今後もこのような傾向は継続するのでしょうか。新たにどのような変化が予想されるでしょうか。
本コラムでは、SHLグループのe-Book「Navigating People Strategy in 2023」を一部抜粋し、2023 年に注目すべき人材トレンドのトップ 5 をご紹介します。
1.トップ人材が辞める傾向は続く
優秀な人材には常にチャンスがあり、不況の時であっても組織を去ることができる選択肢があります。退職は組織にとって大きな損失となり、トップ人材の定着は人事にとって非常に重要です。・人事リーダーの50%が、今後6カ月間、人材獲得競争が激しくなると予測している¹
・52%の従業員は組織に留まるかどうかに柔軟な勤務形態が影響すると回答している¹
・80%の従業員は給与がインフレに追いついていないと回答している(SHRM)
では何をすべき?給与アップ?
もちろん、給与や勤務形態は重要な要素ですが、トップ人材が退職する理由の1位はキャリアアップや成長のためです。そのため、人事はまず、誰がトップ人材であるか、彼らがどのような仕事に取り組むことで成長することを望んでいるのかを把握することが重要です。トップ人材のリテンションを維持するためには、組織が彼らの成長と発展を促進するような仕組みを整える必要があります。
2.燃え尽き症候群が増えている
Gallup社によると、従業員の76%が燃え尽き症候群に陥っており、SHLのデータでもパンデミック前よりも全体的にレジリエンスが低下していることが報告されています。さらに、経済的な不安が広がる中、燃え尽き症候群に陥りやすくなっている状況にあります。これは事業活動にも大きな影響を与える可能性があるため、注意が必要です。マネジャーやリーダー、そして人事はチームメンバーをより深く理解し、彼らが仕事上の何によって動機づけられるのかを確認することが大切です。従業員を支援するためにはマネジャーやリーダーの存在が非常に重要ですが、その一方で彼らが過度に負担を感じてしまわないよう注意することも忘れてはいけません。人事は彼ら自身が燃え尽き症候群の犠牲者とならないように注意する必要があります。
・人事リーダーの45%が従業員は変化によって疲弊していると回答している¹

3.従業員中心のアプローチへの移行は続く
どの組織でも従業員は最も重要な顧客です。彼らは自由に組織を去ることができます。そのため、組織は従業員にとって魅力的な仕事を提供し続けなければいけません。しかし、産業革命以来、多くの組織で従業員は十分に扱われず、企業はやる気のない、生産性の低い労働力や高い退職率に悩まされてきました。従業員中心のアプローチをとることで、組織は従業員が仕事に何を求めているかを理解し、それを提供する意味のある仕事と職場を作り上げることができます。SHLの調査によると、従業員はより良いワークライフバランスを求めつつ、目的とつながりによって動機づけられます。リモートワークやハイブリッドワークが増える中、人事には、従業員が仕事に何を求めているかを理解し、目的をどのように伝えるべきかを検討するためのデータが必要です。
・53%の従業員が、組織に彼らが気にかけていることに対して行動を起こしてほしいと回答している¹
4.育成、流動性、リテンションがより重要に
2023年はコスト削減の圧力が高まり、人事戦略の重要性が増します。今いる人材でより多くの仕事をしなければなりません。成功のためには、全従業員の人事データが必要不可欠です。全従業員に能力開発のためのフィードバックと計画立案の機会を提供し、従業員主導の能力開発計画を作ります。重大なスキルギャップを埋めるためには、必要な人材要件を定義し、組織の中からその要件に合致する人材を探す必要があります。例えば、次の営業のスター社員はカスタマーサービスの担当者の中にいるかもしれません。事業がうまく行くだけでなく、従業員が成長を実感することで、リテンションにも大きく貢献します。・人事リーダーの47%が、内部人材の育成が2023年の最優先事項の1つだと回答している¹
・人事リーダーの24%が、現在のリーダー育成のアプローチでは将来に向けたリーダーを準備できていないと回答している¹
・人事リーダーの36%が、採用戦略が不十分で必要な人材を見つけることができていないと回答している¹

5.採用とタレントマネジメントが一体化する
多くの企業で、採用とタレントマネジメントは別々に動いており、それぞれ異なるプロセスやシステム、データセットを持っていました。これによって生じる非効率や一貫性の欠如は、つい最近までは容認されていました。経済的な制約が非常に大きい中で、事業の目標を達成するためには、採用とタレントマネジメントを連動させる必要があります。採用凍結が行われている状況では、人事は組織内の人材を有効活用し、現在のスキルギャップを埋めると同時に将来に向けてスキルを開発しなくてはなりません。人材の管理・育成・リテンションのために、情報やプロセス、戦略やデータを共有することが必要です。
おわりに
上述のトレンドを踏まえ、人事戦略を立案するためには、正確で意味のあるデータが必要です。データがあれば、以下のような疑問に答えることができます。・事業戦略を実行できる人材が組織内にいるか
・スキル、人材、リーダーシップの重大なギャップはどこにあるのか
・もしも事業戦略が変化したとき、人事戦略にどのような影響があるか
・退職率はどこで問題になっており、それはなぜなのか
・将来必要となるスキルや役割に向けて、従業員を育成しているか
2023年も、データとピープルアナリティクスの重要性はさらに高まるでしょう。SHLグループではMobilizeと呼ばれる、人材データを統合・分析し、迅速に必要な知見を得ることができるソリューションを展開しています。ご興味のある方はこちらでデモ動画(英語) を確認いただけます。
¹Gartner: Top 5 Priorities for HR Leaders in 2023
© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved
要約
面接は何世紀も前から行われていますが、一貫性がなく、主観的で、偏った意思決定をするという問題に悩まされています。面接の質の低さは、応募者エクスペリエンスや組織の多様な人材づくりに大きな影響を与えます。
効果的な面接を行う上で、面接エクスペリエンスを測定する指標がないことは1つの大きなボトルネックです。しかし現在、面接での会話のほとんどがデジタル媒体に移行しており、人工知能(AI)を使って面接エクスペリエンスを測定し、ベンチマークすることが可能になっています。
