オフィスオートメーションからデジタルサービスの会社へと変革を続けるリコー。
なかでも新規事業創造をミッションとする組織のチーム作りに科学的な知見を活用すべく、調査研究に取り組みました。

※本取材は2023年10月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社リコー

事業内容

デジタルサービス、印刷および画像ソリューションの提供

業種

電機機器

従業員数

81,017名(連結、2023年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方

入佐 孝宏 様
稲井 麻貴 様

株式会社リコー
コーポレート上席執行役員 、リコーデジタルサービスビジネスユニット プレジデント、前 リコーフューチャーズビジネスユニット プレジデント (写真左)
リコーフューチャーズビジネスユニット インキュベーションセンター 事業創造室 BRグループ リーダー、HRBP長 (写真右)

インタビューの要約

デジタルサービスの会社へ変革を進めるリコーは、カンパニー制への移行に際して新規事業創造を組織的に行う「リコーフューチャーズ(RFS)」ビジネスユニットを設けた。
RFSの8つの事業は事業開発の進捗が異なり、また、リーダーのキャリア・人物タイプもそれぞれに特徴がある。組織能力を最大化する、リーダーを中心とするチーム編成への問題意識を持った。
リーダーのタイプによって組織がどのような影響を受けるかをパーソナリティ検査結果とエンゲージメントサーベイスコアを用いて調査した。
パーソナリティ検査結果は「顧客価値の創造をリードする人材・事業創造型のリーダー」としてポテンシャルの高い人材を発掘する際に役立てている。

社会課題を解決する新規事業を生み出す組織、リコーフューチャーズ

リコーは2020年にデジタルサービスの会社への変革を宣言し、2021年には経営機構をカンパニー制へ移行させるとともに、人事面ではジョブ型人事制度の導入を決定しました。現在、グループ本部と5つのビジネスユニットがあり、各ビジネスユニットが事業企画・商品企画から開発設計・生産・販売まで一気通貫した機能を担うなかで自立的にビジネスを運営しています。人事機能においてもHRBPとしてそれぞれのビジネスユニットに所属しているメンバーがいます。

リコーフューチャーズビジネスユニットは、リコーの強みである独自の技術を活用したイノベーションを通じて、新規事業を実現させつつ社会課題を解決していく組織です。現在8つの新規事業を手掛けています。もともとリコーには新しいことに取り組む風土があり、各々で活動をしていました。これら新規事業のうちの8つをひとつのビジネスユニットのなかで運営することで、ポートフォリオマネジメントを進めています。各事業の期待値や事業進捗に応じて、予算含めた投資のメリハリをつけ、事業開発に関する厳しい議論を正しく行うことができるようになりました。

社会課題を解決する新規事業を生み出す組織、リコーフューチャーズ

チームの能力を最大化するメンバーの組み合わせを科学的に検討する

8つの事業を見ていると、各チームの特徴が出てきます。例えば、コミュニケーションが得意なリーダーのチームはまとまっているけれどもアイデアが生まれにくい、かたやクリアな世界観を表現することができるリーダーのチームはまとまりが欠けているなど。これらのチームをマージすることが出来たら強力なチームになるだろうと常々考えておりました。

また、新規事業を0から1にする段階と、1から10にする段階とでは求められるリーダーシップが異なるのではないか、またリーダーが必要な経験や能力を備えていない場合には、リーダー及びリーダーを支えるメンバーのチーミングによって補う必要があるのでは、とも考えました。加えて新規事業は未経験の領域に挑むため、経験だけではなく各個人の資質も重要な要素になります。

どのようなメンバーの組み合わせであればチームの能力を最大化させられるか思索しているなかで、別のプロジェクトでリコー国内従業員約3万人を対象に実施したエス・エイチ・エルの パーソナリティ検査万華鏡30のデータを活用できないかと思い立ちました。各事業センターのリーダー数名の万華鏡30を詳しく解説していただいたところ自分が経験を通じて培った「人への見立て」と符合しており、感覚的ではなく科学的に人の資質は捉えられるだろうと確信しました。

リーダータイプとチームのエンゲージメントの関係性を明らかにする

社員直属上司である課長層とその1つ上の階層である室長層の社員の万華鏡30の結果データと2021年に実施したエンゲージメントサーベイの組織別のスコアとを用いて、統計分析を行いました。パーソナリティ検査結果からリーダーのタイプを3つに分類し、室長層と課長層のリーダーのタイプの組み合わせごとに組織のエンゲージメントサーベイスコアにどのような傾向がみられるかを確認しました。

組合せの数(対象となる組織数)が少ないため引き続き検証が必要ですが、大きく2点の発見がありました。一つは室長と課長がどちらも“ひっぱり型リーダー”(メンバーの競争心に刺激を与え、目標達成に向けてチームを引っ張る)の場合、仕事環境、具体的には人間関係の満足度が低くなる傾向があること。この組み合わせはできれば避けたほうがいいだろうと考えられます。もう一つは、同じタイプのリーダー同士で構成される組織の場合は、リーダー・経営層への信頼が低下する傾向があることでした。

調査研究の結果は、個人的な経験や感覚とも符合しました。例えば私(入佐様)はチームタイプの“アイデアマン”と“まとめ型リーダー”の傾向が強く出ており、ときに歯止めが効きづらくなるとも自認しておりますため、リコーフューチャーズの責任者となるにあたっては、私に苦言を呈することができる人材を私のパートナーに選びました。彼の万華鏡30の結果をみると、私の結果とちょうど真逆でした。やはり資質は科学的に分析することができると考えています。

「顧客価値の創造をリードする人材・事業創造型のリーダー」としてポテンシャルの高い人材を発掘するため、私(入佐様)が現在担当しているリコーデジタルサービスビジネスユニット(RDS)では結果を主に二つの場面で使用しています。一つは既にあるサクセッションプランの中でサクセッサーとなっている人材の資質を改めて確認する場面。もう一つは、社内公募で募集しているポジションによっては万華鏡30の結果を面談結果と合わせてみて、適性を判断する場面です。全社的にシステマチックな活用はまだできていません。

私(入佐様)はいくつかのアセスメントを受けていますが、人物タイプを見極めるには万華鏡30が一番適切と感じています。エス・エイチ・エルグループが持つ最新のアセスメントにも興味があり、実験的な取り組みも含め今後も積極的にご支援いただければと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

重野 達也

 新規事業創造において”個”に焦点を当てる研究には多くの課題が残っています。そのようななかで、今回の研究とその結果の活用は、リーダーの組合せから新規事業創造を捉えようとする新たな試みでした。リーダーのパートナーを誰にするかによって、組織のエンゲージメントスコアは大きく変わります。エンゲージメントスコアが組織の強さと活性度を表しているとすれば、リーダーの組み合わせは極めて重要な人事的意思決定となります。今回の研究から、人の組み合わせと事業創造の関係についての貴重な知見を得ることができました。今後も実験的な取り組みを行いつつ、リコー様の更なる発展に向け尽力致します。

導入事例

変革を推進するためのキャリア開発・人材育成。4つのフェーズで構成されるポーラの「人材成長プログラム」

変革を推進するためのキャリア開発・人材育成。4つのフェーズで構成されるポーラの「人材成長プログラム」

創業100周年に向けて、多彩なValue Creatorが共創する組織へ。
社員一人ひとりのビジョンの実現をサポートする「人材成長プログラム」についてご紹介します。

※本取材は2022年6月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社ポーラ

事業内容

化粧品、健康食品、ビューティーケア、エステサービス

業種

化粧品製造販売業

従業員数

1,359名(2021年12月末現在

インタビューを受けていただいた方

岸 夏海 様

人事戦略部 ヒューマンバリューチーム

インタビューの要約

化粧品事業の枠に捉われない新たな挑戦や変革のため、多彩な社員一人ひとりのビジョンの実現に向けたキャリアサポートを行う「人材成長プログラム」が発足。
「人材成長プログラム」は4段階。まずは自身の強みを「知る」、次にビジョンや実行計画を「描く」、オンラインスクールやスキル開発プログラムで「学ぶ」、そして実際の業務で能力を「活かす」。
「知る」のフェーズでは、日本エス・エイチ・エルの万華鏡30を活用。個々人の自己理解が深まっただけでなく、強みを生かした現場でのアサインメントや、社内の人材の可視化が促進される効果も。
社内アンケートの結果、キャリアに対する社員の主体性がアップ。今後も施策全体のPDCAを回していきたい。

既存事業の枠を超えた挑戦のために、多彩な人材のキャリアデザインを支援する「人材成長プログラム」。

弊社は創業100周年の節目に向けて、これまでの化粧品事業の枠に捉われない、新たな挑戦や変革を進めています。組織としてのありたい姿は、多彩な「Value Creator」による共創。社員一人ひとりがValue Creatorとして、最大限能力を発揮し、個人と組織がお互いを高め合う関係の中で、ワクワクするような面白い挑戦により、価値を創出している組織を目指しています。

