つは、社内公募で募集しているポジションによっては万華鏡30の結果を面談結果と合わせてみて、適性を判断する場面です。全社的にシステマチックな活用はまだできていません。

私(入佐様)はいくつかのアセスメントを受けていますが、人物タイプを見極めるには万華鏡30が一番適切と感じています。エス・エイチ・エルグループが持つ最新のアセスメントにも興味があり、実験的な取り組みも含め今後も積極的にご支援いただければと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

重野 達也

 新規事業創造において”個”に焦点を当てる研究には多くの課題が残っています。そのようななかで、今回の研究とその結果の活用は、リーダーの組合せから新規事業創造を捉えようとする新たな試みでした。リーダーのパートナーを誰にするかによって、組織のエンゲージメントスコアは大きく変わります。エンゲージメントスコアが組織の強さと活性度を表しているとすれば、リーダーの組み合わせは極めて重要な人事的意思決定となります。今回の研究から、人の組み合わせと事業創造の関係についての貴重な知見を得ることができました。今後も実験的な取り組みを行いつつ、リコー様の更なる発展に向け尽力致します。

導入事例

「自分に合ったスタイル」での成長を促す、日産自動車の販売会社店長育成戦略。

「自分に合ったスタイル」での成長を促す、日産自動車の販売会社店長育成戦略。

販売会社の優秀店長像をアセスメントのデータ分析とインタビュー調査によって明らかにした日産自動車。
販売会社の店長を対象としたタレントマネジメントの取り組みを紹介します。

※本取材は2020年12月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

日産自動車株式会社

事業内容

自動車の製造、販売および関連事業

業種

自動車製造業

従業員数

22,717名(単独)(2020年3月現在) 

インタビューを受けていただいた方

岩村令子 様

日産自動車株式会社
日本戦略企画本部 中期戦略企画部/プログラムダイレクターオフィス 主担

インタビューの要約

販売会社の採用・育成方針の策定に役立てることを目的に、販売会社の優秀な店長像を明らかにするためのアセスメントおよびインタビュー調査を実施した。
全国の販売店店長約1300名がアセスメント(万華鏡30)を受検し、クラスター分析によって4タイプの異なる強みを持った優秀店長像が特定された。
各タイプの優秀店長の代表者数名に対面でインタビューを実施し、それぞれの強みを発揮するために日々実施していることなどを詳細にヒアリングした。
分析・インタビュー結果を各販売会社に報告し、採用・育成・登用の資料として活用してもらった。また、日産自動車本体においても、今後の販売会社への採用・育成支援の方針が得られた。

販売会社の優秀な店長像を特定し、採用や育成に生かすため、 アセスメントおよびインタビュー調査のプロジェクトが発足。

私は中期戦略企画部に所属しています。販売会社の採用や育成、教育を担当する部署は別にありますが、今回のプロジェクトは中長期的な目線で、販売会社の優秀店長とはどういう人材なのかを科学的な手法で明らかにし、それを中長期の採用育成に活かしていこうという、当時の役員の問題意識からスタートしました。

販売会社によって店舗数には違いがあります。数店舗を運営している販売会社であれば、それぞれの店長の特徴を把握できますが、数百店舗を有するような販売会社では、個々の店長に関して経営層が詳細な情報を把握することは困難です。目まぐるしくビジネス環境が変化する中で、今後どういった店長が求められるかを検討したいが、販売会社1社では横断的な分析は難しく、地域的な偏りもある。販売会社からこのような声が挙がっていたことを受け、プロジェクトが発足しました。

販売会社の優秀な店長像を特定し、採用や育成に生かすため、 アセスメントおよびインタビュー調査のプロジェクトが発足。

約1300名の店長の特徴をクラスター分析して見えてきた、複数の優秀店長像。

最初に考えたのは、私には人事系のバックグラウンドがないので、アセスメントに関しては、プロフェッショナルの力を借りる必要があるということでした。その上で、複数社にお声がけをしましたが、日本エス・エイチ・エルを選んだ一番の理由は、シンプルな調査を低コストで受けられるという、続けやすさ。今回は日産自動車が主体で調査を行うが、今後販売会社主体でアセスメントを継続する可能性を考えたときに、販売会社にとって続けやすいプライスであることは必須条件でした。

約1300名の店長にアセスメント(万華鏡30)を実施し、優秀者のタイプを抽出するクラスター分析を行いましたが、まず何をもって優秀者と定義するかが最初に議論になりました。たとえば、優秀な店長でも、困難な状況にある店舗の立て直しを担っている方は、業績が低いです。逆に立地にめぐまれていたり、部下に優秀な人材がいたりすると、店長の実力は隠れてしまいます。ですので、今回は店舗の売上台数等の数値指標に加えて、役員や社長から見た優秀な店長は誰なのか、という定性情報もアンケートで拾い上げていきました。その際は、「どういう観点で優秀としたか」という理由も書いていただいたんですが、育成に長けているとか、とにかくきちんと台数を売り上げるとか、台数だけじゃなく収益管理ができるとか、様々な観点が挙げられました。最初の目的が優秀な店長のタイプ分類だったのですが、店長は個々人が自身の強みやバックグラウンドを活かして仕事をしている個人芸のような部分があり、日産自動車社内でも「タイプ分類は相当難しいぞ」という声がありました。不安を抱えながらのスタートでしたが、日本エス・エイチ・エルの担当者と二人三脚で分析を進めていきました。

