学習文化を作ることで、将来ビジネスをリードする人材を育成し、より機敏に従業員を配置することができます。では、学習する文化を作り、組織全体に浸透させるにはどうすればよいのでしょうか。経験豊富な人事リーダーであるジョン・マロニー・フィリップス博士に、学習文化を築くための5つの方法についてお話を伺いました。
ナタリー・アッシャー 著
2024年6月6日
文化は一夜にして実現できるものではない
学習文化とは、メンバー間の継続的な学習、成長、能力開発を優先し、奨励する組織環境です。学習文化は、個人が知識を求め、自発的に学習し、知見を共有し、新しいスキルを活用して個人と集団のパフォーマンスを向上させるという考え方を育みます。
多くの組織は、最新の学習ツールやコンテンツを購入するという落とし穴に陥ります。これらが人材育成を強化するための万能薬だと考えてしまいますが、これらの利用を促すために莫大な労力をかけなければ、効果はあまり得られないかもしれません。それよりも基本的なソリューションを使用して、従業員に利用を奨励してやる気にさせ、関係者全員に利益をもたらす学びを実現するよう、強力な計画を実行するほうが成功の確率は高まります。学習文化を構築する上で良い出発点となる5つのステップをご紹介します。
学習文化を築くための5つのステップ
- 学習目標を定義する
これは当然のことのように思えますが、まず従業員にスキルの開発を奨励する目的を理解することが重要です。一般的に買い手は、売り手に対し特定の業界の最前線にいて、最新の関連技術、研究、トレンドに精通していることを期待するので、この点が目標となるでしょう。しかし、それ以外の目標もあります。組織内のスキルギャップを埋めることや、従業員が個人的な目標(例:予算編成をする)を達成できるようにすること、AIなど業界外の新しいトレンドに遅れずについていくことなどです。最終目標が何であるかを理解することは、その目標に到達するためのステップ、そして適切なツールとプロセスを決定する上で役立ちます。 - メリットを伝える
今日の世界では、あらゆるレベルと役割において、自分のスキルを最新の状態に保つことが極めて重要です。新しいスキルの習得に時間を投資しなければ、雇用が危うくなるでしょう。このようなメリットを伝えることで、学習は組織を助けるだけでなく、その人の組織内での昇進や将来のキャリアに役立つことを理解してもらえるでしょう。 - リーダーの協力を得る
リーダーは、成功のチャンスを掴むために学習を支援する必要があります。チームに学習の時間を与えるだけでなく、利用可能なリソースを思い出させて学習を促したり学習のメリットを伝えたりするという重要な役割を担います。リーダーは、他者の学習を支援するだけでなく、自らも積極的に学習をして模範となる必要があります。 - 報酬と表彰
業績管理に学習を含める必要があります。ボーナスなどに影響する定期的な目標と評価に、学習の要素を含めるべきです。金銭的な報酬がなくても、学習を個人の重要な目標とすることで、組織が能力開発を重視していることを示すことができます。成功を祝いましょう。リーダーが「学習のヒーロー」を称えることは、従業員にとって、自分の仕事が注目され評価されていることを実感でき、大きな動機付けとなります。
従業員に期待する行動を強化する上で役に立ちます。 - 適切な構造とツールを提供する
目標が決まったら、使いやすく理解しやすい効果的なツールを用意できるかどうかで大きな違いが生まれます。最適なツールは、スキルギャップや開発すべき領域に関する知見を提供し、個人に合わせた能力開発計画を関係者間で容易に共有できます。そして組織が適切なリソースを確保し、透明性のあるキャリア開発の道のりを作るための構造的な手法を提供してくれます。
学習文化を実現する方法はひとつではなく、各組織はそれぞれの目的に応じて独自のアプローチをとりますが、事前によく検討することと、リーダーシップチームが有能であれば、学習文化を根付かせ、従業員と組織の両方に利益をもたらすことができます。
SHLのスキル開発ソリューションは、客観的なスキルに関する知見を提供し、外部採用であれ育成であれ、いずれの人材戦略であっても、より的を絞った人材育成投資ができるように支援します。
原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2024/5-steps-to-build-a-learning-culture/
以前からスキルベース採用、スキルベースの組織という話題をご紹介してきました。この記事もスキルに関係したものです。従来のコンピテンシーが職務を中心としていたのに対し、スキルは人を中心とする考え方です。今回はスキルベースの組織が成功するには、個人のスキル習得を促す、学習する組織文化が必要であり、そのような文化を築くためにまず検討すべきポイントとして5つを紹介しています。
タレントマネジメントという言葉は、今や日本でも広く浸透しています。単に人材を管理する仕組みや、同様のシステムを想起される方もいるかもしれませんが、真の意味は異なります。タレントマネジメントとは、組織の戦略を実行して維持発展していくために行うあらゆる人事戦略と実行を意味します。広範な意味を包括していますが、本コラムではこの言葉を、「組織内の人員の育成・配置・昇格に関わる施策」として取り扱います。SHLはグローバルで1600名以上のHRプロフェッショナルに調査を行い、採用・タレントマネジメントの最新トレンドをまとめました。調査のテーマは、アセスメントツールやアナリティクス、DEIやニューロダイバーシティ、AIの影響まで多岐にわたります。
今回はこの調査の中から、タレントマネジメントにフォーカスし、その現在地を探ります。
グローバル企業が実践できている良い点と改善点はなにか。自社のタレントマネジメントの点検も兼ねて、ぜひご一読ください。

