前回は「自己主張」をテーマに、8人の営業メンバーが会議室でそれぞれの個性をあらわにする場面をお届けしました。第2回のテーマは「人付き合い」です。
OPQの「人付き合い」は、外向性、友好性、社会性という3つの因子から構成されています。
前回と同じく、3因子の高低の組み合わせから8通りのキャラクターを登場させます。今回は前回の営業チームから2人に再登場してもらい、残る6人は新たな顔ぶれです。
舞台も変わります。会議室ではなく、展示会の会場です。この会社は今年、業界最大級のHR展示会に初めて単独ブースを出展することになりました。営業、マーケティング、カスタマーサクセス、コンサルティング、各部署から招集された8人が一つのブースに集結します。
展示会は、パーソナリティがむき出しになる場所です。来場者の多くは初対面。声をかけるのか、かけないのか。知らない人とどう打ち解けるのか。人前に立つことを苦にするのかしないのか。「人付き合い」の3因子の高低が、それぞれの振る舞いに色濃く出ます。今回は呼び込み・ブース対応・プレゼンの役割ごとに2人ずつのチームに分かれて動きます。チームの組み合わせと、そこで起きる化学反応にご注目ください。
登場人物紹介
舞台はHRソリューションEXPOの会場。8人は同じブースに集まりながら、それぞれまったく異なる「人付き合い」のスタイルを持っています。OPQの「人付き合い」を構成する3つの因子(外向性、友好性、社会性)の高低の組み合わせが、8通りの個性を生み出しています。
我堂(がどう)※第1回より登場 セールス1課
「自分の場所では最強、知らない海では溺れる」
なじみの顧客の前では圧倒的な存在感を放つ。しかし初対面の相手や、勝手がわからない場では意外なほど手が止まる。
| 因子名 | 低得点者の特徴 | 標準点 | 高得点者の特徴 |
|---|---|---|---|
| 外向性 | グループの中で静かで控えめ。注目の的になることを嫌う。 | グループの中でいきいきとし、活気がある。よく話す。注目を浴びることを楽しむ。 | |
| 友好性 | 一人でいることを気楽に感じる。一人で過ごす時間を大切にし、人が一緒にいなくても寂しくない。 | 人と一緒にいることを楽しむ。人が周りにいることを好む。人と一緒にいないと寂しいと思う。 | |
| 社会性 | 公式な場でないほうが気楽である。初対面の人と会うとぎこちない。 | 初対面の人と会うのも気楽である。公式の場でもくつろげる。 |
賑座(にぎざ)セールス2課
「どこでも、誰とでも、すぐ打ち解ける」
初対面も人混みも苦にならない。どんな場でも自然に会話が始まり、気づけば場の中心にいる。
| 因子名 | 低得点者の特徴 | 標準点 | 高得点者の特徴 |
|---|---|---|---|
| 外向性 | グループの中で静かで控えめ。注目の的になることを嫌う。 | グループの中でいきいきとし、活気がある。よく話す。注目を浴びることを楽しむ。 | |
| 友好性 | 一人でいることを気楽に感じる。一人で過ごす時間を大切にし、人が一緒にいなくても寂しくない。 | 人と一緒にいることを楽しむ。人が周りにいることを好む。人と一緒にいないと寂しいと思う。 | |
| 社会性 | 公式な場でないほうが気楽である。初対面の人と会うとぎこちない。 | 初対面の人と会うのも気楽である。公式の場でもくつろげる。 |
群居(むれい)マーケティング課
「仲間といれば無敵、初対面は別の話」
顔見知りとの場では饒舌で場を盛り上げる。しかし知らない人が多い場では、急に口数が減る。
| 因子名 | 低得点者の特徴 | 標準点 | 高得点者の特徴 |
|---|---|---|---|
| 外向性 | グループの中で静かで控えめ。注目の的になることを嫌う。 | グループの中でいきいきとし、活気がある。よく話す。注目を浴びることを楽しむ。 | |
| 友好性 | 一人でいることを気楽に感じる。一人で過ごす時間を大切にし、人が一緒にいなくても寂しくない。 | 人と一緒にいることを楽しむ。人が周りにいることを好む。人と一緒にいないと寂しいと思う。 | |
| 社会性 | 公式な場でないほうが気楽である。初対面の人と会うとぎこちない。 | 初対面の人と会うのも気楽である。公式の場でもくつろげる。 |