そこでSHLは、面接における応募者エクスペリエンスに影響を与える重要な指標を定義し、面接インテリジェンスプラットフォームによって何千もの実際の面接のやり取りを分析し、面接の実施の仕方について知見を提供します。
本書でご紹介する重要な知見は以下の通りです。
- 面接官の80%近くが、応募者エクスペリエンス全体に影響を与える重要な行動を見落としている。
- 半数以上の面接官が、適切な面接エチケットを守っていない。
- 女性の応募者は、面接中により多く個人的な質問を受けている。
本書でお伝えする知見からは、組織が理解を深めることでより良い面接を実施することができると分かります。面接エクスペリエンスを自動的に測定することは、面接のやり方を変えるための第一歩です。
はじめに
現在の知識集約型経済において、人材の採用とマネジメントは組織の成否を分ける中心的な要素です。面接は、採用プロセスにおける長年の慣行の1つであり、その歴史は100年以上にも及びます。面接はこれまで 「ある仕事に対する個人の適性を評価するために行われる対面での対話」とされていました1。
テクノロジーが出現し、コミュニケーションの在り方が新たな時代に入ったことに伴い、採用面接は電話、オーディオ/ビデオ会議などの新しい媒体に移行しています。ここ2年のパンデミックで急激に移行が進み、今ではほとんどの面接がバーチャルで行われています。
面接(特に面接官)は、採用ライフサイクルの中で応募者エクスペリエンスに最も大きな影響を与えます2。
ネガティブな面接エクスペリエンスは、組織の印象を悪くし、人材を惹きつける力を弱める3
面接のやり方(特に面接官)は、この数十年間あまり変わっていません。以下の図1は、今日の面接のやり方のよく知られた問題の一部です。
第一に、ほとんどの組織と面接官は、確立された科学的手法(たとえば構造化面接など)に従っていません。Allan Huffcutは、この状態を”Two ships that pass in the night”(夜に行き違う2艘の船;滅多に同じ時間に同じ場所にいることがない者同士を指す)と言っています。採用面接に関する科学的研究と組織で実際に行われている面接の関係をよく表しています4。採用プロセスの他の構成要素とは異なり、採用チームは面接がどのように実施されているかをほとんど把握できていません。
また、面接官に対して、面接のやり方について実用的な知見を提供するフィードバックシステムもありません。パンデミックによる面接のデジタル化は、面接の会話を分析するまたとない機会となりました。SHLのSmart Interview Liveは、インドで60万人以上の面接を実施するのを支援しました。SHL ラボは、インド最大のITソフトウェアおよびサービス企業の数千の面接の会話を分析しました。
- Chapman, D. S., & Rowe, P. M. (2002). The influence of videoconference technology and interview structure on the recruiting function of the employment interview: A field experiment. International Journal of Selection and Assessment, 10(3), 185-197.
- Guide: Train your Interviewers, https://rework. withgoogle.com/guides/hiring-trainyour-interviewers/ steps/giving-interviewers-practice/
- Your Candidate Experience, Creating Impact or Burning Cash, https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/us/Documents humancapital/us-human-capital-yourcandidate-experience-creating-an-impact-or-burning-cash.pdf
- Huffcutt, Allen I. “From science to practice: Seven principles for conducting employment interviews.” Applied HRM Research 12.1 (2010): 121.
原文はこちらからダウンロード可能です。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/insights-on-your-candidate-interview-experience/
次回は面接エクスペリエンスの指標をどのように定義し測定したか、です。
DEIとは何か、より詳しいDEI戦略に関しては、こちらの記事 でご紹介しています。本コラムはさらに焦点を絞り、アセスメントプロセスにおいてDEI推進のために何をすべきかをお考えの人事ご担当者様に向けて、SHLグループの長年の経験から7つのヒントをご紹介します。

1.職務分析の実施
職務に関連する重要な知識、スキル、能力を測定するために、職務分析を実施しましょう。職務の成功に重要な要件のみに焦点を当てることで、ポテンシャルのある人材を排除するリスクを減らし、すべての候補者に平等に成功のチャンスが与えられる公平な競争の場を作り、多様性と包括性を高めることに繋がります。2.適切な比較対象グループの選択
テスト結果の偏差値を算出する際には、受検者グループのレベルに最も近い比較集団を選ぶことが重要です。受検者グループより成績が良い比較集団を使用すると、必要以上に受検者を選別することになり、合格率のグループ間の差異を拡大してしまう可能性があります。3.カットオフ得点の設定
能力テストのカットオフ得点は、慎重に設定することをお勧めします。あまりに高い点数を設定すると、その後の妥当性検証において、職務で成功するためにその能力が重要であることを証明するのが難しくなります。また、この場合もグループ間の差異を拡大してしまう可能性があります。4.グループ間の差異の監視
合格でも不合格でも受検者全員について、特定のグループがアドバース・インパクト(不利な影響)を受けていないかを確認する必要があります。例えば、性別や年齢、民族性などの面で、少数グループが主要グループよりもアセスメント得点が低い傾向がないかを確認します。5.受検者の準備