重要性が増すタレントマネジメント分野
平均で人事予算の36%がタレントマネジメントに割り当てられており、その割合は増加傾向にあります。これは、戦略的優先事項として人材開発・タレントマネジメントに全社を挙げて取り組んでいることを示しています。この意図的な投資は、重要なスキルギャップを埋めるための迅速な解決策であると同時に、将来のリーダーを生む強固なサクセッションプランを確立し、組織の成功と発展を守ることができます。一方で、財政的なプレッシャーは組織内のどの部署も感じている中、予算を割いて実行しているタレントマネジメントのどの施策がうまくいっており、どの領域は改善が必要なのでしょうか?タレントマネジメントでうまくいっていること
タレントマネジメントにアセスメントが広く使われている回答者の80%以上がタレントマネジメントで積極的にアセスメントを利用していると回答しました。正確かつ客観的なデータを用いた意思決定の重要性を強調しています。
リーダーやハイポテンシャル人材が優先事項となっている
組織で最も影響力のある役割に注力しており、リーダシップ開発がタレントマネジメントの最優先事項となっています。次いで、ハイポテンシャル人材の特定とキャリア開発が続きます。
タレントマネジメントに投資している
ほとんどの組織(83%)が人材育成への投資を計画しており、将来の成功や重要な従業員の確保において、人材育成が戦略的に重要であることを強調しています。

グローバル企業の問題意識とは
社内での異動・昇進の機会社内での異動や昇進の機会は様々な階層で存在していますが、最も多いのは一般社員レベル(27%)と初級管理職レベル(27%)です。優秀な人材が社内に留まり、モチベーションを維持するためには、より上級の職務への道筋が見えることが重要です。
客観性に欠ける人材発掘
社内選抜や昇進の意思決定が主観的な情報(87%)や過去の実績(78%)に大きく依存しており、アセスメントのような、より客観的な情報の活用に価値があることを示唆しています。
ハイポテンシャル人材の特定が依然として課題
55%がハイポテンシャル人材の特定にアセスメントを利用しているにも関わらず、ハイポテンシャル人材の定義やその特定方法の満足度は50%を切っています。科学的な裏付けを持ったデータに基づき効果的なハイポ人材プログラムを実施することは大きなメリットがあります。
タレントデータの効果的な活用にはいまだ様々な障壁
データ活用における障壁を認識し、統合された人材システムを利用するなどの解決策を講じる必要があります。
おわりに
自社のタレントマネジメント施策と照らし合わせて、いかがでしたか?まずは調査で「うまくいっている点」として挙げられた①アセスメントの積極活用、②サクセッションプランやハイポ人材プログラムの優先課題の着手、③タレントマネジメント分野への投資 を出発点として、自社の施策の実行・評価・改善を行ってみましょう。課題として挙がった4点は多くの企業が苦慮している点です。当社が持つ科学的なアセスメントとグローバルな人材に関する知見を活用する余地がありますので、ぜひ当サイトでの情報収集やコンサルタントにご相談いただければ幸いです。
参照:https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2024/talent-management-today-what-works-and-what-needs-to-improve/ 毎年の新卒採用活動で自社の魅力をいかにうまく伝えるか頭を悩ませてはいませんか。インターンシップを効果的に行うことがその答えになるかもしれません。
インターンシップは学生の志望度を上げるために欠かすことができない採用施策となりました。本コラムでは、インターンシップをどのように他社と差別化するか、インターンシップによってどのように学生の満足度をあげるかについてのポイントをお伝えいたします。厳しい採用競争を勝ち抜くヒントになれば幸いです。
最近の学生が就活時に求めるものは?
約8割の学生が参加するインターンシップ。最近の学生は企業情報を知るだけでは満足しません。どんな仕事を経験でき、何が学べるのか。その企業での経験が自分のキャリアにどんな利益をもたらすのか。獲得できるスキル、キャリアパス、ワークライフバランス、エンプロイヤビリティ、生涯賃金など自分のキャリアを考えるための情報を求めています。インターンシッププログラムでは、幅広い社員との深いコミュニケーションや模擬ではない実際の就業体験など、学生が企業や職務、社員に関するリアルな情報を得られる機会を作ることが満足度と志望意欲の向上につながります。株式会社キャリタスの調査でも、社員との接点の有無が学生の満足度に影響すると報告しています。
では、社員との接点はどのようによい影響を及ぼしているのでしょうか。

現場社員との接点があるメリットは
社員を囲む座談会、社員と一緒に行う課題や職務などがよく行われている現場社員との交流施策です。これら施策の目的は、入社後の仕事内容やキャリア観をよく理解し、自分が働く姿を鮮明にイメージしてもらうことにあります。
交流する社員として社歴の浅い若手社員を起用することをお勧めします。理由は、社員が自分の就職活動の経験をより具体的に話すことができるからです。若手社員が自社を選んだ理由や入社直後の実際の取り組みを実感を持って話すことで、学生は入社後の自分をイメージしやすくなります。
具体的な入社後のイメージを持つことができれば、不安の解消、志望意欲の向上、本選考への応募につながっていきます。
次年度の採用に向けて、インターンシップや本選考までの繋ぎ止め施策を見直される際には、若手社員含む現場社員との交流が十分に盛り込まれているか、ぜひチェックしてみてください。
日本エス・エイチ・エルでは、応募者の価値観を捉えるアセスメントなど、インターンシップでご活用いただけるツールやその活用方法の情報提供を行っています。ご関心のある方はお問い合わせください。