人事としてValue Creatorの挑戦と成長を引き出すためには、多彩な社員の個の尊重と、チームとしての創発力を最大化しつながりを高めること、そして社員一人ひとりのWillや自らがポーラを通して描いた未来に、自分の意志で向かっていく力強さが必要不可欠だと捉えています。そんな視点をもって打ち出したのが、「人材成長プログラム」という弊社独自のプログラムです。このプログラムは、「知る」、「描く」、「学ぶ」、「活かす」という4つのフェーズに沿って、キャリアを描く機会、成長する機会、そして能力発揮の機会までを提供する様々なコンテンツを実施しています。

「人材成長プログラム」は4段階。自分を知り、ビジョンを描き、 実現に向けて学び、能力を発揮する

「人材成長プログラム」の「知る」というフェーズでは、日本エス・エイチ・エルの「万華鏡30」を用いて、一人一人の個性や強み・弱みを可視化し、自己理解を深めてもらいます。次に「描く」では、今後の自分のキャリアビジョンと実行計画を描きます。具体的にはキャリアデザインのeラーニングや、世代別研修を実施しています。「学ぶ」では、ビジョンの実現に向けて、オンラインスクールや領域限定のスキル開発プログラムを活用しながら、能力開発を行います。最後が「活かす」です。実際に業務に携わる中でさらに成長し、高めた力を最大限発揮していただく。そのために、人事としては適切な異動配置を考えることも課題の一つです。弊社ではタレントマネジメントシステムに社員のスキルやキャリアプランなどを一元管理し、これまでの一律のジョブローテーションを少しずつ個人に合わせたキャリアとすることを目指しています。

これらを体系的に実施しながら、さらに効果を高めるポイントが、上長による定期的な1on1。それぞれのフェーズにおいて上長によるキャリア支援を必須とし、人事と上長は情報連携やフォロー体制を整えながら、人材成長プログラム全体を動かしています。

「人材成長プログラム」は4段階。自分を知り、ビジョンを描き、 実現に向けて学び、能力を発揮する

キャリアデザインの第一歩はアセスメントによる自己理解。 個人の内省だけでなく、適材適所が促進される効果も。

今回、「知る」というフェーズで日本エス・エイチ・エルの「万華鏡30」を活用させていただきました。受検対象は全正社員で、受検後に1時間の「自己理解研修」や上長との1on1での結果の活用を行うことで、さらに自分自身に対する理解や内省を深めています。

導入後の効果は大きく2つあります。一つ目は従業員同士のコミュニケーションです。チームや上司・部下間でお互いのアセスメント結果を見ながら、業務分担を行ったり、個人の強みを生かすようなアサインメントが行われたりするようになりました。二つ目は、人事視点での全社分析が可能になったことです。この万華鏡30の導入により、社員を同一基準で解釈することが可能になりました。

この結果を様々な分析にかけることで、社員の性格傾向がわかりやすく表現され、社内にどのような人材が分布していて、どのような人材が不足しているのかなど、人材分布から育成課題等も可視化されるようになりました。

これらの施策はすべて発展途上ですが、少しずつ変化の兆しが見えてきました。今年の社員アンケートの結果、「自ら主体的にキャリアを描き切り開くマインドが自身に備わっていますか?」という質問に「はい」と答える割合が、昨年と比べ10ポイント以上高まりました。組織として大きな変化が起きるのはこれからと認識しておりますが、今後も情報収集を続け、施策全体のPDCAを回していきたいと思っております。

先般、この取り組みを日本エス・エイチ・エル主催のタレントマネジメントウェビナーでご紹介しました。このウェビナー出演をきっかけに他社の人事担当者と情報交換の機会を得ることができました。お会いした各社さんとも、独自の工夫を凝らしたタレントマネジメント施策を導入されていて大変勉強になりました。今後も情報交換を続けていくつもりです。日本エス・エイチ・エルはアセスメントの専門性が特徴的な会社ですが、人事担当者のネットワークを提供してくれる点も魅力の一つです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング3課 課長

横山武史

多彩なValue Creatorによる挑戦と変革という今回のお取り組みは、当社の「人のポテンシャルを見いだし、登用することで能力の発揮を支援する」という考え方と一致しており、私としても大変共感を覚えます。
このお取り組みは2021年11月、岸さんをはじめとする人事戦略部の方に、トライアルで万華鏡30の1on1フィードバックを実施するところからスタートしました。トライアルから数か月間でここまでの仕組みを作り、施策を動かしておられる実行力に感服しました。
また、岸さんの他社と積極的に交流しオープンに情報交換する姿勢、自ら人材データ分析に取り組まれる熱意は、新しいHRパーソンの在り方を示してくれていると感じます。
これからも当社およびSHLのグローバルな知識と経験でお役に立てるよう全力で努めてまいります。

導入事例

初任配属への課題意識から、全社のコミュニケーション改善へ。岡谷鋼機の全社員アセスメント。

初任配属への課題意識から、全社のコミュニケーション改善へ。岡谷鋼機の全社員アセスメント。

「相手に自分の知らない一面があると思えば、かける言葉も変わるのでは。」初任配属での経験から、コミュニケーションにおける相互理解の重要さを再確認し、全社員アセスメントに踏み切った岡谷鋼機の取り組みを紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

岡谷鋼機株式会社

事業内容

鉄鋼、特殊鋼、非鉄金属、電機・電子部品、化成品、機械・工具、配管住設機器、建設関連、食品などの国内販売・輸出入

業種

卸売業

従業員数

連結:5,115名 単体:683名 (2020年2月期) 

インタビューを受けていただいた方

岡村卓也 様
小本紗由香 様

岡谷鋼機株式会社
人事総務本部 名古屋人事総務部 人事室 室長(岡村卓也 様:写真右)
人事総務本部 名古屋人事総務部 人事室 プロジェクトリーダー(小本紗由香 様:写真左)

インタビューの要約

新入社員の初任配属をもっとフォローしたいという思いをきっかけに、全社員のパーソナリティ受検を実施。新入社員とOJTの先輩の間のみならず、上司・部下間も含めた、全社的なコミュニケーションの向上を目指す。
社内の協力に不安があったが、予想以上の受検率。さらに、現場が率先して活用しコミュニケーションをとる様子も見られた。
今後は、パーソナリティの相互理解によってコミュニケーションを活性化する取り組みをもっと推進したい。目指したいのは、デジタル×アナログのタレントマネジメント。

初任配属でよいスタートを切ってもらうために、 新入社員のまだ見えていない側面が見たい。

当社は、採用段階から人をよく見て、どういったところに配属されると活躍するのか、いいスタートを切れるのかを一人一人時間をかけて検討しています。新入社員の初任配属に際しては、採用時に得た情報や入社後の様子、適性また配属先の仕事内容、先輩社員など可能な限りの情報を収集したうえで配属を決めます。その情報の一つとしてパーソナリティ検査OPQを活用したいなと思ったのが最初のきっかけです。配属先と新入社員をマッチングするために人事が新入社員一人一人と面談を重ねるのですが、新入社員のOPQを活用する事で、私たちが見えていない、表面的ではない部分の人物像が見えるのではないか、と考えました。

昨今の新入社員は自分のやりたいことがしっかりとあって、キャリアに関する理想像もあるので、「なぜこの部署に配属になったのですか」という質問に対して、フィードバックを行う事もあります。いいスタートが切れる事、その後しっかりと活躍する事を念頭に「君にはこういう良いところがあって、こういう仕事が合っていて、こういう先輩と一緒に仕事をすることで、なりたい自分に近づくよね」というメッセージを送っています。また、配属後は配属全部署の上長に対して、OPQや配属までに得た全情報を活用して、教育方法のアドバイス含めた申し送りを実施しています。

初任配属でよいスタートを切ってもらうために、 新入社員のまだ見えていない側面が見たい。

「相手に自分の知らない一面があると思えば、かける言葉も変わるのでは。」 初任配属での苦い経験をもとに、全社員受検に踏み切る。

初任配属でのミスマッチの問題は、OJTでつく先輩とのミスマッチとして表れることがあります。非常にタフな仕事であっても、OJTの先輩と合うメンバーは比較的頑張っていけますが、合わないメンバーはスタートでつまずいてしまうという印象があります。その中で過去に一人、人事としてもう少し違うフォローができたのではないかと悔やまれる事例がありました。事後的に、日本エス・エイチ・エルの担当者にこの事例を相談したところ、OPQの結果から配属前に私たちが見えていなかった本人の特徴が読み取れることがわかりました。もし事前にわかっていれば配属部署により良い申し送りができたのではないか、よいスタートを切れたのではないか、と悔しい思いをしました。
こうした経緯で新入社員のOPQをもっと活用したいと考えたのですが、そうなるとOJTの先輩の結果も気になります。さらに全社でOPQを活用すれば社内のコミュニケーションの質をもっと高められると考えました。初任配属の問題に限らず、上司が正しく部下の特徴を理解しないまま指導しているようなケースも存在すると思います。もし、相手に自分の見えていない一面があるかもしれないと思ったら、かける言葉も変わるでしょう。全社員にアセスメントを実施すれば、上司が部下の知らなかった一面を見る機会が生まれ、コミュニケーションや関係の質が向上していく。こんなことを考えていました。

