グローバルリーダー育成に力を入れるマツダ。グローバルリーダーを早期発見・早期育成するタレントパイプラインの仕組みづくりとグローバルリーダーシップ研修の取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年11月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

マツダ株式会社

事業内容

乗用車・トラックの製造、販売など

業種

製造業

従業員数

単体 23,203名 (男性: 20,947名 女性: 2,256名)
連結 50,479名

※2020年3月31日時点

インタビューを受けていただいた方

竹下 可奈子 様

マツダ株式会社
人事本部 人材開発部 組織開発グループ

インタビューの要約

海外販売会社の社長候補探しが難航し、グローバルリーダーの早期発掘・早期育成の課題が顕在化した。
GLDC(グローバルリーダー育成委員会)を立ち上げ、グローバルでのリーダーシップパイプラインの仕組みづくりを行った。半年に1回各領域の統括役員が参加し、タレントリストを元に育成計画を立案する。
次いで、GLDP(グローバルリーダー研修)を立ち上げ、業務と並行してグローバルリーダーを疑似体験できるようなプログラムを立案、運営した。SHLのアセスメント・育成計画・集合研修・約半年間のプロジェクトワーク・スキップレベルミーティング・リベラルアーツ社外セミナーの6つの施策を実施した。
今後は、より全社で一貫した評価基準で人材選抜を行い、参加者の動機付けを行いながらプログラムも効果的に運用していきたい。

突然空いた海外販売会社の社長ポジション。後継者探しに苦労した。

2014年当時、マツダグループのとある海外販売会社の社長ポジションが急に空き、後継者をすぐに探さなくてはいけないという出来事がありました。その販売会社では基本的に現地の社員が社長になっていましたので、すぐに現地の候補者たちと面談を行いました。しかし、面談の結果、すぐに社長になれるほど育っていないことがわかり、そこの販売会社外で後継者を探すことになりました。しかし、マツダグループの他拠点で、探そうとしたものの、どこに、どのような優秀人材がいるのかみえず、大変苦労しました。この出来事から、二つの問題点が浮き彫りになりました。一つは、海外拠点の社長候補が育っていないという問題、二つ目が、グローバルリーダー候補がグローバルにシェアされていない、また各拠点ごとの育成、活用にとどまっているという点です。

グローバルベースでリーダー候補者を早期に発掘・育成すべき、という課題意識に対して、優秀人材の見える化と計画的育成の仕組みづくりに取り組みました。まず、2014年にGLDC<Global Leadership Development Committee>、日本語ではグローバルリーダー育成委員会が立ち上がりました。続く2015年にはGLDP<Global Leadership Development Program>、グローバルリーダー研修がスタートしました。

突然空いた海外販売会社の社長ポジション。後継者探しに苦労した。

GLDC:個人にフォーカスしたリーダーシップパイプラインの実現。

委員会のゴールは、重要なポジションの候補者が常に充足され、ベストな人材をアサインできる、そういった環境の実現です。これによってリーダーシップパイプラインが連綿と続く状態にするということをゴールに置いています。

過去にも、グローバルの人材育成を目的とした会議体もありましたが、ポジションマネジメント型でした。ポジションにフォーカスするため、若手人材の早期選抜育成には、限界がありました。このGLDCでは、個人にフォーカスすることで、早期の優秀人材の選抜・育成を活性化しようとしたわけです。リストも人ベースになっており、委員会で共有している約60名のタレントリストでは、その人のターゲットポジション、ポジションまでに必要な経験、強み・育成課題、その対応策などが記載されています。

委員会の委員は、各領域の統括役員が担っており、審議される対象は、マーケティング・販売と、経営企画、財務領域の課長部長層に限っています。もともと、海外の販売会社の社長後継が育っていないという問題意識から発足したので、海外販売会社のトップになりうる人材がいるこれら領域に限っています。開催は、半年に一回。①人材の特定。②育成計画立案、③実行とフォロー、④評価のプロセスがあります。

各領域の統括役員が育成したい人材を特定し、部門の責任で育成計画を立案します。この計画立案において我々が重要視していることはできる限り多様なストレッチ経験をさせることです。クロスファンクション(領域をまたいだ経験)、クロスリージョン(国をまたいだ経験)、最後にハイヤーポジション(経営ポジションの経験)です。経営者になると、担当する領域は広がり、国境もこえた広い視野でビジネスを捉える必要が出てきます。多様な価値観に触れる機会も増えてきます。それを若いうちに早めに経験させたいという思いがあります。立てた育成計画を実現させるために、他本部、海外へ異動させたい人材がいれば、会議の中で取り上げ、委員会のネットワークを使ったポジションマッチングを検討します。ただ、現実のところ、成立ぎりぎりまで話は進むものの、最終的にはビジネスニーズやプライベートな理由で、成立できないケースが多いのも悩みです。どうすれば、育成目的のアサインメントを次々成立させることができるのか、仕組みを今後も考えていかなくてはいけません。評価については、取り組もうとしてまだできていない課題です。

GLDP:ストレッチの機会を疑似体験するグローバルリーダー研修。

実際の異動は難しい場合もあるので、ストレッチの機会を疑似的にでも提供するべく立ち上げたのがGLDP、グローバルリーダー研修です。先ほどの3軸(クロスリージョン、クロスファンクション、ハイヤーポジション)を疑似的に体験するため、プロジェクトチームは多国籍、多領域のメンバーで構成され、経営者視点でプロジェクトワークに取り組んでもらいます。参加者は20名程度、グローバルリーダー候補で各領域の統括役員が選抜しています。もともと委員会と同様に対象領域を限定していましたが、一部対象を広げ、今後は全社に展開する予定です。

研修は、約1年間、業務を離れることなく参加してもらうプログラムになります。まずは、SHLのアセスメントから始まり、次に育成計画、集合研修、約半年間のプロジェクトワーク、スキップレベルミーティング、リベラルアーツ社外セミナーの6つの施策から構成されています。

SHLのアセスメントはオンラインで360度、能力テスト、OPQ、対面でロールプレイとインタビューを実施しています。研修開始時に各参加者に受検してもらっていますが、SHLはグローバルに展開されているので、参加者は現地の言葉で受検できます。また、グローバルで同じ物差しで定量的に結果が出てくるのでとても助かっています。このアセスメントの目的は二つ。まず一つ目は、自己認識を向上させるということ。二つ目に、マツダのリーダーに求められるリーダーシップにおける育成課題や強みの明確化です。結果は、マツダのグローバル経営リーダー要件に合わせて出るようカスタマイズをしていただいています。アセスメントの結果は、参加者本人だけでなく、上司もアセッサーから直接フィードバックをもらっています。事務局からは、各部門で活用してください、とお任せしたのですが、事後調査をしたところ、日々の業務に追われ、うまく活用しきれていない人がいるということがわかりました。せっかくの貴重なデータを活用しきれていないのはもったいない、ということで、2019年度から追加で個別育成計画という施策を導入しました。

マツダウェイの「共育」を大事にする研修プログラム

個別育成計画は2019年度から始まり、今力を入れて取り組んでいます。アセスメントの結果から見えてきた育成課題もしくは強みに対し、アクションプランを立ててOJTを通して1年間実行していきます。直属の上司だけでなく、経営者である本部長からフィードバックをもらい、アクションプランを立てています。経営者視点からのフィードバックをもらうことで、参加者の育成の質をさらに高められているのではと思います。また、この過程で、本部長や人事側もリーダー候補者を深く知ることができました。

集合研修は、海外メンバーも集めて、本社で約一週間実施します。外部講師による座学、マツダの理解を深めるセッション、役員との対話で構成されています。2019年度には、海外拠点から参加するメンバーから拠点の紹介や、取り組み課題をプレゼンしてもらいました。別拠点でも、皆同じ悩みを持っており、課題やベストプラクティスを共有できたことが参加者にとても好評でした。来年度は全領域から参加者がいる予定なのでお互いに学びあいながら視野を広げるチャンスを作りたいと思っています。マツダウェイにある「共育」=互いに教えあい、成長しあう取り組みがこの研修の根幹にあります。仲間同士でともに育てあえるようにと、メンバー同士のアセスメント結果共有も行っております。また、研修の最後には、自身が思う各チームメンバーの強みや育成課題をそのメンバーに伝える、という取り組みもしています。半年間一緒に頑張ってきた仲間からのフィードバックは、心に残るものがあるのではないでしょうか。

スキップレベルミーティングは、参加者と役員の一対一の面談です。目的は、参加者の視座向上、視野拡大と、役員と参加者のネットワーク構築です。フリートーク形式で、参加者が話したい内容を考えて面談を行いますが、毎年のアンケート調査では、参加者にとって一番好評な施策の一つです。一方で、参加者によって内容のレベルにばらつきがあり、期待するような成長につながっているか不明という役員からのフィードバックもありました。そこで個別育成計画の内容について面談の中でふれてもらうなど、一部ガイドを付けました。