従来の変革型リーダーと執行型リーダーに、共創するために必要なネットワーク・リーダーとしてのコンピテンシーを加え、変化の時代を生き抜くリーダーとしてのポテンシャルをとらえます。
本コラムではエンタープライズ・リーダーシップ・レポートをリーダーの能力開発で活用する方法について英国の最新事例をご紹介します。
背景
製造業A社は買収に伴う組織再編で大きな変化を迎えていました。製品の多様化と市場の変化により上級管理職の権限と責任が増大していたため、経営陣は上級管理職の育成に投資することを決め、試験的に国内20人の上級管理職を育成対象者に選びました。SHLエンタープライズ・リーダーシップに基づく能力開発プログラムを導入した理由は、新しい環境に必要なリーダーシップモデルであり、社内にはこのモデルに該当する人材が少ないと判断したからでした。

能力開発プログラム
育成対象者向けのワークショップを開催し、プログラムの目的とメリット、エンタープライズ・リーダーシップの位置づけを説明しました。プログラムは4~6回のコーチング・セッションで構成されており、ファシリテータは人材開発チームが行いました。初回のセッションではエンタープライズ・リーダーシップ・レポートをフィードバックし、フォローアップセッションでは行動計画の実行と行動変容にフォーカスしました。
SHLコンサルタントは育成対象者向けのワークショップの共同開催と、ファシリテータに対してレポートを活用するためのトレーニングを実施しました。
ロジスティクス部門長Bさんのケース
ここからは、ある育成対象者を取り上げ、その方とファシリテータとの間で何がなされたかを紹介します。ファシリテータは初回セッションの前にBさんのエンタープライズ・リーダーシップ・レポートを読み、掘り下げるべき分野を特定しました。
この事前準備で解釈した内容は以下の通りです。
図1:レポートの抜粋トランスフォーメーショナル・リーダーシップ得点

トランスフォーメーショナル・リーダーシップはBさんの強みである可能性は低い。従業員と組織の双方を効果的に動かし、期待以上の成果を上げさせること、 ビジネス全体の意見交換をサポートすること、他部門からのアイデアや情報を取り入れて、自分やチームの仕事の質を向上させることは苦手かもしれない。
図2:レポートの抜粋トランザクショナル・リーダーシップの得点

トランザクショナル・リーダーシップはBさんの強みである可能性が高い。既存のシステムを効果的に動かしチームの優れたパフォーマンスを引き出すこと、業務目標を達成すること、変化やプレッシャーに対処すること、チームの業務遂行をサポートすること、曖昧さや不確実性の中でチームをリードすることを得意とするかもしれない。
図3:レポートの抜粋ネットワーク・リーダーシップの得点