各優秀タイプを代表する店長に、インタビューを実施。 現場にとってわかりやすい人材像へと落とし込む。

クラスター分析によって、最終的に抽出された優秀店長のタイプは、異なる強みをもつ独立した3タイプと、ハイブリッド型1タイプの、計4タイプ。かつては、一つの優秀な店長像があって、それを目指せと言うのが基本的な指針だったと理解しています。今回の分析は、「優秀なタイプというのは複数あり、まずはどういうマネジメントの仕方が自分に合っているのかを選び取りながら成長していきましょう。その次は、さらにバランスの取れたこの店長像を目指しましょう」と、だんだんレベルアップするような考え方を可能にしています。それは今までとは異なる新しい育成の考え方でした。

各優秀タイプを代表する店長に、インタビューを実施。 現場にとってわかりやすい人材像へと落とし込む。

その後、ロジカルな分析結果を各タイプの優秀店長像に落としこんでいく際には、実際にそれぞれのタイプに当てはまる優秀店長数名にインタビューを繰り返しながら、ペルソナ的に人材像を具体化していきました。ヒアリングの内容は、その人が強みにしているコンピテンシーはどういう経緯で組み立てられてきたのかを探るキャリアの経緯や、過去に一番心に響いたこと、そのコンピテンシーを日常的に発揮する方法を探るために、一日の仕事の流れや、気を付けていることなどを全て聞いていきました。このヒアリングの結果は冊子にして、最終的に販売会社に配布しました。優秀な店長は毎日何をしているのか、どれくらいスタッフの管理に力を入れているのかをまとめた資料なので、気に入ってくださった販売会社は各店長に「これを読んでおきなさい」と配布してくれたそうです。優秀な店長の取り組みは本当に素晴らしく、私もヒアリングをしていて勉強になりました。

全国にいる販売会社店長の約半数をカバーした大規模調査で、 新しい店長像を見出せた。

その後、販売会社を回って、個々の店長のタイプ分類と、販売会社ごとの店長のタイプ構成比などを報告していきました。最初、アセスメント結果に納得していなかった販売会社の社長にも直接話して、「気になった人、これは違うと思った人を教えてください」と一緒に読み解いていき、各タイプについて説明すると、結果に対する信頼が生まれて、「確かにうちの会社はこういうタイプが多いかもね」と納得してくれました。また、各タイプの人財イメージを表すのに著名なスポーツチーム監督の例を挙げたり、現場で活用しやすいように、腹落ちしやすいストーリーづけをすることを意識しました。
結果の活用法についても、会社ごとに様々なご意見がありました。店長へのフィードバック面談を普段から行っている会社では、フィードバックの際にこのアセスメント結果も一緒に使っていこうという声がありました。また、役員をどんなタイプの人財から選ぶか、タイプ構成比を見ながら登用を考える会社もありました。さらに、販売会社によってあるタイプの店長が非常に多い・少ないといった傾向も明らかになったので、より望ましい方向にカルチャーを変えていこうとする試みもあります。このような取り組みは販売会社ごとに行っていただき、日産自動車サイドでは、今度の店長の育成における基本のコンピテンシーを作る材料にしようとしています。

このプロジェクトの成果は、販売会社が自社の店長のタイプを把握する客観的な資料が得られたことです。「あの店長ってこういうタイプだよね」と、なんとなく思っていたことを裏付けてくれる資料になりますし、逆に「あれ、実はこういう側面があるのかな」といった、一人一人の店長をより深く理解するための材料になりました。日産自動車としても、これまで優秀な店長の形をきちんと把握していませんでした。今回の調査は、全国にいる店長の半数以上をカバーする大規模なものですので、日産における新しい店長の人材像を見出し、今後の販売会社支援の材料になったかと思います。その知見が今、販売会社の育成を支援しているチームに引き継がれています。

日本エス・エイチ・エルのサービスを利用して良かった点ですが、まずアセスメントの一人あたりのコストが安くて、かつ豊富に実績があり、分析の結果にも独自の知見があって信頼性があるところ。もう一つは、データ分析の過程で何度も通っていただいて、一緒に分析の結果を見ながら、このクラスター分類はピンと来ないとか、何点をクラスター分類の閾値にするかといった、細かい点を相談させていただけたことです。定性調査のインタビューでも、全国各地の店長に話を聞きながら迅速にレポートをまとめていただいて、我々が資料を作成する上でもプロの視点でのご指摘やご意見を頂けたのはありがたかったです。ある意味、二人三脚でプロジェクトを進められたのが助かりました。全国津々浦々にわたる調査となり、大変だったと思いますが、すごく感謝しています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

佐藤 有紀

「優秀な店長にはいくつかのタイプがあると思っている。各店長が、自分に似たタイプの優秀者をお手本にして、自分の強みを活かしながら育っていけるような育成支援をしたい。」最初にそのようなご相談を頂いたときに、その自由で新しい発想に心が躍りました。
「個性を活かした活躍」が推奨される昨今においても、教育の個別化は進んでいるとは言いがたく、依然として画一的な優秀さを目指して努力されている方が多いのではないでしょうか。日産自動車の取り組みは、個々人がより自分らしいスタイルで成長でき、自分の強みで勝負できる、新しい育成のありかたを示すモデルケースになると思っております。私どもも、二人三脚でこのようなクリエイティブな挑戦ができたことを、大変嬉しく思います。誠にありがとうございました。

