アセスメント

決裁箱

管理職としての業務遂行能力を測定する、イントレイ演習(※)形式のマークシートテストです。 実際の仕事場面に即した情報整理能力・問題分析能力を測定します。
採用試験や社内の昇格試験、研修前のアセスメントなどにご利用いただけます。

※イントレイ演習…未決書類に関する課題を実施するシミュレーション演習。インバスケット演習ともいわれる。

測定項目 イントレイ演習
所要時間 約60-90分(題材により変動)
実施形態 紙(マークシート)
受検結果 csvデータ、個人帳票

決裁箱とは

管理職としての業務遂行能力を測定する、イントレイ演習形式のテストです。

高い妥当性

管理職の実際の業務を模倣したテストであるため、知識・学力を測定する試験よりも妥当性(能力保有や将来の成績差の予測精度)が高くなります。国内大手企業100社以上の登用試験として利用実績があります。

管理職の業務過程をシミュレーション

大量の稟議書類や未解決の問題を迅速かつ的確に判断・処理していく、実際の管理職業務を模倣した演習テストです。短時間で大量の業務資料を読み込み、それぞれの案件に優先順位を付けて判断していきます。

仕事場面に即した
情報整理能力・問題分析能力を測定

マネジメント能力における「情報処理」「計画」「分析」能力を測定します。

決裁箱で与えられる課題

回答時間や難易度が異なるテーマをご用意しております。

STEP 01

受検者には新任マネージャーの役割が与えられます。

STEP 02

マネージャーが日頃よく目にするメールや書類等の資料一式が与えられます。

STEP 03

多くの資料を短時間で読み込み、価値づけ、仕事の段取りを検討します。

STEP 04

そして、個々の問題について解決を図っていくことが求められます。

利用料金

5,000円/名

(内訳:問題冊子・資料ファイル3,000円/1冊 + 採点処理料2,000円/1名)

※別途送料が発生します。
※上記費用に消費税は含まれておりません。

お問い合わせ

ご不明な点がございましたら、担当コンサルタントまたは「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。

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アセスメント

無尽蔵Ⅰ

人事評価の一手法である360度評価(上司、同僚、部下からの評価)をWeb上で行うツールです。

測定項目 コンピテンシー、重要度認識
所要時間合計 30分

※本人上司以外は20分

無尽蔵とは

マネージャーの育成・強化を目的としたWeb上で実施する360度評価(能力開発)ツール

能力開発までサポート

会社(上司)が求める期待と、周囲(上司、部下、同僚)から評価された行動頻度の対比から、能力開発すべきポイントを明確にします。能力開発課題は具体的な能力強化ガイドを提示し、能力開発の支援をサポートします。

作為的な回答の抑止

様々なバイアスを排除する4問2択式の回答方式を採用し、同じ行動を評価する複数人の評価レベルのバラツキを抑えます。すべてが高い/低いなどの人気投票に終わることなく、個人の中の強み/弱みを明確にします。

実施の負担が少ない

受検からフィードバックまで、全てオンラインで完結できるため、人事担当者・受検者双方の負荷をかけずに実施できます。また、被評価者1名分の料金は上司・同僚・部下の受検を含み、低コストで実施できます。

無尽蔵の科目と特徴

コンピテンシーと重要度認識を測定します。

  • コンピテンシー評価
  • 重要度認識評価

コンピテンシー評価

4つの行動に関する記述の中から、「『評価対象者』の日常の仕事ぶりに最もよく見られる行動」を1つ、「最も見られない行動」を1つ選択します。

利用料金

受検料

8,000円/被評価者1名

※上記費用に消費税は含まれておりません。

お問い合わせ

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アセスメント

羅針盤

実際のマネジメント場面を模した状況判断シミュレーションを行うオンラインの管理職適性テストです。

測定項目 状況判断
所要時間合計 40分
ノルム 管理職

羅針盤とは

実際のマネジメント場面を模した状況判断シミュレーションを行い、管理職に必要な「判断力」と「マネジメント・スタイル」を測定します。

実際のマネジメント場面を模した状況判断能力を測定

どのような職種でも、管理職は職場の状況に応じて頻繁に決定を下さなければなりません。実際のマネジメント場面を模した課題について対応策を選択することで、判断力を測定できます。

マネジメントスタイルを測定

マネジメント能力をスタイルとして捉え、受検者が「マネジメントをする際に何を重視して決断を下すか」を客観的に評価します。事前に管理職としてのスタイルを把握しておくことで、マッチングや受検者本人の能力開発につなげることが可能です。

羅針盤の科目と特徴

判断力とマネジメントスタイルを測定します。

状況判断

テストは「状況」と「打開策」の2つからなっています。 受検者は「状況」の理解と、「打開策」が適切かどうかの評価が求められます。 現実場面のマネジメント状況を比較考量し、適切で有効な対処法を決定する判断能力と、管理職としての判断の特性であるマネジメント・スタイルを測定します。

利用料金

受検料

8,000円/名

※上記費用に消費税は含まれておりません。

お問い合わせ

ご不明な点がございましたら、担当コンサルタントまたは「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。

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アセスメント

MFS

コンピテンシーの発揮レベルを測定する多言語360度評価ツールです。コンピテンシーについて、上司と評価者の間で重要度に対する認識差が無いか、周囲からどのように評価されているかを可視化します。

測定項目 コンピテンシーの重要度認識・発揮レベル評価
回答時間 ・重要度認識(上司・本人のみ) 約5分
・発揮レベル評価(上司・本人・同僚・部下・その他) 約15分

MFS(Multi-Rater Feedback System)とは

コンピテンシーの発揮レベルを測定する多言語360度評価ツールです。

2つの観点から行動改善を促進

発揮レベルに対する認識差だけでなく、上司との重要度認識の差を踏まえ、「重要と認識していないため、発揮もされていない」「重要ではあるものの、発揮がされていない」等、複数の観点から行動改善を促進します。

多言語対応

ご契約プラン次第で、最大30言語の実施が可能なため、多国籍なチームで働く対象者にも問題なく実施できます。

設問カスタマイズ可能

ご契約プラン次第で、選択式、自由記述式の追加設問の設定が可能でオリジナルのアンケートを実施することができます。

MFSの科目と特徴

コンピテンシーにおける重要度認識・発揮レベルを評価します。

  • 重要度認識
  • 発揮レベル評価

重要度認識(上司・本人のみ)