ネットワーク・リーダーシップはBさんの最も強みになりにくい。自律性、エンパワーメント、信頼、共有、協力に基づく職場環境の構築、人的ネットワークの拡大と構築、緊張と対立の戦略的利用によるイノベーション促進、自律的に問題解決と意思決定を促す権限移譲、は苦手である可能性が高い。
導入
初回セッションの導入でファシリテータは以下の質問をしました。質問のねらいはBさんの問題を理解し、アセスメント結果と自己認識の矛盾を確認すること。- この1年間であなたの役割にどのような変化がありましたか?
- 今後より重要になるあなたのリーダーとしての役割は何ですか?
- あなたのリーダーとしての強みは何だと思いますか?
- あなたが最も難しいと感じるリーダーとしての役割は何ですか?
- どのような状況で仕事をするのが最も心地よいと感じますか?
- リーダーとして自分のどんな点を成長させたいと考えていますか?
- 納品に重点を置いており、顧客との関係を何よりも重視してきた。
- 大きな目標を連続して達成してきたことで社員からの尊敬を勝ち取り、チームの強い結束力を生み出した。
- より多くの顧客と大きな組織をマネジメントし、困難な目標を達成できるように成長したい。
- リモート下で管理する新しいチームメンバーを巻き込むこと、より多様な顧客層のニーズを満たす新しい働き方を見つけることに苦労している。
フィードバック内容
その後、ファシリテータはエンタープライズ・リーダーシップ・モデルについて説明したうえで、上述のリーダーシップ得点3つの解釈を伝え、次の質問をしました。 ・強みと課題について、どのように考えましたか? ・レポートに記述されたことをどの程度認識していましたか? ・納得できない点はありますか?どうしてですか? Bさんは結果に概ね同意しましたが、過去の成果や自身の目標達成のための競争心からリーダーシップに自信があったため、トランスフォーメーショナル・リーダーの結果に驚いていました。その後のディスカッションの要約は以下の通りです。<トランザクショナル・リーダーシップ>
「分析力」と「手順化能力」は強み、「ストレス耐性」と「チームワーク」は平均的という結果に同意したうえで、タスクに集中し効率を高めることが今までの成功の秘訣であると説明してくれました。<ネットワーク・リーダーシップ>
ファシリテータが最大の課題は「ネットワークの構築」と「ネットワークの活性化」であるとの仮説をBさんにぶつけ、ディスカッションを進めたところ、これらのコンピテンシー改善に焦点を当てることで合意ができました。 Bさんはこの1年間でレポートラインが増加し、地理的に分散したチームをマネジメントすることになり、新しい市場の顧客を獲得したことが明らかになりました。新しいネットワークの必要性を考えたことは無かったが、現チームは目標達成のための新しいアプローチを見つけるために外部の知見が必要であり、マネジャーに限られていた人脈を活用すべきであったと考えを新たにしました。Bさんは新しい人間関係構築を好まない性格で、よく知っている人と一緒にいるのを好むと明かしてくれました。
<トランスフォーメーショナル・リーダーシップ>
「完遂エネルギー」が強みである点はBさんの見解と一致していました。一方、「対人積極性」が強みになりにくいことに驚いていました。プレゼンは常に好評で顧客との交渉も成功してきたと自負を持っていました。この点について掘り下げていくと、Bさんはプレゼンや交渉の前に十分な準備をしており、「その場の状況に応じて」あるいは「完全に新しいステークホルダーに対して」重要なプレゼンテーションや交渉を行うことは心地よいものとは思っていなかったと振り返りました。自然にできるようになったのではなく、訓練により対処法を身につけたと結論づけました。<結論>
セッションの最終段階として、現在の職務の中で成長するための有意義な開発計画に合意しました。セッションから、Bさんは成果を重視し目標達成に熱心であることが明らかになりました。チームと良好な関係を築いていましたが、新たなネットワークを作り活用する必要がありました。また、チームの調和を図るだけでなく、アイデアを刺激するため挑戦的な姿勢を示すことが有益であると認識しました。
おわりに
2024年6月現在、エンタープライズ・リーダーシップ・レポートの日本での活用事例はまだありません。その理由は、日本語版レポートがリリースされていないからです。新しい時代のリーダーシップモデルであるエンタープライズ・リーダーシップの概念を日本企業が活用できない状態は由々しき事態であり、到底看過できるものではありません。速やかに日本版のローカライズを進めることをお約束いたします。
また、OPQ32の日本語受検は可能ですので、英語版レポートでも問題ないとおっしゃっていただける方がおられましたら、ぜひお問い合わせください。
エントリーシートや面接など、採用プロセスでは人が人を評価する場面が多々あります。
人が人を評価する時、評価者の認知に様々なバイアスがかかります。同じ場にいて同じ応募者を評価していても、評価者が異なれば受ける印象も異なります。その印象が合否に影響を与えると、評価者によって結果が大きく変わってしまう可能性があります。
評価者による評価のブレを大きな課題と見なしている企業の中には、機械的なAI評価などを導入している例もあるでしょう。では、人が人を評価しつつ、評価のブレを減らす方法はないのでしょうか?
今回は人が評価をするにあたり、印象評価を回避する方法についてご紹介します。
印象は言葉ひとつで大きく変わる
印象形成という概念を定義したアッシュ(Asch,S.E)は、人の特徴を示す単語のみを複数提示した時、人物イメージがどのように形成されるのかを実験しました。片方の実験参加者群には
「知的な・器用な・勤勉な・温かい・断固とした・実際的な・用心深い」
という7つの特徴を与えて、このような特徴を持つ人に対する全体的な印象を聞きました。
もう片方の群には
「知的な・器用な・勤勉な・冷たい・断固とした・実際的な・用心深い」
という7つの特徴を与えて印象を聞きました。7つのうち6つは同じ単語です。
「温かい」と「冷たい」のみを入れ替えただけでしたが、結果は大きく異なりました。「温かい」群は人物イメージに関して望ましい印象を持った一方で、「冷たい」群は望ましくない印象を持ったのです。
この実験でいう「温かい」「冷たい」のように、一部の特徴に対する印象が非常に良い(または悪い)場合、他の特徴に対する印象もそれに引っ張られてしまうことがあります。この現象をハロー効果(光背効果)といいます。
さらにアッシュは、特徴の提示順序によっても印象が変わることを示しています。良い情報を先に提示し、悪い情報を後から出した群と、先に悪い情報を提示した群とを比較した結果、前者は後者よりも全体的に望ましい人物イメージを持ちました。これは最初の印象がその後の印象形成に大きな影響を与えることを示します。
このように、言葉ひとつ、順番ひとつでその後の印象は大きく変わってしまうのです。

印象評価によるブレを減らす方法
複数のタスクを同時並行で実施している場合、1つのタスクに集中している場合よりも印象評価になる傾向があります。面接を行っているその場で質問を考え、応募者の話を聞き、合否を評価しようとする場面はまさに複数タスクの同時実施状態です。このような場合、第一印象に引っ張られやすくなったり、一つの言葉に引っかかってその後の印象が良く(悪く)なりすぎてしまったりする可能性があります。これを防ぐためにも、評価は面接の後に行うことをお勧めします。