導入事例

工場設備保全員の安全管理にアセスメントを活用。日産自動車横浜工場の挑戦。

工場設備保全員の安全管理にアセスメントを活用。日産自動車横浜工場の挑戦。

工場設備の保全作業で発生しうる災害。
保全員の行動傾向から潜在的なリスクを予測し、マネジメントや指導に活用している事例をご紹介します。

※本取材は2022年4月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

日産自動車株式会社

事業内容

自動車の製造、販売および関連事業

業種

自動車製造業

従業員数

22,825名(単独) 

インタビューを受けていただいた方

淡路秀夫 様

日産自動車株式会社
横浜工場 第一製造部 エンジン課 安全健康管理係長

インタビューの要約

工場設備の保全作業で発生する災害について、保全員の安全にかかわる行動傾向を特定するためにアセスメントを活用することを検討。
保全員にパーソナリティ検査OPQを実施し、実際の災害事例と当事者のパーソナリティを照らし合わせたところ、結果と行動事例が一致。潜在的に事故につながる可能性のある行動傾向を抽出することができた。
保全員のアセスメントの結果を、現場の工長(監督者)に共有。潜在的なリスクを持つ行動傾向について理解の上、日々の指導に活かしてもらっている。
保全作業は共同で行われることから、今後はチーム編成にもアセスメントデータを応用したい。特に小集団における意思決定に、メンバーの組み合わせが与える影響を検討したい。

工場設備の保全作業で発生しうる災害。 保全員の安全を守るためにアセスメントを活用したい。

私が勤務する日産自動車横浜工場は、エンジン博物館・歴史資料館を備えた歴史ある工場で、当社の発祥の地でもあります。「全員の高い安全意識で、すべての災害を防止する」を基本理念に、エンジン・モーター・アクスル・サスペンションを主に生産しています。私は設備保全を担当する課に所属し、生産設備のメンテナンスを行う保全員の安全・衛生・健康の確保に努めています。

我々にとって、保全員の安全確保は重要課題となっています。設備の保全作業は、多くが突発的に発生する非定常作業であり、「故障が多岐にわたり」「経験が少ない中で」「早期復旧」のための修理を行わなければならず、その際の安全確保には個人の資質が大きく影響します。これまでは当社独自に開発した個人安全資質評価表を用いて個人の弱点を把握し、個別の安全活動目標を設定の上フォローアップを行う活動に取り組んできました。

しかしながら、「潜在的な危険敢行性」に起因するリスクを伴う危険作業は後を絶たず、これまでの評価表ではとらえられない個人の危険に対する資質を把握する必要性が生じました。危険敢行性とは、「危険を感じ取っていても敢えてその危険を避けようとせず、危険事態に入り込んでいく性質」を指します。このような特徴をとらえることができるアセスメントツールを模索し、当社人事部に相談したところ、日本エス・エイチ・エルを紹介されました。

保全員にパーソナリティ検査を実施。 事故事例と当事者の特徴を照らし合わせると、背景が見えてきた。

日本エス・エイチ・エルのパーソナリティ検査OPQを課員全員に実施し、担当コンサルタントに相談したところ、「潜在的な危険敢行性」を示す特徴を得点で表すことができました。実際に、これまで災害要因として挙げられた行動事例と特徴を重ね合わせた結果、行動事例と得点が合致した結果を得ることができました。
また、複数の災害事例と当事者のパーソナリティから、事故につながりうる行動傾向の知見を見出すケーススタディも実施したところ、危険敢行性とは別に、「違和感を覚えても口に出せない、助けを求められない」というような特徴も、状況によっては事故につながるケースがありました。状況と個人の特徴を照らしあわせることで、事故の背景がより明確にわかるようになり、適切な指導に繋げられるようになりました。

災害当事者と似た特徴を持つメンバーを抽出すると、同様のリスクを抱えると思われる集団を特定することができます。個人が持つ、定量化できない「あやうさ」を、明確に示してくれるのがパーソナリティ検査だと感じます。

保全員にパーソナリティ検査を実施。 事故事例と当事者の特徴を照らし合わせると、背景が見えてきた。

余裕がない時にとっさの行動に表れるのが、パーソナリティ。 アセスメント結果を監督者に共有し、リスクマネジメントを行う。

現在は、パーソナリティのデータから様々な因子を組み合わせ、危険行動につながる特徴をもつ可能性の高い方を絞り込み、監督者と共有し、マネジメントや教育に活用しています。心理学分野の専門性がないため時間をかけながらですが、日本エス・エイチ・エルのマニュアルと担当コンサルタントのアドバイスを頼りに進めています。

まだまだ手探りの面もありますが、過去発生した災害事例と個人の行動特性を照らし合わせることで、何故あのような行動をとってしまったのか、という深堀りができるようになりました。災害発生時は当事者も反省しますが、反省だけでは次にはつながらないことが多いです。「このような性格であるがゆえに、このような状況でこのような判断をしてしまった」という背景まで理解することで、監督者からも適切な声掛けや指導ができるのではないかと思っています。特に、余裕がない時や急いでいる時、その人が持つ傾向が顕著に表れます。アセスメントはこうした潜在的なリスクを把握し、適切なマネジメントに役立てることができるものだと思います。

アセスメントの結果は、チーム体制変更時にも活用しています。チームメンバーのコンピテンシーポテンシャルデータを分析することで、各チーム全体としての強みや弱みをとらえることができるようになり、体制変更に伴う各チームの能力変化も把握することができるようになりました。

