顧客や社会へ価値を提供するために、事業部主導で採用や育成を進めてきたメディアフォース。ビジネスの拡大に伴って生じた管理職不足などの人事課題に、全社的に取り組む人材開発プロジェクトが発足しました。本インタビューでは管理職の要件定義についてご紹介します。

※本取材は2023年3月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社メディアフォース

事業内容

システムインテグレーションサービス、Webシステム構築、汎用系システム構築、インフラ構築

業種

情報処理サービス

従業員数

208名(2023年4月1日現在)

インタビューを受けていただいた方

家喜 章平 様 / 上村 潤 様

株式会社メディアフォース
取締役 執行役員 (写真左)
業務管理本部 総務人事グループ 課長 (写真右)

インタビューの要約

業界未経験者に自社の価値観を伝えプロとして育成する人材戦略であったが、ビジネスの拡大により管理職が不足。他の人事課題への対処も含め、全社横断の人材開発プロジェクトが発足。
現在活躍している管理職の特徴をデータ分析から導き、さらに今後のビジネスの変化に対応すべく社長や事業部門責任者へのインタビューを行って、管理職要件を定義。
管理職の要件を採用基準に反映して運用している。今後本格的に開始する経験者採用でも活用する予定。
管理職候補生の識別と抜擢、部門間の異動の要否など、今後タレントマネジメント施策を検討していく上で今回作成した要件や分析結果を活用していく。

事業の成長によって人材育成のスピードアップが喫緊の課題に。

当社が業界の未経験者を採用してきた理由は、顧客や社会に貢献する手段としてシステムを開発するという自社の価値観を体現できる人材を自らの手で育成したいからです。しかし、ビジネスが従来の受託開発からソリューション型へ変容する中で、人材育成をさらに加速し、事業成長のスピードに合わせる必要が出てきました。 人材育成を強化したくても管理職の数が足りず、管理職不足を補うことが喫緊の課題となりました。

当社は人事権が事業部にあり、基本的に配属や異動、キャリア形成は事業部の権限で行っています。そのため部門の垣根を超えた情報共有が不足していたり、育成の状況が十分に把握できないといった、人事制度の運用について全社を横断的に統制することが不十分な状態でした。これらの問題を解決するため、育成に限らず、採用や人事制度に関しても改善のスピードを高めるべく、責任者をおいてしっかり取り組んでいく全社的な人材開発プロジェクトをスタートさせました。

事業の成長によって人材育成のスピードアップが喫緊の課題に。

手始めに感覚で行っていることを定量化していこうと考えました。定量化しないと、言葉1つをとってもみんな捉え方が少し違います。例えば、「エネルギッシュな人が欲しい」など。人材に関する言葉を皆が同じ意味で用いることができるようにすることが必要だと考えました。そこで定量データを使用した管理職の人物像の明確化に取り組みました。投資に見合う価値があるのかという批判的な意見もありましたが、投資に見合う効果を得るためにやるべきだとの想いを伝え、納得してもらうことができました。

インタビューとデータ分析を用いて管理職の要件を定義。

ビジネスの変化にうまく適応し、活躍している管理職の特徴を、パーソナリティ検査OPQの結果を使用して分析しました。受検していただいたすべての管理職の方々には、自己理解を深めるために、結果をお返ししています。この分析の結果、大きな2つの事業領域において、管理職のタイプが明確に異なっていることが分かりました。感覚的なものが数値化され、客観的なデータで示されることで、納得感のある結果となりました。

ただ、この分析はあくまで現在の管理職を分析しているものであり、今後の事業戦略によって必要となる管理職像を見出すためのものではありません。そこで社長と事業責任者が今後の事業をどのように考えているかを尋ねるインタビューも実施しました。このインタビューから導き出された人材要件は、自分のこれまで持っていた感覚やイメージと全体的に合致していましたが、コンピテンシーとして適切に表現できていなかったと気付きました。特に「元気づけ」や「対人感受性」といった対人面のコンピテンシーが重要であることが明確になりました。これらのコンピテンシーが選ばれたのは、チームで働く際にはもちろん、顧客に接する際にも対人能力が重要だからです。システムを作ることは、どこまでいっても手段であり、本質は顧客との信頼関係にあるということがわかりました。