アセスメントプロセスがどのように進むかについて、受検者に伝えましょう。アセスメントを受検した経験がないことで不利になる人がいないように、受検者にはできる限り準備をさせることが望ましいです。SHLグループでは、受検者が匿名かつ無料で様々なタイプのテストを体験できる練習用サイトを用意しています。
6.受検者がどのように受け止めたかを確認する
採用プロセスにおけるDEIに対する受検者の反応を測定する有効な方法は、受検者から直接フィードバックをもらうことです。受検者にフィードバックをもらう理由を説明し、匿名性を確保します。また、回答が採否に影響しないことを明確にするために任意とします。確認するとよいポイントは、魅力的であったか、困難な点があったか、不安を感じたか、能力を発揮する機会があったか、公平性、包括性という点ではどうだったか、などです。7.障がいに応じて合理的な調整を行う
合理的な調整とは、障がいを持つ従業員や受検者が不利にならないように行うべき変更のことです。SHLグループのツールやソリューションでは、実施可能な調整についてのガイダンスを提供しています。しかし、その受検者の不利益を軽減するために必要な要件を特定するのはクライアント自身が行う必要があります。受検者の障がいについて、またそれがアセスメントの結果にどのように影響するか、どのように調整をするのが最善かについて知るには、受検者自身に尋ねるのが一番です。それぞれの受検者は、障がいの性質や度合いに応じて、個別に調整をうけるべきです。以上、7つのヒントをご紹介しましたが、特に1から3については、勘や経験によらない客観的なタレントアセスメントに取り組まれている組織にとっては、特に新しい観点ではないかもしれません。まずは、アセスメントツールを用いた客観的なアプローチをとることから、DEI推進に取り組まれてはいかがでしょうか。
また、アセスメントソリューションを選ぶ際には、より公平で多様な人材を受け入れることができるように、障がいのある受検者がアクセス可能かどうか、アセスメントの内容が障がいのある受検者にとって、また、文化的な面で包括的であるかどうかを、ご検討ください。
新しい研究結果をもとに、タレントアセスメントについて、ベンダーが主張している妥当性をより適切に評価するためのガイダンスを提供します。
ジェフ・ジョンソン
2022年12月8日
Journal of Applied Psychologyに最近掲載された記事は、タレントアセスメントと従業員の選抜の世界に大きな混乱をもたらすと予想されています。この記事では、一般的なメタ分析の進め方をレビューし、アセスメント得点と職務パフォーマンスの関連性は、過大評価されていることが多いと結論付けました。
働く個人や実務担当、そして顧客がこの調査結果を理解することを支援するために、SHLは、白書「Guidance for the Interpretation of Validity Coefficients(妥当性係数の解釈に関するガイダンス)」を作成しました。このブログでは、タレントアセスメントの妥当性を評価する上でのSHLのアプローチと、広く受け入れられている既存の研究結果を見直すことが必要な理由について説明します。まず、タレントアセスメントの分野で使用される用語を理解しましょう。
タレントアセスメントと従業員の選抜における用語
従業員を選抜するためのタレントアセスメントの世界では、「妥当性」という用語は、アセスメント得点から導き出される解釈の正確さを指します(たとえば、アセスメント得点が職務パフォーマンスを予測するなど)。「妥当性検証」とは、これらの解釈を裏付ける証拠を確立するプロセスです。
タレントアセスメントでは、最も強力な証拠は、一般に基準関連の妥当性検証から得られると考えられています。これは、アセスメント得点(つまり、予測変数) が、関心のある基準尺度得点(ほとんどの場合、職務パフォーマンス)に関連していることを示すものです。基準関連妥当性の証拠は、通常「妥当性係数」または相関(r)の形式で表されます。この係数は、0から1の範囲で、アセスメントと基準得点の間の関係の大きさを示します。
「予測的妥当性」の検証研究では、採用前に求職者から予測データ(アセスメント得点など)を収集し、一定期間仕事に従事した後に採用された求職者から基準データ (マネージャーの評価など)を収集します。「一致的妥当性」の検証研究では、現職者から予測データと基準データの両方を短い期間で収集します。
「メタ分析」とは、複数の妥当性検証研究の結果をまとめ、サンプリングエラーの影響を減らし、単一の研究よりも変数間の相関関係をより正確に推定する方法です。選抜プロセスの妥当性のメタ分析は、学術文献やアセスメントベンダーの間で非常に一般的であり、さまざまな種類のアセスメントの妥当性について期待される平均的なレベルを確立するために使用されています。選抜プロセスのメタ分析では、妥当性の推定値を押し下げる制限(たとえば、アセスメント得点に基づいて選抜を行うことによる範囲の制限)を考慮に入れるために、妥当性係数に統計的な修正を適用することがよくあります。妥当性研究のタイプによって異なる修正が必要なため、ここが最も間違いが起こりやすいところです。
SHLのアプローチと視点
SHLは歴史的に妥当性係数の修正において保守的なアプローチをとってきました。範囲制限の修正は通常行っていません。ほとんどの基準関連妥当性の検証研究が「一致的妥当性」についてであり、修正公式に入力する変数について、現実的な推定値を置くことが難しいためです。したがって、このブログの冒頭で言及した最近の記事によって得られた結論が、私たち自身の妥当性検証研究の結果やメタ分析に影響を与える可能性は低いです。当社のテクニカルマニュアルには、妥当性の計算と統計的な修正を評価するために必要なすべての情報が含まれています。他のタレントアセスメントベンダーが主張する妥当性も同様かというと、必ずしもそうではありません。
冒頭で紹介した記事が科学と実践の両方に与えるだろう影響、他のタレントアセスメントベンダーがメタ分析で同様の間違いをする可能性、そしてテーマそのものが妥当性分析に詳しくない人にとって複雑であることから、SHL は「Guidance for the Interpretation of Validity Coefficients」という白書を作成しました。この文書の目的は以下の通りです。