他事業所保全課においても同様の問題意識がありますので、全事業所の保全安全係長が定期的に集まる会議の場で本事例紹介を行っています。今後は、保全作業が基本的に共同作業で行われることから、小集団における危険メカニズムを分析し、作業者の組み合わせに関するリスク分析についても活用したいと思っています。最終的なねらいは、個人の組み合わせによりチームのパフォーマンスを向上させ、かつ安全に作業できる小集団を意図的に編成できることです。

人事系のコンサルティングを利用するのは初めてでしたが、日本エス・エイチ・エルはコストが手頃であることに加え、担当コンサルタントが包み隠さず丁寧な説明をしてくださるのがありがたかったです。今後こうした安全に関する事例がもっと出てくるといいですね。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング2課 主任

清水智昭

今回のお取組みはパーソナリティ検査OPQの新たな可能性を見出した稀有な好例です。従来のパーソナリティ検査は実績や上司評価などの「パフォーマンス」を予測するツールとしての活用でしたが、「危険行動」を予測するという新たな活用に、パーソナリティ検査OPQの活用の幅広さに気づかされました。
人事経験のない生粋の技術者である淡路様が「潜在的な危険敢行性」をアセスメントツールから見出そうとなされた本事例は、検証の切り口や着眼点が素晴らしく、多角的で実際に発生した事象に基づいた分析は納得感がありました。
加えて本件の課題は、メーカーの共通課題であると改めて感じました。工場における災害は命にかかわる大惨事につながる危険性を持ちあわせています。誰もが安全に働くことができる、そんな当たり前のことをアセスメントを通じてこれからもご支援させていただきます。

採用基準の作成から全社員のポテンシャルを活かす適正配置まで、「人材マップ」を用いた森永乳業のタレントマネジメントをご紹介します。

※本取材は2020年8月に実施しました。インタビュー内容は取材時のものです。

森永乳業株式会社

事業内容

牛乳、乳製品、アイスクリーム、飲料その他の食品等の製造、販売

業種

食品製造業

従業員数

3,340名(連結従業員数 6,303名)(2020年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方

荒木 久宜 様

森永乳業株式会社
コーポレート本部 人財部人財戦略グループ マネジャー

インタビューの要約

全社員にタレントアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を実施して、採用基準の作成と人材の適正配置を行った。
4象限の人材マップを使って各職種のハイパフォーマーの人材タイプとその比率をとらえ、採用基準、職務適性基準を作成した。基準に基づく採用と配属を実施した。
社員に対してアセスメントの結果をフィードバックし、自分の適性とキャリアについて考える機会を与えると、従来あまり見られなかった他部門への異動希望が増加した。実際に異動した人たちはエンゲージメントが高く、活動が活性化している。

採用基準の作成から始まり、全体の最適配置へ。

私の初期配属は、リテール営業課で、スーパーやコンビニエンスストアへの営業を担当していました。8年間営業を経験した後、人事に異動し新卒採用を3年、社内昇格などを3年担当しました。そこから採用のチーフ兼人材配置担当・ローテーション担当となり、今は人事戦略、人事制度、人件費コントロール等を行っています。

タレントマネジメントのスタートは、まず採用からでした。既存社員にアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を実施し、各職種で「どのような人材がハイパフォーマーとなるか」という分析を行って、それを採用に活かしたいと思いました。社員のアセスメントデータが手に入ると欲が出てきまして、「採用に使うのだけではもったない」となって。OPQの結果をもとに、社員本人に、自分の性格や職務適性を理解してもらい、「こういう仕事が向いているんじゃないか」「こういうチームで働きたい」という前向きな気持ちを持ってもらう機会になればいいと思って、全社員にOPQを実施することにしました。

採用基準の作成から始まり、全体の最適配置へ。

アセスメント結果を、受検者本人が見てわかりやすいことが一番のポイント。

OPQの結果を本人に渡し、月1回の上司面談の際に使ってもらう任意の仕組みを導入しました。年1回のキャリア希望調査時にOPQを受けてもらいます。キャリア希望調査では、5~10年先に何をしたいのか、その前に経験したい仕事は何か、という質問をして自分のキャリアについて考えてもらいます。それに併せて自分の適性について考えてみてくださいとOPQの受検案内をしました。

アセスメントについては他社も検討しましたが、ずっと採用で使っているOPQを信頼していましたし、このプロジェクトでは本人がキャリアを考える上で使いやすい結果リポートが必要と考えたため、OPQで行うことを決めました。OPQの万華鏡リポートは、アセスメント結果を見慣れていない一般の社員にもわかりやすく、今回の目的に合いそうだと判断しました。

取得したアセスメントデータを分析しようとなったときに、社内ではどうにもならないので、日本エス・エイチ・エルの担当コンサルタントに、適切な分析方法について相談しました。そのときに提案されたのが4象限のマップ上に人材をプロットするという方法。チーム編成の検討に使えるということだったので、やってみたいなと思いました。以前、アセスメントデータを使って部門ごとに得点の平均値を算出したことがありました。部門全体の傾向はわかりましたが、今回は個人の特徴をより正確に把握するため4象限へのマッピングをやりたいと思ったんです。

4象限で人材を分けると、社員にもいろいろなタイプの人が存在するということがわかります。4つのタイプが明示されたことで、経営陣も管理部門であれば「堅実頭脳タイプ」、営業なら「柔軟頭脳タイプ」と検討できるようになり、配属先にもなぜ配属したのかをより根拠をもって説明ができるようになりました。今後はチームを活性化させるための配属や、チームに適合させるための配属といった観点で、活用できないかと考えています。