当社は面接評価のステップを「観察」「記録」「分類」「評価」の4つに区切っています。面接の場で行うのは観察と記録のみです。評価者自身の判断は一旦置いておきます。あくまでカメラのように、応募者の言葉や行動をとらえ、記録していきます。
そして面接が終了した後、集中できる環境で評価まで進めていきます。記録した言動の中に自社の採用要件とリンクするものがあるのか、どの要件に当てはまるのかを分類していきます。そして要件ごとに分類された言動を見て、そのレベルを評価していくのです。
面接の評価結果は合否に直結します。評価者に起こるバイアスの存在を認識し、面接を行っているその場での評価を避けることで、評価者による評価のブレを減らす効果が得られるでしょう。
参考:Asch, S. E. 1946 Forming impressions of personality. journal of Abnormal and Social Psychology,41, 258-290.
SHLのニューロダイバーシティ研究プログラムは、ニューロダイバースな人材をアセスメントする際のエビデンスに基づいたベストプラクティスを追求し続けています。このブログでは、最新のニューロダイバーシティ研究レポートからの知見をご紹介します。
マッケンジー・スペクト 著
2024年4月17日
ニューロダイバーシティとは何か?
ニューロダイバーシティ(神経学的な多様性)とは、人々の考え方や情報処理の仕方における自然な変異を指す包括的な用語です。世界人口の約15~20%がニューロダイバージェントであると推定されています。
近年、障害者雇用の拡大を目指したインクルージョンの取り組みに対する関心が高まっています。しかし、ニューロダイバージェントな成人の失業率は、他の障害のある人の3倍、障害のない人の8倍です。
ニューロダイバーシティ研究の主な発見
50万人以上の候補者のパフォーマンスと反応を分析した白書「ニューロダイバースな人材のアセスメント」発表後のニューロダイバーシティ研究の進捗状況を、2023年「ニューロダイバーシティ研究レポート」にまとめました。この研究では、3つの主要分野におけるニューロダイバージェントな人材の受検体験を理解することに焦点を当てました:
異なるテストタイプに対するパフォーマンスと反応、障害開示の決定、調整の検討、です。
主な発見は以下の通りです:
- 認知能力アセスメントが有望な選択肢であることを強調しています。認知能力アセスメントはインタラクティブな形式であっても伝統的な形式であっても、ニューロダイバージェントな候補者が自分のスキルや能力を示す機会を提供します。
- 研究は、支援的なアセスメント環境を育むためにインクルーシブな言語を使用することと調整の重要性を強調しています。
- 研究は、認知的な観点の多様性を強調し、アセスメントの内容や技術におけるユニバーサルデザインの原則を支持するという、ニューロダイバーシティの動きと一致しています。
- 様々なニューロタイプにわたる継続的なデータ収集は、私たちの包括性へのコミットメントを強調し、多様な候補者により良いサービスを提供するために、プラットフォームと製品の継続的な改良を推進しています。
インクルーシブなアセスメントによるDEIへの取り組みの継続的な推進
SHLは、ダイバーシティ、公平性、インクルージョン、帰属意識、アクセシビリティへのコミットメントを誇りにしています。この分野のリーダーとして、SHLは研究と実践の間の溝を埋めることを目指しています。私たちの研究は、ニューロダイバースな人材をアセスメントするためのベストプラクティスに役立つだけでなく、受容の文化を育むというより広範な価値も強調しています。
2024年、私たちのニューロダイバーシティ研究チームは、研究範囲を引き続き拡大する予定です。私たちは、より多くのニューロタイプを取り入れることを目的とした継続的なデータ収集に加え、状況判断テストや履歴情報などを含める研究を行い、アセスメントを多様化させています。
原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2024/insights-into-neurodiversity-in-the-workplace
2023年の研究結果の詳細にご興味のある方は、ぜひ以下のリンクからリポートをダウンロードしてください。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/neurodiversity-research-program-annual-report/
逆面接の概念
逆面接は、文字通り面接官と応募者の役割を逆転させる面接形式を指します。この手法は、管理職アセスメントで用いられる「ファクトファインディング演習」に基づいて開発されました。ファクトファインディング演習は事実確認を目的としたインタビューを模擬的に行う模擬面談演習です。「当社のサービスに対して顧客からクレームを受けている」など、何らかのトラブルが起きている状況が応募者に与えられます。応募者はその解消に向けて、問題解決の糸口となる様々な情報を保有する「ファクトホルダー(評価者が演じる)」に質問して情報を収集します。ファクトホルダーは応募者の質問に応じた情報を提供しますが、重要なのは、ファクトホルダーが自ら情報を提供することはなく、適切な質問がなされなければ解決策に至る情報が得られない点です。
逆面接の実施方法
逆面接では、面接官が応募者に「当社があなたの就職先として適切かどうか、質問してください」などのテーマを提示します。応募者は制限時間内で自由に質問を行い、その質問の仕方で質問力や対応能力を評価されます。質問力とは、限られた時間で求める情報を引き出し、自身の仮説を検証して適切な結論に至る能力です。これは、不確実なビジネス環境において極めて重要なスキルです。逆面接のメリット
1. 質問力の評価通常の面接では評価しにくい質問力を直接測ることができます。ビジネス場面では、仕事に必要な情報が最初から揃っている状況はまずありません。質問力は、上司の曖昧な指示や顧客の隠れたニーズを理解するために不可欠です。
2. ストレス耐性の確認
不明瞭な質問や脈絡のない質問がなされた場合、面接官は「要点がよく分からなかったのですが、具体的に何を知りたいのでしょうか」「なぜ、今それを聞きたいのですか」と聞き返します。これらの「逆質問」への対応から応募者のストレス耐性や臨機応変さを評価できます。
3. 応募者の志望意欲と興味の把握
質問の内容や具体性から、応募者がどの程度会社や業界に興味を持っているかが明らかになります。また、どのような情報を求めているのかによって、応募者の価値観やキャリア志向を知ることもできます。例えば、社風や人間関係を尋ねる応募者は職場環境を、仕事内容を詳しく尋ねる応募者は仕事の価値や身に付くスキルを重視していると予想できます。
4. 会社の魅力のアピール
応募者の質問に応じて、自社の利点や特色を効果的に伝えることができます。例えば、面接官が研修体制の充実度を強く訴えても、仕事そのものの魅力を知りたい応募者には響きません。一方的に情報を発信するよりも、応募者のニーズに応じた情報を提供することで、会社への興味を更に深めることが可能です。
従来の面接は、過去の経験を掘り下げてスキルやポテンシャルを評価しますが、逆面接は現在の応募者に注目します。緊張する場面で面識のない(または浅い)相手に冷静かつ的確に質問できるか。面接官の想定外の反応に機転を利かせて柔軟に対応できるか。これらの「その場で示される行動事実」を確認できるという点で、逆面接は従来の面接では測りきれなかった要素を評価、補完することができます。そのため、逆面接の活用によって採用の質の向上が期待できるでしょう。 人的資本経営というキーワードとともに、近年、人材データやピープルアナリティクスがさらに注目されています。人材データとは具体的にどんな情報を用いるか?データをどのように活用すべきか?分析手法とはなにか?その際の注意点とは?・・・データ分析にまつまる様々な疑問をお持ちの皆さんに、今回は当サイトでこれまで取り上げたデータ分析やピープルアナリティクスに関する知見やベストプラクティスをまとめてご紹介します。
人材データ分析、ピープルアナリティクス、人材ポートフォリオなどにご関心のある方はぜひご覧ください。
人材データ分析に関するお役立ちコラム
データ分析の基礎知識:
分析手法の知見:
データ分析のヒント:
- ピープルアナリティクスを進める時に注意したい3つのポイント
- 少ないデータでもできる人材可視化の手法
- 意味のある統計分析を行うために必要な「目的の明確化」
- データ分析における主観性と客観性 ~シンプソンのパラドックスとデータ・インフォームド~