コンピテンシーについて、どの程度重要と認識しているかを回答します。

利用料金

  • システム利用プラン
  • ビューロサービス

Webテストシステムの利用権をご提供し、各種運用をお客様の手元で行っていただくプランです。
日英以外の言語への対応、追加設問の設定等、カスタマイズが可能です。

システム利用プラン

年間使用権料

30万円/年
(日英設定の場合)

被評価者1人あたりの評価料

3万円/名

※上記システム利用プランの年間使用権料は一部初期設定費をふくみます。
※上記費用に消費税は含まれておりません。

お問い合わせ

ご不明な点がございましたら、担当コンサルタントまたは「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。

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「やってみなはれ」精神で日本の園芸業界での新たなビジネスモデル展開などを成功させたサントリーフラワーズ。創業以来、持続的に新たな商品やビジネスを創り出してきました。今後のさらなる成長のため、継続的に次世代を担う人材が集う会社とすべく、社員のキャリア開発を強化しました。社員のキャリア自律を支援する取り組みについてご紹介します。

※本取材は2023年1月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

サントリーフラワーズ株式会社

事業内容

花苗・花鉢、野菜苗・野菜青果、および切花の開発・生産・販売

業種

水産・農林業

従業員数

60人(2022年)

インタビューを受けていただいた方

竹舛 啓介 様

サントリーフラワーズ株式会社
経営企画部 部長

インタビューの要約

少数精鋭の組織ながら、フルバリューチェーンで幅広い事業を展開している。そのため多様なキャリアパスがあるものの、社員一人ひとりに自らキャリアを描く機会が不足しており、組織として効果的な支援ができていなかった。また、採用時の求める人材像も総花的で自社に相応しい個性に欠けていた。
マネージャーによるキャリアビジョン面談を実施。それに先立ち、社員一人ひとりの自己理解促進のためにアセスメント(万華鏡30)をほぼ全社員に実施。アセスメント活用のための研修や全マネージャー参加のキャリアビジョン実現支援会議を開催。
社員のアセスメント結果の分析から、求める人材像を定義。求める人材を高い精度で採用するために、面接評価シートを作成し、面接者トレーニングも実施予定。
マネージャーにキャリアビジョンの重要性が浸透し始めた。今後は社員がキャリアについて本来あるべきオーナーシップ・自己裁量感を持つことができるよう、引き続き取り組んでいく。

多様なキャリアパスがある会社。 課題は、次のビジネスを生み出す人材育成と求める人材の科学的採用。

サントリーフラワーズは従業員約60名で、国内園芸事業(花苗・野菜苗)・切花事業(含む海外)・青果事業・海外ライセンス事業と幅広い事業を展開しています。かつ、新品種開発・品質保証・生産SCM・マーケティング・営業とフルバリューチェーンで事業を行っていますので、社員には多様なキャリアパスがあります。

各事業部のマネージャーは創業期からビジネスに関わってきた人材が中心となっており、今も新事業やビジネススキームを生み出し続けています。しかし、次のリーダーを育てる仕組みは整備されていない。非連続の視点、新しいチャレンジをする発想を求められる場面は限定的です。では何から着手するか。私は、キャリアを考える中で自分が何をしたいか、どうありたいかということを考えていくことが、仕事のやりがいを高めるとともに、非連続な発想のチャンスになると思いました。例えば、「私は人事の仕事が楽しいからもっと深めたい」では今の延長線上ですが、もっと根本的な「自分は植物の良さによって人生を満たされている。そうした価値を世の中の人にもっともっと届けたい」といった自身の価値観とキャリアが結び付けば、事業の新しい成長・変革の力になると考えました。また、「自分が何より嬉しい瞬間は、身近な人が笑顔になったとき。」といった自身のやりがいを見出し、それを実現できる仕事に携われば、当然仕事が面白くなり、一人ひとりの成果もより大きくなると考えました。

多様なキャリアパスがある会社。 課題は、次のビジネスを生み出す人材育成と求める人材の科学的採用。

同時に、より現実的な課題もありました。採用において求める人物像が明確ではありませんでした。面接者をお願いしたマネージャーに「どんな人を採用したいのか」と聞かれても、例えば、「自主性が高い人、協調性が高い人」など、どこの会社にも当てはまる内容を答えている状態でした。会社のどこにどのような人がいるのか、どんな人が活躍しているのかを科学的に把握して、そうした人材を採用できる仕組みを作りたいと考えました。

アセスメントによる自己理解の支援とマネージャーによる面談。 全マネージャー参加のキャリアビジョン実現支援会議も実施。

各事業部を率いるマネージャーはビジネス推進力が極めて高く、人や組織にも関心がある。しかし、実務に追われ部下育成に時間を割きづらい状態。それは認識したうえで、今回の取り組みを推進するためにはマネージャーが担い手になることが不可欠なことから、意義や狙いの説明をしっかりと行うことを強く意識しました。そのうえで、マネージャーによるキャリアビジョン面談を実行しました。

社員はこれまでキャリアという言葉について説明をうけたり、考えたりする機会がほとんどなかったため、急にキャリアビジョンと考えようと言われても困ってしまうことは言うまでもありません。そこで、まずは万華鏡30を通して自分の価値観や仕事の癖、特徴を知ってもらうことにしました。受検は任意でしたがほとんど全員が受検し、受検後に開催した日本エス・エイチ・エルによるアセスメント結果活用の説明会には、経営陣も含め多くの方が参加しました。

また、2022年12月には全マネージャーが参加する「キャリアビジョン実現支援会議」を立ち上げました。部署に関わらず35歳以下の社員全員について、1人当たり30分ずつ、どんな強みや課題、ビジョンを持っているか、これから何を経験してもらい、どう育成すべきかを話し合います。例えば、「成長がS字カーブに来ているので部署横断プロジェクトのリーダーを任せてみよう」、「環境をかえて新しいチャレンジをしたら良いのではないか」など。サントリー在籍時に立ち上げた同様の会議を参考に企画を立案しました。個々人を深く理解するだけでなく、他部署を含めたメンバーを普段からしっかり見ており、良い育成やマネジメントをしているマネージャーから刺激を受けられることがこの会議の良い点です。

データ数が少ないアセスメント結果を分析し、求める人物像を定義する。

アセスメントの受検を案内する際に、結果を採用基準作成の参考情報と使うと伝えました。結果データの分析方法は日本エス・エイチ・エルに相談しました。約60名の会社なので部署ごとの統計的な検定が難しい状態でしたが、最終的にクラスター分析を行いました。分析結果から求める人物像として2つのタイプを定義し、そうしたコンピテンシー特性を見極める為の面接評価シートを作成しました。23年2月には、面接者トレーニングも実施を予定しています。実際の採用での活用はこれからですが、私たちの会社で自身の個性を活かし、よりやりがいをもって働ける方と出会える確度が高くなることを期待しています。