颯口(さつぐち)セールス2課
「軽やかに場を泳ぐ、一人の時間も悪くない」
初対面に強く、どんな相手とも軽快に会話をこなす。限られた相手としか深く関わろうとしない。一人の時間も悪くない。
| 因子名 | 低得点者の特徴 | 標準点 | 高得点者の特徴 |
|---|---|---|---|
| 外向性 | グループの中で静かで控えめ。注目の的になることを嫌う。 | グループの中でいきいきとし、活気がある。よく話す。注目を浴びることを楽しむ。 | |
| 友好性 | 一人でいることを気楽に感じる。一人で過ごす時間を大切にし、人が一緒にいなくても寂しくない。 | 人と一緒にいることを楽しむ。人が周りにいることを好む。人と一緒にいないと寂しいと思う。 | |
| 社会性 | 公式な場でないほうが気楽である。初対面の人と会うとぎこちない。 | 初対面の人と会うのも気楽である。公式の場でもくつろげる。 |
柔田(やわだ)※第1回より登場 セールス1課
「静かに、深く、確実に心をつかむ」
自分から場を盛り上げることはしない。しかし人とのつながりを大切にし、初対面やフォーマルな場でも動じない。静かだが、確実に相手の心を開く。
| 因子名 | 低得点者の特徴 | 標準点 | 高得点者の特徴 |
|---|---|---|---|
| 外向性 | グループの中で静かで控えめ。注目の的になることを嫌う。 | グループの中でいきいきとし、活気がある。よく話す。注目を浴びることを楽しむ。 | |
| 友好性 | 一人でいることを気楽に感じる。一人で過ごす時間を大切にし、人が一緒にいなくても寂しくない。 | 人と一緒にいることを楽しむ。人が周りにいることを好む。人と一緒にいないと寂しいと思う。 | |
| 社会性 | 公式な場でないほうが気楽である。初対面の人と会うとぎこちない。 | 初対面の人と会うのも気楽である。公式の場でもくつろげる。 |
絆(きずな)カスタマーサクセス課
「口下手だけど、あなたのことが気になる」
一人でいるより誰かと一緒にいたい。しかし初対面の場は苦手で、フォーマルな雰囲気になると余計に言葉が出なくなる。
| 因子名 | 低得点者の特徴 | 標準点 | 高得点者の特徴 |
|---|---|---|---|
| 外向性 | グループの中で静かで控えめ。注目の的になることを嫌う。 | グループの中でいきいきとし、活気がある。よく話す。注目を浴びることを楽しむ。 | |
| 友好性 | 一人でいることを気楽に感じる。一人で過ごす時間を大切にし、人が一緒にいなくても寂しくない。 | 人と一緒にいることを楽しむ。人が周りにいることを好む。人と一緒にいないと寂しいと思う。 | |
| 社会性 | 公式な場でないほうが気楽である。初対面の人と会うとぎこちない。 | 初対面の人と会うのも気楽である。公式の場でもくつろげる。 |
壇上(だんじょう)コンサルティング部
「舞台には強い、でも舞台を降りると消える」
人の輪に加わろうとはしないし、広い交友関係も求めない。しかし壇上に立つと誰よりも堂々とする。
| 因子名 | 低得点者の特徴 | 標準点 | 高得点者の特徴 |
|---|---|---|---|
| 外向性 | グループの中で静かで控えめ。注目の的になることを嫌う。 | グループの中でいきいきとし、活気がある。よく話す。注目を浴びることを楽しむ。 | |
| 友好性 | 一人でいることを気楽に感じる。一人で過ごす時間を大切にし、人が一緒にいなくても寂しくない。 | 人と一緒にいることを楽しむ。人が周りにいることを好む。人と一緒にいないと寂しいと思う。 | |
| 社会性 | 公式な場でないほうが気楽である。初対面の人と会うとぎこちない。 | 初対面の人と会うのも気楽である。公式の場でもくつろげる。 |
籠田(こもだ)カスタマーサクセス課
「自分の世界に、静かに生きる」
声がけも雑談も得意ではない。フォーマルな場での立ち居振る舞いも、お世辞にも堂々とはしていない。今日も静かに、自分のペースで動く。
| 因子名 | 低得点者の特徴 | 標準点 | 高得点者の特徴 |
|---|---|---|---|
| 外向性 | グループの中で静かで控えめ。注目の的になることを嫌う。 | グループの中でいきいきとし、活気がある。よく話す。注目を浴びることを楽しむ。 | |