アセスメント結果を本人にフィードバックすることで、 自己理解が促進され、異部門へのチャレンジが増加。

4象限の各象限に目標採用数を設定することで、人材の多様性が確保でき、新卒でスタッフ部門に適性がある人材も採用できるようになりました。事務系採用は営業職を中心に考えていて、とにかくヴァイタリティが高い人がいいという方針が以前はありました。4象限で人材をとらえるようになってから、「堅実頭脳タイプ」に管理部門のハイパフォーマーが多くいることがわかり、内定者にOPQの結果を示し、「あなたのこういう特徴が活かせるから」と説明して、納得してもらった上で管理部門に配属できるようになりました。また以前は営業のハイパフォーマーをマーケティング部門へ異動させることが多くありましたが、今は新入社員を配属することができるようになりました。去年、OPQの結果からマーケティング適性が高いと判断した学生をマーケティング部門に配属したところ現場から好評を得たという成功事例がありました。こうした取り組みは今後もやっていきます。

また、アセスメント結果を本人にフィードバックしたことで部門を超えた異動を希望する人が増えました。これまでのジョブローテーションは部門内での異動がほとんどでしたが、アセスメント結果から自分の職務適性や組織適性、強みや弱みを知り、自分の可能性に気づく人が増えたのでしょう。その年から、「自分は営業をずっとやってきたけど、マーケティングの仕事の方が向いているのではないか。」と上司に相談するようなケースが出てきました。正確に集計していませんが、こうした異動希望が、10ポイントくらい増えたのではないかと思いますし、実際に異動した方もいます。そういう人たちは異動後もモチベーションが高く、現場にすぐ馴染んで新しいことをやろうとします。このような人が増えることによって組織の活性化が進むと感じます。今後は、FA制度とか社内公募をやっていきたいと構想しています。

今後の課題は保有している社員データを活かしたタレントマネジメント施策を行うこと。まずはチーム編成、配置、ジョブローテーションからやっていきます。将来は、各社員が自分の特徴を理解した上で、どういう仕事をしたいか、そのためにどういう人が必要かを考え、自分で声をあげてチームを立ち上げることができるような会社にしたいと思います。

日本エス・エイチ・エルの良い点は、こちらの要望に対して必ずプラスアルファの提案をしてくれるところ。構想が固まっていない状態でのディスカッションにも根気よく付き合ってくれますし、結論がでないまま終了しても次の機会には必ず提案してくれます。ふと思いついたアイデアでも相談してみようかなと思えますし、一緒にやっていて楽しいですね。多くの企業や業界と取引されているので、異業種の情報をいただける点も助かっています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティングチーム 副部長

村井 泰裕

採用だけでなく、タレントマネジメントでも森永乳業のお役に立てないかと考えておりました。そんな時、採用の人財要件定義のため全社員アセスメントとデータ分析が決まり、タレントマネジメントが動き始める予感がしました。
このプロジェクトでは、誰が見てもわかりやすく活用しやすい人材データ分析を提供したいと考え、職種ごとに4象限のマッピングを行いました。この分析結果が人財部の意思決定と社員の自己理解のお役に立てて、とてもうれしかったです。また、プロジェクトミーティングでの荒木さんとの対話は、私にとって楽しく有意義な時間でした。
これからも、森永乳業の組織生産性向上と社員の幸福のために、お力になれるよう努力してまいります。

三菱自動車工業では、キーポストのサクセッションプランを作成し、パフォーマンスとポテンシャルの両軸により人材を発掘、評価し、動機づけや研修などの次世代リーダー育成プログラムを実施しています。その全容をご紹介します。

※本取材は2021年3月に行いました。ご担当者の役職およびインタビュー内容は取材時のものです。

三菱自動車工業株式会社

事業内容

(1)自動車及びその構成部品、交換部品並びに付属品の開発、設計、製造、組立、売買、輸出入その他の取引業。
(2) 産業用エンジン等及びその構成部品、交換部品並びに付属品の開発、設計、製造、組立、売買、輸出入その他の取引業。
(3)中古自動車及びその構成部品並びに交換部品及び付属品の売買。
(4)計量器等の販売。
(5)損害保険及び自動車損害賠償保障法に基づく保険の代理業。
(6)金融業。
(7)前各号に付帯関連する事業。

業種

自動車製造業

従業員数

14,407人名〔連結 32,171名〕(2019年度末現在)

インタビューを受けていただいた方

有吉 晋作 様

三菱自動車工業株式会社
人事本部 人事戦略部 マネージャー(タレントマネジメント)

インタビューの要約

次世代リーダー人材の不足、育成における透明性や中長期的視点の欠如などの課題を背景に、アライアンスへの加入のタイミングでタレントマネジメントを開始。
タレントマネジメントの主体となる人事諮問委員会を設置、キーポストのサクセッションプランを作成、人材の評価を行うキャリアコーチなどを軸にした、次世代リーダー育成施策を実施。
今後実現したいのは、若手世代からリーダーが育つ土壌の整備と、各部門人材育成との連携により、将来のビジネスリーダー育成に取り組む、全社的なタレントマネジメント。

次世代リーダー人材の不足感を背景に、 アライアンスのタレントマネジメントに参画。

私は購買部門でのバイヤー業務、生産管理部門での生産計画・物流の業務を経験したあと、かねてより希望していた人事部に異動しました。工場の人事業務、本社での新卒採用のマネージャー業務を経て、現在は人事戦略部に在籍し、タレントマネジメント領域を担当しています。