人材データ分析お役立ちダウンロード資料
各社の人材データ分析に関する事例
各社の人材データ分析や人材可視化に関するお取り組みをインタビューや事例でご紹介しています。タレントマネジメント
- 森永乳業の適材採用・適材配置を加速させた日本エス・エイチ・エルのアセスメント
- 急成長するLAVA Internationalの科学的人事戦略。
- 「人の目だけに頼る人事」を脱却する、理想科学工業の人材可視化プロジェクト。
- 求める管理職像を明らかにする。メディアフォースの人材開発プロジェクト
- 事業ポートフォリオの転換を支えるゲオホールディングスの活躍店長タイプ分析
- 社員の行動特性可視化によって科学的根拠に基づく採用と人財活用を実現した日揮ホールディングス
- 松屋フーズ、「牛めし」の次の柱を作る新事業人材の発掘
- タレントマネジメントシステム×適性検査データの広範的活用。ブラザー販売の人材可視化プロジェクト。
- 複線型キャリアと絶対評価によるスペシャリスト育成。業界をリードする高度ソフトウェアエンジニア集団を目指すデンソークリエイトの人事制度改革。
- 工場設備保全員の安全管理にアセスメントを活用。日産自動車横浜工場の挑戦。
育成
- ジェイテクトのグローバル経営をけん引する強い経営人材の選抜と育成
- 「自分に合ったスタイル」での成長を促す、日産自動車の販売会社店長育成戦略。
- 1on1ミーティングにおけるアセスメント活用でコーチングを推進。朝日インテックJセールスの事例。
- ソフトウェア技術者へリスキリング。デンソーの「キャリア転進プログラム」
- サステナブルな事業展開のために、社員のキャリア自律を促すサントリーフラワーズの挑戦。
- 管理職候補者への動機づけとマネジメント教育を担う、大塚商会のリーダー育成プログラム「リーダーカレッジ」。
採用
- 三井物産の「科学的採用」を支えた日本エス・エイチ・エルのアセスメント
- オンライン選考を有効なものにした、日立ビルシステムの採用基準作成。
- ブレークスルーを起こせる人材求む。ファイザーの人材要件定義プロジェクト。
- 船乗りの適性を見える化。商船三井の海上職採用要件定義プロジェクト。
- 学力テストから適性テストへ。「くもんの先生」としての活躍の可能性を見極める、公文教育研究会の採用改革。
- 採用から育成まで一本筋を通すイムラ封筒の人材要件定義
おわりに
当サイトでは、データ分析の専門的な知識から各企業の実践的な事例まで、様々な情報を提供しております。「分析」や「アナリティクス」という言葉から、少し敷居が高く感じている人事担当者の方は、当社コンサルタントがご相談にのります。ぜひ当社までお問い合わせください。 360度評価は被評価者を本人と周囲の他者(上司、部下、同僚、その他)が評価する仕組みです。複数の人が評価するため誰か一人が評価するよりも多くの視点から評価情報が得られます。多くの人が評価するから正しいとか、客観的になるとか、そんな簡単に評価が是正されるわけではありません。しかし、普段は評価者にならない部下や同僚からの評価には、被評価者に新しい気付きをもたらす力があります。だから360度評価のフィードバックは能力開発にもってこいの方法なのです。近年、経営幹部(事業部長、執行役員、取締役など)の能力開発を目的とした360度評価を導入する企業が増えています。
本コラムでは、経営幹部の能力開発に360度評価のフィードバックがどのように役立つかについて述べます。
フィードバックされない経営幹部
会社のなかで最もフィードバックされない人は誰か。おそらく企業のトップ、社長やCEOでしょう。多くの人にフィードバックしているにもかかわらず、自分はほとんどフィードバックを受ける機会がありません。フィードバックを受けられなければ成長できません。トップの継続的な成長がいかに難しいかわかります。トップに限らず、企業では役職が上がるにつれて、フィードバックを受ける機会が減少します。従業員であれば、半期ごとの査定、1on1ミーティング、研修など様々なフィードバックの機会があります。役職が上がるにつれて、査定は業績などの結果だけになり、上司との面談や研修もなくなっていきます。フィードバックされる側から、する側になるからです。
フィードバックの重要性
経営幹部にとってもフィードバックを受けることは重要です。特に経営幹部のフィードバックでは、自己理解を徹底的に促します。深い自己理解が自身のポテンシャル発揮とマネジメント効果の最大化につながるのです。
フィードバックの方法
経営幹部を対象とした360度評価のフィードバックは、外部の専門フィードバッカーによる1対1の個別セッションで行われることが一般的です。セッション内容は以下の通りです。・360度評価レポートの概要説明
・役割認識と重要なコンピテンシーのすり合わせ
・評価結果に基づく強みと弱みの明確化
・開発課題の特定
この層に対するフィードバックは職務に関する具体的な指導やアドバイスよりも、自己理解に焦点をあてます。フィードバッカーが意識すべきポイントは以下の通りです。
・上司の役割期待と本人の役割認識とのギャップを明確にして、その理由を探る。
・他者からの否定的な評価を受け入れられるように心理的なサポートをする。
・能力の名称や定義を誤解しないよう正確に丁寧に説明する。
多くの経営幹部は他者評価をとても繊細に受けとめます。評価者が想像するよりも強く心理的な影響を与えます。フィードバックを効果的なものにするために、フィードバッカーは被評価者を落ち着かせ、評価の要因を一緒に検討する雰囲気を作ることが大切です。