キャリアビジョン実現支援会議後にマネージャーに行ったアンケートを見ると、キャリアビジョンの重要性が理解できたという回答が多く、ようやくスタートラインに立てたと感じています。「もっと対象を広げて実施しよう」という声も出ていて、この会議は今後も発展していきそうです。また、キャリアビジョンや職務経歴といった人材プロフィールを整理し、並行して今後はあるポストにはどういう人材が必要なのかも組織全体の共通認識としてまとめていきたいですね。そして、この会議で話し合った内容をもとに人員配置などが行われることによって、マネージャー自身も人・組織の取り組みに対する自己裁量感を高め、人の育成にますます積極的に取り組むようになることを期待しています。

マネージャー以外の社員からはキャリアビジョン面談中に万華鏡の結果を互いに共有して相互理解が深まったという声を聞きました。今はまだマネージャーに結果を開示するかどうかは本人に委ねていますが、今後は自然と共有されるような、より心理的安全性の高い組織にしていきたいと思っています。少しずつ階段を上っている状態ですが、社員がキャリアについて自己裁量感を持ち、新たな挑戦ができるように、引き続き取り組んでいきたいです。

日本エス・エイチ・エルは、一人ひとりの特徴をとらえ、解像度を上げることにこだわっている会社だと思います。自分自身も一人ひとりの個性を大切にすることを人生の柱にしているので、信頼できます。その上で科学的なアプローチをとるので、再現性や納得性が高いです。また、仕事をきちんと進めていく風土があるので、今後も一緒に仕事をしていきたいですね。加えて、日々新しいことを教えてくれます。2カ月後に同じ課題を相談したら、新たな提案をしてくれるのではないでしょうか。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

畔取 祐介

本件はご相談から2か月間で社員受検が始まりました。竹舛様の意思決定の速さと実行力に、社員と会社に対する強い思いを感じました。アセスメント(万華鏡30)をフィードバックによる各人の自己理解促進とデータ分析による社員傾向の客観的把握にご活用いただきました。限られたサンプル数で実施した分析でしたが、結果をうまくご活用いただけた手応えがありました。今後もサントリーフラワーズのタレントマネジメントの改善のお力になれれば幸いです。

現場で評価される技術者に偏っていた従来の人材選抜と育成体系。
これを一新して経営を担える人材を育てる、東京電設サービスの人材育成改革をご紹介します。

※本取材は2021年4月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

東京電設サービス株式会社

事業内容

発電、送電、変電設備の保守に関する工事及び作業。発電、送電、変電設備の分析、試験、診断ならびに図面作成・整備業務。電気設備の運転、監視業務。電気設備機器類の製作、買取り、販売。建設業(電気工事業、土木工事業、とび・土工工事業、塗装工事業、鋼構造物工事業、電気通信工事業)。測量業、建設コンサルタント業。建物にかかわる空調、防災、電気設備の保守管理ならびに建物清掃、警備業務。労働者派遣事業。電力設備の技術に関する研修及び広報の企画実施。前各号に付帯関連する事業。

業種

設備工事業

従業員数

854名(2021年3月末現在)

インタビューを受けていただいた方

石山 敢 様
佐々木 朋徳 様

東京電設サービス株式会社
人財・技術開発センター 所長 (写真右)
人財・技術開発センター 採用・育成グループマネージャー (写真左)

インタビューの要約

技術者が中心となる企業文化だったため、人材育成や任用が知識・技術の習得や現場での評価に偏っており、将来の管理職や経営を担う人材を育成するという視点を欠いていた。
アセスメント(万華鏡30)を利用して、個々人の特性や人材タイプ、ポテンシャルを可視化。個人の強みを活かしたキャリア開発ができるよう、アセスメントを用いた育成面談の手法を管理職に身につけさせた。
今後実現したいことは、人財育成管理システムを軸にした育成体系の構築。新しい事業領域に進出するための人材の登用や育成にも活用したい。

管理職育成の課題意識を背景に、人材可視化プロジェクトをスタート。

東京電力グループは、徹底した収益力の改善と企業価値の向上を目指していくという全体方針があります。当社も、もともとは送変電設備の保守・点検業務などを行っていましたが、オフィスビルや工場などの電気設備でのメンテナンスや、工事・施工管理業務も行うようになり、それに耐えうる人材を育成していく必要がありました。従来、発注者が親会社であり、電気のプロであるため、作業に関する詳細な指示がありましたが、一般のお客さまは当社をプロだと思って任せてくださるので、自分から課題を発見し提案を行う必要があります。これからの人材は応用力や、新しい課題に対応する力を身につけなくてはならないと考えています。

日本エス・エイチ・エルのアセスメントツール「万華鏡30」を導入したのは、どの人材がどのようなタイプのコンピテンシーを持ち、各タイプのコンピテンシーを強みとする人がどれくらい社内にいるのかを客観的に把握するためでした。最初のきっかけは、管理職が事業や経営に関する視座を持てるよう、底上げが必要だという意見が社長から出たことです。当社の処遇や任用の仕組みが、現場技術者としての評価に偏っており、将来の管理者や経営に関与できる人材を育成し任用するという仕組みになっていなかったことが、根本的な原因と考えています。「人あたりがいい」「現場での動きがいい」といった評価だけではなく、例えば、アセスメントを用いて幅広いコンピテンシーを客観的に評価し、全社共通の目線で育成施策を打つことが、改善の第一歩になるのではないかと考えました。

管理職育成の課題意識を背景に、人材可視化プロジェクトをスタート。

アセスメントデータを分析し、社員の傾向を把握。

日本エス・エイチ・エルのコンサルタントから説明を受け、アセスメント(万華鏡30)はたくさんの使い道があると感じました。たとえば、人事的な意思決定の資料にもなりますし、社員の全体傾向を見て、今後目指すべき人材像を特定したり、現状の不足部分を把握したり、今後の採用方針を決めたりすることもできます。当初の目的は管理職の底上げでしたが、今後会社を支える中堅や若手社員のポテンシャルを把握し育成することも重要ですので、一般職も含めてアセスメントを実施しました。