- 一次研究およびメタ分析における妥当性係数の推定に関連する問題を説明する
- さまざまな種類の選抜手法について、妥当性のレベルがどのように変化したかを要約する
- タレントアセスメントの購買者とユーザーに、ベンダーが主張する妥当性をより適切に評価するためのガイダンスを提供する
この文書は、タレントアセスメントベンダーが提供する技術文書を評価する際に十分な情報をもっていたいと考えている既存ユーザーだけでなく、使用を検討している方も対象としています。
冒頭で紹介されている記事では、メタ分析において範囲の制限に関する統計的な修正によって、妥当性が高く見積もられていると指摘しています。SHLグループの作成した妥当性計数の解釈に関する白書「Guidance for the Interpretation of Validity Coefficients」はこちらからダウンロード可能です。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/guidance-for-the-interpretation-of-validity-coefficients/
後継者計画が仮の人員交代計画を作るエクササイズになっていませんか?真に組織の価値を高める、戦略的な計画に転換する方法を見ていきましょう。
マルナ・ファン・デル・メルヴェ
2022年11月10日
ここ数年で、人材を取り巻く環境は劇的に変化しました。人々は世界的なパンデミックを乗り切り、自分にとって仕事が何を意味するかを再評価してきました。一方、組織は「大量自主退職時代」の後遺症と、より流動的でグローバルな人材プールに向き合っています。仕事の未来と、組織が自分たちをどのように位置付けるべきかについて様々な議論がなされる中、組織がタレントマネジメント戦略をどのように再編成できるかが、長期的な成功の鍵となります。
タレントマネジメントの進化
タレントマネジメントへのアプローチはスキルベースへと変化しており、事業リーダーには、部門を超えて人材を見ることとすべてのレベルで組織としての能力に焦点を当てることが求められています。人事には、対話とテクノロジーを通じて、個人が自分のキャリアを方向付け管理できるようにすること、個人には、経験と能力開発を通じて自分のキャリアに責任を持ち追求すること、が求められています。
スキルベースのアプローチを反映するには、人材を効果的に識別し配置できるような組織文化と構造が重要です。同様に、将来起こり得るシナリオに向けて計画を立て人材を準備することは、タレントマネジメント戦略を実行し成功させるための重要な要素です。
タレントマネジメントと後継者計画の連携
後継者計画は、タレントマネジメントにおいて戦略的な重要性が高いにもかかわらず、事業リーダーから付加価値や期待される投資収益率が得られないと批判されることがよくあります。こうした事態は多くの場合、後継者計画が架空の人員交代計画を立てるだけになってしまい、長期的に価値を生み出さないという、よくある落とし穴によって起こります。
よくある落とし穴 ―― 後継者計画が失敗する理由
- コンテクストの欠落
後継者計画は、人事が開始する活動であるため、組織のコンテクスト(背景・文脈)や長期的な戦略が欠落していることが多くあります。そのような場合、後継者計画が将来の組織能力に貢献することはありません。 - リーダー職に焦点を当てる
後継者計画は、リーダー職の人員交代計画と同じである場合、失敗します。リーダー職は事業にとって重要かもしれませんが、持続可能性を確保するために、すべてのレベルで価値を推進する要因を検討する必要があります。後継者計画は、すべてのレベルにおいてリーダーシップパイプラインや準備ができている状態を作り、支援するものであるべきです。 - 過度に人に焦点を当てる
後継者計画は誰かが退職するという「最悪のシナリオ」の対応策と捉えられる傾向があります。そのような場合、人員交代計画になってしまいます。重要なスキルギャップに対応するための柔軟性と機敏性を生み出すために、スキルと職務に関する後継者計画に焦点を当てるべきです。 - 1 対 1 のマッピング
後継者計画が1対1の交代に焦点を当てている場合、柔軟性を生み出すことや将来のシナリオ変更を考慮していません。1対1ではなく、後継者プールを作成することで、個人と組織の両方により多くの機会が生まれます。 - 手作業
後継者計画は、煩雑で時間がかかり、手作業であることが知られています。多くの場合、会話によって進み、スプレッドシートに記録されます。データとテクノロジーを活用していない後継者計画は、効果がなく、時代遅れになるリスクがあります。 - 主観的な意見に基づく識別
後継者は、欠陥のある基準に基づいて識別されており、成功しないことがよくあります。多くの場合、リーダーの意見に依存して後継者を識別し、後継者の準備状況と育成基準に達していることを裏付ける客観的なデータがほとんどありません。 - 他のタレントマネジメント戦略から切り離されている
後継者プールが作成・保持されていない場合、後継者計画は付加価値を生み出すことができません。後継者は、異なる職務を引き受ける準備ができていない、もしくは、外部にチャンスを求めて組織を離れてしまっています。
成功するためのベスト プラクティス
よくある問題点と落とし穴を克服するための、ベストプラクティスをご紹介します。
- 後継者計画は、組織の戦略および能力と密接に連携する必要があります。人員交代計画から、重要なスキルに基づいた後継者育成への転換です。
- リーダーだけでなく、組織のすべてのレベルにわたる重要スキルと職務を含める必要があります。これにより、健全なパイプラインと、事業の持続可能性の鍵となるスキルに焦点を当てたアプローチが可能になります。
- 人材データとテクノロジーは、後継者候補を識別して管理するための重要な要素です。重要な基準についての客観的かつ一貫した測定結果を提供します。
- 状況の変化に適応し、進捗状況を確認して改善を繰り返す、継続的なプロセスであるべきです。
- 後継者計画は、後継者プールを確実に作成しサポートするために、より広範なタレントマネジメント戦略に統合されている必要があります。
後継者計画は、組織が長期的に成功するための準備を整える上で戦略的に重要な役割を果たします。ただし、この価値を解き放つには、組織のコンテクストと密接に連携し、より広範な人材戦略に統合されており、客観的で維持可能なデータに基づいている必要があります。関連するテクノロジーへの投資も必要です。それにより、変化に機敏に対応し、事業全体にわたって後継者の識別と配置について透明性を確保することができます。
