コラム

人事コンサルタントの視点

イノベーション人材のパーソナリティ

近年、競争が激化するグローバル市場において、新たな事業やサービスを生み出すことはどの企業にとっても重要な経営課題となっています。さらに、私たちが現在直面している新型コロナウィルスの蔓延によって、これまでの価値観や生活様式を揺るがす大きなパラダイムシフトが起こっています。このスピーディな変化にさらされる社会で、新たな付加価値を生み出すイノベーティブな人材はますます求められる一方、多くの企業でそういった人材は不足しており、イノベーティブな人材の獲得・発見・育成が急務であるといえます。

イノベーション人材はどこにいる?どんな人?

「イノベーション人材」と聞いて、みなさんはどんな人を想像しますか?パナソニックの創業者・松下幸之助、Appleのスティーブ・ジョブズなど著名な創業者が思い浮かぶ人も多いと思います。時代を築く寵児となるイノベーション人材はそうそう存在するものではない、とも思うかもしれません。しかし、ある調査によれば、実は17人に1人は真のイノベーターのポテンシャルを持っているのです(The 2012 Talent Report、CEB2012)。およそ5.8%ですから、イノベーション人材のポテンシャルを持つ人はみなさんの組織にもいる可能性があります。
イノベーションの研究で著名なクリステンセンらによれば、イノベーターにとって重要なスキルは次の5つです:関連づける力、質問力、観察力、実験力、ネットワーク力
では、イノベーションを起こす人材はどんなパーソナリティなのでしょうか?

イノベーション人材のパーソナリティ

当社は2016年にイノベーション人材の行動特性を明らかにするため、パーソナリティ検査OPQを用いて定量化する研究を行いました。この研究では、イノベーション人材を「独立起業家」及び「企業内新規事業創造人材」と定義しました。

研究概要は以下の通りです。

【調査期間】2015年~2016年
【対象】
 ①独立起業家 36人
 ②企業内新規事業創造人材 179人
 (メーカー6社64名、商社1社41名、金融1社34名、通信1社14名、サービス5社13名、メディア1社7名、IT4社6名)


【結果】
●イノベーション人材は共通して、
‐論理的かつ新たなアイデアを発案するのが得意(問題解決力+、創造的思考力+)
‐環境変化に強い(状況適応力+)
‐協調性は低いが、強いリーダーシップを発揮する(人あたり‐、チームワーク‐、統率力+)



●独立起業家と企業内新規事業創造人材を比較すると、
独立起業家は自分の信念がより強く、目の前のことに取り組む(独自性+、計画性‐)
企業内新規事業創造人材は妥協ができて、より長期的なスパンで物事を見る(独自性‐、計画性+)


イノベーション人材の発掘・活用にむけて

研究結果から、イノベーション人材は共通する強い特徴を持っていることが分かりました。この特徴は、「とても優秀である」というポジティブな見方で捉えられる場合もあれば、ネガティブな見方をすることもできます。

これら両側面を理解することで、見過ごされていたかもしれないイノベーション人材を発掘、採用することができるかもしれません。

また、イノベーション人材のポテンシャルはパーソナリティだけではなく、他にも重要な要素があります。知的能力を含めた能力評価も重要ですし、実際に改革・変革を起こした過去の実績の有無も関係するでしょう。また、今あるものを変えていきたい、という強いエネルギー、ある種の使命感や意欲を本人が強く持っているかも重要です。最後に、いくらポテンシャルを秘めていても、それを発揮できる環境がないと結局イノベーション人材を活かしきれません。失敗を許容できる環境、また変革を受け入れられる組織風土でこそ、イノベーション人材のポテンシャルが顕在化します。

 
人と環境の両面からイノベーションを生み出す組織づくりが必要と言えるでしょう。

※引用文献:石橋 加奈子・堀 博美(2016)新規事業創造人材の行動特性に関する一考察 産業・組織心理学会 第32回
水上 加奈子

このコラムの担当者

水上 加奈子

日本エス・エイチ・エル株式会社
マーケティング課 課長

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