日本エス・エイチ・エルのコンサルタントに分析してもらったところ、管理職者は変化に適応したり、革新的なことを遂行したりするのがやや苦手な傾向があることがわかりました。中心になって組織を引っ張るべき管理職が変化を苦手とする傾向は、手を打つべき課題です。現状、社内で新しい施策の企画立案を担当するのは、親会社からの出向や転籍者が多い傾向がありますが、その役割をプロパー社員に伝承する必要があると感じます。実際に事業を回し、お客さまと直接向き合っているのは親会社の管理部門ではなく、子会社の担当者。ビジネスの源泉が子会社で生まれることもあるでしょうし、事業を最前線で担っている自負を持っていただく後押しができればと思います。

「育成=知識や技能の向上」ではない。 個々のポテンシャルを加味した部下育成を推進。

受検者自身がアセスメント結果を閲覧できるようにもしました。スタッフは自身の能力開発のために、管理職は部下育成のために、経営陣は全社員の傾向把握のために、アセスメント結果を参照できるようにしました。
また管理職を対象に、部下にアセスメント結果を活用したフィードバックを行うための研修を実施しました。この研修では、アセスメントの結果から人材タイプの大別方法、各タイプの強み弱みを踏まえた質問の仕方、育成目標を決める上で確認しておくべきこと(これからどのような仕事をやってみたいか、今後取得したい資格は何か、どのように強みを活かすかなど)を学びます。効果的に育成面談を進めてもらうことがねらいです。かつてのように、全員が一律に管理者を目指す時代ではなくなりました。スペシャリストとして技術や知識に磨きをかけることを志向する人もいると思いますので、自身の特徴をもとに、うまく気付きを促す機会になればいいと思っています。同時に、日ごろのOJTも踏まえ、マネジメントのポテンシャルが高い方は、適切に育成・任用します。この新しい育成の方針について、賛同を得られるか不安もありましたが、反対の声はありませんでした。実在する社員のアセスメント結果を使った解釈の例示もしており、一定の納得感を得られたため、受け入れられたのだと思います。

これまで当社は技術を重んじ、キャリア開発や人材育成も、技術的な知識の習得や技能の向上という観点で考えがちです。今後も技術力を磨いていくことに変わりはありませんが、こうした研修を機に、コンピテンシーという観点を加え、人材育成を推進できるよう、仕組みを変革したいと思っています。人材育成に関心のある管理職はアセスメントの導入をよい機会と捉えていると考えています。

現場でアセスメント結果が活用されるのは、まさにこれからです。現在、管理職は部下の評価を行っており、次の業績目標を立てるタイミングで育成面談を実施します。そして、その結果(社員の志向、興味関心)とそれに対する上司の所見などを人財育成管理システムに集約します。このシステムには、経歴や所持する資格、受講した研修、そして今回のアセスメント結果が入ります。これらの情報に基づいたOJT計画を各職場で作ることが目標です。ツールはそろっており、あとはいかに運用してくかが肝心です。

また先述の通り、新しい事業領域に進出していくための人材発掘にも人材データを活用します。現在、当社の売上構成比を、親会社からの受注を中心としたものから、親会社以外を中心としたものへと変化させていく計画があります。お客さまが変わると、当然、仕事の内容も変わるので、従来からの人事制度も変えなくてはなりません。将来的な改定に向けて社内で協議しています。

日本エス・エイチ・エルは、様々なアセスメント会社がある中で、あまりセールス色の強い会社ではないので、相談しやすいです。フラットにいろいろと相談させていただける、良きパートナーだと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

小菅 和行

今回のお話をいただいたときに、東京電設サービスの「社員の育成体系の構築」、「新事業領域への進出」に携わることができるやり甲斐と責任感を感じました。
スキルや知識に加えて、ポテンシャルに焦点をあてた育成とキャリア開発の取り組みは、社員ひとりひとりが自分の強みを活かして自分らしく働くことができる会社になるためのものです。導入にあたって人材タイプの定義、各タイプの人材要件整理、各人材要件とアセスメントツールとの関連付けのために議論を重ねました。この議論が無ければ、石山さんと佐々木さんの目指すゴールにたどり着くことができなかったかもしれません。
まだこのプロジェクトはスタートしたばかりです。今後も東京電設サービスの皆様の声や思いに耳を傾け、本プロジェクトの成功のため支援させていただきます。

ポストコロナの航空便需要の回復で、人財の確保が重要な経営課題となった鈴与スカイホールディングス。
採用数を増やすだけではなく、人財育成の強化に取り組みました。

※本取材は2024年10月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

鈴与スカイホールディングス株式会社

事業内容

航空輸送における空港地上支援業務

業種

航空業

従業員数

686名(2024年10月1日時点)

インタビューを受けていただいた方

植松 謙治 様

鈴与スカイホールディングス株式会社
常務取締役

インタビューの要約

コロナ禍により人財流出が加速。航空便の需要回復により人手不足が経営課題となった。
既存の人財の流出防止と生産性向上のための育成に着目。属人的だった人財育成に対して組織的な支援を図る。
全社員に適性検査を実施。取得したパーソナリティデータから新たな気付きが得られた。
今後は、よりきめ細かく個人の育成にデータを利用する仕組みを構築し、アセスメントの活用を会社の文化として埋め込んでいく。

コロナ禍に人財が流出、需要回復に伴い人財不足に。

私は1982年に鈴与に入社し、まず物流業務を経験し、その後はシステム部門に長く在籍しました。2013年から全く経験のない航空事業に携わることになりました。鈴与グループに加わってから日が浅かったドリームスカイ名古屋と中部スカイサポートの管理業務を支援するためです。この2社は航空機の到着から出発までの様々な地上業務を分担しており、連携が求められます。2社を束ね求心力を高めるために2018年には鈴与スカイホールディングス(SSHD)が設立されて、現在この3社の役員を務めています。

2020年初頭から新型コロナの影響が出始め、その後の行動制限が厳しくなってからは、ほとんどの航空便がストップし、経営は致命的な打撃を受けました。雇用確保の取り組みを必死にしてきたものの、新型コロナ前は2社合わせて1000名弱いた従業員のうち相当数が離職してしまいました。そのため、パンデミックが落ち着いて航空便の需要が回復すると、極端な人手不足に陥りました。人財を確保するためのアプローチとしては、採用数の増加と人財流出の防止、従業員の生産性向上があります。ドリームスカイ名古屋と中部スカイサポートは業務の関係性は強いものの、それぞれの従業員のカラーや文化、仕事の性質はかなり異なります。採用に関しては各社で取り組んだほうが効率的なので、SSHDでは既存の従業員の育成や人財流出防止の中で各社が取り組みにくい領域にフォーカスすることにしました。