この構想を上司に話し、育成者の対人関係能力を強化することを人事の目標として掲げ、世の中のビジネス環境を鑑み、OJTのあるべき姿を描いていきました。本部長から「そう思うのであればやってみたら」と即承認をもらいました。これは当社の社風です。一部、社内のコミュニケーション能力が低下しているとは思わないという反対意見もありましたが、ビジネス環境の変化に対応するためには今動き出さなくてはならないと主張し、プロジェクトを開始しました。

心配をよそに、驚異の受検率。背後には、社内共通の成長意欲も。

社員に受検を案内したら予想以上に多くの人が受けてくれました。初期の受検率は98%以上です。はじめは受けてくれなかった方も色々な方法でお願いしたところ、ほぼ全員が受けてくれました。受検後に返される結果報告書(万華鏡)のサンプルを提示したことも奏功し、社員の自分自身を知りたいという思いと強い成長意欲に繋がったのだと思います。

現場では予想以上に積極的に活用。今後はもっと仲間を増やしていきたい。

今後は課長に対してOPQ結果を用いた研修を行う予定です。
予想以上に現場はOPQを活用してくれています。私がOPQ活用の施策を出す前に、ある部署では部署内で結果を開示しながらコミュニケーションをとっているという話も聞きました。入社時の結果がある社員に対して上司がOPQを使ってパーソナリティの変化について対話したケースも出てきました。
私としては、OPQを使ってコミュニケーションを活性化しようとする仲間を増やしていき、全社に波及させたいと思っています。そのために1on1ミーティング等コミュニケーションの幅を広げるアイデアを社内に紹介していきたいです。

今後はデータとアナログを掛け合わせたタレントマネジメントをやっていきたいです。部署ごとに人材データを分析して、そこに敢えて違うタイプの人材を入れ、どのように組織が成長していくかを試していくのも面白いと思います。

従来の採用・配属の方法では特定の人材タイプを採用・配属しがちですが、実際には色々なタイプの人が活躍しています。職務や職場環境と活躍する人材の関係を構造的にとらえ、採用・配属等の人員配置に活用出来ればと考えます。また、アセスメントを定点観測のように活用し、育成目的のフィードバックで使いたいとも思っています。

日本エス・エイチ・エルのコンサルタントには、本当にお世話になっています。アセスメント結果の解釈に不安があるときは、担当コンサルタントに相談して助けていただいています。今後もサポートいただけるとうれしいです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

柳 成美

「気になる社員がいらっしゃるのであれば、OPQではどのように読み取ることができるか試してみませんか?」全社員受検のプロジェクトが決まる約1年前、その様にお声がけしたことを今でも覚えています。配属のミスマッチの問題に直面した時に、原因を社員だけに求めるのではなく、人事としてもっとやれることがあったのではないか?という想いを持ってご相談をいただけたこと、本当にうれしく思います。
この様な新しい施策を導入いただく際、取り組んだ内容がうまく社内に浸透する場合と途中で立ち消えてしまう場合があります。もちろん岡谷鋼機での施策は前者であると、その後の反響を追ってみても強く感じています。施策がうまく社内に浸透するためには、明確な「困った」を解決することを目的としていることと、その「困った」は経営・人事・現場等多様な立場にとって共通した問題であるということが重要です。今回はこの条件が揃っていたことに加え、岡谷鋼機という組織が長年社員一人一人を大切に育てるという風土で取り組んできたことによる賜物だと感じています。
今後は、OPQの活用がより進むような勉強会の実施やデータの分析などで少しでもお役に立てればと考えています。

導入事例

応募者エンゲージメントと選抜の精度を向上させた、川崎汽船の採用プロセス改革。

応募者エンゲージメントと選抜の精度を向上させた、川崎汽船の採用プロセス改革。

コロナ禍によってオンライン化した採用プロセスと応募者に生じた変化に危機感を覚えた川崎汽船。
応募者のチーム行動の特徴を理解するために採用プロセスの改革に取り組みました。

※本取材は2023年11月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

川崎汽船株式会社

事業内容

海上運送業、陸上運送業、航空運送業、海陸空通し運送業、港湾運送業等

業種

海運業

従業員数

単体:843名 (陸員638名、海員205名)  連結:5,458名

インタビューを受けていただいた方

橋本 征樹 様

川崎汽船株式会社
人事グループ 採用育成チーム

インタビューの要約

コロナ禍によりチーム活動の経験があまりない応募者が多かった。初対面した際、オンライン選考中に受けた印象と異なることも。
2次選考を対面のグループディスカッションと面談に変更。応募者一人ひとりにじっくりと時間をかけて対人面の行動を理解する。
選考の所要時間は大幅に増えたが応募者からは好評だった。面接を担当する社員からも肯定的な反応を得た。
今後は、応募者のニーズに答え、より多くの社員の生の声を聞ける機会を増やしていきたい。

パンデミックによる影響を色濃く受けた応募者と選考プロセス。

私は2018年に入社し、1年間グループ会社に出向して自動車輸送に関するドキュメンテーション業務を担当しました。その後本社に帰任し、極東から北米への自動車輸送に関わるオペレーションと営業を3年間ほど経験し、2022年4月に人事グループへ異動して採用と育成に携わっています。

すでに採用活動が始まっていた中での着任だったため、23卒採用は一人の面接官として関わりました。その中で、これまでの世代では部活動などチームで何かをするのが当たり前でしたが、コロナ禍で学生生活を過ごした23卒採用の学生はそうではなく、中には大学に友人がいないと聞くこともありました。また最終面接以外は全てオンライン選考でしたが、最終面接で初めて対面した際に応募者の印象が大きく異なるケースもありました。24卒採用においても同様の状況が生じる可能性があると考え、採用プロセスの改革に取り組みました。

パンデミックによる影響を色濃く受けた応募者と選考プロセス。

人を採ることに手間を惜しまない。

1次選考は、多くの人が参加できるようオンライン面接を維持し、2次選考を変更しました。1対1だけでなくグループの中でどのように他者と接し、チームに貢献するのかが分かるように、対面のグループディスカッションを実施しました。さらに、同日中に1対1の面談も行いました。グループディスカッションと面談を同日に実施することで、グループでは目立たなかったけれども、1対1で魅力が出てくる人(相手に良い印象を与えながら論理立てて話ができる人など)を見つけることができ、応募者の特徴を多面的に捉えることができました。

オペレーションの負荷は大きくなりますが、今日のような状況下では応募者を惹きつけたり理解したりすることに十分な時間をかけるべきだと考えています。これからはさらに労働人口は減少するので、人材確保はより重要な課題となります。

評価を担当する現場の管理職の方々には事前の評価者トレーニングや選考当日の終日拘束などで大きな負担をお願いすることになってしまったのですが、昨今の学生の事情を説明し、コミュニケーション能力を確認したいという思いをしっかりと伝えることで賛意を示していただくことが出来ました。

応募者のエンゲージメントを高めつつ、能力を理解する。

応募者の所要時間が長くなる点がこの選考プロセスの不安要素でした。しかし、参加者からは「他社のグループディスカッションでは一体何を見られていたのか分からなかったが、(川崎汽船では)面談もあったので自分のことをよく見てくれていると感じた」と肯定的な反応が多くありました。当社としては、所要時間が長い分、入社意欲の高い方が参加してくれること、休憩時間に応募者の自然な様子を知ることができてその後のサポートがしやすくなることがメリットです。

応募者のエンゲージメントを高めつつ、能力を理解する。

内定後も途切れることなく人事がコミュニケーションを取ります。当社では配属を決める際に、本人の希望を提出してもらい、日本エス・エイチ・エルのアセスメント結果も参考にしながら向いている部署を検討します。入社後も階層別研修を実施し、一貫して社員の成長をサポートしています。

今後の採用施策では、身近な社員の「生の声」を聞きたいという応募者の要望に応えていく取り組みを行います。社員との対話セッションを毎月行って社員と直に接する機会を増やしていきます。

私自身の今後の展望として、広範な人事業務に携わり、その後は現場で人事としての知見を活かしたいと思っています。

日本エス・エイチ・エルは私たちの課題によく耳を傾けて、目的にかなった最適なサービスを必死に考えてくれます。また、アイデア段階で今回の取り組みを伝えた際に「人にコミットしていますね」とコメントをもらいました。この言葉が後押しとなり自信を持って進めることができました。今後も引き続き宜しくお願いします。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