| 友好性 | 一人でいることを気楽に感じる。一人で過ごす時間を大切にし、人が一緒にいなくても寂しくない。 | 人と一緒にいることを楽しむ。人が周りにいることを好む。人と一緒にいないと寂しいと思う。 | |
| 社会性 | 公式な場でないほうが気楽である。初対面の人と会うとぎこちない。 | 初対面の人と会うのも気楽である。公式の場でもくつろげる。 |
会場シーン
HRソリューションEXPOの開場は午前10時。その1時間前、8人はブースに集合していた。
役割分担はマーケティング課の群居から1か月前に連絡済みだった。呼び込みチームは我堂と籠田。ブースAは賑座と絆。ブースBは群居と颯口。プレゼンチームは柔田と壇上。「何かあれば随時対応を」と群居が言い終わる前に、我堂はすでにブースの外に出ていた。
【呼び込みチーム:我堂・籠田】
我堂は開場と同時に通路に立った。
場数だけなら誰にも負けない。10年以上、顧客の懐に入り続けてきた自信がある。しかし開場から30分が経っても、我堂の足は妙にぎこちなかった。通路を行き交う来場者の多くは、見知らぬ顔ばかりだ。いつもなら相手の名前も会社も課題もわかった上で話し始める。しかし今日の来場者には、手がかりが何もない。
「少しよろしいですか」
声をかける。来場者は会釈して足を止めない。また声をかける。また素通りされる。我堂がこれほど手応えを感じられない場面は、珍しかった。普段の商談での圧倒的な存在感は、長年かけて築いた関係性と文脈の上に成り立っていた。そのどちらもない場所で、我堂は初めて自分の「射程距離」の限界を感じていた。
● OPQ解説:我堂
自分のなわばりでは饒舌で力強い。しかし友好性と社会性の低さから、広い人間関係の構築と初対面の場での立ち居振る舞いは苦手。外向性の高さは、慣れ親しんだ文脈の中でこそ発揮される。
来場者に声をかけるわけでもなく、目が合った相手に会釈する程度だ。ただ、一枚の紙を手に持っていた。「あなたの戦略人事タイプ、1分でわかります」とだけ書かれたシンプルなカードだ。その裏にはQRコードが一つ。
実はこのカードと、その先にある簡易診断は、籠田が展示会の2週間前から一人で準備していたものだった。設問に答えると戦略人事の4つの役割、「戦略パートナー型」「変革エージェント型」「管理エキスパート型」「従業員チャンピオン型」のいずれかの人事タイプが表示される。人事としてもっと貢献したいと思っている人なら、自分がどのタイプかを知りたくなる。そういう設計になっていた。
籠田は声をかけない。ただ、通りかかった来場者がカードに目を留めると、無言でそっと差し出す。受け取った来場者がQRコードを読み込んでスマホを操作し始めると、籠田はブース内の小さなスペースに案内する。診断が終わると、ブース奥のプリンターから結果が出てくる。籠田はそれを受け取り、来場者に手渡しながら一言添える。「戦略パートナー型でいらっしゃいますか。人事として何を大切にされているか、少しお聞きしてもよいですか」それだけで、会話が始まった。
● OPQ解説:籠田
声がけも雑談もフォーマルな場での立ち居振る舞いも得意ではない。しかし「人に話しかける」代わりに「人が動きたくなる仕組み」を静かに作ることはできる。籠田の準備は、自分のパーソナリティを知り抜いた上での、合理的な選択だった。
ブースAは昼前から混み始めた。
賑座はその場の空気を一瞬で読む。来場者がブースに近づいた瞬間に声をかけ、名刺を交換し、資料を渡し、次の来場者に向かう。そのテンポは見事で、気づけばブースAの前には小さな人だかりができていた。
本当はもう少し話したかった。製品の説明だけでなく、相手の課題を聞き、状況を理解した上で言葉を選びたい。そういう会話の方が、賑座には性に合っている。しかし今日は一人に時間をかければ別の誰かを逃す。賑座は内心の葛藤を表に出さないまま、笑顔で次の来場者に向かった。少ない時間でも、相手に良い印象を残すことはできる。今日はそれでいい、と自分に言い聞かせながら。
● OPQ解説:賑座
どんな場でも自然に会話が生まれ、初対面の相手ともすぐに打ち解ける。人との関係を広く深く築く力を持つが、今日の賑座が選んだのは「深さより数」だった。限られた時間の中で一人でも多くの来場者に良い印象を残すこと。それは3因子が高いからこその判断でもあった。