コロナ禍に人財が流出、需要回復に伴い人財不足に。

人が変わっても再現性のある仕組みを構築する

従来の人財育成は管理職や先輩社員の属人的スキル、言わば職人芸に依存している部分が多かったのは事実です。これに対して、システム化・効率化が可能な仕組みを会社が提供することによって人財育成を後押しし、その結果、従業員一人ひとりが意欲を持って能力を発揮できるような環境を作れないだろうかと考えました。人財流出防止のソリューションを調査していたところ、採用で適性検査を利用している日本エス・エイチ・エルのソリューションが目に留まり、当社では何ができるかを相談することにしました。紆余曲折がありましたが最終的には、採用時に取得したパーソナリティのデータを活用した育成を行うことができるよう、SSHDで育成の基礎的な枠組みを作成し、各社ではそれを状況に合わせて発展させてもらうことにしました。

まずは社員全員に適性検査を実施し、万華鏡リポートを出力しました。有難いことに、ほぼ全員が受検してくれました。そして各自が自分のデータを理解して腹落ちしてもらうために、結果の見方に関する講義動画を展開しました。加えて管理職に対しては、これまで自分の経験などから行っていた育成から万華鏡のデータに基づいた指導ができるように集合型研修を実施しました。

また、パーソナリティデータがあれば様々なリポートが出力できるため、ストレス耐性リポートなど個社のニーズに特化したリポートも出力しています。

アセスメントデータが新たな視点を提供

管理職向けの集合型研修のアンケートでは、自分自身の管理職としての特性に対しても、部下の特性に対しても「今まで気づかなかった視点が得られた」という声が比較的多くありました。同時に「結果をどのように育成に活かすかが難しい」という声もたくさんいただいています。実は、実施前には管理職の皆さんにどこまで消化してもらえるか不安もありましたが、幸いにも、人財育成には皆さんが問題意識を持っており、いかにデータを活用するかに目を向けてくれています。結果の読み取りは一朝一夕でできるようになるものではないので今後も浸透を図っていく必要があると思います。加えて、一人の管理職が20~30人の部下の万華鏡リポートを一人ずつ見ていくことは時間的にも難しく、管理職全員がコーチングやカウンセリングの経験を持っているわけでもないので、この点についてはさらに検討すべき点だと感じています。

また人事部門の責任者からは、人事異動を検討する際に、従来は「Aさんはこうだから」という個人の主観で議論を進める傾向があったものが、パーソナリティのデータを確認するようになって判断の参考情報として役立っている、という話も聞いています。

アセスメントデータが新たな視点を提供

客観データの活用を組織の人事プロセスに埋め込んでいく

今後は、この取り組みを継続していく仕組みが必要です。全員に受検してもらったのはよいですが、各人が結果を十分に理解して目標を持つところまでできているかというと、まだそこまでは到達していません。既存の年次別の研修などの機会に組み込んでいくことを検討しています。従来、このような研修では役割期待と自分とのギャップを検討し、今後の目標を立てていましたが、自分に関する情報は自分の思い込みだけでした。しかし、客観データが活用できるようになったので、パーソナリティの特徴と役割期待とをすり合わせて、目標や行動計画の立案に活かしていきたいと考えています。

私がシステム部門に在籍していた頃、電子メールの導入に携わったことありましたが、導入することでコストがどのくらい削減できるのかと問われることがありました。しかし、今となれば電子メールはインフラのようなものになり、コスト削減の効果という質問は意味を成さなくなりました。価値観が変わったのです。パーソナリティデータの活用も同様で、まだ社内で定着したとは言えませんが、一人一人の社員が能力を発揮する上で、こういう情報があって当たり前の世界になっていくと考えています。

具体的に育成に活かす仕組みをさらにブラッシュアップして、データを活用する文化を作っていければと思っています。そうすることで、当社において自分が腹落ちできる目標を持ち、その実現を目指して意欲を持って働くことができるようになるのではないかと考えているからです。そして、それが人財の流出を防ぐことにも繋がっていくのが目指す姿です。

日本エス・エイチ・エル様には、私たちが明確な答えを持っていない状態でご相談させていただくことになりましたが、よくここまでお付き合いいただけたな、丁寧に対応していただけたな、という印象を持っています。契約につながらなければ申し訳ないと思うほどに、非常にいろいろなことを対応していただきました。日本エス・エイチ・エルのアセスメントのデータはいかようにも活用できるという点も魅力です。半面、得体のしれないという側面もあるかもしれませんが、将来的に人事領域での新しい知見や枠組みが登場しても、それらに合わせてデータを利活用する方法を検討することができます。今後もデータの活用に関して、当社の文脈に即したご提案を期待したいと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 名古屋オフィス長

髙橋 朗

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を多大に受ける中、人財獲得、リテンションをあらゆる角度からご検討されておりました。そんな中、当社がその施策の一端を担えたことは大変光栄なことでした。僭越ながら、植松様の素晴らしいところは、アセスメントの効能にも限界があることをよくご認識いただき、また人間の行動や心理がそう単純ではないことを理解されている点かと思います。私も大変勉強になることが多く、長らくこの業界にいると、個々人のパーソナリティを分かった気になることがありますが人事のお立場ではそう簡単にはいかない場面の連続だったことでしょう。今後はそんな難しい場面で、意思決定の一助となれるように、一般論ではなく、鈴与スカイホールディングス様のために効果的な施策を、業界・企業理解の精度を高めながら行っていくことが求められていると思っています。

経営戦略を実現するための新たな人事組織を立ち上げた積水ハウス。
次世代を担うビジネスリーダーを計画的・戦略的に育成するタレントパイプライン構築の取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

積水ハウス株式会社

事業内容

戸建住宅事業、賃貸住宅事業、建築・土木事業、リフォーム事業、不動産フィー事業、分譲住宅事業、マンション事業、都市再開発事業、国際事業

業種

建設業

従業員数

16,616名(2020年4月1日現在)

インタビューを受けていただいた方

安信 秀昭 様
増田 貴久 様

積水ハウス株式会社
人事部 人材開発室 室長(写真右)
人事部 人材開発室 課長(写真左)

インタビューの要約

経営戦略を実行するために計画的なビジネスリーダーを育成するという課題があった。
次世代リーダー発掘プログラム「SHINE! Challenge Program」を創設し、タレントパイプラインの構築に着手した。日本エス・エイチ・エルのアセスメントを用いて、高業績かつ光る人材を効率的に選抜できた。
経営戦略の実現のため、人事制度の変革にも取り組みたい。
今後は採用や育成含めて、様々な場面で日本エス・エイチ・エルのアセスメントを活用していきたい。