前川 智美

橋本様をはじめとする、採用担当の皆様のお考えがとにかく素敵です。採用担当は様々な業務をこなす必要があり、工数削減に目を向けるのは当然のことだと思います。しかし、川崎汽船様は工数がかかったとしても、応募者をしっかりと理解することに労力を惜しみません。この姿勢、魅力的です。
私は母集団形成や選考辞退のお悩みを持つお客様からご相談をいただくことが多くあります。採用選考自体が学生にとって有意義であること、学生を意欲形成するための仕掛けが含まれていることがこのお悩みを解決するための大事なポイントだとこのプロジェクトを通じて気づかされました。
より良い採用選考が行えるよう気を引き締めてご支援いたします。今後とも宜しくお願いいたします。

効果的なミドルマネジメント教育を行うために、全管理職にアセスメントを実施した、菅公学生服の取り組みを紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

菅公学生服株式会社

事業内容

スクールウェア、スポーツウェアなど各種衣料の製造販売

業種

繊維製品製造業

従業員数

2,810名(グループ全体/2020年7月末時点)

インタビューを受けていただいた方

真鍋 洋志 様

菅公学生服株式会社
管理本部副本部長

インタビューの要約

ミドルマネジメント層の現状を正しく理解するため、採用で利用していた総合適性テストGABを約170名の全管理職に実施した。
個人として、集団としてそれぞれの強み・弱みが明確になり、現状が明確になった。個人に結果をフィードバックし、自身の強みを伸ばす方法、弱みを改善する方法について自己分析してもらった。
今後育てるべきは、仲間を承認し、組織を牽引できるミドルマネジメント。日本エス・エイチ・エルのアセスメントを、ゆくゆくは全社員に適用していきたい。

社員教育を見直す中で気づいた、研修目的の不明瞭さ。

現在、私は管理本部副本部長という役割を担っています。管理本部には、人事と財務と総務、3つの機能があり、日々の業務遂行上の判断をする立場にあります。また人事部部長と、採用と教育を担当している人材開発課の課長を兼務しています。人事に来るまでは、新卒でこの会社に入ってから、ずっと営業畑を歩んできました。

最初に人事部部長として着任した際、まずは採用と教育と配置という3つを強化したいと思いました。最初の大きな仕事は採用でした。その中で、日本エス・エイチ・エルのGABを使って面接をしたり、受検者の傾向を分析したりすることを半年くらい行った結果、「GABって素晴らしいな」と思いました。受検者の「見える化」というのでしょうか、自分の中で人物像の仮説を立てて面接の準備ができるし、この事前情報と実際にお会いしたときの印象が合っていることが多いなと、体感できたんです。

社員教育を見直す中で気づいた、研修目的の不明瞭さ。

同時に、教育についても見直しを始めました。今までの当社の人事の年間予算は、採用の予算がとびぬけて多い。教育の予算は、採用の半分程度でした。このバランスはおかしいんじゃないか、逆じゃないかと。これを転換するくらいの気持ちで、今後は教育に力を入れたいとメンバーに話していったんですね。その時点で、去年行った研修と、今期すでに計画済みのプログラムがありました。改めて、一緒に働いているメンバーに、「この研修はどういう目的で、どういう人に行うの?」「この目的と、どうつながるの?」と確認してみたところ、今までやっていたので、巷で流行っているので・・・というあいまいな部分があり、私たちの部署も、研修の目的を考え切れておらず、準備するだけで満足していたところがあったとわかりました。

効果的な社員教育・配置・採用のために、まずは社員を知ることから。

そこで、採用で使っていたGABの社内活用を経営会議で提案しました。効果的な社員教育、配置ならびに採用を行うためには、社員の特性を理解することが必須であると打ち出しました。まずは、ミドルマネジメント層に対する社内研修をしっかり行いたいので、管理職にGABを受けさせてほしいと提案しました。私は、陰でコソコソ動く人事になってはいけない、オープンに社員をバックアップする人事であるべき、と思っています。私たち人事がなぜこの研修を企画したのか、そのプロセスを共有するために、プロセスの見える化を図りたいと思いました。アセスメントを使って社員の特徴を把握すると、強みや弱みが定量的に把握でき、それをもとになぜこの研修をするのか説明ができます。また今の時代、配置に関しても、経営陣が鉛筆をなめて決めているだけでは、転勤だと言われても誰も納得できません。一つ一つの配置に経営陣の思いがあるなら、その思いを社員に共有しないといけませんし、あなたのこの能力を高く評価している、こんな仕事をしてほしいとしっかりと伝えることができなければ、転勤先で期待する成果を求めることなんてできません。本人のキャリアを踏まえた適材配置を実現する意味でも、アセスメントは必須でした。

「200年企業を目指して」熱意と粘り強さで、全管理職へのアセスメントを完遂。

管理職を対象にした理由は、ミドルマネジメントを鍛えないことには会社は伸びないなという個人的な思いからでした。しかし、管理職に受検してもらうのは思った以上にハードルが高かった。最初は何人か受けてくださらなかったのも事実です。でも、営業時代から業務で多くの人とつながりがありましたので、一人ひとりに連絡して、「お前の最初の仕事なら、しゃあないから付き合おうか」と言っていただき、一人残らず全員に受けてもらいました。時間はかかりましたが、目的と、会社がこの先180年、190年、200年と続いていくためには必要なんですと話をしました。

管理職の特徴を可視化したことで、強みや弱みが明らかに。

全管理職が受検した後、日本エス・エイチ・エルのコンサルタントが、菅公学生服単体のGABの傾向値と、他の企業群の平均値との比較をしてくれて、会社全体の強みや弱みを分析してくれました。また、私たちのこれからの営業に必要なところ、モノづくりの管理職に必要なところ、といった判断軸で結果を解釈してくれて参考になりました。まずは自社の管理職の傾向を数値化できたこと、自分たちのポジションがわかったことが大きな収穫ですね。印象に残っているのは、当社の管理職の特徴として「目の前でケガをしている人がいたら、いろいろ手を尽くして治そうとする。でも、この人ケガしそうだなと、先のことを見通すことができない」と言われたことです。そういう自社の弱い部分を知ることができたのも大きいです。

また、特に重要視したのは、受験者本人へのフィードバックです。GABの結果は、本人にフィードバックして、全体の傾向値もオープンにしました。全体の傾向、他社との比較、営業の傾向、その中であなたはこう、とブレイクダウンしました。また、担当コンサルタントに相談して、GABの結果をもとに自分の性格分析と強みと弱みの把握をするための、「自己分析シート」を作ってもらい、受検者全員に記入してもらいました。そのあとに集合研修を企画し、問題解決、論理的思考、人間関係の研修と大きく3種類用意しました。それはGABの結果をふまえて、「ここの数字がいくつ以下の方は今年かならず参加してください、それはこういう理由です」と打ち出しました。参加率もかなり高かったですね。

当社のマネジメントには、自分自身の強みも弱みも把握した上で、自分らしいリーダーシップ像を描いてほしい。研修はそのための機会や知識提供の場だと考えています。だからこそ、GABの本人フィードバックをし、自己認識をしてもらう。そして、現状に応じた研修を準備し、納得した上で参加してもらうことにしました。

配置に関しても、経営の皆さんに対して、ぜひこのポストにこの人材を登用してもらいたいと提案したり、良いことも悪いこともストレートに情報共有してゆく中で、少しずつ配置への意見を求められることが増えてきました。わずかながら、人事として経営と社員をつなぐ役割に一歩が踏み出せたと思っています。

今後、マネジメント層がどのように変わるべきかというと、自分の中でひとつだけ確固たるものがあります。今会社は、変化を恐れずチャレンジしなさい、勇気をもって挑戦しましょうと言っていますが、挑戦に失敗はつきものです。前例のない新しいことが挑戦だからです。失敗を気にしていたら何もできない。経営層が挑戦しろと言っても、現場レベルでは「コストは?時間は?成果は?」と挑戦を承認する前にダメ出しや叱責をすることが多い。これでは次から挑戦できない。心理的安全性がないのに、挑戦しなさいと言っても続きません。会社として一気通貫で、経営層も、新入社員も、若手も、相互に立場や主張を理解して、相互に応援でき、皆が自分らしく働ける会社にしたいです。まずは心理的安全からはじめます。ミドルマネジメントは怒らない。チャレンジした部下を失敗しても褒め、認める。そして、次からはこうしようという肯定的なフィードバックをする。ミドルマネジメントが変わらないと職場は変わりません。それくらい影響力があるんだよと、ミドルマネジメントに伝えています。

日本エス・エイチ・エルのコンサルタントは、頼りがいがありますね。わからないことはなんでも相談しようと人事みんなで言っています。数年以内に全社員にGABを実施するよう進めています。採用で利用するだけでなく、異動したら受けるとか、キャリアを考える様々な場面で利用していきます。他者から見た評価と併せて、自分では見えていない部分に気づくという、相互理解につながるツールだと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 取締役