この研修プログラムは、私自身にとってもやりがいがあります。役員とのやり取りを通して、高い視点に触れることができ、参加者を通して、多領域や海外拠点のことも知って、ネットワークを構築できます。将来の会社を背負うマネジメントの方の成長機会に、微力ながら携われることにやりがいを感じながら、これからもプログラムを進化させるとともに、私自身も成長していきたいと思います。

現在、参加者選抜を役員、各部門、各海外拠点に委ねているため、全社で一貫した基準はなく、主観的評価によるいわば一本釣り選抜のような状態です。今後はリーダー要件の活用や選抜目的でのアセスメント導入などを検討していきたいと思います。また、選抜で英語がネックになっている点も課題です。特に、開発・製造領域では、優秀人材であるにもかかわらず、英語ができないため研修に選抜されないこともあります。早くに海外赴任を経験させるなど、若いうちからの英語力向上に取り組む必要があります。動機づけにも課題があり、選抜研修がゆえに、上司に言われてきましたというやらされ感のまま参加する人もいました。モチベーションは研修の成果に大きく影響します。対応策として、2019年度はプログラムの開始時に三者面談、上司、本人、人事で、個別に説明会を実施して、上司への期待、本人への動機づけを行いました。その甲斐あってか、前年の参加者よりもモチベーション高く参加している人が多い印象でしたので、今後もそれを続けていこうと思っています。まだまだ課題も多い状態ですが、毎年改善しながらプログラムを作って行きたいと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 大阪オフィス 部長

岡松 太郎

次世代リーダーの育成は、今や多くの企業で取り組まれている重要テーマですが、誰を選抜しどのように育成するかは各社とも試行錯誤の連続です。マツダグローバルリーダー研修(GLDP)において、当社は2015年からグローバル体制で側面的支援をさせていただいております。2020年現在は、新たにリーダー要件の見直しに着手されるなど、更なるブラッシュアップも検討されています。ご担当の竹下さんは海外でのご経験も長く、グローバルとローカルの絶妙なバランスをお持ちの方と、常々感じております。人材選抜、育成については、日本と海外ではその捉え方の違いもある中、常に全体最適を目指して、改善を重ねていらっしゃいます。今後も、候補者の選抜・測定はもちろん、育成プログラム終了後の効果検証など、あらゆるシーンで、SHLグループの知見と各種アセスメントでマツダの人事・経営戦略のお役に立てるよう努めてまいります。

導入事例

牛めし、とんかつに続く「新業態」立ち上げを担う人材を育てる、松屋フーズホールディングスの挑戦。

牛めし、とんかつに続く「新業態」立ち上げを担う人材を育てる、松屋フーズホールディングスの挑戦。

新たな業態に挑戦する松屋フーズホールディングス。その立ち上げを担う人材をアセスメントを用いて選抜し、成功確率の高い人材配置の実現を目指す取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社 松屋フーズホールディングス

事業内容

飲食事業を中心とするグループ会社の経営管理

業種

小売業

従業員数

1,613名 2020年(令和2年)3月期・連結

インタビューを受けていただいた方

別役 建治 様 / 一坂 正博 様

株式会社 松屋フーズホールディングス
人事部 人事グループ グループマネジャー(写真左)
人事部 人事グループ チーフマネジャー(写真右)

インタビューの要約

事業規模のさらなる拡大のために、牛めし・とんかつ事業に続く新業態の立ち上げに適性のある人材を社内で特定し、登用・育成する必要があった。
日本エス・エイチ・エルのアセスメントを用いて、これまで新業態を担ってきた少数の人材の特徴を特定。類似した人材を新業態に抜擢するなど、適材適所を効率的に行えるようになった。
今後のミッションは、新業態を担える人材の育成と、部分最適を乗り越えて適材適所を遂行していくこと。

牛めしととんかつに続く、新業態を担う人材を社内から探したい。

当社のようなチェーンストアビジネスは、ある勝ちパターンを作って脈々と回していくことが成功につながるという構造があります。その一方で、中期経営計画ではさらに大きく事業拡大させようという方針があり、牛めし事業ととんかつ事業だけではなく、新業態を展開できる人材を育てるという、いわゆる戦略人事の課題が降ってきました。従来の事業は、同じタイプの人材を採用して育成すればうまくいきました。しかし、新業態を担える人材を社内で探すと、毎回同じ数名の人にしか白羽の矢が立ちません。この人たちの予備軍を作らなければ、中期経営計画に示された大きな事業の拡大は実現できないと考えました。

この人たちはどんな人なのか?社内に予備軍はどれだけいるのだろうか?と考えたときに、実は人材に関するデータがないことに気づきました。昇格試験などで会った時の印象しかない。どこかに隠れた人材がいるのか、いないのかもわからない。それで、新業態に適した人材を、タレントアセスメントを使って探すことにしました。

牛めしととんかつに続く、新業態を担う人材を社内から探したい。

当社の店長については、本部が決めたことを正確に行えるかどうかが評価基準でしたし、サービスの均一化や徹底力が当社の強みでもありました。一方、新事業は試行錯誤の連続であり、常に臨機応変な対応が求められます。これまでは新事業に適した人材を発掘し、育成しようという発想はあまりありませんでした。しかし今後は、戦略人事として新事業人材の発掘と育成を積極的に行わなくてはならないと経営に提案しました。

OPQを用いて、新業態やその他ポジションへの適性を把握。

アセスメントツールとして、なるべく回答時間が短いもの、コストを抑えられるもので、精度が高いものを探しました。他社の商品もいくつか検討しましたが、やはりコストや所要時間の関係で難しく、結果的にSHLのOPQにたどり着き、これなら採用時にも使っているし汎用性もある、一石二鳥じゃないかということで導入を決めました。

アセスメント結果データを分析すると、新業態を担ってきた社員はロジカルな人たちであることがわかりました。分析結果を見るまでは、感覚派の人たちだと思っていましたので予想外の結果でした。今では、彼らと似たアセスメントの結果を示す社員を、新業態の担当に選んでいます。

新業態以外にも、今は10か所くらいのポジションで、良い人いないかというオファーを貰ったら、成功する人材モデルをもとに、類似した人材を推薦しています。今後は、さらにアセスメント結果を分析して成功確率を上げていくというのが、我々のミッションです。

請負型の人事ではなく「攻めの人事」へ。

ジョブローテーションにおける人材を提案する際も、日本エス・エイチ・エルのアセスメントの結果は納得性の高い情報となってます。本人を知っている場合、結果を見て「ああ確かにな」と、よく思うんですよね。客観的な数字をもって候補者を提案することで説得力を高めています。

従来は、知っている人しか推薦できませんでした。このやり方では知らない人にはチャンスがありません。アセスメントを使うことで、チャンスが公平に行き渡るようになりましたし、異動の成功確率も上がり、適材適所がやりやすくなりました。しかも客観的であり、恣意的でない。これは重要です。人事異動を客観的に行うことが、他の人事施策についても客観的に行うというメッセージにもなります。

特定のポストに対する候補者を見出すときにもアセスメントは重要です。アセスメント結果があることで人事が積極的にしかけていくことができます。新業態の人材選抜は「攻めの人事」だと思います。

請負型の人事ではなく「攻めの人事」へ。

日本エス・エイチ・エルのいいところは、担当者が熱心に、細かく要望を聞いてくれるところ。考えがまとまらなくてモヤモヤしていても整理してくれます。提案内容にしても、クライアントの話をよく聞き、クライアントのことを考えて作っているのが伝わります。こちらはストレスなく進められます。

今後のミッションは、新業態を早く立ち上げられる人材を育てていくこととマネジメントのレベルアップ。加えて部分最適になっている組織をどう全体最適にしていくかが課題です。部門は優秀な人を抱え込みたがります。5年後のために今は我慢してくださいと部長を説得します。

個人的なミッションは、社員個人のモチベーションを引き上げて幸せを感じてもらうこと。個人個人のモチベーションリソース(意欲源)は色々あると思うので、それを気づかせて、実現の力になりたいです。本人もうれしいしお客さんもうれしい、結果として会社もうれしい、そういう環境を作りたいですね。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

太田 啓

別役さんから「新業態に適性のある人材を発掘したい」とご相談をいただいてから、何度も意見交換を重ね今回のプロジェクトに至りました。お打合せの間、常に意識していたのは別役さんのビジョンを正しく理解することでした。
松屋フーズホールディングスは長年弊社のアセスメントをご利用いただいており、過去にも優秀店長の傾向分析を実施しておりましたが、これほど大規模なアセスメントデータの分析は初めての取り組みでした。松屋フーズホールディングスの成長戦略に影響をおよぼす本プロジェクトに携わることができて大変光栄です。
今後は、選抜された新業態人材の育成、全社適正配置の実現、本プロジェクトの効果検証でお役に立てるよう微力を尽くす所存でございます。

ゲオからセカンドストリートへの事業ポートフォリオの転換を推進するゲオホールディングス。リユース事業であるセカンドストリート800店舗体制に向けて、人数を確保することに加え、質を担保すべく、活躍する店長の要件定義を行いました。

