効果的なミドルマネジメント教育を行うために、全管理職にアセスメントを実施した、菅公学生服の取り組みを紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

菅公学生服株式会社

事業内容

スクールウェア、スポーツウェアなど各種衣料の製造販売

業種

繊維製品製造業

従業員数

2,810名(グループ全体/2020年7月末時点)

インタビューを受けていただいた方

真鍋 洋志 様

菅公学生服株式会社
管理本部副本部長

インタビューの要約

ミドルマネジメント層の現状を正しく理解するため、採用で利用していた総合適性テストGABを約170名の全管理職に実施した。
個人として、集団としてそれぞれの強み・弱みが明確になり、現状が明確になった。個人に結果をフィードバックし、自身の強みを伸ばす方法、弱みを改善する方法について自己分析してもらった。
今後育てるべきは、仲間を承認し、組織を牽引できるミドルマネジメント。日本エス・エイチ・エルのアセスメントを、ゆくゆくは全社員に適用していきたい。

社員教育を見直す中で気づいた、研修目的の不明瞭さ。

現在、私は管理本部副本部長という役割を担っています。管理本部には、人事と財務と総務、3つの機能があり、日々の業務遂行上の判断をする立場にあります。また人事部部長と、採用と教育を担当している人材開発課の課長を兼務しています。人事に来るまでは、新卒でこの会社に入ってから、ずっと営業畑を歩んできました。

最初に人事部部長として着任した際、まずは採用と教育と配置という3つを強化したいと思いました。最初の大きな仕事は採用でした。その中で、日本エス・エイチ・エルのGABを使って面接をしたり、受検者の傾向を分析したりすることを半年くらい行った結果、「GABって素晴らしいな」と思いました。受検者の「見える化」というのでしょうか、自分の中で人物像の仮説を立てて面接の準備ができるし、この事前情報と実際にお会いしたときの印象が合っていることが多いなと、体感できたんです。

社員教育を見直す中で気づいた、研修目的の不明瞭さ。

同時に、教育についても見直しを始めました。今までの当社の人事の年間予算は、採用の予算がとびぬけて多い。教育の予算は、採用の半分程度でした。このバランスはおかしいんじゃないか、逆じゃないかと。これを転換するくらいの気持ちで、今後は教育に力を入れたいとメンバーに話していったんですね。その時点で、去年行った研修と、今期すでに計画済みのプログラムがありました。改めて、一緒に働いているメンバーに、「この研修はどういう目的で、どういう人に行うの?」「この目的と、どうつながるの?」と確認してみたところ、今までやっていたので、巷で流行っているので・・・というあいまいな部分があり、私たちの部署も、研修の目的を考え切れておらず、準備するだけで満足していたところがあったとわかりました。

効果的な社員教育・配置・採用のために、まずは社員を知ることから。

そこで、採用で使っていたGABの社内活用を経営会議で提案しました。効果的な社員教育、配置ならびに採用を行うためには、社員の特性を理解することが必須であると打ち出しました。まずは、ミドルマネジメント層に対する社内研修をしっかり行いたいので、管理職にGABを受けさせてほしいと提案しました。私は、陰でコソコソ動く人事になってはいけない、オープンに社員をバックアップする人事であるべき、と思っています。私たち人事がなぜこの研修を企画したのか、そのプロセスを共有するために、プロセスの見える化を図りたいと思いました。アセスメントを使って社員の特徴を把握すると、強みや弱みが定量的に把握でき、それをもとになぜこの研修をするのか説明ができます。また今の時代、配置に関しても、経営陣が鉛筆をなめて決めているだけでは、転勤だと言われても誰も納得できません。一つ一つの配置に経営陣の思いがあるなら、その思いを社員に共有しないといけませんし、あなたのこの能力を高く評価している、こんな仕事をしてほしいとしっかりと伝えることができなければ、転勤先で期待する成果を求めることなんてできません。本人のキャリアを踏まえた適材配置を実現する意味でも、アセスメントは必須でした。

「200年企業を目指して」熱意と粘り強さで、全管理職へのアセスメントを完遂。

管理職を対象にした理由は、ミドルマネジメントを鍛えないことには会社は伸びないなという個人的な思いからでした。しかし、管理職に受検してもらうのは思った以上にハードルが高かった。最初は何人か受けてくださらなかったのも事実です。でも、営業時代から業務で多くの人とつながりがありましたので、一人ひとりに連絡して、「お前の最初の仕事なら、しゃあないから付き合おうか」と言っていただき、一人残らず全員に受けてもらいました。時間はかかりましたが、目的と、会社がこの先180年、190年、200年と続いていくためには必要なんですと話をしました。

管理職の特徴を可視化したことで、強みや弱みが明らかに。

全管理職が受検した後、日本エス・エイチ・エルのコンサルタントが、菅公学生服単体のGABの傾向値と、他の企業群の平均値との比較をしてくれて、会社全体の強みや弱みを分析してくれました。また、私たちのこれからの営業に必要なところ、モノづくりの管理職に必要なところ、といった判断軸で結果を解釈してくれて参考になりました。まずは自社の管理職の傾向を数値化できたこと、自分たちのポジションがわかったことが大きな収穫ですね。印象に残っているのは、当社の管理職の特徴として「目の前でケガをしている人がいたら、いろいろ手を尽くして治そうとする。でも、この人ケガしそうだなと、先のことを見通すことができない」と言われたことです。そういう自社の弱い部分を知ることができたのも大きいです。

また、特に重要視したのは、受験者本人へのフィードバックです。GABの結果は、本人にフィードバックして、全体の傾向値もオープンにしました。全体の傾向、他社との比較、営業の傾向、その中であなたはこう、とブレイクダウンしました。また、担当コンサルタントに相談して、GABの結果をもとに自分の性格分析と強みと弱みの把握をするための、「自己分析シート」を作ってもらい、受検者全員に記入してもらいました。そのあとに集合研修を企画し、問題解決、論理的思考、人間関係の研修と大きく3種類用意しました。それはGABの結果をふまえて、「ここの数字がいくつ以下の方は今年かならず参加してください、それはこういう理由です」と打ち出しました。参加率もかなり高かったですね。

当社のマネジメントには、自分自身の強みも弱みも把握した上で、自分らしいリーダーシップ像を描いてほしい。研修はそのための機会や知識提供の場だと考えています。だからこそ、GABの本人フィードバックをし、自己認識をしてもらう。そして、現状に応じた研修を準備し、納得した上で参加してもらうことにしました。

配置に関しても、経営の皆さんに対して、ぜひこのポストにこの人材を登用してもらいたいと提案したり、良いことも悪いこともストレートに情報共有してゆく中で、少しずつ配置への意見を求められることが増えてきました。わずかながら、人事として経営と社員をつなぐ役割に一歩が踏み出せたと思っています。

今後、マネジメント層がどのように変わるべきかというと、自分の中でひとつだけ確固たるものがあります。今会社は、変化を恐れずチャレンジしなさい、勇気をもって挑戦しましょうと言っていますが、挑戦に失敗はつきものです。前例のない新しいことが挑戦だからです。失敗を気にしていたら何もできない。経営層が挑戦しろと言っても、現場レベルでは「コストは?時間は?成果は?」と挑戦を承認する前にダメ出しや叱責をすることが多い。これでは次から挑戦できない。心理的安全性がないのに、挑戦しなさいと言っても続きません。会社として一気通貫で、経営層も、新入社員も、若手も、相互に立場や主張を理解して、相互に応援でき、皆が自分らしく働ける会社にしたいです。まずは心理的安全からはじめます。ミドルマネジメントは怒らない。チャレンジした部下を失敗しても褒め、認める。そして、次からはこうしようという肯定的なフィードバックをする。ミドルマネジメントが変わらないと職場は変わりません。それくらい影響力があるんだよと、ミドルマネジメントに伝えています。

日本エス・エイチ・エルのコンサルタントは、頼りがいがありますね。わからないことはなんでも相談しようと人事みんなで言っています。数年以内に全社員にGABを実施するよう進めています。採用で利用するだけでなく、異動したら受けるとか、キャリアを考える様々な場面で利用していきます。他者から見た評価と併せて、自分では見えていない部分に気づくという、相互理解につながるツールだと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 取締役

重原 公

タレントマネジメントという言葉が注目される中、客観的な指標として適性テストの活用を検討される企業様は増えています。しかし、関心はあれど実施や具体的な活用まで至っていないという企業様も多く、これは当社の力不足もありますが、大きくは①目的が何かが不明確であること②社内の合意がとりにくいことが課題となっているように感じます。菅公学生服様は、冷静な現状把握と、経営と社員を想う熱いお気持ちによってこの2つの課題をクリアされ従来の管理職教育から変革されています。
日頃より、真鍋様が人事メンバーの方々や私達に対して、常に優しく接して頂く姿が想い出されます。当社からは現状の可視化や、人事施策の方向性についてご提案いたしましたが、お取り組みが実を結んだのは、突然の施策に戸惑う社員の方に対し、真鍋様始め人事メンバーの方々に尽力いただいた結果です。今後もディスカッションを重ねながら、現状の可視化及び人事経営戦略にお役立ていただけるよう、微力ながら尽力してまいります。

導入事例

「クリエイターファースト」なHappy Elementsの人事評価制度改革。

「クリエイターファースト」なHappy Elementsの人事評価制度改革。

ヒット作を支えるクリエイター集団がモノづくりに集中できる環境づくり。
人事評価制度改革とリーダーシップ開発の取り組みについてご紹介します。

※本取材は2022年10月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

Happy Elements株式会社

事業内容

モバイル向けゲームアプリの開発・運営

業種

情報通信業

従業員数

250名(2022年3月末現在)