重原 公

タレントマネジメントという言葉が注目される中、客観的な指標として適性テストの活用を検討される企業様は増えています。しかし、関心はあれど実施や具体的な活用まで至っていないという企業様も多く、これは当社の力不足もありますが、大きくは①目的が何かが不明確であること②社内の合意がとりにくいことが課題となっているように感じます。菅公学生服様は、冷静な現状把握と、経営と社員を想う熱いお気持ちによってこの2つの課題をクリアされ従来の管理職教育から変革されています。
日頃より、真鍋様が人事メンバーの方々や私達に対して、常に優しく接して頂く姿が想い出されます。当社からは現状の可視化や、人事施策の方向性についてご提案いたしましたが、お取り組みが実を結んだのは、突然の施策に戸惑う社員の方に対し、真鍋様始め人事メンバーの方々に尽力いただいた結果です。今後もディスカッションを重ねながら、現状の可視化及び人事経営戦略にお役立ていただけるよう、微力ながら尽力してまいります。

通貨処理機等の製造を行うグローリー。昨今の電子決済化など事業環境の変化に対応するため、人材の計画的な発掘・育成・配置の必要性が高まり、タレントマネジメントの基礎として全社員のアセスメントデータを取得し、人材可視化を行いました。

※本取材は2023年5月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

グローリー株式会社

事業内容

通貨処理機・セルフサービス機器の開発・製造・販売・保守、電子決済サービス、生体認証ソリューション、ロボットSI等の提供

業種

機械

従業員数

3,498名(グループ連結:10,792名)※2023年3月31日現在

インタビューを受けていただいた方

永瀬 厚司 様

グローリー株式会社
人材開発部 人材教育グループ グループマネージャー

インタビューの要約

コア技術を新たな事業につなげることができる人材を計画的に育成すべくタレントマネジメントに着手。
全従業員共通のアセスメント(OPQ)を実施。説明会や動画にて自己理解の重要性を伝え、受検率100%を達成。
データ分析により全社および部門別の人材の特徴を可視化。
新任管理者研修内にてOPQの説明パートを設け、部下理解およびキャリア面談での活用を促進。
管理職の要件にPMCコンピテンシーを採用し、今後のさらなる人材育成施策を検討する。

未来に必要な人材を計画的に育成すべくタレントマネジメントに着手。

私は、ソフトウェア技術者として国内および海外での製品開発を経験した後、2019年4月に人材開発部へ異動しました。人材開発部のミッションは、効果的に人材の採用・教育・発掘・育成・配置することです。現在は人材教育グループマネージャーとして、各事業部にある教育部門と連携し、全社の教育を進めています。

グローリーは通貨処理機の開発製造からメンテナンスまで一貫して行う機械メーカーですが、培った技術を活かして電子決済サービスや生体認証、メカトロニクスを活かしたサービスなどの事業も行っています。海外では競合と資本提携を進め、この10年間で海外売上比率は半分以上を占めるまでになっています。キャッシュレス化が進み事業環境が大きく変化する中で、新しい事業の柱を作るビジネスリーダー、技術で牽引する開発のリーダー、資本業務提携先とのシナジーを創出できる人材などが必要となってきました。未来に向けて必要な人材要件の定義、その素養を持つ人材を社内で把握し、全社で共有し、計画立てて育成するには至っていませんでした。これらの課題に対処するために、まず現状把握のため人材可視化に取り組むことにしました。

未来に必要な人材を計画的に育成すべくタレントマネジメントに着手。

全従業員共通のアセスメントデータを収集。受検率100%。

タレントマネジメントを実施する上で、行動特性を示すアセスメントデータは重要な情報の1つです。しかし、当時社内にあったアセスメントデータは対象層によって異なっていたため、全従業員を共通で見られるものさしが必要だと考えました。また、海外関係会社を含めると、外国人比率も高く、グローバル展開できる日本エス・エイチ・エルのOPQを導入しました。また、従業員への負担を考えたときに、受検にかかる時間なども適切でした。さらに、再受検をせずにより詳細のコンピテンシーが見られる万華鏡リポートを追加出力できることも魅力的でした。

従業員に受検を依頼するにあたっては、全員に受検してもらえるように「キャリア自律のために自己理解を深めよう」というメッセージを発信しました。説明会を10回開催し動画も用意し、受検してもらえるよう促した結果、2カ月かかりましたが、受検率100%を達成しました。

人材の特徴を可視化。キャリア面談でも活用。

受検結果は、人材データベースシステム上で本人と上司が確認できるようにしました。上司には、部下の理解促進のために年1回のキャリア面談でOPQを活用してもらっています。結果の解釈が難しいという声もありましたが、活用度合いに関するアンケートでは、「OPQを活用して部下と対話する」という段階までは60%の方が実施したと回答しており、概ね肯定的に受け入れられたと考えています。しかし、日頃の行動と照らし合わせてフィードバックをしたり、OPQを用いて能力開発計画を立てるなど、さらなる活用段階まで至っておらず、継続したOPQ自体の理解促進や部下とのキャリア面談、1on1のやり方など実践につなげていくための学びの場が必要と考えており、今後の課題です。現場からチームメンバー全員で結果を共有してフィードバックしあい、相互理解が深まったという嬉しい反応もありましたので、こういった活用事例を共有していくことも重要だと思っています。

人材開発部では、結果データを活用し、現状の従業員の全体傾向を可視化しました。具体的には、全体傾向と開発、営業、保守などの部門ごとの傾向を分析しました。結果は従業員の特徴がよく表れており、例えば、顧客と接する職務はOPQの人との関係の領域が高得点の傾向があり、開発は低得点の傾向がありました。また、考え方の領域はその逆でした。

この結果は経営層に報告しましたが、データでの可視化はあくまでも現状把握です。ここから見えてくる仮説と、会社のビジョン達成に向けて、これから必要な人材を計画的に発掘・育成・配置するために会社がすべきアクションにつなげていくことが、次の課題です。

また、会社の経営戦略に基づいて、来年から新たな人事制度の運用が開始します。その中で、管理職の行動評価に万華鏡のPMCの中から当社として重要視する項目をピックアップし、取り入れています。このように、人事戦略、従業員のキャリア形成支援とアセスメントを有機的に機能させることで、人事戦略として掲げている「個人の成長とともに、会社が成長し、一人ひとりがグローリーで働くことに強い魅力を感じ、誇りを持っている」状態を醸成し、会社の持続的成長につなげていきたいと考えています。

日本エス・エイチ・エルは私たちに寄り添い、課題の背景を踏まえて対応策を検討してくれるパートナーです。他社人事の方との情報交換の機会を提供していただけたのも有難いです。今後もタレントマネジメント推進のため様々なご支援をお願いしたいと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

鈴木 悠太

今後の事業展開を踏まえタレントマネジメントの実施に踏み切り、文字通り全社員データを取得、そのデータを様々な人事施策に活用されている本お取組みはタレントマネジメントの好例ではないかと考えております。「アセスメントデータを余すことなく活用したい」、グローリー様が本お取組みに着手され受検率100%を達成し、全社員データを取得した後に永瀬様から改めてご相談いただいたことを今も強く覚えております。次なる人事施策に向けてアセスメントデータをどう活かせるか、都度ご相談を頂戴してお打ち合わせを続け、様々な施策の検討に携われていることは私自身とても大きな経験となっております。グローリー様の「パートナー」と仰っていただいたことに恥じぬよう、今後も微力を尽くして支援させていただきます。

ゲオからセカンドストリートへの事業ポートフォリオの転換を推進するゲオホールディングス。リユース事業であるセカンドストリート800店舗体制に向けて、人数を確保することに加え、質を担保すべく、活躍する店長の要件定義を行いました。

※本取材は2023年3月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社ゲオホールディングス

事業内容

メディア、リユース、モバイル、オンラインサービス事業

業種

小売業

従業員数

従業員数:5,314名(グループ全体)

インタビューを受けていただいた方

高橋 知寿 様

株式会社ゲオホールディングス
組織開発室 組織開発課 マネジャー

インタビューの要約

成熟したレンタル事業から成長しているリユース事業へと事業ポートフォリオの転換を行うために、リユース事業のセカンドストリートを800店舗まで増やすことを目指していた。
活躍する店長の特徴を明らかにするため、人事データ分析を行った。全社員のパーソナリティ検査結果から10タイプに分類し、そこに評価データを組み合わせて、最終的に3つのタイプを事業部と協議の上、採用ターゲットとして決定した。
人員要望書を作成し、異動・登用プロセスの標準化に着手。
今後の課題はターゲット人財を確保していくこと。また、変化し続ける事業に適応できる組織であり続けるため、未来を見据えた要員計画にも取り組んでいる。

経営戦略、事業戦略に必要な人財を供給する。

私は、2006年4月にゲオにアルバイトとして入社し、店長やエリアマネジャーを経験した後、2017年10月に人事に異動しました。人事への異動当初は、人事データを分析してほしいと言われていましたが、人事本来の役割とは何なのか疑問を持っていました。自分なりに書籍やセミナー、他社の方々と話していく中で、人事の役割は事業に必要な人財を用意すること、という答えにたどり着きました。この時、人事がどのように事業に貢献できるのかが分かって、モチベーションが高まりました。当時、会社としては、リユース事業であるセカンドストリートの800店舗体制を目標として掲げ、事業ポートフォリオの転換を目指していました。そのため、セカンドストリートで活躍できる人財を増やすことを目的にデータ分析を行うことにしました。