タレントマネジメントが導入された当時、複数の課題がありました。一つ目は、将来の経営を担うリーダー人材の不足感。経営的に堅調でなかった時期もあり、やや受け身の判断をするリーダー層のスタンスが強くなっていました。二つ目が、優秀人材の囲い込み。人員管理を徹底する中で、各部門はパフォーマンスの高い優秀人材ほど抱え込む傾向にあり、育成が停滞する傾向がありました。三つ目は、人材育成における透明性の欠如。客観的なファクトに基づく人選ではなく、特定の上長が主観的にリーダーを選ぶような形で人材育成がされていました。四つ目が、中長期視点の欠如。短期的に成果を出せる人材をリーダーとして選出しており、リーダーとなってからの活躍ポテンシャルが加味されていませんでした。

これらの課題を背景に、2016年にはルノー・日産アライアンスに加入し、三菱自動車もアライアンスのタレントマネジメントに参画することになりました。アライアンスのパッケージでタレントマネジメントを導入できたこともあり、比較的短期間でスムーズな導入を果たしました。

ここからは、タレントマネジメントの具体的な導入施策を紹介します。

1.人事諮問委員会の発足

タレントマネジメント活動の主体となる、人事諮問委員会を発足しました。経営陣がメンバーで、そこにアドバイザーとしてキャリアコーチ、事務局として人事が参加します。人事諮問委員会では、後述のサクセッションプランを議論し、後任候補としてノミネートされた方を次世代リーダー候補人材として特定します。

2.サクセッションプランの作成

議論の土台となるサクセッションプランについて紹介します。当社は、経営上重要なポストをキーポストとして特定しています。このキーポストのサクセッションプランを、キャリアコーチと各部門のトップ、現任者が共同で作ります。キャリアコーチは、このサクセッションプラン作成にあたり、候補者と繰り返し面談を行って、人物の評価をします。社内だけでサクセッションプランを作成すると人材パイプラインが枯渇することもあるため、Buy(採用)、Borrow(出向)などによりパイプラインの充実化に努めています。

3.次世代リーダー候補人材の発掘

パフォーマンスとポテンシャルの両軸で評価します。ポテンシャルの評価の1つは、キャリアコーチとの日々の面談です。奥底にある志の高さなどの評価軸をもとに、5年以内にNext Postに就けるかどうかを基準にポテンシャルを評価していただきます。また、SHLのアセスメントもファクトデータとして活用し、英語などの必須能力も確認します。こうしたポテンシャルとパフォーマンスの両面で認定した人材に対し、施策を行っていきます。

4.経営陣とのクロスインタビュー

施策の一つに、経営陣と次世代リーダー候補人材のクロスインタビューがあります。これは一見地味に思われるかもしれませんが、私はもっとも効果的な施策の一つと考えています。タレントマネジメントを一から始めるなら、まずここから始めることをお勧めします。次世代リーダー候補人材の中でも厳選した方に対して、経営幹部との1on1の面談機会を提供します。最大の目的は、経営幹部に人材をモチベートしていただくこと。話題は、現在・過去の業務、修羅場経験、将来のプランなど様々ありますが、最終的には必ずEncourage(激励と、支援の約束)していただく点をお願いしています。このような地道な声掛けや、経営幹部と話す機会を得たという特別感は、モチベーション形成の面で非常に重要と捉えています。

5.各部門・各拠点への展開

三菱自動車本体の中でも部門ごとに諮問委員会、サクセッションプランを議論する場を作っていますが、同時に海外の各拠点にもキーポストのサクセッションプランを議論する委員会を設定しています。現在、ASEAN拠点を中心に人事諮問委員会を展開しています。まずは各拠点で完結するように委員会を開催していますが、今後は拠点間の人材交流や合同研修が実施できればと思います。タレマネは人材流動の比較的激しい海外の方がむしろ受け入れられやすくニーズも高いので、導入はスムーズに実施できています。

6.リーダーシップ・ディベロップメント・プログラム(LDP)の導入

リーダーシップ・ディベロップメント・プログラム(LDP)は、約半年間、計12日間の研修です。リーダー人材の基礎ビジネススキルやマインドセットの獲得を目的にしています。次世代リーダー候補人材やその候補者を中心に、部門・キャリアコーチの推薦によって、プログラム対象者を決定します。研修でのアクションラーニング、職場での実践をハイブリッドにしたプログラムです。経営層の課題認識やアセスメントの傾向を通じて見えてきた、当社のリーダー人材の弱みの部分を取り上げ、強化しています。研修の効果測定は難しいですが、短期的には研修で学びを得た項目のインプット状況を確認し、中長期的には今後この研修を通してリーダーがキーポストに任命されていくことが、研修成果の一つと考えています。

7.グローバル・キャリア・ディベロップメント・プログラム(GCDP)の導入

最後に、海外の短期派遣プログラムである、グローバル・キャリア・ディベロップメント・プログラム(GCDP)を紹介します。従来、海外拠点の現地語を学ぶ語学研修プログラムがありましたが、現地でのジョブと連動させた武者修行プログラムを加え、2020年度から新たに募集・選抜・派遣を行いました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、海外への渡航が限定されましたので、これから状況を見ながら実施数を増やしていく予定です。リーダー人材の属性として、キャリアの早期に海外経験をしている方は非常に多く、次世代リーダー候補人材の上位層では70%以上が海外赴任、駐在経験があります。経験の濃密さという観点で、リーダー育成に適しているプログラムと考えています。