インタビューを受けていただいた方

内藤 健次 様

Happy Elements株式会社
執行役員 人事グループ 人事グループリーダー

インタビューの要約

ヒット作品やテクノロジーの進化によって組織が拡大し、マネジメント層の育成が課題となる。人事評価制度を導入したものの、マネジメント嫌いを作り出す結果に。
組織内でマネジメント層ができる人材を育成するために、小グループのマネジメントから経験を積むことができるサブプロジェクト制度を実施。
社員が人事評価制度をより身近に感じられるように、横スクロールのアクションゲームのように制度を設計。
縦方向のみの硬直的な人事評価制度ではなく、機動性の高い、現在の社員集団に最適化した人事評価制度を構築し、マネジメントに対する意識変革を図る。

ヒット作やテクノロジーの進化に伴う組織の拡大。 ミドルマネジメントの育成が課題に。

私は大学卒業後、三洋電機で海外営業を1年半経験し、日本エス・エイチ・エルへ転職しました。HRコンサルタントとして企業の人事の方々にソリューションの提案を4年半ほど行っていたのですが、この時の経験は人事としての自分の原体験となっています。特に、パーソナリティ検査OPQの30項目のパーソナリティ因子を知ったことが私の人の見方に大きな影響を与えています。私は、人を典型的なタイプに分けてとらえるタイプ論より、人は色々な要素の組み合わせでできているという因子論の考え方が好きです。人事として仕事をする際に、色々な人がいて良い、様々な環境においてその人の持っている要素がどういう表れ方をするかという見方をするようになりました。個々人の背景を大事にしなくてはと思うのは、日本エス・エイチ・エルで働いたからだと思っています。
その後、株式会社ポケモン、株式会社あきんどスシローで人事部長を務め、2020年1月にHappy Elements株式会社に入社しました。

当社は2010年の創業以来、クリエイターがのびのびと仕事ができるようミドルマネジメントを置かずに組織を運営、アルバイトから登用した若手社員の発案から「あんさんぶるスターズ!」などのヒット作が生み出されました。ヒットタイトル創出に伴って、多くのコンテンツ制作、厳密な品質管理、新技術への対応等が求められるようになるとともに社員数が一気に増え、ミドルマネジメントの必要性が高まっていました。この課題を解決するべく2017年に外部のコンサルティング会社に依頼して人事評価制度を作りましたが、なかなかうまく機能しませんでした。当社は、純粋に絵を描きたい、モノづくりがしたいというクリエイターの集団です。この評価制度を経験した多くの社員は「あんな面倒くさいことをやらないといけないリーダーやサブリーダーにはなりたくない」と思い、それまで以上にマネジメントから距離をとるようになりました。そこで、私が人事評価制度の再構築をすることになりました。

クリエイター集団からマネジメント層を育成する

ミドルマネジメントを外部採用してもなかなかうまくいきません。クリエイターである社員が「この人の指示なら聞いてもいい」となる人は、そのカテゴリーで一番技量のある人です。しかし、技量のある人にマネジメントの役割を担ってもらうと、彼らはモノづくりに集中できなくなり、モチベーションを下げてしまいます。そのため、クリエイターの中からマネジメントに興味がある人を見つけることにしました。一番技量のある人でなくとも、一定の技術があり面倒みの良い人、OPQで言う「面倒み」が高い人は必ずいます。

次のステップでは、このマネジメント候補者に経験を積ませます。いきなり、大きなタイトルのマネジメントは難しいので、自分たちの発案した企画をマネジメントするサブプロジェクト制度を会社として準備しました。この制度は新タイトルの開発と社員のリーダーシップ開発の両方を企図しています。サブプロジェクトは比較的細かく目標を設定、会社からのサポートも入れながら、段階的にマネジメント経験を積む道筋を作っています。

クリエイター集団からマネジメント層を育成する

人事評価制度をゲーム化する ~パラメーターの設定~

私が入社して最初に行ったことは、全従業員に対するインタビューです。約2か月間かかりました。インタビューの後、どうしたらゲーム会社の人に人事評価制度が身近に感じてもらえるかを考え続け、人事評価制度にゲーム的な要素を盛り込めばいいと閃きました。

能力評価については、技術、ベース、マネジメントの3つに分けました。ゲームでいうところのパラメーターです。当社の中心は技術であり、技術のウェイトが高くなることが評価の基本です。ベースは、時間を守る、嘘つかないという最低限のマナー。マネジメントは、ヒトのマネジメントだけでなくコトのマネジメントも含みます。チーム管理、メンバー管理、工数管理、品質管理の4項目に分け、正社員以上はマネジメントを必須としました。4つのうちどれをやるかは人によって変わり、メンバー管理はないが、工数や品質管理はあるという人もいます。

この3つのパラメーターの比率を上司と部下で決めることにしました。人事はステージ(等級)ごとの各パラメーターの最低と最高の割合だけ決めます。あとは上司と部下が話し合って3パラメーターの合計が100になるよう割合を決めます。例えば、正社員以外はまずは技術を磨いてほしいので、ベース30、技術70、マネジメント0といった感じです。現場で社員の評価項目とその重みを調整できるようにしました。私はこれまで様々な組織で人事評価制度を作ってきましたが、どうしたら制度の機動性を上げられるかと考え続けてきました。このチューニングができる評価制度は私の発明だと思っています。

人事評価制度をゲーム化する ~ステージの設計~

次に、人事評価制度を一般的な縦型ではなく横スクロールのアクションゲームにしようと考えました。具体的には、ステージ(等級)に、5-1や5-2というようなサブステージを作りました。ステージ5から6とか、3から4へ移るときには、ゲームであれば中ボスが出てきますよね。中ボスとして昇格審査があります。職群毎にいるチーフが技術を確認し、人事がマネジメントを確認し、社長が会社全体の考え方・価値観とのマッチングを見ていきます。

マネジメントにそれほど興味がない人達にも機会を作りたかったので、ステージ周回ができるようにしました。ゲームのようにステージの初回クリアボーナスだけでなく周回ボーナスも用意しました。例えば4-5の2回目や3回目でも初回クリアほどではないですが昇給があります。以前の制度は、基本的にステージ4から5へ上がらないと昇給しないので、「上にあがれ」というメッセージが強く出ており、当社のカルチャーにあまり馴染みませんでした。他にもゲームならワープができる土管があるように、階段飛ばしもできるようにしています。ゲームデザイナー職種の社員が「ゲームデザインできていますよ!発明ですよ!」と喜んでくれています。

これらの取り組みを通して、社員に「マネジメントもそれほど悪くない」と感じてもらえるといいなと思っています。自分が表現したいものがある人、ユーザーさんに喜んでもらうために制作をしたいと思う人の集まりですが、人が育つのをみて、こういう喜びもあるなと思ってほしいですね。

今後のアセスメント活用

日本エス・エイチ・エルのアセスメントは5年以上前から利用しており、採用選考と社員の傾向把握に使っています。全体傾向、職種別傾向、退職者傾向を分析しました。採用では面接の参考資料として使っています。社長はデータ好きなのでアセスメント結果をよく見ています。

今後はマネジメントポテンシャルの高いクリエイターを見出すための情報として、キャリアに関する対話の材料として、アセスメント活用の可能性を検討していきたいと考えています。

日本エス・エイチ・エルの持っている多様な人材を生かすためのノウハウは、中小企業にこそ必要なものだと思います。自分たちが大切にしていることをうまく表現できない会社に対して、彼らのいい部分を消さないように関わってくれると思いますので。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員

清田 茂

内藤さんとは約4年間、同じチームで仕事をしました。当社へは未経験者で入社したので、ゼロから人事業務、アセスメント、コンサルテーションを学んでもらいました。凄まじい吸収力ですぐにコンサルタントとして戦力となり、大阪オフィスの立ち上げに貢献してくれました。その後、当社子会社の社長に抜擢、退職後は複数社で人事を経験し、人事のプロとして活躍されています。
本インタビューは、急成長するゲーム業界のタレントマネジメントについて話をして欲しいとお願いしたところご快諾いただき、行うこととなりました。ここまでの人事評価制度設計に当社アセスメントは直接関わっておりませんが、今後の運用に関してはアセスメントの活用が検討されています。内藤さんの目指す組織人事改革に向けてお力になりたいと思っています。

通貨処理機等の製造を行うグローリー。昨今の電子決済化など事業環境の変化に対応するため、人材の計画的な発掘・育成・配置の必要性が高まり、タレントマネジメントの基礎として全社員のアセスメントデータを取得し、人材可視化を行いました。

※本取材は2023年5月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

グローリー株式会社

事業内容

通貨処理機・セルフサービス機器の開発・製造・販売・保守、電子決済サービス、生体認証ソリューション、ロボットSI等の提供

業種

機械

従業員数

3,498名(グループ連結:10,792名)※2023年3月31日現在

インタビューを受けていただいた方

永瀬 厚司 様

グローリー株式会社
人材開発部 人材教育グループ グループマネージャー

インタビューの要約

コア技術を新たな事業につなげることができる人材を計画的に育成すべくタレントマネジメントに着手。
全従業員共通のアセスメント(OPQ)を実施。説明会や動画にて自己理解の重要性を伝え、受検率100%を達成。
データ分析により全社および部門別の人材の特徴を可視化。
新任管理者研修内にてOPQの説明パートを設け、部下理解およびキャリア面談での活用を促進。
管理職の要件にPMCコンピテンシーを採用し、今後のさらなる人材育成施策を検討する。

未来に必要な人材を計画的に育成すべくタレントマネジメントに着手。

私は、ソフトウェア技術者として国内および海外での製品開発を経験した後、2019年4月に人材開発部へ異動しました。人材開発部のミッションは、効果的に人材の採用・教育・発掘・育成・配置することです。現在は人材教育グループマネージャーとして、各事業部にある教育部門と連携し、全社の教育を進めています。

