コラム 人事コンサルタントの視点

キャリア自律を実現するための“可視化”と“対話”の仕組みづくり

近年、多くの企業が「キャリア自律」を掲げています。しかし、現場では「従業員が自律的にキャリアを考えられない」「会社としてどこまで支援すべきか分からない」といった声が依然として多く聞かれます。キャリア自律は、従業員個人の努力だけで成立するものではなく、企業側の仕組みづくりが不可欠です。
本稿では、実例を基にSHLのアセスメントフレームワークを活用した「キャリア自律実現のための仕組みづくり」を整理します。

1.キャリア自律の仕組みづくりは「選択肢の可視化」から始まる

    キャリア自律を語るうえで最も大きな障壁は、「自社にどんな職種・職務・キャリアパスが存在するのか分からない」という情報不足です。従業員がキャリアを主体的に描くためには、まず以下の情報が整理されている必要があります。

  • 自社に存在する職種・役割の一覧
  • それぞれの職務内容・期待される成果
  • 実現可能なキャリアパス(横断・昇格・専門職など)
これらが曖昧なままでは、従業員は「どこに向かえばよいのか」を描けません。キャリア自律の第一歩は、企業側がキャリアの地図を整備することです。
実際の例では、社内の様々な職種やポジションに対して、現場の紹介文や必要なスキル、役割などを社内イントラで従業員がいつでも閲覧できるようにするWebサイトを構築しているケースもあります。

1.キャリア自律の仕組みづくりは「選択肢の可視化」から始まる

2.各職種・ポジションに必要なスキルやコンピテンシーを紐づける

単純にキャリアパスを示すだけではまだ不十分です。従業員が「自分に何が足りないのか」「どの能力を伸ばせば次のステップに進めるのか」等を理解するためには、スキルやコンピテンシーの明確化も重要な指標となります。

    SHLのコンピテンシーフレームワーク(PMC、UCFなど)を活用することで、

  • 役割ごとに求められる行動特性
  • 成果につながる能力要件
  • 将来のリーダーに必要なポテンシャル
を体系的に整理できます。これにより、従業員は「キャリアパス × 必要な能力」をセットで理解でき、キャリア形成の具体性が一気に高まります。
☞各ポジションに求められる人材要件定義の方法はこちら

3.自身の強み・弱みを基に「描きたいキャリアを具体化」する

キャリア自律は、従業員自身の「自己理解」と他者からの「フィードバック」から具体的なビジョンを描くことができます。

  • 自分の強みは何か
  • どのような行動傾向があるか
  • どの能力が伸びやすく、どこに課題があるか
これらを客観的に把握するために、アセスメントは非常に有効です。また、従業員個人の内省だけでなく、上司との対話を通じてキャリアビジョンを言語化し落とし込むことが重要です。

例えば、アセスメント結果を活用したキャリア面談では、次のような対話が行われます。

上司
「今回のアセスメントを見ると、“課題を構造化して整理する力”や“改善提案”は○○さんの強みのようですね。ご自身でもそう感じますか?」
社員
「そうですね。問題点を見つけて改善を考えるのは好きです。ただ、今の業務ではそこまで任されている感じはないです。」
上司
「なるほど。もし業務改善プロジェクトのようなテーマがあれば興味はありますか?○○さんのキャリア開発という意味でも良い経験になると思います。」
社員
「あります。そういう経験ができるなら、将来的には企画系の仕事にも挑戦してみたいと思っています。」
上司
「そうすると、次の半年〜1年では“業務改善の経験”ができるといいですね。キャリアパスを広げるという意味でも、部署横断のプロジェクトが出たら候補に挙げたいと思います。」

    1on1やキャリア面談では、

  • 本人の志向
  • 現在の能力とギャップ
  • 配属・異動の可能性
  • 必要な経験・スキル
をすり合わせることで、キャリアの方向性が明確になります。企業側は、上司が適切に対話できるよう、面談スキルの向上やフィードバック研修の整備なども求められます。
☞「自己理解」や1on1の対話を促進するSHLの適性検査「万華鏡30」はこちら

4.キャリアビジョン実現のためのアクションを促進する

    キャリア自律の最終ステップは、「描いたキャリアを実現するための行動(能力開発)」です。

  • OJT・ストレッチアサイン
  • 研修・eラーニング
  • 360度フィードバック
  • メンター制度
  • 異動・ローテーション
  • など、企業が提供できる支援は多岐にわたります。

重要なのは、“本人のキャリアビジョン”と“企業の育成施策”を接続することです。アセスメント結果と描きたいキャリアを基に、「どの能力を、どの施策で伸ばすべきか」を明確にすることで、スムーズに次のアクションへ接続することができ、能力開発の効果は大きく高まります。

例えば、キャリアビジョンを踏まえた能力開発の議論では、次のような会話が行われます。

上司
「前回のキャリア面談で、将来的にプロジェクトマネジメントにも関わってみたいという話がありましたね。今回のアセスメントを見ると、意思決定や推進力は強みになりそうです。」
社員
「そうですね。プロジェクトを動かす仕事には興味があります。ただ、まだプロジェクトをまとめた経験がないので少し不安もあります。」
上司
「確かにいきなり大きな案件を任せるのは難しいですが、まずは小さなテーマでもプロジェクトのサブリーダーを経験してみるのはどうでしょう。良いステップになると思いますよ。」
社員
「それなら挑戦してみたいです。」
上司
「では次の四半期に動く業務改善プロジェクトがありますので、そこで役割を持ってみましょう。経験を積みながら、必要なスキルや能力を一緒に整理していきましょう。」
このように、キャリアビジョンとアセスメント結果を踏まえながら、具体的な経験機会や役割を設計することで、能力開発はより実効性のあるものになります。

4.キャリアビジョン実現のためのアクションを促進する

まとめ:キャリア自律は“個人の努力”ではなく“企業の仕組み”で実現する

    キャリア自律を促すために企業が整えるべきは、以下の4つです。

  1. 職種・職務・キャリアパスの可視化
  2. ポジションごとのスキルやコンピテンシー要件の明確化
  3. 自己理解の促進と対話によるキャリアビジョンの言語化
  4. 次のアクションへの接続
これらが揃って初めて、従業員は自らキャリアを描き、行動できるようになります。
キャリア自律は、企業と個人が協働してつくる仕組みの上に成り立っています。その基盤として、アセスメントを活用した可視化と対話の設計は強力な武器となるでしょう。

松﨑 宏一

このコラムの担当者

松﨑 宏一

コンサルティング1課 主任

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