人事戦略を実行するため、タレントパイプライン構築と人事制度変革に着手。

これまでオペレーショナルな業務が中心であった人事部を、10年後、20年後を見据えて経営戦略に沿った人事戦略を担う専門組織にすべく、人材開発室という新たな組織が作られました。様々な人事課題を検討する中で、まずは①タレントパイプラインの構築と②職能資格を中心とした年功序列的な人事制度の変革を、大きな柱として取り組むことになりました。日本エス・エイチ・エルに相談したのは、このタレントパイプラインです。


社長をはじめ、取締役・執行役員、そして一番のキーポジションである支店長のサクセッションプランニングが課題です。私たちは、中堅・若手クラスの中から将来のビジネスリーダーになれるような人を早期に発掘して計画的に育成する、人材プールの作成を経営層に提案しました。
この課題の背景には、過去の反省がありました。営業中心の会社ですから、これまで支店長になる人はどちらかというと業績重視でした。そこで、マネジメント能力や人格など、より多角的に評価を行い、計画的に人材を育成し、登用する必要があると考えました。

人事戦略を実行するため、タレントパイプライン構築と人事制度変革に着手。

次世代リーダー発掘プログラム「SHINE! Challenge Program」

私たちの組織が発足する少し前に、支店長養成研修「経営塾」がスタートしました。支店長や部長になる登竜門のようなもので、受講生の選抜方法は上長推薦です。1年間でリベラルアーツや行動経済学、DX、イノベーションなどを大学教授、外部有識者から学びます。幅広く勉強してもらい、その成果を支店経営に活かしてもらうことがねらいです。

続いて、35歳以下の選抜研修を新たにスタートさせました。「Sekisui House Innovators and Entrepreneurs」の頭文字をとって、「SHINE! Challenge Program」と名付けました。15名限定で約1年間、多くの外部講師や社内の最先端にいる人からインプットを得ます。普段実務に専念している人たちに、視野を広げ、視座を高めてもらい、将来の積水ハウスの価値創造を考える機会を提供しています。全体を通して外部コーディネータに伴走してもらいながら、得た知識をどう活かすかアクション・ラーニングを行います。最終的には、研修を通じて得た経営課題からビジネスプランを作成し、経営陣の前で発表します。参加者からは、日常とは異なる視座で会社を考える機会が得られた、他の参加者からよい刺激が得られたとの声が寄せられました。

アセスメントで光る人材をどう見つけるか。

「SHINE! Challenge Program」は名前の通り、イノベーターやアントレプレナーの素養がある人を探して輝かせることを目的としています。そのイノベーター、アントレプレナーをどのように見つけるのかについて、日本エス・エイチ・エルのコンサルタントに相談して、選抜方法を決めました。

基本的に人材開発室がプログラム参加者の15人を選んでいます。候補者は30歳前後から35歳ぐらいまでの社員約1,100名です。選抜基準は2つ。一つは人事考課などの実績、もう一つはポテンシャルです。日本エス・エイチ・エルのタレントアセスメント(知的能力検査、パーソナリティ検査OPQ、モチベーション検査MQ)を使ってポテンシャルを評価しています。特にOPQから算出されるマネジメント能力やアントレプレナーのポテンシャルに注目しています。

選抜基準の2つの評価を縦軸と横軸にとり(実績を縦軸、ポテンシャルを横軸)、各軸を3つのレベルに分けることで、9つの区分(9ボックス)を作り、右上の区分に入る人から15人を選んでいます。

アセスメントで光る人材をどう見つけるか。

日本エス・エイチ・エルには採用のアセスメントを長年提供してもらっており、何度も尺度や基準の見直しの相談をして、真摯に協力してもらいました。「SHINE!Challenge Program」の軸を作りたいとなったときに、他のアセスメントも検討しましたが、長年のデータ分析と活用の実績でわかったアセスメントツールの信頼性と妥当性の高さ、カスタマイズの柔軟性から日本エス・エイチ・エルのアセスメントを使うことに決めました。その後、担当コンサルタントと時間をかけて打ち合わせをしながら、選抜手法や評価軸の構造などを決めていきました。

採用でも引き続きご協力いただき、さらに進んだ人材データ分析を行いたいと思っています。また、育成の面では、現場からアセスメント結果をうまく使いたいという声もあがっています。職場風土を変革するために、上下関係や社員同士のコミュニケーションを改善したり、ダイバーシティを推進するため、アンコンシャスバイアスに気付かせたり、といった取り組みを進めています。その中でOPQ、MQを自己理解や他者理解の促進に使いたいと考えています。読みやすく、あつかいやすいレポートやユーザーインターフェイスでアセスメント結果を本人やマネジャーにフィードバックできるとありがたいですね。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 大阪オフィス 部長

岡松 太郎

中堅、若手社員の早期選抜は、今や多くのクライアントで取り組まれている重要テーマですが、SHINE! Challenge Programはオンラインアセスメントデータの活用先端事例と思います。自社で保有する業績指標(パフォーマンス)とSHLハイポテンシャルモデル(グローバル経営リーダーに必要な資質)を掛け合わせた人材選抜は、客観性と予測精度を担保できる仕組みと言えます。
また、入社時と現在でのアセスメントデータの変化や、業績、昇格スピード等の各種パフォーマンス指標との関連性など、多岐にわたり検証しながら進める機会をいただきました。
20年近く当社サービスをご利用いただいておりますので、私よりも当社サービスにお詳しい方々ですが、今後も全社的にご活用いただけるよう、支援させていただきます。

全社員にアセスメントを実施し、ポテンシャルやコンピテンシーの客観的情報をデータベース化。
あらゆる人事施策にアセスメント情報を活用している、理想科学工業の取り組みを紹介します。

※本取材は2021年3月に行いました。ご担当者の役職およびインタビュー内容は取材時のものです。

理想科学工業株式会社

事業内容

高速カラープリンターオルフィス、デジタル印刷機リソグラフのハード及び関連機器、消耗品の開発・生産・販売・保守を中心としたプリントワークソリューション

業種

機械製造業

従業員数

1,750名〔グループ全体 3,480名〕(2020年9月30日現在)

インタビューを受けていただいた方

小野 葉月 様

コーポレート本部 人事部 人事企画課 課長

インタビューの要約

人材情報に客観的な視点を取り入れるため、全社員にアセスメント(万華鏡30)を実施し、コンピテンシーやポテンシャルの情報をデータベース化するプロジェクトが発足。
全社員のコンピテンシーやポテンシャルの情報は、「プロフィールシート」として人事システム上で管理。海外マネジャー候補者プールや次世代リーダー候補者プールの作成、選抜型研修参加者の選定など、あらゆる人事施策にアセスメント結果を参考情報として活用。
今後実施したいことは、コンピテンシーとパフォーマンスに加えビジネススキルを加味した3軸での人材配置と、「スクリレ」をはじめとしたスタートアッププロジェクトへのメンバー選定にアセスメントを活用すること。