原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2022/planning-and-setting-up-for-succession/
「後継者計画」という表現ですと、リーダーの欠員補充計画という印象を与えてしまいがちですが、それでは価値を生み出せないと著者は主張しています。今後より適切な新しい表現が生まれてくるのでしょうか。
前編では、営業に影響を与える3つのトレンドとそれらが営業職にどのような影響を与えるかをを解説しました。後編では、新しいコンピテンシーモデルについてご紹介します。SHLセールストランスフォーメーションモデル
妥当性の検証された優れた営業人材のフレームワークがあれば、営業現場に安定と成長をもたらすことができます。SHLは、3つのトレンドの考察をもとに、現在の営業職の成功に必要な行動を測定するフレームワークである「セールストランスフォーメーションモデル」を構築しました。

また、営業リーダー向けのモデルが別途作成されました。営業リーダーに求められる要件は、営業担当者のそれとは異なる場合があるため、営業成績だけで昇進させることは災いのもととなりかねません。
各コンピテンシーの定義
変化した営業現場


・個人あるいはグループレベルで営業人材の概要を把握する
高業績者に共通する特徴は何か、どうすればより多くの営業職が目標を達成できるか、デジタル営業で最も成功しそうなのは誰か、などを把握できます。
・アセスメントを実施し、データ主導の意思決定を行い、採用の成功率を高める
各コンピテンシー得点と総合得点によって、迅速に候補者の順位付けができます。SHLの調査によれば、これらのコンピテンシー得点が高い人は、低い人に比べて約2倍の売上をあげることができます。
・営業コンピテンシーに沿った、個人別の能力開発を行う
・チームの行動面の強みを社内外と比較する
SHLの450億のデータポイントを利用して、他の営業組織とのベンチマークを行うことができます。
・意思決定からバイアスを排除し、多様性を向上させる
例えば、営業コンピテンシーに男女差はないにもかかわらず、営業職のうち女性は34%未満でした。なぜ営業職の女性が増えないのでしょうか?なぜこの巨大な人材プールを見逃しているのでしょうか?
まとめ
BtoBの取引がデジタル環境で行われ、買い手の行動や期待も大きく変化し、それらに対応するための新たな営業人材のフレームワークとして、「セールストランスフォーメーションモデル」が作成されました。活用事例はこちらでご紹介しています。© SHL. Translated by the kind permission of SHL Group Ltd. All rights reserved
2022 年は、SHL のニューロダイバーシティ研究プログラムにとってエキサイティングな年でした。私たちと一緒に変化をもたらすために重要なポイントをお読みください。
クレア・モットラム
2022年 11月 9日
Purple Tuesdayはグローバルな社会運動で、障害をもつ人とその家族の顧客体験を向上させるために、認識や理解を促進し、アクセシビリティの改善を促すことを目的としています。SHL は、先週ロンドンで開催されたPurple Tuesday UK の祝賀会に参加し、米国でもミネアポリスオフィスで初のイベントを開催しました。
難聴者として、また最近注意欠陥多動性障害 (ADHD) のために学校からサポートを受け始めた幼い子供の母親として、このトピックは私にとって非常に重要です。世界保健機関(WHO)は、世界人口の 15%、つまり10億人以上が障害をもつと推定しています。また、ヨーロッパやアメリカにおいては、人口の約 20% が障害をもつ人の介護者であると報告されています。
SHLのニューロダイバーシティ研究プログラムは、Recruitment Industry Disability Initiative (RIDI)による『Making a Difference – Private Sector』賞の最終候補に選ばれました。
私はSHL で 12 年近く働いていますが、その間、SHLがニューロダイバースな人材も含めて、公正な人事決定のためにすべての受検者に包括的でアクセスしやすい受検体験を提供することへ取り組む様子を見てきました。ニューロダイバーシティ研究プログラムを立ち上げるきっかけとなったのは、Purple とのパートナーシップでした。この研究プログラムは、最近、Recruitment Industry Disability Initiative(RIDI) による「Making a Difference – Private Sector」賞の最終候補に選ばれました。研究チームの私たちにとって非常に喜ばしいことです。
先月のPurple Tuesdayのグローバルオンラインカンファレンスでは、様々な組織が社会的リーダーシップ、アクセシブルな受検体験、アクセシブルなマーケティング、グローバルな技術トレンドとイノベーションなど、話題となっているトピックについての知見を共有しました。SHLは、最近発行したニューロダイバースな人材のアセスメントに関する白書から重要なポイントを紹介しました。要約が以下の1~6にあります。詳細な調査結果とポイントについては白書をお読みください。
カンファレンスで明らかになった重要なテーマは、障害者のインクルージョンとは旅に出るようなものであり、年々よりアクセスしやすくインクルーシブになるように、継続的に成長するものだと認識することでした。あなたの組織がこの旅の比較的初期の段階にある場合でも、すでに大きく進んでいる場合でも、前進し続けなければなりません。
障害者のインクルージョンとは、旅に出るようなものです。年々よりアクセスしやすくインクルーシブになるように、継続的に成長することです。
Purple Tuesday イベントで私が非常に良いと思った点の 1 つは、参加者が実行に移すことができる実用的なヒントの共有に重点を置いていることです。
- 知的能力アセスメントは、ニューロダイバージェントな人材を評価するための有望な選択肢です。得点差、所要時間、エンゲージメントと公平性に関する反応の調査に基づいています。
- ニューロダイバージェントな人材は、強みと課題の両方を備えた「とがったプロファイル」を持つ可能性が高いです。採用担当者がどのようにコンピテンシーを選び、測り、決定するかに影響を与えます。