これら2つの手法から得られた結果を統合し、最終的に6つの要件に絞り込みました。

管理職の要件を採用活動に反映。経験者採用も開始予定。

定義された管理職の人材要件から採用基準を作り、採用選考に使用しています。採用ではWebCABを使用して、結果帳票から採用基準に照らして本人の強み弱みを把握し、面接で掘り下げて確認しています。悩ましいのは、基準を満たす人が限られてしまうことです。パーソナリティ検査と知的能力検査の結果を総合的に見ていますが、それぞれの検査結果において、どの水準をボーダーラインとすべきかについては、入社した社員の検査結果と業績の関係を調査したうえで慎重に検討しています。 また、部門によってシステムエンジニアの特性は異なり、求める人材も変わります。しかし、部門別ではなく一括に採用しているので、各部門の求める人材の平均値を採用することになり、焦点がぼやけてしまいます。もちろん会社に共通の部分もありますが、今回行った分析でも、2つの大きな事業部には異なるタイプの人が多いことがわかりましたので、どう採用し、どう配属するかについては今も試行錯誤しています。

今後は、これまで行っていなかったエンジニアの経験者採用も行います。今までの人材よりも早くコア人材に成長するので、管理職としての人材要件も採用時に確認していくことになります。

タレントマネジメント施策としては、今回作成した人材要件を基にポテンシャル情報を活用し、管理職候補として適任な人材を特定し、抜擢することを人材開発プロジェクトで進めていきます。これが実現すれば、部門間の異動の判断にも役立てることができます。

人事データの収集と可視化による投資効果は即効性があるものではありません。人事としては客観データを共通言語にディスカッションできることが大事だと考えています。月に1度、幹部の集まる会議で人事データを提示してディスカッションをしています。この取り組みが部門の垣根を超えたコミュニケーションを促進し、全社的な人事課題の解決につながることを期待しています。

日本エス・エイチ・エルは、データを収集し分析するだけでなく、その結果をどう解釈し、活用するかに対して積極的にコンサルティングを提供してくれます。その結果、私たちが抱えている問題について有用なアドバイスをもらえることがあります。また、私たちの気づかなかった視点やアイデアを提供してくれるので、重要なパートナーとして位置付けています。ディスカッションの機会をたくさん持ってくれる一方で、過剰にサービスを勧められることはありません。「なぜこんなに親身になってサポートしてくれるんだろうか」と話し合うほどです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング1課

深津 寛

本プロジェクトが人材要件定義の事例の中で一段目を引くのは、以下の3つの要素を網羅している点にあります。
① 活躍者の人物像を、現在と未来とに分けて分析したこと。
② 活躍者のタイプは複数存在すると仮定したこと。
③ 定量的手法であるアセスメントデータ分析と、定性的手法であるインタビューとを組み合わせたこと。
活躍者を分析する上での、①「現在と未来」②「複数タイプ」という鋭い仮説は、当初からメディアフォースさまにお示し頂いていたものです。ここにアセスメントを専業とする日本エス・エイチ・エルの得意領域がクロスオーバーしたことで、非常に有意義な分析結果を得ることができました。
始動まで1年弱に渡って打ち合わせと検討を重ねましたが、いま改めて振りかえってみても、根底にある価値観は常に一致していたと感じます。
今回のプロジェクトに微力ながらも貢献できたことは大変光栄です。引き続き日本エス・エイチ・エルの専門性を活かして、メディアフォースさまの今後の課題に最善のサポートを提供してまいります。

グローバルリーダー育成に力を入れるマツダ。グローバルリーダーを早期発見・早期育成するタレントパイプラインの仕組みづくりとグローバルリーダーシップ研修の取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年11月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