経営戦略、事業戦略に必要な人財を供給する。

活躍する店長の特徴をデータ分析で明らかにする。

まずは、どのような人が店長として活躍しているのかを明らかにすることが必要と考えました。日本エス・エイチ・エルのコンピテンシーデザインコースで学んだ、カードソートというインタビュー手法を使って、当時のセカンドストリートの責任者にヒアリングをしてコンピテンシーモデルを作成いたしました。また、OPQのデータを活用して、クラスター分析にて10タイプに分類を行い、タイプ別のハイパフォーマーの人数や割合がどのようになっているのか確認したところ、特定のタイプにハイパフォーマーが多く分布している点や、店長・エリアマネジャー・ゾーンマネジャーと役職が高くなるほど、割合が増える傾向が明らかになりました。事業部と作成したコンピテンシーモデルと比較すると共通点が多く、事業部と協議し今後の採用ターゲットに決定いたしました。

当時800店舗体制を目指し、年間50店舗規模の出店を計画、人事主導の採用は「量」が重視されていた中、「質」の視点を示すことができました。

データ分析の経験を異動・登用プロセスに活用。

2020年4月に人事異動の担当となりました。当時は各部門からどのようなオーダーがあったかといった過去の記録があまり残っておらず、異動に関する相談先も担当者だったり、マネジャーだったり、ゼネラルマネジャーとバラバラなことで人財要件が曖昧だったり、追加で確認が発生しながら人事異動が行われている状況でした。そこで、人員要望書(職務記述書のようなもの)を作成し、なるべく要件に合った人財を各部門に配置できるように環境を整えました。

要件がより明確になったことで、データ分析の経験も活かし、より要件に合った候補者の選出が出来るようになったこと、エラーが発生した場合でも何が良くなかったのか振り返りが可能になったこと、追加確認が少なくなったことにより、業務効率を高めることができました。

2023年2月に発表した通り、セカンドストリートは800店舗を達成し、中期的に1000店舗体制を目指しております。正直に申し上げると、当社に応募してくれる方々からターゲット人財に該当する人を量・質ともに継続的に採用し続けることは挑戦的なことで、今までの母集団形成や選考方法の仕組みを変えていく必要があると考えています。

また、未来の要員計画に取り組んでおり、店舗のみならず、間接部門の重点職種においても、将来どのような人財がどれくらい必要なのか、今どのような人財がいるのか、どのようにギャップを埋めていくのか、課題解決に取り組んでおります。日本エス・エイチ・エルは、相談がしやすく伴走してくれる会社だと感じています。我々の課題を解決するために、今後もご支援いただきたいと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング3課 主任

内田 敬己

高橋さんは、「ビジネス」を前提とした人事を考え実行されているすごい方です。ただ、「考えて実行する」ために、様々な知識を獲得し続け、困難な社内外の交渉調整業務を乗り越えられている様子が垣間見え、ご苦労も多かったのではないかと拝察いたします。こちらからの各種ご提案に対して「そうはいっても実際のところ」をご教示いただけたのは何よりの学びになっております。約10年間、担当する中で数々の貴重な経験をさせていただき深く感謝しております。引き続き、有効な関わり方ができるよう当社として気を引き締めて対応させていただきます。

中部電力グループ唯一のIT企業として、「エネルギーの安定供給」をシステムインテグレーターとして支える中電シーティーアイ。電力自由化等によって事業環境が変化し、DXのさらなる推進のために社員一人ひとりのキャリア形成を支援する人事制度改革を行いました。

※本取材は2023年8月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社中電シーティーアイ

事業内容

アプリケーション開発保守サービス、インフラセキュリティサービス、解析サービス、大量データ処理サービス、IT運用サービス

業種

情報・通信

従業員数

1,271名(2023年6月1日現在)

インタビューを受けていただいた方

林 達也 様
正村 宣美 様

株式会社中電シーティーアイ
経営管理本部 人事部 採用・人事企画グループ マネージャー(写真右)
様経営管理本部 人事部 採用・人事企画グループ 専門課長 (写真左)

インタビューの要約

サービスの高度化に合わせて、人材の配置や育成の仕組みを変革すべく、企画から1年で人事制度改革などの様々な施策の運用を開始。
社員のキャリア形成を支援するために、社長・役員も含めてアセスメントを実施。結果の見方研修や説明資料により社内への浸透を促進。
取得データは日々のマネジメントからプロジェクトへのアサイン、全社や部署の特徴の可視化など人事施策の様々な場面で活用。
一気呵成に行った人事施策について、社員の反応や声をしっかりと聞きながら定着させていく。

DX推進のため、人材の流動性を高め、キャリア形成を支援する。

電力自由化により、一層の経営効率や新規サービスに取り組むことが求められるようになりました。その中でITの力は戦略上欠かせません。DXを一層推進する必要があります。これまではどちらかといえば受け身でシステムを作る仕事がほとんどでしたが、より高度な仕事をすることが求められるようになり、仕事の仕方そのものを変えなければいけないという問題意識がありました。組織として人員をなるべく高度領域の仕事にシフトし、保守運用の仕事を海外を含めて外注するという大改革を行うことになり、人の配置育成の仕組みも見直しました。まず、IT技術者としてどのような人を求めるのかを定義し、人事制度と連動する高度IT技術の認定制度を構築しました。次に、個人のキャリア形成支援のために、社員向けにアセスメントを実施しました。さらに、従来は人事異動が硬直的でしたが、流動性を高めるために社内公募制やFA制などを導入しました。また、各職場において年度当初に掲げた業務執行計画を確実に達成させるために、人事評価の運用にクラウドを利用したシステムを導入し、上司と部下のコミュニケーションによる目標管理の手法をより強化しました。

現社長は人事業務の経験も深いため、一体となって変革を進め、21年度に様々な施策を企画して22年度に運用開始することができました。

DX推進のため、人材の流動性を高め、キャリア形成を支援する。

自己理解促進のため、アセスメントを実施。経営層が積極的に受検。

社員一人ひとりが成長することで会社も成長のチャンスが増えます。しかし、若手社員はキャリア形成の道筋やお手本を求めているものの、お客様の課題解決のために必要となるITスキルの変化が激しく、上司も経験がない仕事をしているために指導が難しい状態でした。そこで、人事アセスメントを活用することを考え、既に採用で使用していた日本エス・エイチ・エルのアセスメント、OPQを社員に実施しました。当初は若手IT人材のみを対象とすることを考えていましたが、社長が「対象者の上司が結果の扱い方をよく理解する必要がある」と、自らも率先して受検し、ほかの役員や管理職も積極的に受検してくれました。合計1,138名が受検し、受検率は約90%でした。受検を依頼する際には、「自身の適性を客観的に把握する」という目的を丁寧に説明するよう心掛けました。公募制、FA制度にチャレンジする際の自己PRに活用できることや、現状社内にあまり存在していないコンサルティングやプロジェクトマネジメントなどの業務に対する適性を知るのに役立つこと、今後も数年に1度、定期的に実施する予定であることを、社員の皆さんに伝えました。

1on1から、アサインプロセス、人材可視化まで広範囲に活用。

取得したデータは目標管理のクラウドシステムに格納し、本人とその上司が結果を見ることができます。上司は部下の職種適性などを見て、キャリア形成のアドバイスや1on1ミーティングの材料などに活用してもらっています。結果の解釈の仕方については、解説動画を社内ポータルに用意しており、70%弱の方が視聴済みです。加えて、上司向け、全体向け、職種適性の能力開発ガイドなどの資料も配布しました。人事主導の施策ゆえ、結果の扱われ方に対する不安を払拭するためにも、なるべく多くの情報を提供しました。

客観的な物差しということもあり、結果はおおむね前向きに受け止められています。また、部署内でお互いに結果を共有することもあります。

人事側では、人事異動やプロジェクトへのアサインを検討する際、1つの参考材料として活用しています。人事内ではかなり浸透してきており、何か判断をする際に「(OPQの)結果はどうなっているの?」という声が聞こえてきます。また、全社あるいは部署ごとの特徴を把握するためにデータ分析も行い、実感を客観的なデータで再確認することができました。

また、これまでは人事異動が少なくずっと同じメンバーと仕事をしてきましたが、今後人材が流動化すると初対面の人々とプロジェクトを進めていくことが増えます。その際OPQという共通言語があれば、コミュニケーションも円滑になるのではないかと思います。

昨年は、盛りだくさんの人事施策を、短期間のうちに今までにないスピードで実施しました。社員にとっても目まぐるしい変化であったのではないかと思います。今後は、社員の反応や声をしっかりと聞き、必要なものを見極めて定着させていくことが大事だと思っています。社員が忖度せずに率直に意見を表明できる風通しの良さの表れなのか、毎年実施している社員の満足度調査では、人事評価結果に対して厳しい意見もありました。社長は常々「社員に何も言ってもらえなくなったら終わり。言ってくれるうちが華」と言っています。改革後の満足度は微増となりましたが、今後もアンケートなどで社員の声に気付くことができるようにしたいです。