- 強みと課題は状態によって異なります。状態には重複する部分もありますが、多少の差異もあります。調査結果を薄め、すべてのニューロダイバージェントな人材に一般化しないように、個別に検討することが重要です。
- 状態ごとにアプローチを適用することはできません。アセスメントに対する反応は、同じニューロダイバースな状態の人であっても、人によって異なるため、個別のアプローチを取ることが重要です。
- 多くのニューロダイバージェントな候補者は、調整が必要な状態について伝えることをためらいます。これは、ニューロダイバーシティを取り巻く偏見や否定的な固定観念、そして採用場面ということを考えれば、驚くべきことではありません。アセスメントプロセスを適切に実行するために必要なサポートを確実に受けられるように、さらなる取り組みが必要です。
- 小さな変更が大きな違いを生む可能性があります。ニューロダイバージェントな候補者からフィードバックを集めることは、受検体験を向上させるための具体的にどのようなことができるかを特定するのに非常に役立ちます。多くは実行するのにほとんど労力を要しませんが、大きな影響を与える可能性があります。
今年の初めに、私はニューロダイバーシティ研究プログラムのリーダーを拝命しました。このチームを率いることを非常に誇りに思っています。私たちは 2023 年のアジェンダを最終決定したばかりです。来年の年次報告書では、より広く、より深い知見や重要ポイントを共有できることを楽しみにしています。
研究チームを率いる新たなリーダーによる記事でした。彼女自身がニューロダイバージェントな人材です。当事者としての視点を生かして研究が一層進むことを期待しています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は事業活動のあらゆる側面に影響を及ぼし、もちろん営業機能も例外ではありません。営業職に求められる能力も変化しています。本コラムでは、BtoB営業を取り巻く大きな変化とそれに基づく新たなコンピテンシーモデルについて、SHLグループのeブック「Three Mega-Trends Transforming Sales Success」に基づいてご紹介します。

新しい営業の世界に適応する
企業の購買や販売、デジタルのコミュニケーションを形成している以下の3つのトレンドと、それらが営業職にとって何を意味するのかを見ていきます。① 変化した営業現場: 高業績者は、デジタル化が進む営業環境に適応しています。
② 変化した消費者の行動: 高業績者は、新しい購買行動を理解しています。
③ 変化した成功する営業職の行動: 現在、成功につながる営業行動は、過去の営業行動と大きく異なります。
①変化した営業現場
以下の2つの環境変化により、営業現場はデジタルファーストへと変容しています。・データに基づく営業活動
営業プロセスは、技能からデータと分析に裏打ちされた科学へと移行しています。BtoB営業リーダーの75%は営業プロセスを強化するためにデータとデジタル戦略を導入しています。これは営業職にとって、テクノロジーの導入が不可欠であることを意味します。革新的なテクノロジーを積極的に採用し、うまく活用することに加えて、データに基づいた営業活動を行うことが求められます。
・デジタルコミュニケーションのニーズ
BtoB営業の大半は、従来の対面営業からオンライン営業へと移行しています。ガートナー社は2025年までには、BtoBの営業活動の80%がデジタルで行われるようになると予測しています。
営業職にとっては、オンライン営業の導入は不可欠です。従来の営業活動は、対面での関係構築や商談に重きを置いていました。しかし、現在、そして将来的に成功するためには、リモートで仕事をし、オンライン営業で成功する必要があります。
②変化した消費者の行動
買い手の購買体験に対する期待は大きく変わってきています。・パーソナライズされたアプローチ
昨今の買い手は、パーソナライズされた購買体験を期待し、それに対してより多くのお金を支払うことを望んでいます。営業職は、価値のある経験を提供することが求められます。顧客と密接なパートナーシップを結び、買い手にとっての価値を高める信頼関係を構築する必要があります。
・顧客自身による情報収集が一般的に
現在、購買プロセスの57%は営業職が買い手とやり取りをする前に行われています。このため、顧客にとっては情報が多すぎたり複雑になったりすることがあります。営業職は顧客に対して複雑な情報を簡素化し、効果的で明確なコミュニケーションをとることが求められます。
・買い手はパートナーを求めている
買い手は複数の営業職とのやり取りをするうちに、様々な選択肢のどれを、あるいは誰を信用すればよいのかわからなくなることがあります。営業職は協働的なアプローチをとることが必要です。顧客との協力関係を築き、提案内容を信頼してもらわなければなりません。
③変化した成功する営業職の行動
従来の営業コンピテンシーは依然として重要であるものの、新たな営業コンピテンシーが出現していることがSHLの調査で明らかになりました。・適応力と回復力
リモートワークは新たな期待をもたらし、営業分析とオペレーションは進化し、カスタマージャーニーは再構築されつつあります。これらは、営業職が経験している変化のほんの一部に過ぎません。BtoB営業は、急速に変化する業界に適応し、プレッシャーに打ち勝たなければなりません。SHLの調査では、ノルマ達成の予測に最も影響を与えているコンピテンシーは「回復力」でした。
次回はこうした変化に応じるための、新たなコンピテンシーモデルについてご紹介します。
多国籍電気通信事業者のセールストランスフォーメーションを支援する
企業
- 業界:通信、ITサービス
- 規模:9万人以上
- 地域:イギリス、ロンドン
イギリスおよびアイルランド共和国の大手ビジネス通信プロバイダーであるBTエンタープライズは、法人向け営業戦略を実現するために、データに基づいたインサイト(知見)主導のアプローチで営業社員の現状と将来のポテンシャルを理解することが重要であると考えました。人材開発チームは、インサイトを活用することで、営業社員全体を成長させ、将来のビジネス目標を達成するためのカスタマイズされたアプローチを構築し、展開することができるようになりました。
課題