最初の一言を出すまでに少し間があった。来場者がブースの資料を手に取ったタイミングで、絆はようやく「その事例、ご参考になりますか」と小さな声で切り出した。来場者が「実はうちでも似たような課題があって」と話し始めると、絆の表情が少し変わった。相手の言葉を丁寧に拾いながら、質問を重ねていく。会話はいつの間にか30分を超えていた。
賑座が10人と名刺を交換する間に、絆は2人と深く話した。どちらが良いというわけではない。ただ、絆が話し込んだ来場者は、帰り際に「また改めて連絡します」と自分から言った。
● OPQ解説:絆
最初の一歩は遅く、フォーマルな場での立ち居振る舞いも得意ではない。しかし誰かと一緒にいることを自然に求めるため、一度会話が始まると相手の話をその場に居続けながら丁寧に聞き、信頼を得ることができる。それが絆の強みだ。
群居にとって、午前中は試練だった。
事前の集客告知は群居の仕事だった。招待メールを送り、SNSで告知し、顔見知りの顧客に個別に声をかけた。その甲斐あって、午前中に群居のブースを訪ねてきた顔見知りの来場者は8人いた。そのうちの何人かとは、ブース脇で立ち話が弾んだ。群居は顔が綻び、普段通りの饒舌さを取り戻していた。
しかし顔見知りが去ると、また口数が減った。通路を歩く見知らぬ来場者に声をかけようとして、言葉が出てこない。普段のチーム内では誰よりも明るいのに、知らない人が相手だと別人のように縮んでしまう。
● OPQ解説:群居
人とのつながりを大切にし、仲間の輪の中では活発だ。しかし社会性が低いため、初対面の場やフォーマルな状況では緊張しやすい。群居の強みは「知っている人との関係を深める」こと。今日の事前告知がそれを証明していた。
「どちらからいらっしゃいましたか」「今日はどんなテーマでご覧になっていますか」軽やかに会話を始め、資料を手渡し、プレゼンの時間を案内する。来場者が「プレゼン、聞いてみようかな」と言うと、颯口は「ぜひ、あと15分で始まります」と笑顔で送り出す。
誰とでも話せる。自然に会話を始められる。ただ、この慌ただしい流れの中では、自分が本当に話したいと思える相手かどうかを確かめる間もない。颯口はそれを気にする様子もなく、淡々と次の来場者に向かった。深く関わる相手は、自分で選ぶ。今日はそういう場ではないというだけだ。
ブースBから午後のプレゼン会場に向かった来場者は、全チームの中で最も多かった。颯口が深い話をしたわけではない。ただ、プレゼンへの道筋を軽やかに作り続けた。
● OPQ解説:颯口
初対面の場でも物怖じせず、誰に対してもそつなく振る舞える。しかし颯口にとって、誰かと一緒にいることへの強い欲求はない。一人の時間も苦にならない。だから今日のような場は、社会性の高さで割り切ってこなせる。
【プレゼンチーム:柔田・壇上】
午後2時、プレゼンの時間が来た。壇上が前半のコンテンツパートを担当し、柔田が後半の事例紹介とまとめを担う段取りだった。
控え室で壇上は静かに資料を見直していた。来場者との雑談も、他のメンバーとの会話も自分から始めることはない。しかし、プレゼンは違う。マイクを持つ前から、壇上の表情はすでに変わっていた。
壇上が登壇すると、会場の空気が少し引き締まった。声に張りがある。言葉に迷いがない。来場者の反応を確かめながら、淡々と、しかし確実に話を積み上げていく。コンサルタントとして場数を踏んできた壇上にとって、壇上という場所だけは完全なホームだった。
● OPQ解説:壇上
日常の場では人の輪に加わろうとせず、一人でいることも苦にならない。しかし社会性が高いため、公式な場やスピーチ of の場では動じない。むしろ自分の力を最も発揮できる場所として、舞台を使いこなす。
控え室で「緊張しますね」と壇上に小声で言っていた柔田が、マイクを持った瞬間に変わった。声のトーンが落ち着き、来場者一人ひとりを見渡しながら、静かに話し始めた。
「今日ご紹介するのは、採用と育成の両方でアセスメントを活用されているお客様の事例です。最初は半信半疑だったとおっしゃっていました。それが今では、人事の意思決定になくてはならないツールになっている。その変化の背景を、少しお話しさせてください」