会話例
被評価者が気付きを得る時にどのような会話がなされるかについて、実際の会話の一部をご紹介します。・フィードバッカー「次は協調についてです。『人の態度や意見、動機に関心を示す』の自己評価は5点、部下のひとりは2点でした。他の部下と同僚は4点と5点に集中していました。どうしてこのような結果になったのだと思いますか?」
・被評価者「誰が2点を付けたかはわかります。この方はパフォーマンスがとても良いのですが本人に自信がありません。去年入社したばかりで前職の時のように周囲から評価されず悩んでいます。私の指摘でプライドが傷ついたことがありました。『人の熱意を奮い立たせ、前向きな職務態度を抱かせる』に1をつけたのもこの方だと思います。」
・フィードバッカー「ここですね。」
・被評価者「そうです。この点は私がアプローチを変えるべきです。プライドを傷つけることが目的ではなく、失敗から学んで欲しかっただけなので。」
・フィードバッカー「そうですね。」
・被評価者「私が過保護だということです。部下に成功体験を積んでほしいと思うあまり口を出しすぎています。」
・フィードバッカー「そうですか。」
・被評価者「部下からの提案に対して、それでやってみようと言うのも必要なんだなと痛感しました。」

・フィードバッカー「評価のギャップが見られる項目は『論理的かつ合理的で考え抜かれ、判断を下す』、『人々が達成したいと思う長期的な目標の明確なビジョンを持っている』の二つです。」
・被評価者「どのセクションだろう。おそらく、本社の意見が強くて私が指示や判断が通りづらいセクションの評価ですね。」
・フィードバッカー「なるほど。介入の余地が無いため、戦略がそのセクションのメンバーに伝わりづらいということですか?」
・被評価者「そうですね。これはとてもありがたいフィードバックです。」
・フィードバッカー「戦略が伝わりづらいことは業務上どのように影響しますか?」
・被評価者「明確に問題になっているとは思いませんが、私が伝えきれていないことで戦略が通じていないのかもしれません。」
・フィードバッカー「そうですか。」
・被評価者「うーん。私はその方が私と違うビジョンを持っているからよいと思っています。同じ考えをしている人を部下に置くより、色々なアイディアがあって、それをまとめ上げることの方がよいものになります。私は部下全員が自問自答することで良い結果を生み出せると考えているので、全員に私と同じ意見をもって欲しいとは全く思っていません。」
・フィードバッカー「はい。」
・被評価者「私が思い当たるその方は、私とタイプが異なります。私は右脳派の文系タイプ、その方は左脳派の理数系タイプです。もしかしたら私の発言を大雑把なものと捉えているかもしれません。」
・フィードバッカー「そうですか。」
・被評価者「彼女は合理的なので、コミュニケーションの仕方として歩み寄っていかなきゃいけないとこの結果を見て学びました。」
・フィードバッカー「なるほど。他の方はあなたのビジョンをすんなりと受け入れているのですか?」
・被評価者「はい、そうですね。もう一つ考えられるのは、その方は会社の長期的なビジョンの実現方法に疑問を持っているかもしれません。ビジョンと目標はあっても実現のためにどう動くかは本社も発信していません。この点について私にも不満があるかもしれませんが、会社にも不満を持っているのかもしれません。」
・フィードバッカー「そうかもしれません。もう少しはっきりとした戦略を欲しているというメッセージかもしれないですね。」
・被評価者「戦略はあるのですが、計画は1か月前に告げられる感じなので、長期的な計画は作ることができません。そこが問題ですね。
その点が不安なのでしょうね。」
・フィードバッカー「その方のストレスコーピングや意欲形成の必要性についてはどう考えますか?」
・被評価者「はい、必要性がわかりました。」
おわりに
今回は経営幹部の360度評価フィードバックの会話をご紹介することで、どのように気付きが形成されるかをご紹介しました。 フィードバックは被評価者が自らの行動に気付くためのきっかけを与えることです。360度評価は効果的に考えるための情報を提供します。より詳しく360度評価について知りたい方は、360度評価導入ハンドブック(無料)をご覧ください。 クライアント からよくいただく質問の一つに以下のようなものがあります。