導入後の課題と、潜在的な問題。

これらの施策の導入後、浮き彫りになった課題があります。まず、人材育成のための理想的なキャリアパスが実現しないことがありました。この点について掘り下げると、根本的にリーダーが育つ土壌ができていないという問題に行きつきます。優秀人材の抱え込みという課題もありますが、より日常のレベルまで踏み込むと、「(自身の)志は何か?」を社員に考えてもらう研修機会や、上司による日々の問いかけ、寄り添いも不足していたのではないかと思います。こうした環境が備わらないと、人材パイプラインが充実せず、リーダー育成が頭打ちになってしまうことが予想されます。

キャリアパスの実現のためには、上司と部下が相互に協力して高め合う環境を作り上げ、また各部門間でも人材の情報を共有し、現場での育成配置につなげてもらうなど、実態との乖離を埋めていく工夫が必要だと感じています。

今後は、一番下のジュニア世代から、全社でDevelopment Cultureを作ることがポイントだと考えています。まず新入社員~3年目あたりまでオンボーディングを行い、社会人の土台を作る。次のステップでは、事業部門においていずれかの専門性を身に付けることを目指し、高いパフォーマンスを発揮してもらう。その中から一部をマネジメント層に育て、さらに情熱を形成し高めたうえでビジネスリーダーを作り上げる、という育成の流れをイメージしています。

今後の展望としては、人材育成の道筋として部門のキャリアパスを充実させるべく、自動車メーカー特有のバリューチェーンを活かし、関係性の強い部門間での異動を仕組み化し、期限付きの異動やローテーションを整備することで、人材育成に寄与できればと考えています。他部署で人間関係を構築できる効果もあり、ストレッチアサインメントにも繋がりやすくなるはずです。また、管理職になってからのジョブローテーションは、組織のパフォーマンスを一時的に落としてしまうリスクもあるので、キャリア早期での育成目的異動を計画的に実施しておくことが組織開発面でも有効です。

その他にも、キャリア開発のPDCAを回す施策として、上司が部下を育てるためのスキル、例えばキャリア研修や1on1研修などを提供したいです。また、部門とのタレントレビューの機会をつくり、各部門にも人材の情報を共有することで、ストレッチアサインメント、ジョブローテーション等、部門の中での人材育成につなげていくことを考えています。

これから変革期を迎える自動車メーカーの中で、社会課題の解決に向けて新しい価値を提供できるリーダーの育成に貢献したいです。部門が10年先を見てビジネスを考えているなら、人事はさらにその先の20年先を見て人材育成のアシストをする必要があり、その点が人事の付加価値であり存在価値だと思いますので、そういう人事になりたいです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング2課 課長

横山 武史

多くの企業が次世代リーダー育成の重要性を認識していますが、それを仕組み化している企業は多くありません。三菱自動車工業はアライアンスのパッケージがあったとはいえ、異例の早さでタレントマネジメントを導入しました。私は三菱自動車工業にタレントマネジメント部が発足した2017年から本件の導入支援を担当させていただきました。この経験での学びは「まず始めてみることの大切さ」です。自社用に調整しながら速やかに導入し、今もなお改善を繰り返しています。
現在は、人材のポテンシャルを測定するアセスメントと、アセスメント結果をフィードバックするキャリアコーチのトレーニングをご提供しておりますが、これからは有吉さんのおっしゃる20年先を見据えたタレントマネジメントに貢献できるよう取り組んでまいります。

顧客や社会へ価値を提供するために、事業部主導で採用や育成を進めてきたメディアフォース。ビジネスの拡大に伴って生じた管理職不足などの人事課題に、全社的に取り組む人材開発プロジェクトが発足しました。本インタビューでは管理職の要件定義についてご紹介します。

※本取材は2023年3月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社メディアフォース

事業内容

システムインテグレーションサービス、Webシステム構築、汎用系システム構築、インフラ構築

業種

情報処理サービス

従業員数

208名(2023年4月1日現在)

インタビューを受けていただいた方

家喜 章平 様 / 上村 潤 様

株式会社メディアフォース
取締役 執行役員 (写真左)
業務管理本部 総務人事グループ 課長 (写真右)

インタビューの要約

業界未経験者に自社の価値観を伝えプロとして育成する人材戦略であったが、ビジネスの拡大により管理職が不足。他の人事課題への対処も含め、全社横断の人材開発プロジェクトが発足。
現在活躍している管理職の特徴をデータ分析から導き、さらに今後のビジネスの変化に対応すべく社長や事業部門責任者へのインタビューを行って、管理職要件を定義。
管理職の要件を採用基準に反映して運用している。今後本格的に開始する経験者採用でも活用する予定。
管理職候補生の識別と抜擢、部門間の異動の要否など、今後タレントマネジメント施策を検討していく上で今回作成した要件や分析結果を活用していく。

事業の成長によって人材育成のスピードアップが喫緊の課題に。

当社が業界の未経験者を採用してきた理由は、顧客や社会に貢献する手段としてシステムを開発するという自社の価値観を体現できる人材を自らの手で育成したいからです。しかし、ビジネスが従来の受託開発からソリューション型へ変容する中で、人材育成をさらに加速し、事業成長のスピードに合わせる必要が出てきました。 人材育成を強化したくても管理職の数が足りず、管理職不足を補うことが喫緊の課題となりました。

当社は人事権が事業部にあり、基本的に配属や異動、キャリア形成は事業部の権限で行っています。そのため部門の垣根を超えた情報共有が不足していたり、育成の状況が十分に把握できないといった、人事制度の運用について全社を横断的に統制することが不十分な状態でした。これらの問題を解決するため、育成に限らず、採用や人事制度に関しても改善のスピードを高めるべく、責任者をおいてしっかり取り組んでいく全社的な人材開発プロジェクトをスタートさせました。