グローリーは通貨処理機の開発製造からメンテナンスまで一貫して行う機械メーカーですが、培った技術を活かして電子決済サービスや生体認証、メカトロニクスを活かしたサービスなどの事業も行っています。海外では競合と資本提携を進め、この10年間で海外売上比率は半分以上を占めるまでになっています。キャッシュレス化が進み事業環境が大きく変化する中で、新しい事業の柱を作るビジネスリーダー、技術で牽引する開発のリーダー、資本業務提携先とのシナジーを創出できる人材などが必要となってきました。未来に向けて必要な人材要件の定義、その素養を持つ人材を社内で把握し、全社で共有し、計画立てて育成するには至っていませんでした。これらの課題に対処するために、まず現状把握のため人材可視化に取り組むことにしました。

未来に必要な人材を計画的に育成すべくタレントマネジメントに着手。

全従業員共通のアセスメントデータを収集。受検率100%。

タレントマネジメントを実施する上で、行動特性を示すアセスメントデータは重要な情報の1つです。しかし、当時社内にあったアセスメントデータは対象層によって異なっていたため、全従業員を共通で見られるものさしが必要だと考えました。また、海外関係会社を含めると、外国人比率も高く、グローバル展開できる日本エス・エイチ・エルのOPQを導入しました。また、従業員への負担を考えたときに、受検にかかる時間なども適切でした。さらに、再受検をせずにより詳細のコンピテンシーが見られる万華鏡リポートを追加出力できることも魅力的でした。

従業員に受検を依頼するにあたっては、全員に受検してもらえるように「キャリア自律のために自己理解を深めよう」というメッセージを発信しました。説明会を10回開催し動画も用意し、受検してもらえるよう促した結果、2カ月かかりましたが、受検率100%を達成しました。

人材の特徴を可視化。キャリア面談でも活用。

受検結果は、人材データベースシステム上で本人と上司が確認できるようにしました。上司には、部下の理解促進のために年1回のキャリア面談でOPQを活用してもらっています。結果の解釈が難しいという声もありましたが、活用度合いに関するアンケートでは、「OPQを活用して部下と対話する」という段階までは60%の方が実施したと回答しており、概ね肯定的に受け入れられたと考えています。しかし、日頃の行動と照らし合わせてフィードバックをしたり、OPQを用いて能力開発計画を立てるなど、さらなる活用段階まで至っておらず、継続したOPQ自体の理解促進や部下とのキャリア面談、1on1のやり方など実践につなげていくための学びの場が必要と考えており、今後の課題です。現場からチームメンバー全員で結果を共有してフィードバックしあい、相互理解が深まったという嬉しい反応もありましたので、こういった活用事例を共有していくことも重要だと思っています。

人材開発部では、結果データを活用し、現状の従業員の全体傾向を可視化しました。具体的には、全体傾向と開発、営業、保守などの部門ごとの傾向を分析しました。結果は従業員の特徴がよく表れており、例えば、顧客と接する職務はOPQの人との関係の領域が高得点の傾向があり、開発は低得点の傾向がありました。また、考え方の領域はその逆でした。

この結果は経営層に報告しましたが、データでの可視化はあくまでも現状把握です。ここから見えてくる仮説と、会社のビジョン達成に向けて、これから必要な人材を計画的に発掘・育成・配置するために会社がすべきアクションにつなげていくことが、次の課題です。

また、会社の経営戦略に基づいて、来年から新たな人事制度の運用が開始します。その中で、管理職の行動評価に万華鏡のPMCの中から当社として重要視する項目をピックアップし、取り入れています。このように、人事戦略、従業員のキャリア形成支援とアセスメントを有機的に機能させることで、人事戦略として掲げている「個人の成長とともに、会社が成長し、一人ひとりがグローリーで働くことに強い魅力を感じ、誇りを持っている」状態を醸成し、会社の持続的成長につなげていきたいと考えています。

日本エス・エイチ・エルは私たちに寄り添い、課題の背景を踏まえて対応策を検討してくれるパートナーです。他社人事の方との情報交換の機会を提供していただけたのも有難いです。今後もタレントマネジメント推進のため様々なご支援をお願いしたいと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

鈴木 悠太

今後の事業展開を踏まえタレントマネジメントの実施に踏み切り、文字通り全社員データを取得、そのデータを様々な人事施策に活用されている本お取組みはタレントマネジメントの好例ではないかと考えております。「アセスメントデータを余すことなく活用したい」、グローリー様が本お取組みに着手され受検率100%を達成し、全社員データを取得した後に永瀬様から改めてご相談いただいたことを今も強く覚えております。次なる人事施策に向けてアセスメントデータをどう活かせるか、都度ご相談を頂戴してお打ち合わせを続け、様々な施策の検討に携われていることは私自身とても大きな経験となっております。グローリー様の「パートナー」と仰っていただいたことに恥じぬよう、今後も微力を尽くして支援させていただきます。

ゲオからセカンドストリートへの事業ポートフォリオの転換を推進するゲオホールディングス。リユース事業であるセカンドストリート800店舗体制に向けて、人数を確保することに加え、質を担保すべく、活躍する店長の要件定義を行いました。

※本取材は2023年3月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社ゲオホールディングス

事業内容

メディア、リユース、モバイル、オンラインサービス事業

業種

小売業

従業員数

従業員数:5,314名(グループ全体)

インタビューを受けていただいた方

高橋 知寿 様

株式会社ゲオホールディングス
組織開発室 組織開発課 マネジャー

インタビューの要約

成熟したレンタル事業から成長しているリユース事業へと事業ポートフォリオの転換を行うために、リユース事業のセカンドストリートを800店舗まで増やすことを目指していた。
活躍する店長の特徴を明らかにするため、人事データ分析を行った。全社員のパーソナリティ検査結果から10タイプに分類し、そこに評価データを組み合わせて、最終的に3つのタイプを事業部と協議の上、採用ターゲットとして決定した。
人員要望書を作成し、異動・登用プロセスの標準化に着手。
今後の課題はターゲット人財を確保していくこと。また、変化し続ける事業に適応できる組織であり続けるため、未来を見据えた要員計画にも取り組んでいる。

経営戦略、事業戦略に必要な人財を供給する。

私は、2006年4月にゲオにアルバイトとして入社し、店長やエリアマネジャーを経験した後、2017年10月に人事に異動しました。人事への異動当初は、人事データを分析してほしいと言われていましたが、人事本来の役割とは何なのか疑問を持っていました。自分なりに書籍やセミナー、他社の方々と話していく中で、人事の役割は事業に必要な人財を用意すること、という答えにたどり着きました。この時、人事がどのように事業に貢献できるのかが分かって、モチベーションが高まりました。当時、会社としては、リユース事業であるセカンドストリートの800店舗体制を目標として掲げ、事業ポートフォリオの転換を目指していました。そのため、セカンドストリートで活躍できる人財を増やすことを目的にデータ分析を行うことにしました。

経営戦略、事業戦略に必要な人財を供給する。

活躍する店長の特徴をデータ分析で明らかにする。

まずは、どのような人が店長として活躍しているのかを明らかにすることが必要と考えました。日本エス・エイチ・エルのコンピテンシーデザインコースで学んだ、カードソートというインタビュー手法を使って、当時のセカンドストリートの責任者にヒアリングをしてコンピテンシーモデルを作成いたしました。また、OPQのデータを活用して、クラスター分析にて10タイプに分類を行い、タイプ別のハイパフォーマーの人数や割合がどのようになっているのか確認したところ、特定のタイプにハイパフォーマーが多く分布している点や、店長・エリアマネジャー・ゾーンマネジャーと役職が高くなるほど、割合が増える傾向が明らかになりました。事業部と作成したコンピテンシーモデルと比較すると共通点が多く、事業部と協議し今後の採用ターゲットに決定いたしました。

当時800店舗体制を目指し、年間50店舗規模の出店を計画、人事主導の採用は「量」が重視されていた中、「質」の視点を示すことができました。

データ分析の経験を異動・登用プロセスに活用。

2020年4月に人事異動の担当となりました。当時は各部門からどのようなオーダーがあったかといった過去の記録があまり残っておらず、異動に関する相談先も担当者だったり、マネジャーだったり、ゼネラルマネジャーとバラバラなことで人財要件が曖昧だったり、追加で確認が発生しながら人事異動が行われている状況でした。そこで、人員要望書(職務記述書のようなもの)を作成し、なるべく要件に合った人財を各部門に配置できるように環境を整えました。

要件がより明確になったことで、データ分析の経験も活かし、より要件に合った候補者の選出が出来るようになったこと、エラーが発生した場合でも何が良くなかったのか振り返りが可能になったこと、追加確認が少なくなったことにより、業務効率を高めることができました。

2023年2月に発表した通り、セカンドストリートは800店舗を達成し、中期的に1000店舗体制を目指しております。正直に申し上げると、当社に応募してくれる方々からターゲット人財に該当する人を量・質ともに継続的に採用し続けることは挑戦的なことで、今までの母集団形成や選考方法の仕組みを変えていく必要があると考えています。

また、未来の要員計画に取り組んでおり、店舗のみならず、間接部門の重点職種においても、将来どのような人財がどれくらい必要なのか、今どのような人財がいるのか、どのようにギャップを埋めていくのか、課題解決に取り組んでおります。日本エス・エイチ・エルは、相談がしやすく伴走してくれる会社だと感じています。我々の課題を解決するために、今後もご支援いただきたいと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング3課 主任

内田 敬己

高橋さんは、「ビジネス」を前提とした人事を考え実行されているすごい方です。ただ、「考えて実行する」ために、様々な知識を獲得し続け、困難な社内外の交渉調整業務を乗り越えられている様子が垣間見え、ご苦労も多かったのではないかと拝察いたします。こちらからの各種ご提案に対して「そうはいっても実際のところ」をご教示いただけたのは何よりの学びになっております。約10年間、担当する中で数々の貴重な経験をさせていただき深く感謝しております。引き続き、有効な関わり方ができるよう当社として気を引き締めて対応させていただきます。