※本取材は2023年3月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社ゲオホールディングス

事業内容

メディア、リユース、モバイル、オンラインサービス事業

業種

小売業

従業員数

従業員数:5,314名(グループ全体)

インタビューを受けていただいた方

高橋 知寿 様

株式会社ゲオホールディングス
組織開発室 組織開発課 マネジャー

インタビューの要約

成熟したレンタル事業から成長しているリユース事業へと事業ポートフォリオの転換を行うために、リユース事業のセカンドストリートを800店舗まで増やすことを目指していた。
活躍する店長の特徴を明らかにするため、人事データ分析を行った。全社員のパーソナリティ検査結果から10タイプに分類し、そこに評価データを組み合わせて、最終的に3つのタイプを事業部と協議の上、採用ターゲットとして決定した。
人員要望書を作成し、異動・登用プロセスの標準化に着手。
今後の課題はターゲット人財を確保していくこと。また、変化し続ける事業に適応できる組織であり続けるため、未来を見据えた要員計画にも取り組んでいる。

経営戦略、事業戦略に必要な人財を供給する。

私は、2006年4月にゲオにアルバイトとして入社し、店長やエリアマネジャーを経験した後、2017年10月に人事に異動しました。人事への異動当初は、人事データを分析してほしいと言われていましたが、人事本来の役割とは何なのか疑問を持っていました。自分なりに書籍やセミナー、他社の方々と話していく中で、人事の役割は事業に必要な人財を用意すること、という答えにたどり着きました。この時、人事がどのように事業に貢献できるのかが分かって、モチベーションが高まりました。当時、会社としては、リユース事業であるセカンドストリートの800店舗体制を目標として掲げ、事業ポートフォリオの転換を目指していました。そのため、セカンドストリートで活躍できる人財を増やすことを目的にデータ分析を行うことにしました。

経営戦略、事業戦略に必要な人財を供給する。

活躍する店長の特徴をデータ分析で明らかにする。

まずは、どのような人が店長として活躍しているのかを明らかにすることが必要と考えました。日本エス・エイチ・エルのコンピテンシーデザインコースで学んだ、カードソートというインタビュー手法を使って、当時のセカンドストリートの責任者にヒアリングをしてコンピテンシーモデルを作成いたしました。また、OPQのデータを活用して、クラスター分析にて10タイプに分類を行い、タイプ別のハイパフォーマーの人数や割合がどのようになっているのか確認したところ、特定のタイプにハイパフォーマーが多く分布している点や、店長・エリアマネジャー・ゾーンマネジャーと役職が高くなるほど、割合が増える傾向が明らかになりました。事業部と作成したコンピテンシーモデルと比較すると共通点が多く、事業部と協議し今後の採用ターゲットに決定いたしました。

当時800店舗体制を目指し、年間50店舗規模の出店を計画、人事主導の採用は「量」が重視されていた中、「質」の視点を示すことができました。

データ分析の経験を異動・登用プロセスに活用。

2020年4月に人事異動の担当となりました。当時は各部門からどのようなオーダーがあったかといった過去の記録があまり残っておらず、異動に関する相談先も担当者だったり、マネジャーだったり、ゼネラルマネジャーとバラバラなことで人財要件が曖昧だったり、追加で確認が発生しながら人事異動が行われている状況でした。そこで、人員要望書(職務記述書のようなもの)を作成し、なるべく要件に合った人財を各部門に配置できるように環境を整えました。

要件がより明確になったことで、データ分析の経験も活かし、より要件に合った候補者の選出が出来るようになったこと、エラーが発生した場合でも何が良くなかったのか振り返りが可能になったこと、追加確認が少なくなったことにより、業務効率を高めることができました。

2023年2月に発表した通り、セカンドストリートは800店舗を達成し、中期的に1000店舗体制を目指しております。正直に申し上げると、当社に応募してくれる方々からターゲット人財に該当する人を量・質ともに継続的に採用し続けることは挑戦的なことで、今までの母集団形成や選考方法の仕組みを変えていく必要があると考えています。

また、未来の要員計画に取り組んでおり、店舗のみならず、間接部門の重点職種においても、将来どのような人財がどれくらい必要なのか、今どのような人財がいるのか、どのようにギャップを埋めていくのか、課題解決に取り組んでおります。日本エス・エイチ・エルは、相談がしやすく伴走してくれる会社だと感じています。我々の課題を解決するために、今後もご支援いただきたいと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング3課 主任

内田 敬己

高橋さんは、「ビジネス」を前提とした人事を考え実行されているすごい方です。ただ、「考えて実行する」ために、様々な知識を獲得し続け、困難な社内外の交渉調整業務を乗り越えられている様子が垣間見え、ご苦労も多かったのではないかと拝察いたします。こちらからの各種ご提案に対して「そうはいっても実際のところ」をご教示いただけたのは何よりの学びになっております。約10年間、担当する中で数々の貴重な経験をさせていただき深く感謝しております。引き続き、有効な関わり方ができるよう当社として気を引き締めて対応させていただきます。

導入事例

ソフトウェア技術者へリスキリング。デンソーの「キャリア転進プログラム」

ソフトウェア技術者へリスキリング。デンソーの「キャリア転進プログラム」

モビリティ社会において、一層大規模化・複雑化するソフトウェア開発。
不足するソフトウェア技術者を社内人材の職種転換によって育成する「キャリア転進プログラム」についてご紹介します。

※本取材は2023年1月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです

株式会社デンソー

事業内容

自動車技術、システム・製品の製造

業種

自動車部品製造業

従業員数

連結 167,950人、単独 45,152人(2022年3月末現在)

インタビューを受けていただいた方

広瀬 智 様
増子 敬 様

株式会社デンソー
電子PF・ソフトウェア統括部 ソフトキャリア支援室 室長 (写真右)
電子PF・ソフトウェア統括部 ソフトキャリア支援室 (写真左)

インタビューの要約

モビリティエレクトロニクス事業においてソフトウェア技術者に対するニーズが質・量ともに高まる一方、社内にはスリム化が求められる事業もある中、社内で職種転換を行う「キャリア転進プログラム」が立ち上がった。
推薦と社内公募を併用し、応募者にeラーニングと適性検査WebCABを実施。その後、ソフトウェア開発の基礎研修を行い、仮配属期間を経てソフトウェアの開発現場へ送り出している。
プログラム開始から約2年が経過し、現在は年間100名弱を輩出するペース。転進者の中には、目覚ましい活躍をしている人材もいる。
リアリスティック・ジョブ・プレビューも含め、ソフトウェア技術者として現場で活躍できる人を見極める精度を引き続き高めていく。今後もソフトウェア技術者に求められるスキルは変化するため、教育内容をアップデートし、組織の要請にこたえていきたい。

高まるソフトウェア技術者へのニーズに対応するために、社内人材の職種転換をサポートする「キャリア転進プログラム」。

私たちの所属するモビリティエレクトロニクス事業グループでは、ソフトウェア開発の規模がどんどん拡大し複雑化していく中、ソフトウェア技術者の不足が深刻化しています。一方、モノづくりの事業は非常に成熟しており、今後、電動化が進んでいく中でスリム化が必要な事業もあります。そこで双方の課題を解決するための一つの手段として、社内での職種転換「キャリア転進プログラム」の検討を始めました。20年7月にソフトキャリア支援室が組織化され、準備期間を経て、2021年1月から本格的にプログラムの運営を開始しています。

このプログラムは、社員のキャリア自立・自律と開発を支援する「キャリアイノベーションプログラム」における、継続的な学習を支援する「リカレントプログラム」の一部として位置づけています。「キャリアイノベーションプログラム」は、ソフトウェア技術者をいかに質と量の両面で強化していくかという課題へ対処するために作った仕組みです。デンソークリエイトに在籍していた頃に培ったノウハウを活かしつつ、デンソーの課題に即した形にしています。まずソフトウェア技術者のスキルを可視化しました。そこから社員が自らキャリアを描き、学び続け、活躍することを支援します。プログラムにおいては、ソフト技術者としての適性を見極めるために、日本エス・エイチ・エルのオンラインアセスメント(WebCAB)も利用しています。

高まるソフトウェア技術者へのニーズに対応するために、社内人材の職種転換をサポートする「キャリア転進プログラム」。

「キャリア転進プログラム」で、未経験者のポテンシャルを見極め、基礎教育を行い、実戦配備する。

「キャリア転進プログラム」の当初は組織の推薦だけでしたが、なかなか人数が増えなかったので、社内の公募制度も併用しています。応募者はハードウェア技術者だけでなく事務職も含みます。

応募者にはソフトウェア技術のリテラシーを向上するためのeラーニングとオンラインアセスメントを実施しています。オンラインアセスメントは、すんなりとソフトウェア的な技術を身につけられるというより、ソフトウェア的な考え方ができる人かどうかを見極める必要があると考えたためです。オンラインアセスメントとしてはWebCABを活用して、ソフトウェア技術者の適性を判断しています。そして、やる気と適性のある人に2カ月半の教育研修を行います。統計分析の結果、WebCABの得点と研修で実施するプログラミング言語テストの得点との強い相関が確認できています。また、結果リポートはご本人にも通知し、能力開発に役立てもらっています。