マツダ株式会社

事業内容

乗用車・トラックの製造、販売など

業種

製造業

従業員数

単体 23,203名 (男性: 20,947名 女性: 2,256名)
連結 50,479名

※2020年3月31日時点

インタビューを受けていただいた方

竹下 可奈子 様

マツダ株式会社
人事本部 人材開発部 組織開発グループ

インタビューの要約

海外販売会社の社長候補探しが難航し、グローバルリーダーの早期発掘・早期育成の課題が顕在化した。
GLDC(グローバルリーダー育成委員会)を立ち上げ、グローバルでのリーダーシップパイプラインの仕組みづくりを行った。半年に1回各領域の統括役員が参加し、タレントリストを元に育成計画を立案する。
次いで、GLDP(グローバルリーダー研修)を立ち上げ、業務と並行してグローバルリーダーを疑似体験できるようなプログラムを立案、運営した。SHLのアセスメント・育成計画・集合研修・約半年間のプロジェクトワーク・スキップレベルミーティング・リベラルアーツ社外セミナーの6つの施策を実施した。
今後は、より全社で一貫した評価基準で人材選抜を行い、参加者の動機付けを行いながらプログラムも効果的に運用していきたい。

突然空いた海外販売会社の社長ポジション。後継者探しに苦労した。

2014年当時、マツダグループのとある海外販売会社の社長ポジションが急に空き、後継者をすぐに探さなくてはいけないという出来事がありました。その販売会社では基本的に現地の社員が社長になっていましたので、すぐに現地の候補者たちと面談を行いました。しかし、面談の結果、すぐに社長になれるほど育っていないことがわかり、そこの販売会社外で後継者を探すことになりました。しかし、マツダグループの他拠点で、探そうとしたものの、どこに、どのような優秀人材がいるのかみえず、大変苦労しました。この出来事から、二つの問題点が浮き彫りになりました。一つは、海外拠点の社長候補が育っていないという問題、二つ目が、グローバルリーダー候補がグローバルにシェアされていない、また各拠点ごとの育成、活用にとどまっているという点です。

グローバルベースでリーダー候補者を早期に発掘・育成すべき、という課題意識に対して、優秀人材の見える化と計画的育成の仕組みづくりに取り組みました。まず、2014年にGLDC<Global Leadership Development Committee>、日本語ではグローバルリーダー育成委員会が立ち上がりました。続く2015年にはGLDP<Global Leadership Development Program>、グローバルリーダー研修がスタートしました。

突然空いた海外販売会社の社長ポジション。後継者探しに苦労した。

GLDC:個人にフォーカスしたリーダーシップパイプラインの実現。

委員会のゴールは、重要なポジションの候補者が常に充足され、ベストな人材をアサインできる、そういった環境の実現です。これによってリーダーシップパイプラインが連綿と続く状態にするということをゴールに置いています。

過去にも、グローバルの人材育成を目的とした会議体もありましたが、ポジションマネジメント型でした。ポジションにフォーカスするため、若手人材の早期選抜育成には、限界がありました。このGLDCでは、個人にフォーカスすることで、早期の優秀人材の選抜・育成を活性化しようとしたわけです。リストも人ベースになっており、委員会で共有している約60名のタレントリストでは、その人のターゲットポジション、ポジションまでに必要な経験、強み・育成課題、その対応策などが記載されています。

委員会の委員は、各領域の統括役員が担っており、審議される対象は、マーケティング・販売と、経営企画、財務領域の課長部長層に限っています。もともと、海外の販売会社の社長後継が育っていないという問題意識から発足したので、海外販売会社のトップになりうる人材がいるこれら領域に限っています。開催は、半年に一回。①人材の特定。②育成計画立案、③実行とフォロー、④評価のプロセスがあります。