日本エス・エイチ・エルは私たちのパートナーだと思っています。「言ってもらえなくなったら終わり」という言葉はどのような関係性にも言えることですので、今後も様々なアドバイスを期待しています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

改正 晃大

「社員一人一人がキャリアについて考えるきっかけを与えたい」という思いの下、細心の注意を払い進めていたことをとても印象深く覚えております。受検結果の開示だけでなく、OPQの解釈方法や活用に関する案内、部門ごとの分析結果の開示など、キャリアについて考えるための情報提供を惜しみなく行っており、皆様の思いがあって初めて実施できた取り組みだと考えております。これからも「パートナー」と言って頂けるよう、微力ながら尽力させて頂きます。

導入事例

タレントマネジメントシステム×適性検査データの広範的活用。ブラザー販売の人材可視化プロジェクト。

タレントマネジメントシステム×適性検査データの広範的活用。ブラザー販売の人材可視化プロジェクト。

人事データ・適性データをタレントマネジメントシステムに統合し、キャリア面談、採用基準作成、プロジェクトへの抜擢など様々な活用をするブラザー販売の取り組みをご紹介します。

※本取材は2021年11月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

ブラザー販売株式会社

事業内容

インクジェット複合機、モバイルプリンター等情報機器、家庭用ミシン等の商品企画・広告宣伝・営業・営業企画・アフターサービス等、ブラザーグループの国内マーケティング事業

業種

卸売業

従業員数

347名(2021年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方

山内 優 様
渡部 しのぶ 様
舩橋 優太 様

ブラザー販売株式会社
人事総務部 人財戦略グループ シニアマネージャー(写真中央)
人事総務部 人財戦略グループ チームリーダー(写真左)
人事総務部 人財戦略グループ(写真右)

インタビューの要約

ダイバーシティ推進と人事業務効率化のために、タレントマネジメントシステムを導入。いわゆる人事データのみならずポテンシャル適性データも統合して全体最適な人事を行うべく、「万華鏡30」の全社員受検を実施。
適性データをタレントマネジメントシステムで統合し、社員が自身のポテンシャルや似た特徴を持つ社員の分布を把握できるように構築した。またキャリア面談での上司とのトークテーマとし、適性データを見ながら能力開発や能力発揮の支援に活用できるようにした。
勉強会のメンバーの推薦や、採用基準の再設計にも適性検査データを活用。ローテーションや次世代リーダー発掘に生かすため、今後は質的なディスカッションを重ね、各部門で求める人材像を策定する予定。
目指すのは、受け身ではなく主導的な立場で提案できる人事。人事が能動的に動くためのツールとして、今後も人材データを活用していきたい。

ダイバーシティ推進において、大局的視点の必要性を実感。 散在する人事データを統合するため、タレントマネジメントシステムを導入。

もともとダイバーシティ推進において、個人の特性を生かし全社的に最適な人事判断をするための材料が不十分であることに問題意識がありました。当社内の人材を俯瞰することができないと、どうしても局所的な視点から人事異動やリーダーの抜擢が行われてしまう懸念があります。本当のダイバーシティを実現するためにどうすればいいかと考えていたところ、タレントマネジメントシステムが盛り上がりを見せ、興味を持ちました。

様々な人事データが散在しており、業務効率化の観点でも人事データを統合したかったところに改善活動推奨の追い風もあり、タレントマネジメントシステムの導入を決めました。タレントマネジメントシステムをローテーションなどの人事施策に活用するためには、人事データだけではなく、ポテンシャルやモチベーションなど適性データも統合する必要があります。そこで、直接雇用の全社員に対して万華鏡30を実施しました。

ダイバーシティ推進において、大局的視点の必要性を実感。 散在する人事データを統合するため、タレントマネジメントシステムを導入。

最初は新しいシステムの導入にハードルがあるのではないかと思いましたが、社内で反対はまったくありませんでした。折しもコロナ禍でリモートワークが始まり、DXやデータ活用の機運が高まっていたため、とんとん拍子でプロジェクトが進みました。

全社員の適性検査データをタレントマネジメントシステムに統合し、 いつでも自分の情報を見られるように。
コロナ禍で減ったフィードバックの効果も期待。

直接雇用の全社員に対して万華鏡30を案内し、約95%の社員が受検してくれました。受検に際して、「全社的な適材適所を実現するために、個々人の職務に関連する行動スタイルを可視化したい。今後は採用基準やローテーション、育成計画のためにデータを活用する。」という趣旨の案内をしました。 受検結果をタレントマネジメントシステムに取り込み、本人と本人の上司、および事務局のみが結果を見られるようにしました。自分のポテンシャル値が領域ごとにレーダーチャートで表示され、似た波形をもつ社員を把握できるようにしました。加えて、自分の能力開発ニーズに基づいて上司とキャリア面談をできるようにしました。

高い受検率の背景には、コロナ禍の影響もありました。リモートワークが始まり、他者からフィードバックを受ける機会が減りました。その中で、「自分はどのような人間なのだろう」「どのような強み・弱みがあるのだろう」ということを見つめなおしたいというニーズがあったのだと思います。

キャリア面談、特定のプロジェクトへの抜擢、採用基準設計など 広範囲にデータを活用。
今後はディスカッションも併せ、求める人材モデルを作りたい。

タレントマネジメントシステムに集積したデータは、職務を離れて上司と価値観やキャリアなどをディスカッションするキャリア面談に活用されています。本人が自分の結果をもとに、「発揮できている能力」「もっと発揮したい能力」「克服したい能力」「工夫で乗り切りたい能力」などを選び、その情報をもとに上司と面談できるようにしました。キャリアを描く際に、科学的に推測された自分の強み・弱みの情報を活用できることは、社員にとってメリットが大きいと思います。

また、DXに関する自主勉強会の企画が持ち上がった際に、万華鏡30のあるコンピテンシー群の数値をもとに、若手社員の中から推薦者を抽出してみました。浮上したメンバーは事務局のイメージした人材像に近く、前向きな人ばかりでした。人材を探そうとなったときに、特定の条件ですぐに抽出できることの利便性を感じました。

キャリア面談、特定のプロジェクトへの抜擢、採用基準設計など 広範囲にデータを活用。 <br>今後はディスカッションも併せ、求める人材モデルを作りたい。

さらに、集積したデータをもとに、採用基準の見直しも実施しました。データを使ってローテーションや次世代リーダーの発掘も行う予定でしたが、これはサンプル数の問題もあり、まだ着手できていません。しかし最近、コンピテンシーの書かれたカードを使ったディスカッションの方法(カードソート法)をご提案いただき、まずは3年目に求める要件、DX人材に求める要件、そしてマネジャーに求める要件とディスカッションを重ねたところ、共通した人材像が見えてきて手ごたえを感じました。今は各部門で求める人物像や次世代リーダーの人物像を明確化し、採用や育成にフィードバックしていこうと思っているところです。

適性検査データの解釈には注意すべき点もあります。たとえば、ある部門に求める人材像を定義しても、すべてを満たす人材はほとんどいません。理想的な人材像を定めた上で、その中での優先順位や、能力開発で伸ばしやすい部分、素養として持っているのが望ましい部分などを細かく選定しておくことが、運用上必要でしょう。また、個々人がデータをどう解釈するかも重要です。若い社員が「このデータが私のすべて」というような解釈をしてしまうと、自己認識を必要以上に固定化するリスクもあります。結果はあくまで現時点のポテンシャルであって、自分に限界を定めないように啓発することも併せて必要だと思います。

上司が部下の適性データを解釈できるようになるためのサポートも必要です。リモートワークで上司が部下を直接見る機会が減ったため、データの重要性は高まっています。また、コンピテンシーに関する理解は、今後求める人材像をディスカッションしてゆく中でも必要な土台になると思われます。

今までの大きな問題は人事が受け身だったこと。今後は情報を出してと言われて開示するのではなく、主導的な立場でデータを提供して判断を仰ぐ、もしくは人事から提案するべきと考えます。人事が能動的に動くためには集積したデータが必要です。タレントマネジメントシステムには、適性データ以外にも様々な人事データが統合されていますので、それを概観してタレントマネジメントの判断材料にしていきたいです。

日本エス・エイチ・エルには適性検査の見方や他社の事例など、今後もご提案をいただけると助かります。打ち合わせで様々なディスカッションができるのを毎回楽しみにしています。これからも良き伴走者になっていただけるとうれしいです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

松波 里奈

人材可視化から人材データ分析、活用支援までを行う重要なプロジェクトをご依頼頂いた際には、ワクワクすると同時に身の引き締まる思いで毎回の打合せに臨んでいました。 お打合せでの議論においても、当社からのご提案について多様な観点でご質問を頂くなど、社員のポテンシャルを引き出したい、より組織を活性化させたいというお三方の強い思いを感じさせる時間でした。現有社員の特徴を踏まえて、必要とされる人材要件を定義し、採用基準を一新できたことは、皆様と一緒に作り上げた一つの成果だと思っています。一方でタレントマネジメント施策には終わりがなく、よりよい人材配置や人材育成を実現する為に次の議論をスタートさせて頂いていることは、大変光栄に感じております。よき伴走者として頼って頂けるように、私自身も尽力して参ります。