教育内容は、新人と同様にソフトウェア技術者として最低限必要なものだけにしました。このプログラムではソフトウェア技術者として共通に必要な基礎を学んでもらい、部門や製品によって必要な技術や知識は少しずつ異なるので、それらは配属後にOJTで学んでもらいます。

また、研修後、すぐにソフトウェアの現場でやっていけるかは分かりませんので、仮配属期間を設けて実際の業務を体験します。私たちもフォローして、本人と配属先がやっていけそうだとなったら正式に配属します。配属先は、会社のリソース計画をもとにいくつかの部署を提示します。その中で本人の希望も踏まえて決定します。応募から配属までに約半年で行っています。

年間約100名のソフトウェア技術者を輩出。活躍する社員も。

プログラム開始から約2年が経過し、現在は年間100名弱を輩出するペースです。プログラム出身者のなかには際立って活躍している人がいますし、いろいろなソフトウェア分野のイベントでもキャリア転進プログラム出身の方が出ていたりします。潜在していたソフトをやりたい人がその仕事に就けて活き活きと活躍されている様子を見るとよかったなと思います。そういう機会を提供して活躍や成長していくことに携われているのは1つのやりがいですね。

一方、途中で「やっぱり厳しいね」となる人もいます。華やかな仕事を思い描いて現場に入ると、思っていたのと違うと頑張れない人もいます。やってみて「こんな仕事だと思わなかった」となるとお互いに不幸になってしまうので、厳しいけれどもやりがいのある世界をよく理解してもらおうと説明していますが、それでも「やっぱり現実は違った」となる人はいます。ゼロにはできないとは思いますが、減らすことが課題です。仕事環境の大きな変化は誰にとってもストレッサーです。加えてプログラム参加者の職位が高い場合、受け入れ側がリーダークラスとしてのパフォーマンスを期待してしまい、それがプレッシャーになるケースもあります。どうケアするかを検討しています。

また、今後もソフトウェア技術者に求められるスキルは変化するため、教育内容をアップデートし、組織の要請にこたえていくことが必要になると考えています。

日本エス・エイチ・エルのアセスメントはデンソークリエイト在籍時の人材可視化から活用しており、人の特性を計測する仕組みとして信頼しています。今後は自社と業界平均との比較をしたいですね。また、プログラミングとマネジメントという主要な点だけでなく、様々な職種への適性を見極めたいと思っています。特に開発全体を見て指南していく人材である、ソフトウェアアーキテクトなどは、もともと素質がないとできない職務です。どんな人材か、日本エス・エイチ・エルの診断ツールで絞り込めたらと期待しています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

松波 里奈

ソフトウェア技術者の獲得は様々な企業で喫緊の課題です。その中でも今回は、高い専門性が求められる技術者の自発的な職種転換という先進的なお取組みに参画させて頂けましたこと、大変有難く思っております。「年間100名弱のソフトウェア技術者を輩出」という成果は、広瀬様、増子様がアセスメントデータの活用に留まることなく、キャリア自律促進のための前向きかつ挑戦的な取組みを続けたことによるものと感じております。今後もアセスメントの活用に留まらず意見交換させて頂き、効果的なタレントマネジメントの立案と運用のために尽力いたします。

導入事例

複線型キャリアと絶対評価によるスペシャリスト育成。業界をリードする高度ソフトウェアエンジニア集団を目指すデンソークリエイトの人事制度改革。

複線型キャリアと絶対評価によるスペシャリスト育成。業界をリードする高度ソフトウェアエンジニア集団を目指すデンソークリエイトの人事制度改革。

高度ソフトウェアエンジニア育成のための新人事制度を導入した、デンソークリエイトの企業改革をご紹介します。

※本取材は2021年12月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社デンソークリエイト

事業内容

車載組込ソフトウェアに関連する研究開発および先行開発、開発支援ソフトウェア(プロジェクトマネジメントツール、レビュー支援ツールなど)の開発、ソフトウェア技術者教育、プロセス改善・品質監査およびソフトウェア構造改革推進

業種

情報・通信業

従業員数

277名(2022.1.1現在)

インタビューを受けていただいた方

加藤 宏幸 様

株式会社デンソークリエイト
取締役

インタビューの要約

自動車産業におけるソフトウェアへのニーズの急拡大に対応するため、企業改革を実施。「高度ソフトウェアエンジニア集団としてグループ・業界をリードする会社」を目指し、スペシャリスト育成に振り切った新人事制度を導入。
新制度のポイントは、早期のキャリア複線化、キャリアアップ計画の作成、能力基準(コンピテンシー)とスキル基準(ソフトエンジニアとしてのスキル)に基づく絶対評価の人事考課、年功色の薄い処遇など。
コンピテンシー基準は日本エス・エイチ・エルのアセスメントをもとに作成。これに則り毎年の評価者研修を徹底。また、昇格候補者の審査にも同様のコンピテンシーが適用されている。
新人事制度導入以降18名のスペシャリストが誕生し、社員満足度調査の結果も向上。人事考課アンケートや社員満足度調査によるフィードバックを得ながら、現在も制度の改善を続けている。

ソフトウェアニーズの急拡大により会社への期待が増大。高度ソフトウェアエンジニア集団としてグループと業界をリードする会社を目指し、企業改革を実施。

当社は自動車がソフト化する将来を見据え、優秀なソフトウェア技術者の獲得を主な目的として、名古屋の小さなIT企業として誕生しました。ソフト開発を行うのは人であり、人だけが財産の会社です。親会社とは異なる、当時としては思い切った独自路線で、人事の仕組みを作成しました。コアタイムなしのフレックスタイム制、服装は自由、「アトリエ」という担当業務以外を含む組織でのコミュニケーションと自己研鑽などが特色でした。

設立から四半世紀が過ぎ、会社の規模が拡大するにつれ、トップが全員の能力を把握して処遇するようなことはできなくなりました。人材管理、配置・育成をしくみで行うこと、いわゆるタレントマネジメントが必要になったのです。
ソフトウェアに対するニーズの急拡大により、会社への期待が一気に高まる環境変化に対応し、2016年から企業改革を開始しました。目指したのは「高度ソフトウェアエンジニア集団としてデンソーグループ・業界をリードしていく会社」。親会社からの依頼に対応するだけではなく、ひとり一人が主体性を持って考え、提案し、自身のキャリアを描いて切磋琢磨する組織風土を目指しました。

スペシャリスト育成のための新人事制度をスタート。キャリアの複線化、キャリア計画の作成、コンピテンシーとスキル両面の能力開発、絶対評価などを導入。

改革の目玉として、2017年に新人事制度をスタートしました。それまでのトップの関与が強く、個別に判断して決める傾向があった人事から、仕組みで回す総合的な人事制度を構築して導入。人事の方針は、ソフト技術者は労働市場において流動性が高いことを前提とした考え方から、長期雇用・育成重視へと舵を切りました。
新制度のポイントは、スペシャリスト育成のための早期のキャリアの複線化と、それに付随するキャリアアップ計画の作成。そして能力基準(コンピテンシー)とスキル基準(ソフトエンジニアとしてのスキル)の作成、これに基づく絶対評価の人事考課と、年功色の薄い処遇などです。

スペシャリスト育成のための新人事制度をスタート。キャリアの複線化、キャリア計画の作成、コンピテンシーとスキル両面の能力開発、絶対評価などを導入。

新人事制度の導入に際しては、日本エス・エイチ・エルの協力のもと、評価・育成の根幹となる人材要件(コンピテンシー)を設計しました。このコンピテンシーに基づき、毎年の評価者研修や、昇格候補者の審査等を行っています。また「万華鏡30」を全社員が継続的に受検し、本人と上司が結果を共有の上、キャリアアップ計画作成や能力開発に活用しています。昇格候補者は別途アセスメントを受検し、その結果について日本エス・エイチ・エルのコンサルタントからフィードバックを受け、上司と本人と人事の三者で共有の上、行動改善に役立てています。 ソフトウェア技術者は科学的なアプローチを好むため、能力開発にも計測・データ解析に基づく根拠を示すことは非常に有効です。言葉だけよりも説得力が高まり、行動改善に繋がる可能性が高いと考えています。

新人事制度の成果は、活躍するスペシャリストの誕生、社員満足度の向上。

複線型人事は、会社ニーズだけでなく社員のニーズにも合致していましたので、歓迎されました。管理職ではなく専門職としてキャリアを積みたい人材も数多くいます。結果として18人のスペシャリストが誕生しました。その認定や昇格は、課題発表やアセスメントデータにより吟味して決定しているため、認定・昇格後はほぼ期待通りに活躍してくれています。会社に対するグループ内の評判も向上してきていると感じています。

また、毎年行っている「社員満足度調査」の結果では、新人事制度導入後、人事制度・育成制度に対する満足度は着実に向上しました。会社全体への満足度を示す「総合満足度」は、約50%から70%まで大幅に向上しており、人事の施策は間違ってはいないと自負しています。