各領域の統括役員が育成したい人材を特定し、部門の責任で育成計画を立案します。この計画立案において我々が重要視していることはできる限り多様なストレッチ経験をさせることです。クロスファンクション(領域をまたいだ経験)、クロスリージョン(国をまたいだ経験)、最後にハイヤーポジション(経営ポジションの経験)です。経営者になると、担当する領域は広がり、国境もこえた広い視野でビジネスを捉える必要が出てきます。多様な価値観に触れる機会も増えてきます。それを若いうちに早めに経験させたいという思いがあります。立てた育成計画を実現させるために、他本部、海外へ異動させたい人材がいれば、会議の中で取り上げ、委員会のネットワークを使ったポジションマッチングを検討します。ただ、現実のところ、成立ぎりぎりまで話は進むものの、最終的にはビジネスニーズやプライベートな理由で、成立できないケースが多いのも悩みです。どうすれば、育成目的のアサインメントを次々成立させることができるのか、仕組みを今後も考えていかなくてはいけません。評価については、取り組もうとしてまだできていない課題です。

GLDP:ストレッチの機会を疑似体験するグローバルリーダー研修。

実際の異動は難しい場合もあるので、ストレッチの機会を疑似的にでも提供するべく立ち上げたのがGLDP、グローバルリーダー研修です。先ほどの3軸(クロスリージョン、クロスファンクション、ハイヤーポジション)を疑似的に体験するため、プロジェクトチームは多国籍、多領域のメンバーで構成され、経営者視点でプロジェクトワークに取り組んでもらいます。参加者は20名程度、グローバルリーダー候補で各領域の統括役員が選抜しています。もともと委員会と同様に対象領域を限定していましたが、一部対象を広げ、今後は全社に展開する予定です。

研修は、約1年間、業務を離れることなく参加してもらうプログラムになります。まずは、SHLのアセスメントから始まり、次に育成計画、集合研修、約半年間のプロジェクトワーク、スキップレベルミーティング、リベラルアーツ社外セミナーの6つの施策から構成されています。

SHLのアセスメントはオンラインで360度、能力テスト、OPQ、対面でロールプレイとインタビューを実施しています。研修開始時に各参加者に受検してもらっていますが、SHLはグローバルに展開されているので、参加者は現地の言葉で受検できます。また、グローバルで同じ物差しで定量的に結果が出てくるのでとても助かっています。このアセスメントの目的は二つ。まず一つ目は、自己認識を向上させるということ。二つ目に、マツダのリーダーに求められるリーダーシップにおける育成課題や強みの明確化です。結果は、マツダのグローバル経営リーダー要件に合わせて出るようカスタマイズをしていただいています。アセスメントの結果は、参加者本人だけでなく、上司もアセッサーから直接フィードバックをもらっています。事務局からは、各部門で活用してください、とお任せしたのですが、事後調査をしたところ、日々の業務に追われ、うまく活用しきれていない人がいるということがわかりました。せっかくの貴重なデータを活用しきれていないのはもったいない、ということで、2019年度から追加で個別育成計画という施策を導入しました。

マツダウェイの「共育」を大事にする研修プログラム

個別育成計画は2019年度から始まり、今力を入れて取り組んでいます。アセスメントの結果から見えてきた育成課題もしくは強みに対し、アクションプランを立ててOJTを通して1年間実行していきます。直属の上司だけでなく、経営者である本部長からフィードバックをもらい、アクションプランを立てています。経営者視点からのフィードバックをもらうことで、参加者の育成の質をさらに高められているのではと思います。また、この過程で、本部長や人事側もリーダー候補者を深く知ることができました。

集合研修は、海外メンバーも集めて、本社で約一週間実施します。外部講師による座学、マツダの理解を深めるセッション、役員との対話で構成されています。2019年度には、海外拠点から参加するメンバーから拠点の紹介や、取り組み課題をプレゼンしてもらいました。別拠点でも、皆同じ悩みを持っており、課題やベストプラクティスを共有できたことが参加者にとても好評でした。来年度は全領域から参加者がいる予定なのでお互いに学びあいながら視野を広げるチャンスを作りたいと思っています。マツダウェイにある「共育」=互いに教えあい、成長しあう取り組みがこの研修の根幹にあります。仲間同士でともに育てあえるようにと、メンバー同士のアセスメント結果共有も行っております。また、研修の最後には、自身が思う各チームメンバーの強みや育成課題をそのメンバーに伝える、という取り組みもしています。半年間一緒に頑張ってきた仲間からのフィードバックは、心に残るものがあるのではないでしょうか。