導入事例

富士ゼロックスの「営業職5000人の“見える化”」を可能にしたタレントマネジメントの成果

富士ゼロックスの「営業職5000人の“見える化”」を可能にしたタレントマネジメントの成果

複合機ビジネスからの転換期を迎えた富士ゼロックス。現状の営業力の特徴と問題点の洗い出しのために、約5000名の営業社員の可視化に挑戦しました。この取り組みは、社内にどんな変化をもたらしたのでしょうか。

※本取材は2020年6月に実施しました。インタビュー内容は取材時のものです。

富士ゼロックス株式会社

事業内容

精密機器、コンピュータ・通信機器、ソフトウエア、印刷・印刷関連

業種

製造業

従業員数

39,825名(2020年3月 連結)

インタビューを受けていただいた方

石濱 健一郎 様

富士ゼロックス株式会社
販売戦略推進部 営業・SE力強化センター センター長

インタビューの要約

統合的なソリューション営業の強化に課題があり、営業職の「科学的管理=人材見える化」と、各自への動機づけ、および営業部門マネジャーによるフィードバック強化と全体の育成体制の整備に取り組んだ。
全営業職のアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を実施し、OPQ活用のためのトレーニングとOPQ分析結果の解釈・育成施策立案のためのコンサルテーションを受けた。
営業職の人材見える化を実現。誰がどのような能力を持っているかが、個別に把握できるようになった。また、メンバーの育成ポイントを、OPQのデータをもとに話し合う風土ができ、組織全体で「育成マインド」が向上した。

社長から「営業がまったく科学的でない」と言われ、 人材の「見える化」をスタート。

2012年から営業部門の人材育成を担当することになり、新人の導入教育からマネジャーの強化、新任部門長の強化と幅広く取り組んでいました。

当時、技術系出身の社長が就任して「営業がまったく科学的じゃない。行きたいお客さんにしか行かないし、情報ツールも脆弱。竹やりで戦わせているようなものだ。」と指摘されました。「まず、今の戦力がどのように分布しているか、問題点は何なのか示せ。」とも。技術系なら特許件数などデータを出せますが、営業は当時5000人くらい在籍しており、実績以外の情報は整理されておらず、どんな行動しているかはわかりませんでした。

そこで戦力を可視化すべく、パーソナリティ検査を使って行動指標をとっていこうというのが、このプロジェクトを始めたきっかけでした。

社長から「営業がまったく科学的でない」と言われ、 人材の「見える化」をスタート。

汎用性の高いパーソナリティ検査OPQと、 相談しやすさが日本エス・エイチ・エルの魅力。

もともと採用で日本エス・エイチ・エルの適性テストを使っており、新入社員のテスト結果データを採用チームからもらっていました。配属時には上司に新人のデータを渡して、一人ひとりの行動傾向とどんな指導やコミュニケーションが向いているかについて説明していました。あのデータが、まさに社長が言う可視化に繋がるんじゃないかとひらめいたんです。 当時、担当のコンサルタントが人事・人材開発担当の社員に対して適性テスト(パーソナリティ検査OPQ)の読み方講座を開いてくれて、営業のトレーナーも参加していたので、OPQのデータをどう読んで、どのように能力開発(新卒に対する個別の対応)に活かすかはイメージできていました。その経験から今回もOPQが使えるんじゃないかと思いました。

日本エス・エイチ・エルの良かったところは、パーソナリティ検査OPQの汎用性が高かったところ。あと、他社ではコンサルタントに相談する度、料金が発生したりするんですが、日本エス・エイチ・エルのコンサルタントは常に自分たちの目線で相談に乗ってくれたところも。自分たちで作成した営業人材タイプの実用性を確認するため、自分で社員のOPQデータを分析したら、各タイプの違いがはっきりと出たんですね。そのときに「このタイプはこんな違いが出たが、違いとして扱っていいか?」「このデータは、どう見たらいいのか?」といった質問をしたのですが、すぐにわかりやすく答えてくれました。あとは、日本エス・エイチ・エルはもともとイギリスの会社なのに、あらゆるアセスメントやコンサルテーションで使われる言葉が私たち日本人にとって自然でわかりやすいものでした。

全営業職にOPQを実施、 個人の行動特徴を知ることで支店内のコミュニケーションが円滑に。

まず、全営業職5000人にOPQを受検してもらいました。その後、OPQの結果を含む「自己認識シート」を開発し、そのシートを部下にフィードバックをする際のやり方を学ぶために上司用の動画を作成しました。フィードバックの良い例と悪い例を入れて、「お前、なんで売れねえんだよ」と頭ごなしに言ったり、OPQを占いのように予言したりするのはダメだと伝えました。コンテンツ制作では日本エス・エイチ・エルにデータの見方を教えてもらいました。ほめればほめるほど動くタイプや具体的な見返りを示さないと動かないタイプとか、得点が高ければいいというわけではない尺度項目とか。そうした助言を参考にしながら、現場へのメッセージをまとめていきました。

現場への通知の仕方は、まず役員から部門長に目的と内容を周知してもらい、我々からはマネジャーに「みなさんの部下に自己認識シートを渡しているのでみなさんからフィードバックしてください」とガイダンスとともに連絡しました。
OPQの浸透をはかるため各拠点に赴いて、評価会議で私たちがOPQを活用したファシリテーションを行いました。会議で「○○君の情報について直属のAグループ長がこう指摘しているが、Bグループ長はどう見ていますか?」と投げかけると、Aグループ長が気付いていない強みや弱みをBグループ長が指摘したり、「せっかくだから、うちのグループの△△君と同行させようか」といった発言が出たりしました。OPQは各社員の行動の特徴を正確に言い当てているという声は多く、「自発的なタイプなので、目標を与えたら計画は自ら考えさせてください」とか、「指示する際には必ず前提となる目的を説明してください」といったコミュニケーションでの注意点は、素直に聞いてもらえました。

全営業職にOPQを実施、 個人の行動特徴を知ることで支店内のコミュニケーションが円滑に。

OPQが便利な点は、個人の行動特徴がきちんと数値化されていることと、本人の回答だから結果を本人が受け入れやすいこと。最近はグループ長より年上の部下も多くなっていて、実績が出ない年上の部下へのフィードバックは難しい。実績から離れて、行動特性や強み、弱みについて話すことでフィードバックのきっかけがつかめたという声が多かったです。 その他、部門長と支店内の優秀人材とそうでない人材の違いを、OPQデータをもとに話し合いました。どんな特徴に違いがあるか、どう対応すれば各人を優秀なセグメントにもっていけるかについて話し合いました。

人材の「見える化」が進み、 マネジャーの意識も大きく変化してきた。

人材の見える化はかなり進みました。営業部門全体で高業績者がどこにいるかわかりますし、例えば「セキュリティ案件に強いメンバーを集めろ。」と言われたら、すぐ適任者をリスト化できるようになっています。 またマネジャーの意識が変わったこともこのプロジェクトの成果です。部下のOPQデータを見ることで、個性にあわせた育成ができるようになったことは大きな成果です。

「自己認識シート」はマネジャーと部下が話し合うきっかけにすぎないのかもしれませんが、それだけでも役割を果たしていると思ってます。話し合いができているチームは評価への納得度が上がり、マネジメントのやり方の変化を少しずつですが実感しています。

今後はビジネスインテリジェンスツール(BIツール)を入れて、現場社員が自ら強みや弱みを踏まえた営業スタイルを考え、実行に移せるようにしたいと思っています。今の「自己認識シート」はこちらがデータを作って提供しているので、現場は決まったデータを見るだけしかできません。自らデータを扱うことで、自らやる気を起こし目標達成に繋がるようにしていきたいです。

今後も日本エス・エイチ・エルには、人材のデータに関する新しい知見やパフォーマンスを改善するために効果的なデータ活用法などの情報提供を期待しています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 取締役

清田 茂

石濱さんからお話をいただいた時、営業プロセスとパーソナリティを結びつけることが営業活動の無駄を減らしていくだろうと直感しました。また、過去の経験から営業成績や営業のKPI、営業スタイルとOPQとの相関分析は、はっきりとした傾向がみられると確信していましたので、この取り組みは効果的なタレントマネジメント施策になると思っていました。
営業のパフォーマンスマネジメントにおいて社員のパーソナリティや営業スタイルを把握することは何よりも大切ですが、実際にOPQを活用している会社はまだ多くありません。何としても富士ゼロックスには成功していただき、その成功モデルを一緒に世の中に広めることができたらと考えておりました。
石濱さんの構想力とオーガナイズ能力のおかげで円滑にプロジェクトを進めることができました。心から御礼申し上げます。

導入事例

ソフトウェア技術者へリスキリング。デンソーの「キャリア転進プログラム」

ソフトウェア技術者へリスキリング。デンソーの「キャリア転進プログラム」

モビリティ社会において、一層大規模化・複雑化するソフトウェア開発。
不足するソフトウェア技術者を社内人材の職種転換によって育成する「キャリア転進プログラム」についてご紹介します。

※本取材は2023年1月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです

株式会社デンソー

事業内容

自動車技術、システム・製品の製造

業種

自動車部品製造業

従業員数

連結 167,950人、単独 45,152人(2022年3月末現在)

インタビューを受けていただいた方

広瀬 智 様
増子 敬 様

株式会社デンソー
電子PF・ソフトウェア統括部 ソフトキャリア支援室 室長 (写真右)
電子PF・ソフトウェア統括部 ソフトキャリア支援室 (写真左)