新制度の導入は終わりではなく、始まりだと思っています。特に人事制度の要となる人事考課制度については、毎年評価者研修を実施し、評価の行い方と目線を統一しています。また運用の実態を把握するため、人事考課アンケートや社員満足度調査の結果を検討し、評価者やフィードバック者の変更、業績評価の簡素化など、試行錯誤を繰り返しています。

今後の課題は、実務的には、複線化したスペシャリストコースの拡充と認定方法の改善。先が見通し難い世の中で、キャリア形成の仕方をどう考えるかも課題です。また、どちらかと言えば内向きでモノを言いたがらないソフト技術者の意識を変えて、活発な議論が起きる企業風土へと改革を目指すべく、新たな打ち手を考えています。最終的な目標は、デンソークリエイトを日本のソフトウェア産業を代表する会社にし、社員が誇りを持って笑顔で毎日働けるようにすること。人事制度はそのための手段と考えています。

日本エス・エイチ・エルは、グローバルの膨大なデータと知見を持ちながらも、自社の理論を押し付けずに、常に同じ目線に立って寄り添ってくれる点がありがたいです。企業の信頼度だけでなく、適性検査の正確さ、コンサルタントの方の力量も大きいです。長年実施しているフィードバック面談は非常に好評で、今や欠かせない年中行事になっています。これからも宜しくお願いします。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

改正 晃大

高度なスペシャリストを育成するための先進的な人事制度やタレントマネジメント施策はIT業界のみならず、日本の産業をリードする取り組みです。この様なタレントマネジメント施策の設計と運用に深く関わることができ、大変光栄です。「新制度の導入は終わりではなく、始まり」という言葉の通り、制度は導入することが目的ではなく、制度の運用を通じて人が育ち、組織を発展させることが目的です。これからもデンソークリエイト様が目指す「日本のソフトウェア産業を代表する会社」に向けて、コンサルタントとして共に試行錯誤し、お力になりたく存じます。

中部電力グループ唯一のIT企業として、「エネルギーの安定供給」をシステムインテグレーターとして支える中電シーティーアイ。電力自由化等によって事業環境が変化し、DXのさらなる推進のために社員一人ひとりのキャリア形成を支援する人事制度改革を行いました。

※本取材は2023年8月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社中電シーティーアイ

事業内容

アプリケーション開発保守サービス、インフラセキュリティサービス、解析サービス、大量データ処理サービス、IT運用サービス

業種

情報・通信

従業員数

1,271名(2023年6月1日現在)

インタビューを受けていただいた方

林 達也 様
正村 宣美 様

株式会社中電シーティーアイ
経営管理本部 人事部 採用・人事企画グループ マネージャー(写真右)
様経営管理本部 人事部 採用・人事企画グループ 専門課長 (写真左)

インタビューの要約

サービスの高度化に合わせて、人材の配置や育成の仕組みを変革すべく、企画から1年で人事制度改革などの様々な施策の運用を開始。
社員のキャリア形成を支援するために、社長・役員も含めてアセスメントを実施。結果の見方研修や説明資料により社内への浸透を促進。
取得データは日々のマネジメントからプロジェクトへのアサイン、全社や部署の特徴の可視化など人事施策の様々な場面で活用。
一気呵成に行った人事施策について、社員の反応や声をしっかりと聞きながら定着させていく。

DX推進のため、人材の流動性を高め、キャリア形成を支援する。

電力自由化により、一層の経営効率や新規サービスに取り組むことが求められるようになりました。その中でITの力は戦略上欠かせません。DXを一層推進する必要があります。これまではどちらかといえば受け身でシステムを作る仕事がほとんどでしたが、より高度な仕事をすることが求められるようになり、仕事の仕方そのものを変えなければいけないという問題意識がありました。組織として人員をなるべく高度領域の仕事にシフトし、保守運用の仕事を海外を含めて外注するという大改革を行うことになり、人の配置育成の仕組みも見直しました。まず、IT技術者としてどのような人を求めるのかを定義し、人事制度と連動する高度IT技術の認定制度を構築しました。次に、個人のキャリア形成支援のために、社員向けにアセスメントを実施しました。さらに、従来は人事異動が硬直的でしたが、流動性を高めるために社内公募制やFA制などを導入しました。また、各職場において年度当初に掲げた業務執行計画を確実に達成させるために、人事評価の運用にクラウドを利用したシステムを導入し、上司と部下のコミュニケーションによる目標管理の手法をより強化しました。

現社長は人事業務の経験も深いため、一体となって変革を進め、21年度に様々な施策を企画して22年度に運用開始することができました。

DX推進のため、人材の流動性を高め、キャリア形成を支援する。

自己理解促進のため、アセスメントを実施。経営層が積極的に受検。

社員一人ひとりが成長することで会社も成長のチャンスが増えます。しかし、若手社員はキャリア形成の道筋やお手本を求めているものの、お客様の課題解決のために必要となるITスキルの変化が激しく、上司も経験がない仕事をしているために指導が難しい状態でした。そこで、人事アセスメントを活用することを考え、既に採用で使用していた日本エス・エイチ・エルのアセスメント、OPQを社員に実施しました。当初は若手IT人材のみを対象とすることを考えていましたが、社長が「対象者の上司が結果の扱い方をよく理解する必要がある」と、自らも率先して受検し、ほかの役員や管理職も積極的に受検してくれました。合計1,138名が受検し、受検率は約90%でした。受検を依頼する際には、「自身の適性を客観的に把握する」という目的を丁寧に説明するよう心掛けました。公募制、FA制度にチャレンジする際の自己PRに活用できることや、現状社内にあまり存在していないコンサルティングやプロジェクトマネジメントなどの業務に対する適性を知るのに役立つこと、今後も数年に1度、定期的に実施する予定であることを、社員の皆さんに伝えました。

1on1から、アサインプロセス、人材可視化まで広範囲に活用。

取得したデータは目標管理のクラウドシステムに格納し、本人とその上司が結果を見ることができます。上司は部下の職種適性などを見て、キャリア形成のアドバイスや1on1ミーティングの材料などに活用してもらっています。結果の解釈の仕方については、解説動画を社内ポータルに用意しており、70%弱の方が視聴済みです。加えて、上司向け、全体向け、職種適性の能力開発ガイドなどの資料も配布しました。人事主導の施策ゆえ、結果の扱われ方に対する不安を払拭するためにも、なるべく多くの情報を提供しました。

客観的な物差しということもあり、結果はおおむね前向きに受け止められています。また、部署内でお互いに結果を共有することもあります。

人事側では、人事異動やプロジェクトへのアサインを検討する際、1つの参考材料として活用しています。人事内ではかなり浸透してきており、何か判断をする際に「(OPQの)結果はどうなっているの?」という声が聞こえてきます。また、全社あるいは部署ごとの特徴を把握するためにデータ分析も行い、実感を客観的なデータで再確認することができました。

また、これまでは人事異動が少なくずっと同じメンバーと仕事をしてきましたが、今後人材が流動化すると初対面の人々とプロジェクトを進めていくことが増えます。その際OPQという共通言語があれば、コミュニケーションも円滑になるのではないかと思います。

昨年は、盛りだくさんの人事施策を、短期間のうちに今までにないスピードで実施しました。社員にとっても目まぐるしい変化であったのではないかと思います。今後は、社員の反応や声をしっかりと聞き、必要なものを見極めて定着させていくことが大事だと思っています。社員が忖度せずに率直に意見を表明できる風通しの良さの表れなのか、毎年実施している社員の満足度調査では、人事評価結果に対して厳しい意見もありました。社長は常々「社員に何も言ってもらえなくなったら終わり。言ってくれるうちが華」と言っています。改革後の満足度は微増となりましたが、今後もアンケートなどで社員の声に気付くことができるようにしたいです。

日本エス・エイチ・エルは私たちのパートナーだと思っています。「言ってもらえなくなったら終わり」という言葉はどのような関係性にも言えることですので、今後も様々なアドバイスを期待しています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

改正 晃大

「社員一人一人がキャリアについて考えるきっかけを与えたい」という思いの下、細心の注意を払い進めていたことをとても印象深く覚えております。受検結果の開示だけでなく、OPQの解釈方法や活用に関する案内、部門ごとの分析結果の開示など、キャリアについて考えるための情報提供を惜しみなく行っており、皆様の思いがあって初めて実施できた取り組みだと考えております。これからも「パートナー」と言って頂けるよう、微力ながら尽力させて頂きます。

導入事例

タレントマネジメントシステム×適性検査データの広範的活用。ブラザー販売の人材可視化プロジェクト。

タレントマネジメントシステム×適性検査データの広範的活用。ブラザー販売の人材可視化プロジェクト。

人事データ・適性データをタレントマネジメントシステムに統合し、キャリア面談、採用基準作成、プロジェクトへの抜擢など様々な活用をするブラザー販売の取り組みをご紹介します。