「人が人を評価する時のバイアス」を是正するため、 全社員のポテンシャル情報をデータベース化したい。

私は直販営業として入社し、営業支援スタッフ、広報、開発と様々な部門を経て、人事部に来ました。人事部では人事企画課長として着任し、人事課題を解決するための施策に着手しました。その中の一つである「全社員にアセスメントを実施し、ポテンシャル情報をデータベース化する」施策は着任後数か月で実施しました。当時、様々な人事上の課題(部長候補者の可視化など)がありましたが、課題の根本的な問題は、人が人を評価したり、登用したりするときに生じるバイアスを最小限に抑えなければならないというものでした。人が人を評価する際には、恣意的な判断や認知による歪みが必ず生じるので、それだけに頼るとどうしても不公平感が出てしまいます。人材評価を客観的に行うためには、アセスメント情報を活用する必要があります。アセスメント情報100%でもなければ、人の目100%でもない、自社にとってちょうどよいバランスに調整して、人材を評価し、育成することを目指しました。

「万華鏡30」の全社員受検を実施。

この考え方に基づき、当社の役員含め、全社員がパーソナリティアセスメントOPQ「万華鏡30」を受検しました。受検結果は賞与評価とは関係がないこと、受検結果による不利益はないことを説明して実施しましたので、社内からの否定的な反応はありませんでした。万華鏡30のフィードバック機能を使って、受検後すぐに自分の結果を見られるようにしました。今でも新入社員や中途入社社員にアセスメントを実施して、全社員のデータを維持しています。

全社員が受検した後、日本エス・エイチ・エルに職種別・階層別に社員のコンピテンシーとパーソナリティの傾向を分析してもらいました。データ分析の結果と自社のイメージには乖離がなく、納得感をもって受け入れることができました。たとえば営業職におけるハイパフォーマーの傾向なども、他社と異なる当社の事業環境が表れているな、という発見がありました。

「万華鏡30」の全社員受検を実施。

人事システム上でプロフィールシートとして管理されるほか、 本部ごとの人事施策の参考情報に。

万華鏡30の結果は、人事システム上にプロフィールシートとして格納されています。プロフィールシートには、顔写真、個人情報異動履歴、研修履歴などの人事データ、万華鏡30の結果(マネジャーポテンシャル、プロフェッショナルポテンシャル、アントレプレナーポテンシャル、チームタイプ)等が載っています。プロフィールシートは、役員とHR部門の部長、人事部の一部の社員にしか公開されていません。この結果は、選抜研修の参加者選定、海外マネジャーのプールの作成、次世代リーダー育成のための選抜などの参考にしており、人事場面で活用されています。
また、万華鏡30の結果は、各本部のHRスタッフのミーティングの中でもご説明しており、本部内での登用や異動の際などに、適宜参考情報として活用されています。

人事部が主催した、選抜型の女性管理職育成プログラム「エンカレッジ研修」。

万華鏡30の活用方法のうち、人事部で主催した研修についてご紹介します。女性活躍推進の一環として、「エンカレッジ研修」という、女性の非管理職者を対象にした選抜型の研修を、過去に2度実施しました。参加者候補は、万華鏡30のマネジャーポテンシャル得点とパフォーマンス評価点の2つの基準で選定しました。人事部が選出した参加者候補をベースに各本部が参加者を決定しました。

この研修の特徴は体験型という点です。自分が企画したプロジェクトを現場でやってみるというのがメインプログラムです。たとえば、自分の関わっている業務の改善プロジェクトを立ち上げ、プロジェクトリーダーとして業務改善を主導しました。研修で集まる時は、プロジェクトの情報共有、参加者間で相談や相互のアドバイスを行いました。期間は約2年間。比較的若い参加者や希望者には現職の女性管理職等がメンターとしてつき、月1回程度のミーティングを行いました。 実際に、参加者数名がマネジャーに登用されました。万華鏡30を用いてマネジャーポテンシャルを勘案した選抜を行ったことで、パフォーマンス評価だけの選抜よりも予測精度が上がったと思っています。

今後は、より効果的な人材配置を行うために、コンピテンシーとパフォーマンスだけでなく、ビジネススキルを取り込んだ3軸を人材情報として活用していきたいです。コンピテンシーとスキルが一部関連する部分もあると思いますが、基本的なビジネススキルをいくつか柱にして整理し、人材配置を行う必要性を感じています。

もう一点は、人間同士の相性に着目して、シナジーを生むチームの形成を行いたいと思っています。当社は新規事業「スクリレ」を立ち上げ、今年の4月よりサービスを開始します。このようなスタートアップの事業を、どのようなメンバーに任せるかの参考情報として、人材データを使いたいと考えています。また、各職務に適した人材を登用するだけではなく、メンバー同士のシナジー効果をデータで予測できるといいですね。

日本エス・エイチ・エルには、万華鏡30だけではなく、適宜いろいろなサービスをご提供いただいています。今後も何か当社に適したアセスメントツールがあれば、ぜひご紹介いただければと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 マーケティング課 課長

水上 加奈子

まだタレントマネジメントという言葉があまり一般的ではなかった7年前、当時の人事課題をご相談いただき、全社員のアセスメント受検プロジェクトをご提案、実施することになりました。背景には、事業環境の変化による危機感と今いる従業員の方のパフォーマンスを最大限に生かしたいという強い想いがあったと記憶しています。役員の方々を始め、全従業員の方にご協力をいただき、様々な観点で分析を行い、私自身も大変勉強になりました。一過性のプロジェクトとして終わらず、7年たった今もアセスメントデータの価値と意味を適切に理解し、様々な場面で継続してご活用いただいていることを、何よりも嬉しく思います。今後も、理想科学工業の様々な人事施策の力になれるよう、精一杯支援を行ってまいります。

オフィスオートメーションからデジタルサービスの会社へと変革を続けるリコー。
なかでも新規事業創造をミッションとする組織のチーム作りに科学的な知見を活用すべく、調査研究に取り組みました。