BTエンタープライズは、急速に変化する状況に置かれており、既存および新規の競合相手によって事業上の課題とチャンスが増えています。同社は、実績のある営業手法に倣い、営業社員がこの手法を採用・実践できるよう人材開発を行ってきました。しかし、現在のようなダイナミックな環境では、営業社員は顧客へのアプローチ方法についてこれまでとは異なる考え方をする必要があり、よりインサイトに基づくコンサルティングセールスの手法を採用することが求められます。BTエンタープライズでは、現状と将来のニーズとのギャップを把握し、最適な解決策を見出すために、営業社員の能力、モチベーション、ポテンシャルに関する正確な人材データとインサイトを必要としていました。個人レベルでは、継続的な自己啓発を支援し、当事者意識と責任感を高め、個人の目標だけでなく事業の将来のニーズも満たす実用的なインサイトが求められていました。組織レベルでは、オーダーメイドの個人別の能力開発計画を立案できるように、BTの営業社員の総合的な強みと能力開発領域に関する深いインサイトが必要でした。また、営業組織に対し将来の人材計画、採用、能力開発活動に関する意思決定を支援するためのインサイトも求められていました。
ソリューション
SHLとBTエンタープライズは、BTエンタープライズの営業組織の人材棚卸しに協力して取り組み、営業社員一人ひとりについてのインサイトと営業機能全体としての結果が得られる心理測定アセスメントを実施しました。
900人の営業社員がSHLのパーソナリティ検査(OPQ)と意欲検査(MQ)に回答しました。回答結果はSHLの新たなセールストランスフォーメーションフレームワーク(2021年)に照らして測定され、パーソナライズされたフィードバックレポートが作成されました。このリポートは、受検者が自分の仕事における主なやる気の源と能力開発領域を理解し、営業成績との関連が実証されているコンピテンシーと自分の行動の好みがどの程度一致しているかを理解することを助けます。
BTは、ダッシュボードを通して営業社員全体の結果を確認しました。さらに、SHLがこのアセスメント結果と職務データの相関や、競合他社のベンチマークとの比較などの分析を行い、現在のBTエンタープライズにおける営業機能のプロファイルの全体像を把握しました。
結果
人材データを理解することは、法人向け営業戦略を成功に導くために有効です。SHLが提供した人材に関するインサイトにより、BTは社員の総合的な強みとギャップを理解し、個人と特定の事業分野に対し、現在の能力開発ニーズとポテンシャルのある分野に密接に連携した、より的を絞りカスタマイズされた能力開発戦略をとることが可能になりました。
アセスメント結果から得たインサイトを競合他社の結果と比較することで、人材戦略をビジネスの全体戦略と整合させ、最終的に競争優位性を持つことができるようになりました。
データ分析の結果、SHLのセールストランスフォーメーションフレームワークで高得点を獲得したBTの営業社員は、2倍の確率で営業成績優秀者であることが判明しました。
さらに詳しく見てみると、最も高業績なBT営業社員は、顧客のためにパーソナライゼーションと価値創造を推進する傾向が2倍あり、行動プロファイルの面ではより機敏で適応力があり、レジリエンス(回復力)があることが明らかになりました。また、今日のデジタル主導の営業環境において不可欠な、ビジネス分析とテクノロジー活用を強みとする可能性が15%も高いことが分かりました。
最終的には、個人レベルでも集団レベルでも営業社員に関するインサイトを得ることで、BTは営業人材の育成においてより計画的かつ的を絞ることが可能になりました。加えて、営業職への応募者を評価する方法も明確になりました。
原文はこちら。
https://www.shl.com/resources/by-type/case-studies/bt-enterprise/
セールストランスフォーメーションフレームワークの全体像は以下のコラムでご紹介しています。
http://www2.shl.ne.jp/column/perspective/hrqa2_334
現在は英語版のみでのご提供です。
ハイポテンシャル人材の識別が、海賊の地図や神話、伝説をもとにした宝探しのようになっていませんか?あなたのハイポテンシャル人材のリストは、組織内の正確なハイポテンシャル人材の状況を反映できていないかもしれません。
ヘレン・ファレル
注:以下の物語の登場人物は架空のものです。
私がナディアとテーブルを挟んで座っていると、人事マネジャーのマークが慌てて入ってきた。彼は髪に手をやり、きちんとした髪型を崩した。
「遅れて申し訳ありません、ナディア。ジャックと電話で話したところです。」マークは息を切らせながら言った。ナディアはまばたきをして、眉をひそめた。「それで?」
「ええ、彼はちょうど辞表を提出したところです。」マークは息をつき、ナディアに視線を送った。ナディアはもう片方の眉毛を上げた。「金曜日に彼と一対一の面談があったのよ」。
ナディアはマニキュアを塗った手で眼鏡を調節した。「これで3人目よ。ジャックはリストにいたわ」「分かっています。リストにいました。」 マークは唇を噛み締めながら、下を向いて繰り返した。
私の耳は、そのリストに釘付けになった。この手のリストというのは常にある。企業がそれを形式化し、組織内の共通認識としているかどうかにかかわらず、常にリストがあるのだ。ハイポテンシャル、つまり優秀な社員、成功する可能性のある社員のリストだ。そして、このリストは、後継者育成の戦略、トレーニングや能力開発の予算、そして会社全体の変革に反映される。
つまり、優秀な人材をこのリストに載せることは、事業にとって非常に重要なことなのだ。現在、どのようにリストを作っているのかを尋ねた。
「管理職が、自分のチームの中で、特に優秀な人材を指名するんです」とマークは説明した。
なるほど、業績か。新たなスターを見つけるための一つの要素だ。ハイポテンシャル人材の73%は、主観的な推薦によって選ばれている。しかし、その推薦には、さまざまなバイアスがかかっている。つまり、このリストは、ごく一部の多忙な管理職の意見に基づいた、人材の状況についての大まかなスケッチである。
それだけでは十分ではない。意欲とエンゲージメントも重要だ。ジャックは本当に組織内で活躍することを望んでいるのだろうか?そのことで、彼はよい気分になるのか?良い給料や報奨、昇進など、組織が提供するものによって、彼はやる気を出しているのか?彼は組織にコミットしているか?彼は友人や家族に仕事の話をしているか?彼は新しいアイデアを持っているか?彼は何かを完成させるために組織にいるか?夜、目を閉じても仕事のことを考えているか?