インタビューの要約

モビリティエレクトロニクス事業においてソフトウェア技術者に対するニーズが質・量ともに高まる一方、社内にはスリム化が求められる事業もある中、社内で職種転換を行う「キャリア転進プログラム」が立ち上がった。
推薦と社内公募を併用し、応募者にeラーニングと適性検査WebCABを実施。その後、ソフトウェア開発の基礎研修を行い、仮配属期間を経てソフトウェアの開発現場へ送り出している。
プログラム開始から約2年が経過し、現在は年間100名弱を輩出するペース。転進者の中には、目覚ましい活躍をしている人材もいる。
リアリスティック・ジョブ・プレビューも含め、ソフトウェア技術者として現場で活躍できる人を見極める精度を引き続き高めていく。今後もソフトウェア技術者に求められるスキルは変化するため、教育内容をアップデートし、組織の要請にこたえていきたい。

高まるソフトウェア技術者へのニーズに対応するために、社内人材の職種転換をサポートする「キャリア転進プログラム」。

私たちの所属するモビリティエレクトロニクス事業グループでは、ソフトウェア開発の規模がどんどん拡大し複雑化していく中、ソフトウェア技術者の不足が深刻化しています。一方、モノづくりの事業は非常に成熟しており、今後、電動化が進んでいく中でスリム化が必要な事業もあります。そこで双方の課題を解決するための一つの手段として、社内での職種転換「キャリア転進プログラム」の検討を始めました。20年7月にソフトキャリア支援室が組織化され、準備期間を経て、2021年1月から本格的にプログラムの運営を開始しています。

このプログラムは、社員のキャリア自立・自律と開発を支援する「キャリアイノベーションプログラム」における、継続的な学習を支援する「リカレントプログラム」の一部として位置づけています。「キャリアイノベーションプログラム」は、ソフトウェア技術者をいかに質と量の両面で強化していくかという課題へ対処するために作った仕組みです。デンソークリエイトに在籍していた頃に培ったノウハウを活かしつつ、デンソーの課題に即した形にしています。まずソフトウェア技術者のスキルを可視化しました。そこから社員が自らキャリアを描き、学び続け、活躍することを支援します。プログラムにおいては、ソフト技術者としての適性を見極めるために、日本エス・エイチ・エルのオンラインアセスメント(WebCAB)も利用しています。

高まるソフトウェア技術者へのニーズに対応するために、社内人材の職種転換をサポートする「キャリア転進プログラム」。

「キャリア転進プログラム」で、未経験者のポテンシャルを見極め、基礎教育を行い、実戦配備する。

「キャリア転進プログラム」の当初は組織の推薦だけでしたが、なかなか人数が増えなかったので、社内の公募制度も併用しています。応募者はハードウェア技術者だけでなく事務職も含みます。

応募者にはソフトウェア技術のリテラシーを向上するためのeラーニングとオンラインアセスメントを実施しています。オンラインアセスメントは、すんなりとソフトウェア的な技術を身につけられるというより、ソフトウェア的な考え方ができる人かどうかを見極める必要があると考えたためです。オンラインアセスメントとしてはWebCABを活用して、ソフトウェア技術者の適性を判断しています。そして、やる気と適性のある人に2カ月半の教育研修を行います。統計分析の結果、WebCABの得点と研修で実施するプログラミング言語テストの得点との強い相関が確認できています。また、結果リポートはご本人にも通知し、能力開発に役立てもらっています。

教育内容は、新人と同様にソフトウェア技術者として最低限必要なものだけにしました。このプログラムではソフトウェア技術者として共通に必要な基礎を学んでもらい、部門や製品によって必要な技術や知識は少しずつ異なるので、それらは配属後にOJTで学んでもらいます。

また、研修後、すぐにソフトウェアの現場でやっていけるかは分かりませんので、仮配属期間を設けて実際の業務を体験します。私たちもフォローして、本人と配属先がやっていけそうだとなったら正式に配属します。配属先は、会社のリソース計画をもとにいくつかの部署を提示します。その中で本人の希望も踏まえて決定します。応募から配属までに約半年で行っています。

年間約100名のソフトウェア技術者を輩出。活躍する社員も。

プログラム開始から約2年が経過し、現在は年間100名弱を輩出するペースです。プログラム出身者のなかには際立って活躍している人がいますし、いろいろなソフトウェア分野のイベントでもキャリア転進プログラム出身の方が出ていたりします。潜在していたソフトをやりたい人がその仕事に就けて活き活きと活躍されている様子を見るとよかったなと思います。そういう機会を提供して活躍や成長していくことに携われているのは1つのやりがいですね。

一方、途中で「やっぱり厳しいね」となる人もいます。華やかな仕事を思い描いて現場に入ると、思っていたのと違うと頑張れない人もいます。やってみて「こんな仕事だと思わなかった」となるとお互いに不幸になってしまうので、厳しいけれどもやりがいのある世界をよく理解してもらおうと説明していますが、それでも「やっぱり現実は違った」となる人はいます。ゼロにはできないとは思いますが、減らすことが課題です。仕事環境の大きな変化は誰にとってもストレッサーです。加えてプログラム参加者の職位が高い場合、受け入れ側がリーダークラスとしてのパフォーマンスを期待してしまい、それがプレッシャーになるケースもあります。どうケアするかを検討しています。

また、今後もソフトウェア技術者に求められるスキルは変化するため、教育内容をアップデートし、組織の要請にこたえていくことが必要になると考えています。

日本エス・エイチ・エルのアセスメントはデンソークリエイト在籍時の人材可視化から活用しており、人の特性を計測する仕組みとして信頼しています。今後は自社と業界平均との比較をしたいですね。また、プログラミングとマネジメントという主要な点だけでなく、様々な職種への適性を見極めたいと思っています。特に開発全体を見て指南していく人材である、ソフトウェアアーキテクトなどは、もともと素質がないとできない職務です。どんな人材か、日本エス・エイチ・エルの診断ツールで絞り込めたらと期待しています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

松波 里奈

ソフトウェア技術者の獲得は様々な企業で喫緊の課題です。その中でも今回は、高い専門性が求められる技術者の自発的な職種転換という先進的なお取組みに参画させて頂けましたこと、大変有難く思っております。「年間100名弱のソフトウェア技術者を輩出」という成果は、広瀬様、増子様がアセスメントデータの活用に留まることなく、キャリア自律促進のための前向きかつ挑戦的な取組みを続けたことによるものと感じております。今後もアセスメントの活用に留まらず意見交換させて頂き、効果的なタレントマネジメントの立案と運用のために尽力いたします。

導入事例

複線型キャリアと絶対評価によるスペシャリスト育成。業界をリードする高度ソフトウェアエンジニア集団を目指すデンソークリエイトの人事制度改革。

複線型キャリアと絶対評価によるスペシャリスト育成。業界をリードする高度ソフトウェアエンジニア集団を目指すデンソークリエイトの人事制度改革。

高度ソフトウェアエンジニア育成のための新人事制度を導入した、デンソークリエイトの企業改革をご紹介します。

※本取材は2021年12月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社デンソークリエイト

事業内容

車載組込ソフトウェアに関連する研究開発および先行開発、開発支援ソフトウェア(プロジェクトマネジメントツール、レビュー支援ツールなど)の開発、ソフトウェア技術者教育、プロセス改善・品質監査およびソフトウェア構造改革推進

業種

情報・通信業

従業員数

277名(2022.1.1現在)

インタビューを受けていただいた方

加藤 宏幸 様

株式会社デンソークリエイト
取締役

インタビューの要約

自動車産業におけるソフトウェアへのニーズの急拡大に対応するため、企業改革を実施。「高度ソフトウェアエンジニア集団としてグループ・業界をリードする会社」を目指し、スペシャリスト育成に振り切った新人事制度を導入。
新制度のポイントは、早期のキャリア複線化、キャリアアップ計画の作成、能力基準(コンピテンシー)とスキル基準(ソフトエンジニアとしてのスキル)に基づく絶対評価の人事考課、年功色の薄い処遇など。
コンピテンシー基準は日本エス・エイチ・エルのアセスメントをもとに作成。これに則り毎年の評価者研修を徹底。また、昇格候補者の審査にも同様のコンピテンシーが適用されている。
新人事制度導入以降18名のスペシャリストが誕生し、社員満足度調査の結果も向上。人事考課アンケートや社員満足度調査によるフィードバックを得ながら、現在も制度の改善を続けている。

ソフトウェアニーズの急拡大により会社への期待が増大。高度ソフトウェアエンジニア集団としてグループと業界をリードする会社を目指し、企業改革を実施。

当社は自動車がソフト化する将来を見据え、優秀なソフトウェア技術者の獲得を主な目的として、名古屋の小さなIT企業として誕生しました。ソフト開発を行うのは人であり、人だけが財産の会社です。親会社とは異なる、当時としては思い切った独自路線で、人事の仕組みを作成しました。コアタイムなしのフレックスタイム制、服装は自由、「アトリエ」という担当業務以外を含む組織でのコミュニケーションと自己研鑽などが特色でした。

設立から四半世紀が過ぎ、会社の規模が拡大するにつれ、トップが全員の能力を把握して処遇するようなことはできなくなりました。人材管理、配置・育成をしくみで行うこと、いわゆるタレントマネジメントが必要になったのです。
ソフトウェアに対するニーズの急拡大により、会社への期待が一気に高まる環境変化に対応し、2016年から企業改革を開始しました。目指したのは「高度ソフトウェアエンジニア集団としてデンソーグループ・業界をリードしていく会社」。親会社からの依頼に対応するだけではなく、ひとり一人が主体性を持って考え、提案し、自身のキャリアを描いて切磋琢磨する組織風土を目指しました。