※本取材は2021年11月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

ブラザー販売株式会社

事業内容

インクジェット複合機、モバイルプリンター等情報機器、家庭用ミシン等の商品企画・広告宣伝・営業・営業企画・アフターサービス等、ブラザーグループの国内マーケティング事業

業種

卸売業

従業員数

347名(2021年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方

山内 優 様
渡部 しのぶ 様
舩橋 優太 様

ブラザー販売株式会社
人事総務部 人財戦略グループ シニアマネージャー(写真中央)
人事総務部 人財戦略グループ チームリーダー(写真左)
人事総務部 人財戦略グループ(写真右)

インタビューの要約

ダイバーシティ推進と人事業務効率化のために、タレントマネジメントシステムを導入。いわゆる人事データのみならずポテンシャル適性データも統合して全体最適な人事を行うべく、「万華鏡30」の全社員受検を実施。
適性データをタレントマネジメントシステムで統合し、社員が自身のポテンシャルや似た特徴を持つ社員の分布を把握できるように構築した。またキャリア面談での上司とのトークテーマとし、適性データを見ながら能力開発や能力発揮の支援に活用できるようにした。
勉強会のメンバーの推薦や、採用基準の再設計にも適性検査データを活用。ローテーションや次世代リーダー発掘に生かすため、今後は質的なディスカッションを重ね、各部門で求める人材像を策定する予定。
目指すのは、受け身ではなく主導的な立場で提案できる人事。人事が能動的に動くためのツールとして、今後も人材データを活用していきたい。

ダイバーシティ推進において、大局的視点の必要性を実感。 散在する人事データを統合するため、タレントマネジメントシステムを導入。

もともとダイバーシティ推進において、個人の特性を生かし全社的に最適な人事判断をするための材料が不十分であることに問題意識がありました。当社内の人材を俯瞰することができないと、どうしても局所的な視点から人事異動やリーダーの抜擢が行われてしまう懸念があります。本当のダイバーシティを実現するためにどうすればいいかと考えていたところ、タレントマネジメントシステムが盛り上がりを見せ、興味を持ちました。

様々な人事データが散在しており、業務効率化の観点でも人事データを統合したかったところに改善活動推奨の追い風もあり、タレントマネジメントシステムの導入を決めました。タレントマネジメントシステムをローテーションなどの人事施策に活用するためには、人事データだけではなく、ポテンシャルやモチベーションなど適性データも統合する必要があります。そこで、直接雇用の全社員に対して万華鏡30を実施しました。

ダイバーシティ推進において、大局的視点の必要性を実感。 散在する人事データを統合するため、タレントマネジメントシステムを導入。

最初は新しいシステムの導入にハードルがあるのではないかと思いましたが、社内で反対はまったくありませんでした。折しもコロナ禍でリモートワークが始まり、DXやデータ活用の機運が高まっていたため、とんとん拍子でプロジェクトが進みました。

全社員の適性検査データをタレントマネジメントシステムに統合し、 いつでも自分の情報を見られるように。
コロナ禍で減ったフィードバックの効果も期待。

直接雇用の全社員に対して万華鏡30を案内し、約95%の社員が受検してくれました。受検に際して、「全社的な適材適所を実現するために、個々人の職務に関連する行動スタイルを可視化したい。今後は採用基準やローテーション、育成計画のためにデータを活用する。」という趣旨の案内をしました。 受検結果をタレントマネジメントシステムに取り込み、本人と本人の上司、および事務局のみが結果を見られるようにしました。自分のポテンシャル値が領域ごとにレーダーチャートで表示され、似た波形をもつ社員を把握できるようにしました。加えて、自分の能力開発ニーズに基づいて上司とキャリア面談をできるようにしました。

高い受検率の背景には、コロナ禍の影響もありました。リモートワークが始まり、他者からフィードバックを受ける機会が減りました。その中で、「自分はどのような人間なのだろう」「どのような強み・弱みがあるのだろう」ということを見つめなおしたいというニーズがあったのだと思います。

キャリア面談、特定のプロジェクトへの抜擢、採用基準設計など 広範囲にデータを活用。
今後はディスカッションも併せ、求める人材モデルを作りたい。

タレントマネジメントシステムに集積したデータは、職務を離れて上司と価値観やキャリアなどをディスカッションするキャリア面談に活用されています。本人が自分の結果をもとに、「発揮できている能力」「もっと発揮したい能力」「克服したい能力」「工夫で乗り切りたい能力」などを選び、その情報をもとに上司と面談できるようにしました。キャリアを描く際に、科学的に推測された自分の強み・弱みの情報を活用できることは、社員にとってメリットが大きいと思います。

また、DXに関する自主勉強会の企画が持ち上がった際に、万華鏡30のあるコンピテンシー群の数値をもとに、若手社員の中から推薦者を抽出してみました。浮上したメンバーは事務局のイメージした人材像に近く、前向きな人ばかりでした。人材を探そうとなったときに、特定の条件ですぐに抽出できることの利便性を感じました。

キャリア面談、特定のプロジェクトへの抜擢、採用基準設計など 広範囲にデータを活用。 <br>今後はディスカッションも併せ、求める人材モデルを作りたい。

さらに、集積したデータをもとに、採用基準の見直しも実施しました。データを使ってローテーションや次世代リーダーの発掘も行う予定でしたが、これはサンプル数の問題もあり、まだ着手できていません。しかし最近、コンピテンシーの書かれたカードを使ったディスカッションの方法(カードソート法)をご提案いただき、まずは3年目に求める要件、DX人材に求める要件、そしてマネジャーに求める要件とディスカッションを重ねたところ、共通した人材像が見えてきて手ごたえを感じました。今は各部門で求める人物像や次世代リーダーの人物像を明確化し、採用や育成にフィードバックしていこうと思っているところです。

適性検査データの解釈には注意すべき点もあります。たとえば、ある部門に求める人材像を定義しても、すべてを満たす人材はほとんどいません。理想的な人材像を定めた上で、その中での優先順位や、能力開発で伸ばしやすい部分、素養として持っているのが望ましい部分などを細かく選定しておくことが、運用上必要でしょう。また、個々人がデータをどう解釈するかも重要です。若い社員が「このデータが私のすべて」というような解釈をしてしまうと、自己認識を必要以上に固定化するリスクもあります。結果はあくまで現時点のポテンシャルであって、自分に限界を定めないように啓発することも併せて必要だと思います。

上司が部下の適性データを解釈できるようになるためのサポートも必要です。リモートワークで上司が部下を直接見る機会が減ったため、データの重要性は高まっています。また、コンピテンシーに関する理解は、今後求める人材像をディスカッションしてゆく中でも必要な土台になると思われます。

今までの大きな問題は人事が受け身だったこと。今後は情報を出してと言われて開示するのではなく、主導的な立場でデータを提供して判断を仰ぐ、もしくは人事から提案するべきと考えます。人事が能動的に動くためには集積したデータが必要です。タレントマネジメントシステムには、適性データ以外にも様々な人事データが統合されていますので、それを概観してタレントマネジメントの判断材料にしていきたいです。

日本エス・エイチ・エルには適性検査の見方や他社の事例など、今後もご提案をいただけると助かります。打ち合わせで様々なディスカッションができるのを毎回楽しみにしています。これからも良き伴走者になっていただけるとうれしいです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

松波 里奈

人材可視化から人材データ分析、活用支援までを行う重要なプロジェクトをご依頼頂いた際には、ワクワクすると同時に身の引き締まる思いで毎回の打合せに臨んでいました。 お打合せでの議論においても、当社からのご提案について多様な観点でご質問を頂くなど、社員のポテンシャルを引き出したい、より組織を活性化させたいというお三方の強い思いを感じさせる時間でした。現有社員の特徴を踏まえて、必要とされる人材要件を定義し、採用基準を一新できたことは、皆様と一緒に作り上げた一つの成果だと思っています。一方でタレントマネジメント施策には終わりがなく、よりよい人材配置や人材育成を実現する為に次の議論をスタートさせて頂いていることは、大変光栄に感じております。よき伴走者として頼って頂けるように、私自身も尽力して参ります。

激化するグローバル競争を勝ち抜くため組織体制を強化するジェイテクト。
タレントアセスメントを用いた経営人材の発掘と育成の取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。内容は取材時のものです。

株式会社ジェイテクト

担当部署名

人事部 人事企画室 企画グループ

事業内容

ステアリングシステム、軸受、駆動部品、工作機械、電子制御機器などの製造・販売

業種

製造業

従業員数

49,933名(2020年3月 連結)

タレントマネジメント課題

グローバルに活躍できる経営人材の発掘、育成
現在の業績と行動評価だけではなく、上位職におけるポテンシャルを加味した登用審査の実現
複数事業部門で、横串を通した人材評価制度の構築

導入したタレントマネジメントソリューション

管理職及び管理職候補者へのタレントアセスメントの実施(タレントセントラル:知的能力テストVerify、パーソナリティ検査OPQ、意欲検査MQ)
管理職のコンピテンシーモデリング (マッピング、データ分析)
OPQによる自社独自の管理職適性尺度の開発