※本取材は2023年10月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社リコー

事業内容

デジタルサービス、印刷および画像ソリューションの提供

業種

電機機器

従業員数

81,017名(連結、2023年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方

入佐 孝宏 様
稲井 麻貴 様

株式会社リコー
コーポレート上席執行役員 、リコーデジタルサービスビジネスユニット プレジデント、前 リコーフューチャーズビジネスユニット プレジデント (写真左)
リコーフューチャーズビジネスユニット インキュベーションセンター 事業創造室 BRグループ リーダー、HRBP長 (写真右)

インタビューの要約

デジタルサービスの会社へ変革を進めるリコーは、カンパニー制への移行に際して新規事業創造を組織的に行う「リコーフューチャーズ(RFS)」ビジネスユニットを設けた。
RFSの8つの事業は事業開発の進捗が異なり、また、リーダーのキャリア・人物タイプもそれぞれに特徴がある。組織能力を最大化する、リーダーを中心とするチーム編成への問題意識を持った。
リーダーのタイプによって組織がどのような影響を受けるかをパーソナリティ検査結果とエンゲージメントサーベイスコアを用いて調査した。
パーソナリティ検査結果は「顧客価値の創造をリードする人材・事業創造型のリーダー」としてポテンシャルの高い人材を発掘する際に役立てている。

社会課題を解決する新規事業を生み出す組織、リコーフューチャーズ

リコーは2020年にデジタルサービスの会社への変革を宣言し、2021年には経営機構をカンパニー制へ移行させるとともに、人事面ではジョブ型人事制度の導入を決定しました。現在、グループ本部と5つのビジネスユニットがあり、各ビジネスユニットが事業企画・商品企画から開発設計・生産・販売まで一気通貫した機能を担うなかで自立的にビジネスを運営しています。人事機能においてもHRBPとしてそれぞれのビジネスユニットに所属しているメンバーがいます。

リコーフューチャーズビジネスユニットは、リコーの強みである独自の技術を活用したイノベーションを通じて、新規事業を実現させつつ社会課題を解決していく組織です。現在8つの新規事業を手掛けています。もともとリコーには新しいことに取り組む風土があり、各々で活動をしていました。これら新規事業のうちの8つをひとつのビジネスユニットのなかで運営することで、ポートフォリオマネジメントを進めています。各事業の期待値や事業進捗に応じて、予算含めた投資のメリハリをつけ、事業開発に関する厳しい議論を正しく行うことができるようになりました。

社会課題を解決する新規事業を生み出す組織、リコーフューチャーズ

チームの能力を最大化するメンバーの組み合わせを科学的に検討する

8つの事業を見ていると、各チームの特徴が出てきます。例えば、コミュニケーションが得意なリーダーのチームはまとまっているけれどもアイデアが生まれにくい、かたやクリアな世界観を表現することができるリーダーのチームはまとまりが欠けているなど。これらのチームをマージすることが出来たら強力なチームになるだろうと常々考えておりました。

また、新規事業を0から1にする段階と、1から10にする段階とでは求められるリーダーシップが異なるのではないか、またリーダーが必要な経験や能力を備えていない場合には、リーダー及びリーダーを支えるメンバーのチーミングによって補う必要があるのでは、とも考えました。加えて新規事業は未経験の領域に挑むため、経験だけではなく各個人の資質も重要な要素になります。

どのようなメンバーの組み合わせであればチームの能力を最大化させられるか思索しているなかで、別のプロジェクトでリコー国内従業員約3万人を対象に実施したエス・エイチ・エルの パーソナリティ検査万華鏡30のデータを活用できないかと思い立ちました。各事業センターのリーダー数名の万華鏡30を詳しく解説していただいたところ自分が経験を通じて培った「人への見立て」と符合しており、感覚的ではなく科学的に人の資質は捉えられるだろうと確信しました。

リーダータイプとチームのエンゲージメントの関係性を明らかにする

社員直属上司である課長層とその1つ上の階層である室長層の社員の万華鏡30の結果データと2021年に実施したエンゲージメントサーベイの組織別のスコアとを用いて、統計分析を行いました。パーソナリティ検査結果からリーダーのタイプを3つに分類し、室長層と課長層のリーダーのタイプの組み合わせごとに組織のエンゲージメントサーベイスコアにどのような傾向がみられるかを確認しました。

組合せの数(対象となる組織数)が少ないため引き続き検証が必要ですが、大きく2点の発見がありました。一つは室長と課長がどちらも“ひっぱり型リーダー”(メンバーの競争心に刺激を与え、目標達成に向けてチームを引っ張る)の場合、仕事環境、具体的には人間関係の満足度が低くなる傾向があること。この組み合わせはできれば避けたほうがいいだろうと考えられます。もう一つは、同じタイプのリーダー同士で構成される組織の場合は、リーダー・経営層への信頼が低下する傾向があることでした。

調査研究の結果は、個人的な経験や感覚とも符合しました。例えば私(入佐様)はチームタイプの“アイデアマン”と“まとめ型リーダー”の傾向が強く出ており、ときに歯止めが効きづらくなるとも自認しておりますため、リコーフューチャーズの責任者となるにあたっては、私に苦言を呈することができる人材を私のパートナーに選びました。彼の万華鏡30の結果をみると、私の結果とちょうど真逆でした。やはり資質は科学的に分析することができると考えています。

「顧客価値の創造をリードする人材・事業創造型のリーダー」としてポテンシャルの高い人材を発掘するため、私(入佐様)が現在担当しているリコーデジタルサービスビジネスユニット(RDS)では結果を主に二つの場面で使用しています。一つは既にあるサクセッションプランの中でサクセッサーとなっている人材の資質を改めて確認する場面。もう一つは、社内公募で募集しているポジションによっては万華鏡30の結果を面談結果と合わせてみて、適性を判断する場面です。全社的にシステマチックな活用はまだできていません。

私(入佐様)はいくつかのアセスメントを受けていますが、人物タイプを見極めるには万華鏡30が一番適切と感じています。エス・エイチ・エルグループが持つ最新のアセスメントにも興味があり、実験的な取り組みも含め今後も積極的にご支援いただければと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

重野 達也

 新規事業創造において”個”に焦点を当てる研究には多くの課題が残っています。そのようななかで、今回の研究とその結果の活用は、リーダーの組合せから新規事業創造を捉えようとする新たな試みでした。リーダーのパートナーを誰にするかによって、組織のエンゲージメントスコアは大きく変わります。エンゲージメントスコアが組織の強さと活性度を表しているとすれば、リーダーの組み合わせは極めて重要な人事的意思決定となります。今回の研究から、人の組み合わせと事業創造の関係についての貴重な知見を得ることができました。今後も実験的な取り組みを行いつつ、リコー様の更なる発展に向け尽力致します。