スペシャリスト育成のための新人事制度をスタート。キャリアの複線化、キャリア計画の作成、コンピテンシーとスキル両面の能力開発、絶対評価などを導入。

改革の目玉として、2017年に新人事制度をスタートしました。それまでのトップの関与が強く、個別に判断して決める傾向があった人事から、仕組みで回す総合的な人事制度を構築して導入。人事の方針は、ソフト技術者は労働市場において流動性が高いことを前提とした考え方から、長期雇用・育成重視へと舵を切りました。
新制度のポイントは、スペシャリスト育成のための早期のキャリアの複線化と、それに付随するキャリアアップ計画の作成。そして能力基準(コンピテンシー)とスキル基準(ソフトエンジニアとしてのスキル)の作成、これに基づく絶対評価の人事考課と、年功色の薄い処遇などです。

スペシャリスト育成のための新人事制度をスタート。キャリアの複線化、キャリア計画の作成、コンピテンシーとスキル両面の能力開発、絶対評価などを導入。

新人事制度の導入に際しては、日本エス・エイチ・エルの協力のもと、評価・育成の根幹となる人材要件(コンピテンシー)を設計しました。このコンピテンシーに基づき、毎年の評価者研修や、昇格候補者の審査等を行っています。また「万華鏡30」を全社員が継続的に受検し、本人と上司が結果を共有の上、キャリアアップ計画作成や能力開発に活用しています。昇格候補者は別途アセスメントを受検し、その結果について日本エス・エイチ・エルのコンサルタントからフィードバックを受け、上司と本人と人事の三者で共有の上、行動改善に役立てています。 ソフトウェア技術者は科学的なアプローチを好むため、能力開発にも計測・データ解析に基づく根拠を示すことは非常に有効です。言葉だけよりも説得力が高まり、行動改善に繋がる可能性が高いと考えています。

新人事制度の成果は、活躍するスペシャリストの誕生、社員満足度の向上。

複線型人事は、会社ニーズだけでなく社員のニーズにも合致していましたので、歓迎されました。管理職ではなく専門職としてキャリアを積みたい人材も数多くいます。結果として18人のスペシャリストが誕生しました。その認定や昇格は、課題発表やアセスメントデータにより吟味して決定しているため、認定・昇格後はほぼ期待通りに活躍してくれています。会社に対するグループ内の評判も向上してきていると感じています。

また、毎年行っている「社員満足度調査」の結果では、新人事制度導入後、人事制度・育成制度に対する満足度は着実に向上しました。会社全体への満足度を示す「総合満足度」は、約50%から70%まで大幅に向上しており、人事の施策は間違ってはいないと自負しています。

新制度の導入は終わりではなく、始まりだと思っています。特に人事制度の要となる人事考課制度については、毎年評価者研修を実施し、評価の行い方と目線を統一しています。また運用の実態を把握するため、人事考課アンケートや社員満足度調査の結果を検討し、評価者やフィードバック者の変更、業績評価の簡素化など、試行錯誤を繰り返しています。

今後の課題は、実務的には、複線化したスペシャリストコースの拡充と認定方法の改善。先が見通し難い世の中で、キャリア形成の仕方をどう考えるかも課題です。また、どちらかと言えば内向きでモノを言いたがらないソフト技術者の意識を変えて、活発な議論が起きる企業風土へと改革を目指すべく、新たな打ち手を考えています。最終的な目標は、デンソークリエイトを日本のソフトウェア産業を代表する会社にし、社員が誇りを持って笑顔で毎日働けるようにすること。人事制度はそのための手段と考えています。

日本エス・エイチ・エルは、グローバルの膨大なデータと知見を持ちながらも、自社の理論を押し付けずに、常に同じ目線に立って寄り添ってくれる点がありがたいです。企業の信頼度だけでなく、適性検査の正確さ、コンサルタントの方の力量も大きいです。長年実施しているフィードバック面談は非常に好評で、今や欠かせない年中行事になっています。これからも宜しくお願いします。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

改正 晃大

高度なスペシャリストを育成するための先進的な人事制度やタレントマネジメント施策はIT業界のみならず、日本の産業をリードする取り組みです。この様なタレントマネジメント施策の設計と運用に深く関わることができ、大変光栄です。「新制度の導入は終わりではなく、始まり」という言葉の通り、制度は導入することが目的ではなく、制度の運用を通じて人が育ち、組織を発展させることが目的です。これからもデンソークリエイト様が目指す「日本のソフトウェア産業を代表する会社」に向けて、コンサルタントとして共に試行錯誤し、お力になりたく存じます。

導入事例

タレントマネジメントシステム×適性検査データの広範的活用。ブラザー販売の人材可視化プロジェクト。

タレントマネジメントシステム×適性検査データの広範的活用。ブラザー販売の人材可視化プロジェクト。

人事データ・適性データをタレントマネジメントシステムに統合し、キャリア面談、採用基準作成、プロジェクトへの抜擢など様々な活用をするブラザー販売の取り組みをご紹介します。

※本取材は2021年11月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

ブラザー販売株式会社

事業内容

インクジェット複合機、モバイルプリンター等情報機器、家庭用ミシン等の商品企画・広告宣伝・営業・営業企画・アフターサービス等、ブラザーグループの国内マーケティング事業

業種

卸売業

従業員数

347名(2021年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方

山内 優 様
渡部 しのぶ 様
舩橋 優太 様

ブラザー販売株式会社
人事総務部 人財戦略グループ シニアマネージャー(写真中央)
人事総務部 人財戦略グループ チームリーダー(写真左)
人事総務部 人財戦略グループ(写真右)

インタビューの要約

ダイバーシティ推進と人事業務効率化のために、タレントマネジメントシステムを導入。いわゆる人事データのみならずポテンシャル適性データも統合して全体最適な人事を行うべく、「万華鏡30」の全社員受検を実施。
適性データをタレントマネジメントシステムで統合し、社員が自身のポテンシャルや似た特徴を持つ社員の分布を把握できるように構築した。またキャリア面談での上司とのトークテーマとし、適性データを見ながら能力開発や能力発揮の支援に活用できるようにした。
勉強会のメンバーの推薦や、採用基準の再設計にも適性検査データを活用。ローテーションや次世代リーダー発掘に生かすため、今後は質的なディスカッションを重ね、各部門で求める人材像を策定する予定。
目指すのは、受け身ではなく主導的な立場で提案できる人事。人事が能動的に動くためのツールとして、今後も人材データを活用していきたい。

ダイバーシティ推進において、大局的視点の必要性を実感。 散在する人事データを統合するため、タレントマネジメントシステムを導入。

もともとダイバーシティ推進において、個人の特性を生かし全社的に最適な人事判断をするための材料が不十分であることに問題意識がありました。当社内の人材を俯瞰することができないと、どうしても局所的な視点から人事異動やリーダーの抜擢が行われてしまう懸念があります。本当のダイバーシティを実現するためにどうすればいいかと考えていたところ、タレントマネジメントシステムが盛り上がりを見せ、興味を持ちました。

様々な人事データが散在しており、業務効率化の観点でも人事データを統合したかったところに改善活動推奨の追い風もあり、タレントマネジメントシステムの導入を決めました。タレントマネジメントシステムをローテーションなどの人事施策に活用するためには、人事データだけではなく、ポテンシャルやモチベーションなど適性データも統合する必要があります。そこで、直接雇用の全社員に対して万華鏡30を実施しました。

ダイバーシティ推進において、大局的視点の必要性を実感。 散在する人事データを統合するため、タレントマネジメントシステムを導入。

最初は新しいシステムの導入にハードルがあるのではないかと思いましたが、社内で反対はまったくありませんでした。折しもコロナ禍でリモートワークが始まり、DXやデータ活用の機運が高まっていたため、とんとん拍子でプロジェクトが進みました。

全社員の適性検査データをタレントマネジメントシステムに統合し、 いつでも自分の情報を見られるように。
コロナ禍で減ったフィードバックの効果も期待。

直接雇用の全社員に対して万華鏡30を案内し、約95%の社員が受検してくれました。受検に際して、「全社的な適材適所を実現するために、個々人の職務に関連する行動スタイルを可視化したい。今後は採用基準やローテーション、育成計画のためにデータを活用する。」という趣旨の案内をしました。 受検結果をタレントマネジメントシステムに取り込み、本人と本人の上司、および事務局のみが結果を見られるようにしました。自分のポテンシャル値が領域ごとにレーダーチャートで表示され、似た波形をもつ社員を把握できるようにしました。加えて、自分の能力開発ニーズに基づいて上司とキャリア面談をできるようにしました。

高い受検率の背景には、コロナ禍の影響もありました。リモートワークが始まり、他者からフィードバックを受ける機会が減りました。その中で、「自分はどのような人間なのだろう」「どのような強み・弱みがあるのだろう」ということを見つめなおしたいというニーズがあったのだと思います。

キャリア面談、特定のプロジェクトへの抜擢、採用基準設計など 広範囲にデータを活用。
今後はディスカッションも併せ、求める人材モデルを作りたい。

タレントマネジメントシステムに集積したデータは、職務を離れて上司と価値観やキャリアなどをディスカッションするキャリア面談に活用されています。本人が自分の結果をもとに、「発揮できている能力」「もっと発揮したい能力」「克服したい能力」「工夫で乗り切りたい能力」などを選び、その情報をもとに上司と面談できるようにしました。キャリアを描く際に、科学的に推測された自分の強み・弱みの情報を活用できることは、社員にとってメリットが大きいと思います。

また、DXに関する自主勉強会の企画が持ち上がった際に、万華鏡30のあるコンピテンシー群の数値をもとに、若手社員の中から推薦者を抽出してみました。浮上したメンバーは事務局のイメージした人材像に近く、前向きな人ばかりでした。人材を探そうとなったときに、特定の条件ですぐに抽出できることの利便性を感じました。