得られた成果

管理職としてのポテンシャルを勘案した科学的な登用検討が、できるようになった。
どのような特性を持つ人材が管理職として活躍するのかを、データで明らかにすることができた。
事業部門独自の人事施策にもデータ活用が広がった。

目的/課題

ジェイテクトは、軸受メーカーの光洋精工と工作機械メーカーの豊田工機が合併し、2006年に発足した会社です。ステアリング、駆動、軸受、工作機械・メカトロなどの多様な領域でナンバーワン製品・オンリーワン技術を保有しているグローバルメーカーですが、グローバル企業としての組織基盤や体制が整っていませんでした。自動車関連事業を始めとして各事業ともグローバル競争は激化しており、事業をリードする強い経営人材の発掘育成が喫緊の課題でした。
 一方で、これまでの管理職登用は各評価実績を中心に登用しており、「複雑化する社会のニーズに応え、事業をリードする管理職として相応しい資質を持っているか」という点を踏まえた登用ができていないという課題がありました。

導入/経緯

「管理職としての資質」を測定するアセスメントツールの選定にあたって、予測妥当性の高さやグローバル対応(多言語で実施可能、世界中の比較データを持つこと)、育成施策への展開の容易さなどの観点で検討がなされました。グローバル対応ができる海外のアセスメント会社も検討した上で、アセスメントツールの品質の高さと日本での活用支援体制が整っているという点からSHLのアセスメントツール「タレントセントラル(知的能力検査Verify、パーソナリティ検査OPQ32、モチベーション検査MQ)」が選ばれました。
登用審査の導入前に、現管理職に対してタレントセントラルを実施し、第一線で活躍している人材の特性をデータで明らかにしました。全社共通の価値観「ジェイテクトウェイ」との対応関係も整理した上で、管理職の人材要件定義を行いました。
アセスメント結果から自社独自の管理職適性得点を算出し、各事業部門に共有することで、登用検討に客観的なポテンシャル情報を組み込む事ができるようになりました。

成果

事業部門に関わらずジェイテクトの将来を担う管理職の人材要件を明確化でき、科学的手法を用いた測定の仕組みを構築できたことが成果でした。この取り組みをきっかけに、これまで目的毎に異なっていた新卒採用から人材育成に関わる全てのアセスメントツールを一本化しました。これにより、各人事施策で比較可能なデータを入手・蓄積することができ、横断的にタレントマネジメントを改善していくことが可能となりました。
また、各事業部門で独自に行っている人材育成施策にもSHLのアセスメントが活用されるようになり、人材データの活用が活発になったのも大きな成果の一つです。

導入事例

「育成する昇格プログラム」と「ライセンス制度」を取り入れた、Jストリームのマネジャー育成。

「育成する昇格プログラム」と「ライセンス制度」を取り入れた、Jストリームのマネジャー育成。

動画配信サービスへのニーズ急上昇を受け、ビジネスチャンスに対応するため人事制度もアップデート。
Jストリームのマネジャー育成の取り組みをご紹介します。

※本取材は2021年8月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社Jストリーム

事業内容

(1)ネットワークシステムにおける、動画データ及び各種情報の提供サービス業
(2)ネットワークシステムを利用した会員情報管理、商取引、決済処理に関する受託業
(3)デジタルコンテンツ、出版物の企画・制作・販売及び賃貸業
(4)ネットワークシステムに関するハードウェア・ソフトウェア・付帯サービスの企画、開発、運営、制作、販売、輸出入・賃貸及び代理店業
(5)広告・宣伝に関する企画・制作及び代理店業
(6)1から5に関連するコンサルテーション、調査、分析、研究等

業種

情報通信業

従業員数

単体313名 グループ594名(2021年3月末時点)

インタビューを受けていただいた方

田中 潤 様

株式会社Jストリーム
執行役員 管理本部 副本部長兼人事部長

インタビューの要約

コロナ禍において動画サービスへのニーズが急上昇。大きなビジネスチャンスと様々な環境変化に備えるため、人事制度全般のアップデートと人材育成の体系化を図る。
マネジャー育成の一環として、半年間のマネジャー教育を組み込んだ「育成する昇格プログラム」と、組織マネジャーのライセンス制度を導入。
研修は、リモートワークにおける人間関係構築の場も兼ねる。月1回、自由参加型の交流型研修を実施。
今後は、各本部が推進する独自の人材育成施策への支援と、社員のキャリア支援にも取り組んでいきたい。

動画配信事業に到来した大きなビジネスチャンス。 会社が次のステージに移るべき時期がきた。

私のキャリアは大手食品メーカーでの業務用原料の営業職からはじまりました。当時は営業が天職だと思っていましたが、29歳で人事に異動。人事の仕事は、企業をまたいだ共通の課題意識について情報交換し、互いに学び合える点が面白く、採用から人事制度設計まで様々な人事業務を担いました。その後営業子会社の役員を経験したものの、人事としてのキャリアに戻ることを求めて46歳で転職。2社目で10年ほど人事責任者を務め、縁あって今の会社に入社しました。


このコロナ禍で、我々の予想を超えて、急速に動画サービスが活用されるようになりました。Jストリームにとって大きなビジネスチャンスですが、同時に受注キャパシティの問題や、コンペティターの台頭といった脅威も発生します。会社全体が変わらないと、今後の大きな変化に対応できません。ステージが変わるときが訪れたのです。会社が変わる際には、経営が明確に方向性を示し、様々なサブシステムがそれに対応していく必要がありますが、人事は経営における極めて重要なサブシステムです。人事が半歩先を意識しながら、経営と一緒に変化すべき大事な時期だと思いました。

長らく抜本的には手を入れられていなかった人事制度全般のアップデートに着手しました。また、体系的な人材育成制度を入れ、最初の柱としてマネジャー育成のテコ入れをしました。マネジャーが人を育てるからです。これまでマネジャー向けに一律の研修は行っていませんでしたが、知識やスキルといった武器を提供せずに、ただ「頑張れ」では成り立ちません。マネジャーの仕事はどんどん複雑化する傾向にあるので、彼ら・彼女らに適切な武器を提供するのは会社の義務です。

マネジャーの「無免許運転」は危険。 「育成する昇格プログラム」と併せ、マネジャーのライセンス制度を導入。

マネジャーにあたる等級に昇格するためには、各本部の申請に対し、業績を参照し、執行役員以上が全員で審議して決議します。丁寧なプロセスですが、データやロジックは特にありませんでした。そこで今回、マネジャー候補層の育成の仕組み化をしました。

組織を持たないスペシャリストを含むすべてのマネジャーについて、昇格タイミングの半年前に各本部に候補者の申請をいただきます。その後、候補者には通知をし、半年間マネジャーに昇格するための育成プログラムを提供します。その結果、最終的に審査して、昇格する人を決議します。選別する昇格プログラムではなく、「育成する昇格プログラム」です。候補者を申請する際に、各上司はその人の課題を提出します。それも幹部が共有して、育成を見守ります。育成プログラムは、外部の講座への参加、アセスメント試験、人事部の主催する研修への参加などで、研修でのパフォーマンスを参考にして最終的に審査が行われます。

マネジャーの「無免許運転」は危険。 「育成する昇格プログラム」と併せ、マネジャーのライセンス制度を導入。

次に、組織を持つマネジャーに対してはマネジャーのライセンス制度の導入を行いました。組織をマネジメントするには、プレーヤーの業務とは違う能力が必要です。マネジメントについて学んだ人のみがライセンスを取得でき、部課長になれます。初年度の今年は既存の全マネージャーに対して実施しましたが、具体的には、①チームを動かすということ、②一対一のコミュニケーション、③仕事の生産性向上の3つを対象として、研修を行います。ライセンスは3年更新にして、3年後にまた異なる研修を受けていただきます。当然、新しくマネジャーになる人も、研修を受けていただく必要があります。管理職の「無免許運転」は危ないですからね。あわせて、部下評価をするための研修も、①目標設定②中間面談③評価の仕方④フィードバックの4段階に分けて行っています。

リモートワークでのコミュニケーションの希薄化を補うのも、研修の役割。 「楽しかった」と思える研修が、人の学びを促進する。

近年採用数を増やしており、現在コロナ禍以降に入社した社員が全体の2,3割を占めます。彼ら・彼女らにヒアリングをすると、部署の人や業務の関係する人とはオンライン会議で接点が持てるが、その他の人間関係が広がりにくいとのこと。確かに、従来のように出社時にたまたま出会うとか、飲み会で一緒になるといった機会は生まれにくくなりました。既存社員同士は関係性を維持できるが、新しく入社した方が人間関係を構築するための対策は必要です。しかし、とってつけたようなイベントを開催しても仕方がない。我々は、研修を人間構築の場にしようと考えました。