来場者が前のめりになる気配があった。柔田は派手な身振りも、声を張ることもしない。ただ、相手が聞きたいことを、相手のペースで話す。その静かな確かさが、場を引き寄せていた。
プレゼン終了後、質問の列が途切れなかった。
● OPQ解説:柔田
自分から場を盛り上げようとはしない。しかし人とのつながりを大切にし、初対面やフォーマルな場でも動じない。柔田の語り口は、来場者一人ひとりへの関心から生まれる。だから言葉が届く。第1回で顧客からの信頼を勝ち取っていたのも、同じ理由だったのかもしれない。
数日後
展示会から三日後、チームに集計結果が届いた。
名刺獲得数は賑座がトップだった。午前から午後にかけて、賑座は誰よりも多くの来場者と言葉を交わし、誰よりも多くの名刺を手にしていた。それは予想通りだった。
予想外だったのは、商談アポイントの獲得数だ。
最も多かったのは、籠田だった。
籠田の診断を体験した来場者の多くが、結果を受け取った後に「もう少し話を聞かせてください」と自分から言っていた。籠田との会話は長くはない。しかし来場者は自分のタイプを手がかりに話し始め、自分の課題を自分の言葉で整理していた。籠田はそれをただ丁寧に聞いた。声がけゼロ、雑談もほぼゼロ。それでも籠田のブースを離れた来場者は、何かを得た感覚を持って帰っていった。
絆が深く話し込んだ2人の来場者からは、どちらもその後メールが届いた。「先日はありがとうございました。ご紹介いただいた事例、上司にも共有したところ、ぜひ詳しく聞きたいと言っています」。絆が展示会当日に蒔いた種が、三日後にはもう芽を出していた。
我堂は、展示会翌日から担当顧客への訪問を再開していた。見知らぬ来場者への声がけには手こずったが、既存顧客への挨拶では本領を発揮し、三件の商談を前進させていた。我堂の強みは、展示会の通路ではなく、顧客のオフィスにあった。
8人がそれぞれの持ち味で動いた三日間。誰一人として同じやり方ではなかった。それでも、結果はチーム全体のものになっていた。
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回はOPQの「人付き合い」3因子から8人のキャラクターを設定し、展示会という舞台で、それぞれの持ち味と化学反応を描いてみました。
第1回に登場した我堂と柔田が、今回は別の場面で別の一面を見せました。会議室では圧倒的な存在感を放っていた我堂が、初対面の来場者には意外と手が止まる。「はい、わかりました」と静かに従っていた柔田が、壇上では場を引き寄せる語り手になる。人には得手不得手があります。そしてOPQの因子の組み合わせを見ることで、その人がどんな場面で力を発揮し、どんな場面で苦戦しやすいかを予測することができます。それがOPQの魅力の一つです。
それと一つ補足をさせていただくと、今回籠田の診断ツールのベースとなった戦略人事の4役割モデルは、デイビッド・ウルリッチが1997年の著書『Human Resource Champions』で提唱した概念です。「戦略パートナー」「変革エージェント」「管理エキスパート」「従業員チャンピオン」という4つの役割は、今日のHR業界でも広く参照されるフレームワークです。なお、今回登場した診断ツール自体はフィクションであり、実際に提供しているサービスではありません。ご了承ください。
組織には様々な「人付き合い」のスタイルを持つ人が必要です。場を盛り上げる人、深く聞く人、仕組みで動かす人、壇上で語る人。それぞれが自分の持ち味を発揮し、補い合うことで、チームはより大きな成果を生み出すことができます。
次回は「他人への配慮」編です。謙虚さ、協議性、面倒みという3つの因子が、新たな職場の一幕を彩ります。どうぞお楽しみに。
このコラムの担当者
清田 茂
日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員
創業期メンバーとして入社以来30年、HRコンサルタントとして日本の人事アセスメント界を牽引。大手を中心にコンピテンシーモデリングから選抜設計、サクセッションプラン構築まで広範なプロジェクトを完遂。特に経営層との対話を通じた次世代リーダー育成に高い実績を持つ。 2002年取締役、2020年より執行役員として直販部門を統括。最前線で「人と仕事と組織の最適化」を追求する傍ら、SHLグループのグローバル知見の国内導入も推進。