キャリア面談、特定のプロジェクトへの抜擢、採用基準設計など 広範囲にデータを活用。 <br>今後はディスカッションも併せ、求める人材モデルを作りたい。

さらに、集積したデータをもとに、採用基準の見直しも実施しました。データを使ってローテーションや次世代リーダーの発掘も行う予定でしたが、これはサンプル数の問題もあり、まだ着手できていません。しかし最近、コンピテンシーの書かれたカードを使ったディスカッションの方法(カードソート法)をご提案いただき、まずは3年目に求める要件、DX人材に求める要件、そしてマネジャーに求める要件とディスカッションを重ねたところ、共通した人材像が見えてきて手ごたえを感じました。今は各部門で求める人物像や次世代リーダーの人物像を明確化し、採用や育成にフィードバックしていこうと思っているところです。

適性検査データの解釈には注意すべき点もあります。たとえば、ある部門に求める人材像を定義しても、すべてを満たす人材はほとんどいません。理想的な人材像を定めた上で、その中での優先順位や、能力開発で伸ばしやすい部分、素養として持っているのが望ましい部分などを細かく選定しておくことが、運用上必要でしょう。また、個々人がデータをどう解釈するかも重要です。若い社員が「このデータが私のすべて」というような解釈をしてしまうと、自己認識を必要以上に固定化するリスクもあります。結果はあくまで現時点のポテンシャルであって、自分に限界を定めないように啓発することも併せて必要だと思います。

上司が部下の適性データを解釈できるようになるためのサポートも必要です。リモートワークで上司が部下を直接見る機会が減ったため、データの重要性は高まっています。また、コンピテンシーに関する理解は、今後求める人材像をディスカッションしてゆく中でも必要な土台になると思われます。

今までの大きな問題は人事が受け身だったこと。今後は情報を出してと言われて開示するのではなく、主導的な立場でデータを提供して判断を仰ぐ、もしくは人事から提案するべきと考えます。人事が能動的に動くためには集積したデータが必要です。タレントマネジメントシステムには、適性データ以外にも様々な人事データが統合されていますので、それを概観してタレントマネジメントの判断材料にしていきたいです。

日本エス・エイチ・エルには適性検査の見方や他社の事例など、今後もご提案をいただけると助かります。打ち合わせで様々なディスカッションができるのを毎回楽しみにしています。これからも良き伴走者になっていただけるとうれしいです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

松波 里奈

人材可視化から人材データ分析、活用支援までを行う重要なプロジェクトをご依頼頂いた際には、ワクワクすると同時に身の引き締まる思いで毎回の打合せに臨んでいました。 お打合せでの議論においても、当社からのご提案について多様な観点でご質問を頂くなど、社員のポテンシャルを引き出したい、より組織を活性化させたいというお三方の強い思いを感じさせる時間でした。現有社員の特徴を踏まえて、必要とされる人材要件を定義し、採用基準を一新できたことは、皆様と一緒に作り上げた一つの成果だと思っています。一方でタレントマネジメント施策には終わりがなく、よりよい人材配置や人材育成を実現する為に次の議論をスタートさせて頂いていることは、大変光栄に感じております。よき伴走者として頼って頂けるように、私自身も尽力して参ります。

導入事例

研究者がビジネスをするために、自己理解と協働を促進。カイオム・バイオサイエンスの組織開発ワークショップ。

研究者がビジネスをするために、自己理解と協働を促進。カイオム・バイオサイエンスの組織開発ワークショップ。

ビジネスモデルの大幅な変更を経験し、創薬ベンチャーとして再出発したカイオム・バイオサイエンス。
成果創出に向けて社員の能力開発と協働を促すための取り組みをご紹介します。

※本取材は2021年6月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社カイオム・バイオサイエンス

事業内容

独自の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした抗体医薬品の創薬事業および創薬支援事業等

業種

医薬品製造業

従業員数

58名(2021年6月30日現在)

インタビューを受けていただいた方

弘津 千津子 様

株式会社カイオム・バイオサイエンス
経営管理部長

インタビューの要約

数年前に経営体制の刷新と事業方針の大幅変更を経験。研究員の一部には専門外の分野へのチャレンジが求められたり、成果創出のためにビジネスを意識したプロジェクトマネジメントを初めて任されるなどして、高いハードルが課され、研究者としての探求心と、組織内での貢献をどのようにつなげられるかという葛藤が生じていた。
現在、成長基調にある当社においては、創薬開発のスピードアップや受託研究の拡大に対して、組織的に対応することが急務であり、今後社員には、さらなる役割の変更や拡大を期待する可能性が高い。そこで、自身と組織で働く他者について改めて相互に理解し、協働を促進するためのワークショップを開催した。
管理職以下全社員が「万華鏡30」を受検し、自身の特徴を理解した後、自身の仕事の面白みや悩みを共有するグループワークを行った。他者の仕事への理解と関心が高まると同時に、自身の能力開発への意識が高まる効果を実感した。
今後は、プロジェクトやタスクへの任命にもアセスメントを活用し、成果創出に戦略的人事として貢献していきたい。

組織や人事制度の変更や事業方針の大幅転換の中で 人の心はついてこなかった。

当社は、2005年に国立研究開発法人理化学研究所の太田邦史研究員(現 東京大学副学長・教授)が開発した、ADLib®システム(アドリブシステム)という抗体作製技術を事業化するために設立された会社です。2011年に上場した際の事業計画は、このADLib®システムを、製薬企業に技術導出し、収益を獲得するというものでした。抗体作製の新技術は世の中でも広く話題になり株式市場でも大いに注目を得ましたが、残念ながら当初目指していた技術導出により大きな収益を獲得するという結果には至りませんでした。2017年には経営体制を刷新し、新社長のもと、それまでの技術導出を中心とした戦略から、基盤技術をベースとした創薬開発ベンチャーとして自社で開発した医薬候補品(パイプライン)を製薬企業等に導出するビジネスへと事業転換しました。

この大幅な事業転換を実施する前の2015年には100名を超えていた従業員の数を希望退職の実施により2016年末には約50名まで縮小。機能別だった組織にプロジェクト制を導入するなど、人事制度の変更を進めていた中で、さらに2017年に大きな事業転換を行うことになり、社員の心には期待と不安が入り混じっていました。半数以上の研究員は、専門外の分野におけるチャレンジを求められたり、これまでに経験のないプロジェクトマネジメントの責任を担う状況に初めて直面するなど、とてつもなく高いハードルを課される状況に陥っていました。

事業フェーズの進展に伴い、今後の役割拡大・役割変更に備えて、 自分と組織について知ってほしい。

現在、事業転換から4年が経過し、ひとりひとりの努力が実り創薬事業でも成果が出始め、手ごたえを感じながら研究開発を進める社員が増えてきました。現在、当社には、臨床試験のフェーズに入っているパイプラインが一つと、臨床準備中のものが一つあります。今後、当社が、創薬ビジネスにおいて持続的に成長していくためには、臨床開発フェーズに至るパイプランを継続的に創出すること・外部との取引を拡大していくことが重要であり、社員には事業状況や組織、自分自身、そして一緒に働いている人々について知っていただき、会社の成長とともに起こり得る自身の役割変更・役割拡大に備えていただきたいという思いがありました。

今回、管理職以下全員を対象に、社内の各部門が担っている役割や成果、万が一自分が異動した場合に何が求められるのかをイメージしてもらうための研修を行いました。研究者はもともと、探求心を持って一つのことを深く考察するのに長けているが、自らの専門分野から離れたところで周囲の助力を求めながら仕事を進めていくことは苦手な傾向があります。会社としては、この機会に、自分の特徴を振り返り、自分でできること・周囲の協力を得ないとできないことを知ってもらいたい、また同僚の苦しみや組織の課題を知って、ともに解決策を考えてほしいという狙いがありました。実は、数年前にも全社員アセスメントを試みたことがありますが、当時は事業が停滞していた影響もあり、組織や周囲に対する警戒心が強く、なかにはアセスメント自体を受けようとしない社員もいました。今回は特段反対もなく全社員が期日までに受けてくれて、だいぶ受け止め方が変わったと感じました。

事業フェーズの進展に伴い、今後の役割拡大・役割変更に備えて、 自分と組織について知ってほしい。

研修は数人ずつのグループによるワークショップ形式。「万華鏡30」の結果をもとに、自身の特徴について理解したあと、「自分の仕事を、面白みの観点から説明する」、「自分の職場での悩みを話す」、この2点の課題に取り組んでいただきました。組織の中で自己アピールをするとともに、他者に共感してもらうのが狙いです。それぞれの行動特性を認識しているので、どのような行動をとるべきかという現実的なディスカッションもできました。

研究者がビジネスをするために、客観的な自己理解と他者への関心が必要。

日頃自然科学研究に従事している研究者が相手ですので、日本エス・エイチ・エルのような外部業者が長年の研究に基づいて作成した、大規模データに基づく評定であるというアプローチが、とても適していました。今回、リーダー候補者層を対象にしたリーダー研修も別途実施しており、そこではコンピテンシーのポテンシャルに基づく説明を強化しました。自分の強みと弱みを認識した上でオンラインの研修を受けてもらうのですが、能力開発の必要性を実感してもらう良い流れができました。

研究者がビジネスをするのには、高いハードルがありますが、会社の成長を支える経験をとおして、現在では、すべての研究員が、研究をプロジェクトとしてマネージして成果に導かなくてはならないことを自覚しており、多かれ少なかれ「このままではいけない」という意識があるように見受けられていました。そのタイミングでアセスメントの結果を見ると、「やっぱり、こういうところが足りないのか」と、実感する部分があったのではないでしょうか。また、もともと研究者や技術者は、みずから腹を割って共感しあう傾向はあまりありませんが、それを解消するために今回の研修は効果的でした。ワークショップでは、皆さんが一緒に働く仲間に興味を持ち始めたな、というのを実感しましたし、体験の共有や共感から得られる学びの存在にも気づいてもらえたように思います。