そこで、マネジャーに特化した研修の他、誰でも手を上げれば参加できるような研修を毎月行うようにしました。基本的に交流型の研修ですが、雑談に終始してはもったいないので、参加しやすく興味を集めやすいテーマを毎回決めて、半分くらいの時間は皆でディスカッションするような構成にしています。たとえば、直近ではストレスマネジメントをテーマとした研修を行いました。参加してくれたある管理職の方は、「人の喜びは学びと交流ですね」と感想をくれました。学びが喜びになれば学習が自走しますので、人事部としても大変喜ばしいことだと思います。

気を付けている点は、非常に多忙な中、時間を割いて参加してくれる社員の期待を裏切らない研修にすること。特に、研修は「楽しかった」と思えるものであることをモットーとしています。楽しみながら前のめりに参加をするほうが、学びがあります。人事部でファシリテーションを行う場合も、それを意識しています。

今後ですが、具体的なところでは研修の効果検証を行う必要があると思っています。現状ではアンケートなどで反応を見ていますが、今後は一定の規模で様々なサーベイを行い、人材育成にデータを活用していくことも検討したいと思っています。日本エス・エイチ・エルは採用での支援が中心ですが、何かアイデアがあればぜひご提案いただきたいです。

人材育成の分野で今後行いたいことは、各本部内の独自の人材育成の支援。人事部は、ベーシックなスキル・態度の教育を中心に担っていきます。業務直結のスキルに関しては、本部内で教育プロジェクトを立ち上げているところもありますので、各本部が独自性をもって人材育成を行うために、人事として情報提供などを通じて支援したいと思っています。

最後は、社員のキャリアの支援。私自身も関心の深いテーマですし、社内のニーズもあります。メンバーからのキャリア相談は、個別性が強くマネジャーも苦労する傾向があります。そこに対して、人事部として何か取り組みをしていきたいなと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

深津 寛

「育成する昇格プログラム」という取り組みは、コンサルタントとして新たな視座を得ただけでなく、一個人としても共感を覚えるものでした。育成しながら昇格へ導くという考え方は、人的な制約の中で変革を迫られる多くの組織に示唆を与えてくれるものです。
インタビューの中で、「キャリア支援を今後のライフワークとしたい」というお話をされていたのが強く印象に残っています。根底にある、社員一人一人と親身に向き合いたいという田中さんのお気持ちがとてもよく伝わってきました。今後も様々な人事課題の解決のためお力になる所存です。

「新しい楽しさ・豊かさを お客様に発見していただけるモノ造りを」を経営理念とするサッポロビール。
変革を推進する経営リーダーを継続的に生み出す人財育成の仕組みづくりに取り組みました。

※本取材は2023年8月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

サッポロビール株式会社

事業内容

ビール・発泡酒・新ジャンル・ワイン・焼酎などの製造販売、洋酒の販売、他

業種

食料品

従業員数

約2,400名(2023年5月)

インタビューを受けていただいた方

小林 志野 様 小山 祐介 様

サッポロビール株式会社
人事部 キャリア形成支援グループ グループリーダー 兼 サッポロホールディングス株式会社 人事部 (写真右)
サッポロビール株式会社 人事部 キャリア形成支援グループ 兼 キャリアサポーター (写真左)

インタビューの要約

人事制度改革に伴い、サクセッションプランへの課題意識が高まり、サッポログループ内で先駆けて仕組みづくりに着手。
将来の経営者に求める要件を明確化し、次の経営者候補を対象にアセスメントを実施。
結果のフィードバックから、戦略的配置、社外研修への派遣、継続的な1on1によって対象者を育成。
今後も継続的な改善を行い、グループにも展開していく。

次世代の経営人財候補を育成するサクセッションプランを構築する。

私達は、人事部キャリア形成支援グループに所属し、人財育成やキャリア開発の支援がミッションです。サッポロビールの行動規範である「自分のキャリアは自分で切り拓く」という人財育成ビジョンにそって、経営人財育成に取り組んでいます。

2020年の人事制度改訂により、支援型のマネジメントをキーワードとする様々な施策を開始しました。その1つ、「人財育成会議」では、半期に1回各部署の役職者が一堂に会して、メンバー一人ひとりの強みや育成課題を話し合い、育成方針を決めています。従来、各事業会社の社長に経営リーダー候補を年に一度確認していましたが、組織としての体系的な育成施策はなく、経営全体で共有することもほぼありませんでした。変化の激しい時代、次世代の経営人財候補にも「人財育成会議」と同様の取り組みが必要という課題意識が高まり、将来的にはサッポログループ全体での取り組みも視野に、まずはサッポロビールにおいて経営人財育成の仕組みづくりに着手しました。

次世代の経営人財候補を育成するサクセッションプランを構築する。

要件定義とアセスメントの実施により、コンピテンシーポテンシャルを可視化。

具体的には、8つのステップで実施しました。ステップ1は全体構想の検討。年2回の経営人財育成会議を軸とし、対象層を喫緊の課題である次の経営者候補としました。会議体の委員長を社長、委員長代行を人事担当役員、事務局を人事部長、人事グループリーダー、キャリア形成支援グループリーダーが担当します。当時の人事担当役員はサクセッションプランへの課題意識が強く、この取り組みを強く牽引してくれました。

ステップ2は人財要件の策定。経営人財に求める要件の明確化のため、役員全員で他社事例やSHLから提供された情報などをもとに様々な議論をしました。最終的にサッポロホールディングスで既に策定されていた経営人財に求められる6 要件を採用しました。数年前に作成されていますが、検討の結果、有効な要件であると判断しました。

ステップ3は選抜プロセスの策定。まず候補者案を人事部で作成し、役員一人ひとりと個別に検討を行い、第一回目の経営人財育成会議で共有し、最終的な候補者を決定しました。

ステップ4はアセスメント実施。ステップ3で決定した候補者に対し、SHLのタレントセントラルでパーソナリティ検査とモチベーション検査を実施しました。外部アセスメント導入の目的は、2つ。1つ目は候補者の自己理解促進です。これまで社内の指標のみだった評価指標から、世間の同等職務レベルのデータと客観的に比較することで、より成長を支援できると考えました。2つ目は経営や人事が、候補者の顕在化されていない行動特性やモチベーション傾向を把握し、より適切な配置・育成・登用に繋げることでした。SHLコンピテンシーと当社の経営人財要件との紐づけも行い、アセスメント結果からコンピテンシーの可視化ができるようになりました。

本人に育成計画をフィードバック。成長を促すために異動や外部研修を実施。

ステップ5はフィードバック。各役員から、アセスメント結果と経営人財育成会議内で話された各候補者の育成計画を本人にフィードバックしました。以降は経営人財会議の合間に定期的に1on1を実施して、継続的な成長支援をしています。フィードバック実施にあたり、日本エス・エイチ・エルに依頼して事前に役員向けのフィードバック研修も行いました。アセスメント結果をよく理解するために、役員も全員アセスメントを受検しています。

ステップ6は戦略的異動。経営人財育成会議では、候補者を育成するための経験や配置案が話題に出てきます。異動は別のセクションが担当していますが、定期異動では前年の経営人財育成会議の内容を踏まえた、大胆な異動が行われたと感じました。

ステップ7は外部研修派遣。ステップ6の戦略的配置とほぼ同時並行に行いました。経営人財育成会議で議論し、必要と判断した人には、適切なプログラムを選定して研修に派遣しています。

本人に育成計画をフィードバック。成長を促すために異動や外部研修を実施。

最後のステップ8は対象者層の拡大です。初回である2021年は次の経営者候補を対象に1年間実施してきましたが、2022年は次の次の経営者候補を対象とすることにしました。2年目はステップ3からのサイクルを、もう1回転行いました。
今年で3年目ですが、今後もこの年間サイクルを確実に回し改善していくことが重要だと感じています。また、次の経営者の計画的な育成はサッポログループの共通課題ですので、サッポロビールの取り組みで上手く行っている部分を他の事業会社に役立てていただけるように、協力していきたいと考えています。

エス・エイチ・エルのコンサルタントには、当社の要望を聞きながらいろいろなご提案をしていただきました。ウェビナーを通じた他社情報の提供や、個別の情報交換会のセッティングなど様々な面でのサポートもありがたかったです。グループ企業への横展開や新入社員のオンボーディングなど、新たな始まった取り組みも引き続きご支援いただきたいと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

清水 智昭

今回のお取り組みはサクセッションプランニングを新たにスタートされる企業様にとってガイドラインとなる好例です。会議体の発足からアセスメントフィードバックの一連のプロセスに加え、実際の異動配置や研修派遣など具体的な施策が展開された点は特筆すべきポイントです。重要なのは「ボードメンバーの巻き込み」と「人財に関する対話機会の創出」です。会社のボードメンバーが自部門の管轄を越えて、次世代を担う人財をどのように創出していくか対話することが、施策実施までのプロセスにおいてキーポイントであったと感じています。次世代リーダーの戦略的な発掘/育成は多くの企業様での喫緊の課題であると思います。手始めに、一度膝をつきあわせて「次の担い手」を話し合う。すると自然とそれがサクセッションプランニングの入り口になるのではないでしょうか。