スキップレベルミーティングは、参加者と役員の一対一の面談です。目的は、参加者の視座向上、視野拡大と、役員と参加者のネットワーク構築です。フリートーク形式で、参加者が話したい内容を考えて面談を行いますが、毎年のアンケート調査では、参加者にとって一番好評な施策の一つです。一方で、参加者によって内容のレベルにばらつきがあり、期待するような成長につながっているか不明という役員からのフィードバックもありました。そこで個別育成計画の内容について面談の中でふれてもらうなど、一部ガイドを付けました。

この研修プログラムは、私自身にとってもやりがいがあります。役員とのやり取りを通して、高い視点に触れることができ、参加者を通して、多領域や海外拠点のことも知って、ネットワークを構築できます。将来の会社を背負うマネジメントの方の成長機会に、微力ながら携われることにやりがいを感じながら、これからもプログラムを進化させるとともに、私自身も成長していきたいと思います。

現在、参加者選抜を役員、各部門、各海外拠点に委ねているため、全社で一貫した基準はなく、主観的評価によるいわば一本釣り選抜のような状態です。今後はリーダー要件の活用や選抜目的でのアセスメント導入などを検討していきたいと思います。また、選抜で英語がネックになっている点も課題です。特に、開発・製造領域では、優秀人材であるにもかかわらず、英語ができないため研修に選抜されないこともあります。早くに海外赴任を経験させるなど、若いうちからの英語力向上に取り組む必要があります。動機づけにも課題があり、選抜研修がゆえに、上司に言われてきましたというやらされ感のまま参加する人もいました。モチベーションは研修の成果に大きく影響します。対応策として、2019年度はプログラムの開始時に三者面談、上司、本人、人事で、個別に説明会を実施して、上司への期待、本人への動機づけを行いました。その甲斐あってか、前年の参加者よりもモチベーション高く参加している人が多い印象でしたので、今後もそれを続けていこうと思っています。まだまだ課題も多い状態ですが、毎年改善しながらプログラムを作って行きたいと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 大阪オフィス 部長

岡松 太郎

次世代リーダーの育成は、今や多くの企業で取り組まれている重要テーマですが、誰を選抜しどのように育成するかは各社とも試行錯誤の連続です。マツダグローバルリーダー研修(GLDP)において、当社は2015年からグローバル体制で側面的支援をさせていただいております。2020年現在は、新たにリーダー要件の見直しに着手されるなど、更なるブラッシュアップも検討されています。ご担当の竹下さんは海外でのご経験も長く、グローバルとローカルの絶妙なバランスをお持ちの方と、常々感じております。人材選抜、育成については、日本と海外ではその捉え方の違いもある中、常に全体最適を目指して、改善を重ねていらっしゃいます。今後も、候補者の選抜・測定はもちろん、育成プログラム終了後の効果検証など、あらゆるシーンで、SHLグループの知見と各種アセスメントでマツダの人事・経営戦略のお役に立てるよう努めてまいります。

導入事例

牛めし、とんかつに続く「新業態」立ち上げを担う人材を育てる、松屋フーズホールディングスの挑戦。

牛めし、とんかつに続く「新業態」立ち上げを担う人材を育てる、松屋フーズホールディングスの挑戦。

新たな業態に挑戦する松屋フーズホールディングス。その立ち上げを担う人材をアセスメントを用いて選抜し、成功確率の高い人材配置の実現を目指す取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社 松屋フーズホールディングス