「OPQの受検結果は変化するのか」。または、「同じ人が数年後にOPQを受検したら、その結果はどのように変化するのか」。
この質問へ端的に回答すると、【変わるものもあれば変わらないものもある】です。
パーソナリティは変わるのか
パーソナリティは「ある程度変化することがあるが、ある永続的な特徴は安定している」とされています。故に、当社のパーソナリティ検査「OPQ」の結果も、変化する側面がある一方で比較的安定性を持っています。OPQは、一度受検した結果は12ヶ月から18ヶ月は有効です。ただし、受検者本人を取り巻く環境が大きく変化した場合は、その期間内であってもOPQの結果は変化すると考えられます。「大きな環境の変化」には、異動や昇進、業務内容の変化等が挙げられます。
OPQはあくまで「自己認識」の結果です。異動や昇進によって業務内容が変わり、求められる能力や行動が変化したことによって、自身の自己認識に変化が起こると、その変化は受検結果にも表れます。

パーソナリティはどう変わるか
例えば、今まで営業部門にいた人が経理部門に異動になったとします。営業部門では必要だった「大胆さ」や「勢い」は求められなくなり、それまで気にしていなかった「緻密さ」や「正確さ」が求められるようになりました。すると、関連するOPQ30因子の「決断力」・「行動力」、また「計画性」「緻密」の得点に変化が出てくることがあります。異動後に求められる行動に関連する得点が高くなる場合もあれば、低くなる場合もあります。理由は、OPQがあくまでも「自己認識による自己理解像」だからです。周りの人が「計画性」「緻密」に関して優秀で、自分は「緻密さ」や「正確さ」が低いと痛感すると、実際の出来に関わらず、それらの得点は低く出ます。業務内容が変わってもその変化に関連しないパーソナリティは、自己認識に変化が起こらず受検結果に変化は生じにくいと考えられます。つまり、大きく環境が変化したとしても、全ての因子が大きく変化して別人のような受検結果になるということは考えにくく、特定の因子は変化したが、その他ほとんどの因子は変化していないという結果になることが大半であると考えられます。
従って、冒頭の「OPQの受検結果は変化しますか?」という質問には、【変わるものもあれば変わらないものもある】という回答になります。
採用時にパーソナリティを測定する意味
大きな環境の変化でパーソナリティが変化するのであれば、「学生」から「社会人」はとても大きな環境の変化といえます。採用時のパーソナリティ受検結果が入社後に変化しうるのであれば、新卒採用時にパーソナリティを測定する意味はあるのか?答えは、【あります】。

パーソナリティは仕事の成否に大きく影響を与えることが過去の様々な研究から明らかにされています。そのため、新卒・中途関わらず採用時にパーソナリティを見極める(測定する)ことは合理性があると言えます。
その上で、パーソナリティ検査を採用時に行う一番の目的は「効率化」です。パーソナリティを測定する手法は質問紙法の他に面接やシミュレーション演習(グループ討議など)等多々ありますが、それらは質問紙法に比べて時間とコストがかかるというデメリットがあります。
採用時のパーソナリティ検査で明らかに不向きな人をスクリーニングして、面接やシミュレーション演習に呼び込む人を絞り込む。面接では事前に受検者の特徴を大まかに把握して効率的に情報収集(入社後懸念点になりそうなことについての質問)を行うなど、パーソナリティ検査結果を活用することで、短期間に効率的かつ合理的な人材選抜を行うことができます。(パーソナリティ検査の活用方法については、過去のコラムも参照してください。)
スクリーニングされた人の中には、入社後にパーソナリティが変化して活躍できた人が含まれていたかもしれません。しかし、前述の通りパーソナリティはある程度安定しています。「効率化」を考えると、入社後の変化を期待して現状不向きな人を採用するよりも、現時点で向いている人を採用する方が、入社後の不適応などに繋がりにくくなります。
パーソナリティは環境の影響を受けて変化をすることは事実ですが、ある程度安定していることも事実です。そのため、採用時のパーソナリティから入社後の活躍を予測することは合理的であると言えるでしょう。