コラム

人事コンサルタントの視点

サクセッションプランとは

経営トップの適格性が企業の業績に大きなインパクトを与えるのは誰もがわかっている当たり前のことです。しかしながら、経営トップの行動によって社会からの信頼を失い、業績が低迷する企業の事例を目の当たりにすると、改めて経営者の選抜の重要性を実感します。
本コラムでは、今の人事責任者が最も関心を寄せるサクセッションプラン(経営リーダーの計画的な発掘と育成)について解説します。

サクセッションプランとは

サクセッションプランとは、将来組織のリーダーを担う人材を計画的に発掘、育成、選抜する仕組みです。経営トップや事業責任者など、組織の持続的な成長に欠かせないポジションにおいて、誰が役割を引き継ぐのかをあらかじめ定めておくことで、不測の事態にも備えられると同時に、戦略的な人材育成にもつながります。

サクセッションプランとは

サクセッションプランの必要性

サクセッションプランの必要性が世界中で高まっている主な理由は二つあります。一つ目は経営環境の不確実性が高まり、予期せぬリーダー交代が組織の大きなリスクとなっているから。二つ目はリーダー人材の獲得競争が激化し、自社内での育成が重要になっているからです。加えて、社会の価値観が多様化していることで、経営リーダーに求められる要件が急激に変化していることも影響を与えています。
ハーバードビジネスレビューシニアエディターのエベン・ハレル氏が行った研究では、退任するCEOの後任をすぐに見つけられない企業は平均で18億ドルの株主価値を失い、社外から採用されたCEOの平均報酬は社内出身のCEOの平均報酬よりも320万ドル高いことが述べられています。

サクセッションプランを行うべき組織

今すぐにでもサクセッションプランに着手すべき組織はどのような特徴を持っているのでしょうか。以下の6つのいずれかに該当する企業にとってサクセッションプランは重要課題と言えます。

  • 経営層の高齢化が進んでいる

  • キーポストが属人化している

  • 後継者選抜が主観的に行われている

  • 次世代リーダー候補が育っていない

  • 新事業創造やグローバル展開を進めている

  • 急激に組織が拡大し、複雑化している

サクセッションプランの進め方

次に、サクセッションプランの進め方についてです。サクセッションプランは以下のステップで構成されます。

1. 現状把握とキーポストの決定

経営層や人事が中心となり、経営戦略と連動した組織の将来像を描き、サクセッションプランの対象となるキーポストを決めます。キーポストには経営層や事業トップだけではなく、企業にとって必要不可欠な重要ポストを含める必要があります。キーポストが決まったら、各ポストについて後継者候補の有無を確認し、現状と将来像の人材ギャップを明確にします。

2. 後継者候補のアセスメントと選抜

従業員のなかから後継者候補をリストアップし、アセスメントを実施します。アセスメントを行うためには事前に各キーポストの人材要件を定義しておく必要があります。人材要件を定義するにあたって考慮すべき要素は、実績、コンピテンシー、ポテンシャルの3つです。実績は、業績、職務経験、保有資格、研修歴など今までの職務成果に関連する情報です。コンピテンシーは発揮された能力や行動特性です。定期的に行われる上司評価や360度評価によって得られる情報です。ポテンシャルは資質や潜在能力と呼ばれる保有している能力や才能です。仕事場面で顕在化していないことがある個人属性のため、アセスメント(認知能力測定、パーソナリティ測定、モチベーションリソース測定など)を使って測定する必要があります。

3. 育成プランの策定と実行

アセスメントによって選抜された後継者候補に対し、個々のスキルや経験のギャップを明確にし、それを埋めるための具体的な育成計画を作成します。例えば、戦略的視点を高めるためのプロジェクト参画、戦略的な異動による実務経験、メンタリング、外部研修など多様な方法を組み合わせます。育成の状況を上司や人事、キャリアコーチが定期的に確認し、必要に応じて柔軟に内容を見直すことが重要です。

4. メンテナンス

定期的に候補者の成長度合いや組織の状況変化を踏まえ、サクセッションプランが機能しているかを確認し、調整します。例えば、候補者が適切に育っているか、候補者の状況に変化はないか、重要ポストに変化がないか、部門責任者が役割を果たしているか、施策が経営や人事に貢献しているかなどをチェックします。必要に応じて対象ポストや候補者、育成方針の見直しを行い、仕組み全体の精度と実効性を高めていきます。ここでは経営層と人事が密に連携し、柔軟に対応することが求められます。

導入にあたっての注意点

一方で、サクセッションプランの導入にあたっては以下の点に注意が必要です。

  • 組織に適した透明性と機密性を確保する


    サクセッションプランの候補者選抜プロセスをオープンにするか、選抜された後継者候補にも通知せずに進めるかは組織ごとに慎重な検討が必要です。透明性を高めることが組織全体の活性化につながるのか、秘密裏に進めることが全体のモチベーションの低下を防ぐのかは組織の状況や対象となるポスト、サクセッションプランの施策内容によって異なります。
  • 経営トップの強い賛同を得る


    経営トップの強いコミットメントも成功の鍵となります。人事部門だけで計画を立てても、現場の理解や協力が得られなければサクセッションプランはすぐに形骸化します。キーポストの後継者を作り続けることは全社の利益につながる重要事項であることを経営トップから発信し続けてください。
  • 経営戦略、人材ポートフォリオと連動させる


    キーポストを定義する際は、現状だけでなく、将来の組織や経営戦略の変化を見据える必要があります。サクセッションプランは静的なものではなく、変化を前提とした動的な計画であるという視点が求められます。

導入にあたっての注意点

おわりに

サクセッションプランは未来の経営リーダーを育てる最も重要な人事施策の一つです。しかしながら、次の社長候補者を客観的な選抜と計画的な育成によって万全に準備できている企業は極めて少ないことが現状です。突発的に経営陣の交代を余儀なくされる場合のみならず、経営環境の変化に対応できる経営陣を育成し、円滑な後任への引継ぎを行うことは企業価値を向上させるうえで極めて重要です。
Insight Platformは、現在の複雑な経営環境に適応できる経営リーダー候補者の選抜に適したアセスメントツールです。オンラインで簡便に実施できるパーソナリティ測定と職務経験サーベイで、経営リーダーとしてのポテンシャルを測定し、人材選抜に対する有用なインサイトを提供します。

参考:Succession Planning: What the Research Says
Most organizations aren’t prepared. by Eben Harrell
From the Magazine (December 2016)
https://hbr.org/2016/12/succession-planning-what-the-research-says

清田 茂

このコラムの担当者

清田 茂

日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員

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