導入事例

研究者がビジネスをするために、自己理解と協働を促進。カイオム・バイオサイエンスの組織開発ワークショップ。

研究者がビジネスをするために、自己理解と協働を促進。カイオム・バイオサイエンスの組織開発ワークショップ。

ビジネスモデルの大幅な変更を経験し、創薬ベンチャーとして再出発したカイオム・バイオサイエンス。
成果創出に向けて社員の能力開発と協働を促すための取り組みをご紹介します。

※本取材は2021年6月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社カイオム・バイオサイエンス

事業内容

独自の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした抗体医薬品の創薬事業および創薬支援事業等

業種

医薬品製造業

従業員数

58名(2021年6月30日現在)

インタビューを受けていただいた方

弘津 千津子 様

株式会社カイオム・バイオサイエンス
経営管理部長

インタビューの要約

数年前に経営体制の刷新と事業方針の大幅変更を経験。研究員の一部には専門外の分野へのチャレンジが求められたり、成果創出のためにビジネスを意識したプロジェクトマネジメントを初めて任されるなどして、高いハードルが課され、研究者としての探求心と、組織内での貢献をどのようにつなげられるかという葛藤が生じていた。
現在、成長基調にある当社においては、創薬開発のスピードアップや受託研究の拡大に対して、組織的に対応することが急務であり、今後社員には、さらなる役割の変更や拡大を期待する可能性が高い。そこで、自身と組織で働く他者について改めて相互に理解し、協働を促進するためのワークショップを開催した。
管理職以下全社員が「万華鏡30」を受検し、自身の特徴を理解した後、自身の仕事の面白みや悩みを共有するグループワークを行った。他者の仕事への理解と関心が高まると同時に、自身の能力開発への意識が高まる効果を実感した。
今後は、プロジェクトやタスクへの任命にもアセスメントを活用し、成果創出に戦略的人事として貢献していきたい。

組織や人事制度の変更や事業方針の大幅転換の中で 人の心はついてこなかった。

当社は、2005年に国立研究開発法人理化学研究所の太田邦史研究員(現 東京大学副学長・教授)が開発した、ADLib®システム(アドリブシステム)という抗体作製技術を事業化するために設立された会社です。2011年に上場した際の事業計画は、このADLib®システムを、製薬企業に技術導出し、収益を獲得するというものでした。抗体作製の新技術は世の中でも広く話題になり株式市場でも大いに注目を得ましたが、残念ながら当初目指していた技術導出により大きな収益を獲得するという結果には至りませんでした。2017年には経営体制を刷新し、新社長のもと、それまでの技術導出を中心とした戦略から、基盤技術をベースとした創薬開発ベンチャーとして自社で開発した医薬候補品(パイプライン)を製薬企業等に導出するビジネスへと事業転換しました。

この大幅な事業転換を実施する前の2015年には100名を超えていた従業員の数を希望退職の実施により2016年末には約50名まで縮小。機能別だった組織にプロジェクト制を導入するなど、人事制度の変更を進めていた中で、さらに2017年に大きな事業転換を行うことになり、社員の心には期待と不安が入り混じっていました。半数以上の研究員は、専門外の分野におけるチャレンジを求められたり、これまでに経験のないプロジェクトマネジメントの責任を担う状況に初めて直面するなど、とてつもなく高いハードルを課される状況に陥っていました。

事業フェーズの進展に伴い、今後の役割拡大・役割変更に備えて、 自分と組織について知ってほしい。

現在、事業転換から4年が経過し、ひとりひとりの努力が実り創薬事業でも成果が出始め、手ごたえを感じながら研究開発を進める社員が増えてきました。現在、当社には、臨床試験のフェーズに入っているパイプラインが一つと、臨床準備中のものが一つあります。今後、当社が、創薬ビジネスにおいて持続的に成長していくためには、臨床開発フェーズに至るパイプランを継続的に創出すること・外部との取引を拡大していくことが重要であり、社員には事業状況や組織、自分自身、そして一緒に働いている人々について知っていただき、会社の成長とともに起こり得る自身の役割変更・役割拡大に備えていただきたいという思いがありました。

今回、管理職以下全員を対象に、社内の各部門が担っている役割や成果、万が一自分が異動した場合に何が求められるのかをイメージしてもらうための研修を行いました。研究者はもともと、探求心を持って一つのことを深く考察するのに長けているが、自らの専門分野から離れたところで周囲の助力を求めながら仕事を進めていくことは苦手な傾向があります。会社としては、この機会に、自分の特徴を振り返り、自分でできること・周囲の協力を得ないとできないことを知ってもらいたい、また同僚の苦しみや組織の課題を知って、ともに解決策を考えてほしいという狙いがありました。実は、数年前にも全社員アセスメントを試みたことがありますが、当時は事業が停滞していた影響もあり、組織や周囲に対する警戒心が強く、なかにはアセスメント自体を受けようとしない社員もいました。今回は特段反対もなく全社員が期日までに受けてくれて、だいぶ受け止め方が変わったと感じました。

事業フェーズの進展に伴い、今後の役割拡大・役割変更に備えて、 自分と組織について知ってほしい。

研修は数人ずつのグループによるワークショップ形式。「万華鏡30」の結果をもとに、自身の特徴について理解したあと、「自分の仕事を、面白みの観点から説明する」、「自分の職場での悩みを話す」、この2点の課題に取り組んでいただきました。組織の中で自己アピールをするとともに、他者に共感してもらうのが狙いです。それぞれの行動特性を認識しているので、どのような行動をとるべきかという現実的なディスカッションもできました。

研究者がビジネスをするために、客観的な自己理解と他者への関心が必要。

日頃自然科学研究に従事している研究者が相手ですので、日本エス・エイチ・エルのような外部業者が長年の研究に基づいて作成した、大規模データに基づく評定であるというアプローチが、とても適していました。今回、リーダー候補者層を対象にしたリーダー研修も別途実施しており、そこではコンピテンシーのポテンシャルに基づく説明を強化しました。自分の強みと弱みを認識した上でオンラインの研修を受けてもらうのですが、能力開発の必要性を実感してもらう良い流れができました。

研究者がビジネスをするのには、高いハードルがありますが、会社の成長を支える経験をとおして、現在では、すべての研究員が、研究をプロジェクトとしてマネージして成果に導かなくてはならないことを自覚しており、多かれ少なかれ「このままではいけない」という意識があるように見受けられていました。そのタイミングでアセスメントの結果を見ると、「やっぱり、こういうところが足りないのか」と、実感する部分があったのではないでしょうか。また、もともと研究者や技術者は、みずから腹を割って共感しあう傾向はあまりありませんが、それを解消するために今回の研修は効果的でした。ワークショップでは、皆さんが一緒に働く仲間に興味を持ち始めたな、というのを実感しましたし、体験の共有や共感から得られる学びの存在にも気づいてもらえたように思います。

今回、「万華鏡30」を組織開発ワークショップとリーダー研修のために活用しましたが、今後はプロジェクトチームの編成にも活用していけるのではないかと考えています。たとえば、各研究員はプロジェクト提案が通るとプロジェクトリーダーとなって研究を推進しますが、プロジェクトになる前のタスクにおいては、上長からタスクリーダーを任せる研究員をアサインすることが多いので、パーソナリティ傾向をもとに人事から可能性を提案するというのも有効だと思います。マネジメントコンピテンシーの高い人材や、イノベーションのポテンシャルの高い行動傾向を持つ人材を早めに起用するなど、戦略的な人事を展開することで、成果の創出に貢献できるのではないかと考えています。

日本エス・エイチ・エルのコンサルタントに共通しているのは、分析することを楽しみ、結果が役立つのを喜びに感じておられる方が多いことだと思います。万華鏡30の活用方法も、専門家の観点からいろいろと提案してくださるので、「いい会社だな」と感じています。これからも他社の興味深い取り組みなどを共有いただきながら、組織・人材開発について広く意見交換させてもらいたいと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

霞 紫帆

「自分と組織についてもっと関心を持ってほしい。知ってほしい。」弘津様のこの思いが本プロジェクトの推進力となりました。
「研究者の方々に、他人に関心を向けてもらうよう働きかけるには、どんな手法が最も効果的か」を検討し導き出したOPQの学術的背景から伝える方針は、本プロジェクトの一助となったのではないかと考えております。弘津様の思いを皆様と共有できればという気持ちでワークショップの講師も務めさせていただきました。少数精鋭の組織だからこそ、パーソナリティをコミュニケーション活性や能力開発に役立てるやり方が効果的であったと思います。
引き続き、探求心を忘れず多角的に組織発展のお力になれれば幸いです。