今回、「万華鏡30」を組織開発ワークショップとリーダー研修のために活用しましたが、今後はプロジェクトチームの編成にも活用していけるのではないかと考えています。たとえば、各研究員はプロジェクト提案が通るとプロジェクトリーダーとなって研究を推進しますが、プロジェクトになる前のタスクにおいては、上長からタスクリーダーを任せる研究員をアサインすることが多いので、パーソナリティ傾向をもとに人事から可能性を提案するというのも有効だと思います。マネジメントコンピテンシーの高い人材や、イノベーションのポテンシャルの高い行動傾向を持つ人材を早めに起用するなど、戦略的な人事を展開することで、成果の創出に貢献できるのではないかと考えています。

日本エス・エイチ・エルのコンサルタントに共通しているのは、分析することを楽しみ、結果が役立つのを喜びに感じておられる方が多いことだと思います。万華鏡30の活用方法も、専門家の観点からいろいろと提案してくださるので、「いい会社だな」と感じています。これからも他社の興味深い取り組みなどを共有いただきながら、組織・人材開発について広く意見交換させてもらいたいと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

霞 紫帆

「自分と組織についてもっと関心を持ってほしい。知ってほしい。」弘津様のこの思いが本プロジェクトの推進力となりました。
「研究者の方々に、他人に関心を向けてもらうよう働きかけるには、どんな手法が最も効果的か」を検討し導き出したOPQの学術的背景から伝える方針は、本プロジェクトの一助となったのではないかと考えております。弘津様の思いを皆様と共有できればという気持ちでワークショップの講師も務めさせていただきました。少数精鋭の組織だからこそ、パーソナリティをコミュニケーション活性や能力開発に役立てるやり方が効果的であったと思います。
引き続き、探求心を忘れず多角的に組織発展のお力になれれば幸いです。

多様なバックグラウンドを持つ社員の相互理解のために、1on1ミーティングにアセスメントを活用。
マネジャー向けコーチング研修を実施した朝日インテックJセールスの事例をご紹介します。

※本取材は2021年7月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

朝日インテックJセールス株式会社

事業内容

医療機器の販売、医療機器関連の研究、開発事業、医療機器に関するコンサルタント事業、医療機器の修理及び賃貸業務

業種

医療機器販売業

従業員数

従業員数 : 95名 (2021年6月末日現在)

インタビューを受けていただいた方

川又 治 様

朝日インテックJセールス株式会社
営業本部 フィールドマネージメントチーム チームリーダー

インタビューの要約

様々なバックグラウンドを持った社員が相互理解を行うために、客観的に自己をみつめるツールとしてアセスメントを導入。
効果的な1on1ミーティングを実施するため、マネジャーにアセスメント「万華鏡30」とコーチングのトレーニングを実施。離職が減ったほか、マネジャーのコミュニケーションが変わったというフィードバックを得られた。
アセスメントによって見出された社員の全体的特徴を、採用戦略にも活用。新しい個性をもった新入社員をのびのび育成するためにも、コーチングを活用してほしい。
今後の課題は、採用だけでなく昇進昇格、登用にもアセスメントを積極活用し、科学的人事を推進することで、変化の激しい医療業界を生き残るための風土改革を行うこと。

様々なバックグラウンドを持つ人材が相互理解をするために、 全社にアセスメントを導入。

私は新卒でリース会社に入社し、外資系医療機器メーカー、日本の医療機器メーカーを経験し、11年前に当社に入社しました。大学を卒業してから営業一筋でしたが、4年前に新設の人事部門で採用・教育を担うことになり、手探りで現在の部署を作り上げました。
2017年にノーベル賞を受賞した行動経済学者、リチャード・セイラーの、人間は必ずしも合理的に意思決定をするわけではないという理論を書籍で読み、心理学的なアプローチに興味を持ちました。営業時代にも、人材育成における個人差を目の当たりにしたり、部下との関わり方がわからず悩んだりすることがありましたので、人事の仕事はこれらのことを学ぶいい機会だと思いました。

日本エス・エイチ・エルの万華鏡30を導入した目的は、社内のコミュニケーションの円滑化です。当社は、カテーテル治療に使用されるガイドワイヤーでトップシェアである朝日インテックの国内販売部門として2006年に設立されました。売上が10年余りで50倍と急成長した為、内資系企業・外資系企業からの中途入社、新卒入社、また元々当社製品を扱っていた企業からの入社と、様々なバックグラウンドを持った人材が集まっています。一時期離職が続いたこともあり、上下間のコミュニケーションや相互理解が必要だと感じました。特に5年前から始めた新卒採用で入社した社員は、我々キャリア入社組からすると異色の存在。彼らを適切に育成する意味でも、社員の相互理解が必要です。そのため、全社にアセスメントツールを導入して個人に結果をフィードバックし、「自分が何者であるか」というコミュニケーションの土台をまず作りました。万華鏡30の結果については、「当たっている」という声が多かったですね。

1on1ミーティングでアセスメントを活用するコーチング・トレーニングを実施。 離職の減少、上司のコミュニケーション力向上に効果あり。

その後、上司が部下をコーチングするための1on1ミーティングの研修を企画しました。その際に、「万華鏡30を1on1に活用したい」と思い、日本エス・エイチ・エルのコンサルタントと外部企業のコーチングの講師で打ち合わせをしていただいて、上司が1on1の中で万華鏡30を活用できるように進めました。
1on1ミーティングは月1回、各エリアマネジャーと部下との間で実施されます。万華鏡30を使うことを推奨していますが、使いたくない場合は使わなくてもよいと告知しました。また、1on1で万華鏡30を使う場合は、部下の結果だけを提示すると高圧的に受け止められる可能性もあるため、かならず上司自身の結果も提示して相互理解するようにと強調しました。

1on1ミーティングでアセスメントを活用するコーチング・トレーニングを実施。 離職の減少、上司のコミュニケーション力向上に効果あり。

万華鏡30を使った1on1およびコーチングのトレーニングを行った効果ですが、まず離職が減りました。もちろん離職はゼロにはできませんし、する必要もないと思いますが、医療業界での重要なリソースであるドクターとの人脈や知識を持つ社員の流出は痛手ですし、すぐに次の人を育てられるわけではありません。今後は、制度面などコミュニケーション以外の部分でもさらにリテンション施策を整えていくことを考えています。

また、一部のエリアでは上司の接し方がガラッと変わったという報告を若手社員から受けています。今まではどちらかいうとトップダウン的なコミュニケーションだったのが、部下の話を聞くようになったということです。コーチングの在り方を学習したことに加え、万華鏡30によって「自分にはこんな要素があったのか」と客観視することで、マネジャーにも学びがあったのかなと思います。

社員の特徴は採用方針にもフィードバック。
採用と育成の両輪の人事施策で、変化の激しい医療業界を生き残る。

また、今回の全社受検の結果をもとに、採用戦略を検討しています。たとえば、当社の営業職社員が強く持つ特徴を採用要件にする、オーソドックスなマネジャー層を補うため創造性を採用要件に入れるなどです。新卒社員には創造性を発揮していただきたいと期待しています。昨今の企業合併やコロナ禍など、医療業界は変化が著しく、環境の変化に適応できる人材がいないと、組織として生き残っていくのは難しいと思います。

その上でコーチングの効果として期待しているのは、マネジャーが新しい発想をもった新入社員の個性を生かし、のびのび育成できるようにすること。せっかく尖った人材を採用しても、マネジメントによってだんだん丸くなってしまうのではもったいない。同時に、私からも若手社員と個別に話をして、「今まで受けた教育で納得いかないことや問題点などあるかもしれないが、自分たちで考えて自分たちで決めていいんだよ」とメッセージを送っています。若い頃から自分で決める経験を積まないと、意思決定のできないマネジャーになってしまいます。せっかく素質のある人材を採用しているので、彼らには早い段階から自分で決めるということ、そして決めたことに責任を持つということを、しっかり教育で身につけさせたいと思っています。


今回、日本エス・エイチ・エルに携わっていただいてプロジェクトを実行し、少なくとも管理職以上の意識は変わりました。頭ではわかっていても感覚的にわかりづらかった「人にはオリジナリティや個性があって一人一人異なる」ということをアセスメントのデータで明示してもらえたことが大きいと思います。担当コンサルタントの方には、社員向けにアセスメントの説明会も開いていただき、社員が理解を深めることに貢献していただきました。

今後の課題は、コーチングと採用だけでなく昇進昇格、登用にもアセスメントを積極活用していくこと。変化の大きい医療業界において、人の目による人事のみに頼ってしまうと、オーソドックスな社風が強くなってしまい、組織として生き残ることができません。データや統計など科学的な資料をもって、人の目の限界を補う必要があります。

最後に、個人的な課題は、自分が経験したことを次の世代へ伝えることです。私自身、多くの上司や先輩に育ててもらった恩を感じながら年を重ねましたが、今は私自身が次世代を育て、彼らがまた次世代を支えていくことを実感しています。このような継承の物語が積み重なって歴史となってきたのが、日本企業の強みではないでしょうか。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

藤田 夏乃子

1on1ミーティング実施にあたり、相互理解を行うための材料としてアセスメントを利用したいというお話をいただき、今回の取り組みが始まりました。
きちんとアセスメント「万華鏡30」を理解してほしいという川又様の熱意を受けて、私が「万華鏡30」の説明会を実施させていただきました。説明会当日は参加者の方からたくさんの質問をいただき、皆様積極的にご参加いただいたのを覚えています。
実際に川又様から1on1ミーティングを実施していく中で、上司・部下間でよりよいコミュニケーションに変わっていっているとお聞きしたときはこの取り組みに貢献できてよかったと感じました。
今後も広くアセスメントの活用を考えていらっしゃるとのことで、様々な場面でお力になれるようにしていきたいと思います。