もし、彼が辞表を出したばかりなら、そうでないことは明らかだ。ナディアは唇をとがらせた。マークは寂しそうに床を見た。
これが問題だ。従業員についてこのようなことを知るのは難しい。しかし、測定することはできる。走り書きの地図だけを頼りに埋もれた宝を探しに行く必要はない。客観的で有効なアセスメントを使い、社員のエンゲージメント、能力、アスピレーションをまとめて、より包括的な地図を作ることができる。今、組織で育成すべき人材は誰か、もっと上を目指せる人材は誰か、今後に向けて育成すべき人材は誰かを把握する。それらを5つのボックスでマッピングすることで、真の人材配置・異動の計画ができるようになる。ハイポテンシャル人材が誰で、どのポジションにいるのか、どのような職務を担っているのか、オンラインのプラットフォーム上で確認することができる。それにより、ハイポテンシャル人材のリストはダイナミックで、生き生きとした、希望と野心に満ちたものとなり、人材パイプラインごとに異なるリストになる。単なるリストではなく、組織の未来を示す地図であり、等高線や凡例など、必要なものがすべて揃う。
私は「すべてが失われたわけではない」と言う。ジャックが辞めることを心配する必要はない。それよりも、フルールから目を離さないことだ。彼女こそ、真の秘宝だ。「フルールですか?」マークが眉をひそめて言う。「フルールのことは良く知りません。ジャックの最初の3ヶ月の成功は伝説的でしたが…。」と。
ジャックの業績は印象的だったかもしれないが、フルールは組織内で活躍することを望んでいる。高業績者のうちハイポテンシャル人材は15%にとどまる。フルールは意欲に燃えている。彼女は、組織内で活躍することでとても良い気分になっている。そして、自分の銀行口座にボーナスが振り込まれるのを見たときの快感がたまらないのだ。他のチームと話をし、耳を傾け、タイトな納期をこなす。そして、どうすれば他のやり方ができるかについてアイデアを持っている。ジャックはどうだろうか?変化し続ける世界や仕事についていくために必要な変化の中を、彼は進んでいくことができるだろうか?
ジャックは辞職したばかりで、答えはノーだ。
もし、明日CEOが「損益にインパクトを与えるために変えるべきこと」「毎日起きて出社する理由」を尋ねたら、ジャックは何と言うだろう?
フルールなら、きっと言いたいことが沢山あるはずだ。ジャックではなく、フルールがリストに載るべきだ。このような人材は、発掘され、育成されれば、大きな成果を上げることができる。管理職は、誰が高業績者かについて自分なりの考えや感じ方をもっているだろう。しかし、パフォーマンスとポテンシャルは別物だ。管理職は、ただ沢山見たり聞いたりしているだけだ。エンゲージメント、意欲、重要な行動の全てが違いをもたらす。管理職が、自分たちの仕事の優先順位を見極めながらも、ハイポテンシャル人材を識別するためには、特別な手助けが必要かもしれない。
ジャックに予算を浪費せず、手遅れになる前にフルールに投資すべきだ。彼女は競合他社に転職し、5年後にはチームを率いていて、あなたの組織を凌駕しているかもしれない。
組織の中で、能力、モチベーション、粘り強さを持っている人を見つけるべきだ。できる人、そして長期的に組織に留まることを約束できる人。仕事以外の活動や、組織の提供する報酬に喜びを感じる人、人を導き、創造的に考え、誠実に集中することができる人を。そして、組織を前進させるビジョンを持っている人を見つけるべきだ。
客観的なアセスメントを使えば、地図をもとにゴールに向かう際に、人による解釈を取り除くことができる。ハイポテンシャル人材を特定するためにSHLのアセスメントを使用することで、エンゲージメント、定着率、将来の業績が向上することが分かっている。また、Mobilizeプラットフォームでは、社員がどのような職務に最も適しているかを確認することができ、上級職で12倍、経営幹部職で11倍も活躍できる可能性をもつハイポテンシャル人材を識別することができる。
埋もれた宝物を探すのに、急いで走り書きした印象的な場所と、コンパスと凡例を備えた包括的で客観的な地図と、どちらが良いだろうか?
どんな会社にも有望な人材のリストがある。重要なのは、そのリストの作り方だ。
原文はこちら。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2022/treasure-hunting-for-high-potentials-more-than-just-pirate-maps-myths-and-legends/
皆様の有望な人材の「リスト」には、業績だけでなく意欲とエンゲージメントの要素が加味されているでしょうか。