事業の成長によって人材育成のスピードアップが喫緊の課題に。

手始めに感覚で行っていることを定量化していこうと考えました。定量化しないと、言葉1つをとってもみんな捉え方が少し違います。例えば、「エネルギッシュな人が欲しい」など。人材に関する言葉を皆が同じ意味で用いることができるようにすることが必要だと考えました。そこで定量データを使用した管理職の人物像の明確化に取り組みました。投資に見合う価値があるのかという批判的な意見もありましたが、投資に見合う効果を得るためにやるべきだとの想いを伝え、納得してもらうことができました。

インタビューとデータ分析を用いて管理職の要件を定義。

ビジネスの変化にうまく適応し、活躍している管理職の特徴を、パーソナリティ検査OPQの結果を使用して分析しました。受検していただいたすべての管理職の方々には、自己理解を深めるために、結果をお返ししています。この分析の結果、大きな2つの事業領域において、管理職のタイプが明確に異なっていることが分かりました。感覚的なものが数値化され、客観的なデータで示されることで、納得感のある結果となりました。

ただ、この分析はあくまで現在の管理職を分析しているものであり、今後の事業戦略によって必要となる管理職像を見出すためのものではありません。そこで社長と事業責任者が今後の事業をどのように考えているかを尋ねるインタビューも実施しました。このインタビューから導き出された人材要件は、自分のこれまで持っていた感覚やイメージと全体的に合致していましたが、コンピテンシーとして適切に表現できていなかったと気付きました。特に「元気づけ」や「対人感受性」といった対人面のコンピテンシーが重要であることが明確になりました。これらのコンピテンシーが選ばれたのは、チームで働く際にはもちろん、顧客に接する際にも対人能力が重要だからです。システムを作ることは、どこまでいっても手段であり、本質は顧客との信頼関係にあるということがわかりました。

これら2つの手法から得られた結果を統合し、最終的に6つの要件に絞り込みました。

管理職の要件を採用活動に反映。経験者採用も開始予定。

定義された管理職の人材要件から採用基準を作り、採用選考に使用しています。採用ではWebCABを使用して、結果帳票から採用基準に照らして本人の強み弱みを把握し、面接で掘り下げて確認しています。悩ましいのは、基準を満たす人が限られてしまうことです。パーソナリティ検査と知的能力検査の結果を総合的に見ていますが、それぞれの検査結果において、どの水準をボーダーラインとすべきかについては、入社した社員の検査結果と業績の関係を調査したうえで慎重に検討しています。 また、部門によってシステムエンジニアの特性は異なり、求める人材も変わります。しかし、部門別ではなく一括に採用しているので、各部門の求める人材の平均値を採用することになり、焦点がぼやけてしまいます。もちろん会社に共通の部分もありますが、今回行った分析でも、2つの大きな事業部には異なるタイプの人が多いことがわかりましたので、どう採用し、どう配属するかについては今も試行錯誤しています。

今後は、これまで行っていなかったエンジニアの経験者採用も行います。今までの人材よりも早くコア人材に成長するので、管理職としての人材要件も採用時に確認していくことになります。

タレントマネジメント施策としては、今回作成した人材要件を基にポテンシャル情報を活用し、管理職候補として適任な人材を特定し、抜擢することを人材開発プロジェクトで進めていきます。これが実現すれば、部門間の異動の判断にも役立てることができます。

人事データの収集と可視化による投資効果は即効性があるものではありません。人事としては客観データを共通言語にディスカッションできることが大事だと考えています。月に1度、幹部の集まる会議で人事データを提示してディスカッションをしています。この取り組みが部門の垣根を超えたコミュニケーションを促進し、全社的な人事課題の解決につながることを期待しています。

日本エス・エイチ・エルは、データを収集し分析するだけでなく、その結果をどう解釈し、活用するかに対して積極的にコンサルティングを提供してくれます。その結果、私たちが抱えている問題について有用なアドバイスをもらえることがあります。また、私たちの気づかなかった視点やアイデアを提供してくれるので、重要なパートナーとして位置付けています。ディスカッションの機会をたくさん持ってくれる一方で、過剰にサービスを勧められることはありません。「なぜこんなに親身になってサポートしてくれるんだろうか」と話し合うほどです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング1課

深津 寛

本プロジェクトが人材要件定義の事例の中で一段目を引くのは、以下の3つの要素を網羅している点にあります。
① 活躍者の人物像を、現在と未来とに分けて分析したこと。
② 活躍者のタイプは複数存在すると仮定したこと。
③ 定量的手法であるアセスメントデータ分析と、定性的手法であるインタビューとを組み合わせたこと。
活躍者を分析する上での、①「現在と未来」②「複数タイプ」という鋭い仮説は、当初からメディアフォースさまにお示し頂いていたものです。ここにアセスメントを専業とする日本エス・エイチ・エルの得意領域がクロスオーバーしたことで、非常に有意義な分析結果を得ることができました。
始動まで1年弱に渡って打ち合わせと検討を重ねましたが、いま改めて振りかえってみても、根底にある価値観は常に一致していたと感じます。
今回のプロジェクトに微力ながらも貢献できたことは大変光栄です。引き続き日本エス・エイチ・エルの専門性を活かして、メディアフォースさまの今後の課題に最善のサポートを提供してまいります。