事業内容

飲食事業を中心とするグループ会社の経営管理

業種

小売業

従業員数

1,613名 2020年(令和2年)3月期・連結

インタビューを受けていただいた方

別役 建治 様 / 一坂 正博 様

株式会社 松屋フーズホールディングス
人事部 人事グループ グループマネジャー(写真左)
人事部 人事グループ チーフマネジャー(写真右)

インタビューの要約

事業規模のさらなる拡大のために、牛めし・とんかつ事業に続く新業態の立ち上げに適性のある人材を社内で特定し、登用・育成する必要があった。
日本エス・エイチ・エルのアセスメントを用いて、これまで新業態を担ってきた少数の人材の特徴を特定。類似した人材を新業態に抜擢するなど、適材適所を効率的に行えるようになった。
今後のミッションは、新業態を担える人材の育成と、部分最適を乗り越えて適材適所を遂行していくこと。

牛めしととんかつに続く、新業態を担う人材を社内から探したい。

当社のようなチェーンストアビジネスは、ある勝ちパターンを作って脈々と回していくことが成功につながるという構造があります。その一方で、中期経営計画ではさらに大きく事業拡大させようという方針があり、牛めし事業ととんかつ事業だけではなく、新業態を展開できる人材を育てるという、いわゆる戦略人事の課題が降ってきました。従来の事業は、同じタイプの人材を採用して育成すればうまくいきました。しかし、新業態を担える人材を社内で探すと、毎回同じ数名の人にしか白羽の矢が立ちません。この人たちの予備軍を作らなければ、中期経営計画に示された大きな事業の拡大は実現できないと考えました。

この人たちはどんな人なのか?社内に予備軍はどれだけいるのだろうか?と考えたときに、実は人材に関するデータがないことに気づきました。昇格試験などで会った時の印象しかない。どこかに隠れた人材がいるのか、いないのかもわからない。それで、新業態に適した人材を、タレントアセスメントを使って探すことにしました。

牛めしととんかつに続く、新業態を担う人材を社内から探したい。

当社の店長については、本部が決めたことを正確に行えるかどうかが評価基準でしたし、サービスの均一化や徹底力が当社の強みでもありました。一方、新事業は試行錯誤の連続であり、常に臨機応変な対応が求められます。これまでは新事業に適した人材を発掘し、育成しようという発想はあまりありませんでした。しかし今後は、戦略人事として新事業人材の発掘と育成を積極的に行わなくてはならないと経営に提案しました。

OPQを用いて、新業態やその他ポジションへの適性を把握。

アセスメントツールとして、なるべく回答時間が短いもの、コストを抑えられるもので、精度が高いものを探しました。他社の商品もいくつか検討しましたが、やはりコストや所要時間の関係で難しく、結果的にSHLのOPQにたどり着き、これなら採用時にも使っているし汎用性もある、一石二鳥じゃないかということで導入を決めました。

アセスメント結果データを分析すると、新業態を担ってきた社員はロジカルな人たちであることがわかりました。分析結果を見るまでは、感覚派の人たちだと思っていましたので予想外の結果でした。今では、彼らと似たアセスメントの結果を示す社員を、新業態の担当に選んでいます。

新業態以外にも、今は10か所くらいのポジションで、良い人いないかというオファーを貰ったら、成功する人材モデルをもとに、類似した人材を推薦しています。今後は、さらにアセスメント結果を分析して成功確率を上げていくというのが、我々のミッションです。

請負型の人事ではなく「攻めの人事」へ。

ジョブローテーションにおける人材を提案する際も、日本エス・エイチ・エルのアセスメントの結果は納得性の高い情報となってます。本人を知っている場合、結果を見て「ああ確かにな」と、よく思うんですよね。客観的な数字をもって候補者を提案することで説得力を高めています。

従来は、知っている人しか推薦できませんでした。このやり方では知らない人にはチャンスがありません。アセスメントを使うことで、チャンスが公平に行き渡るようになりましたし、異動の成功確率も上がり、適材適所がやりやすくなりました。しかも客観的であり、恣意的でない。これは重要です。人事異動を客観的に行うことが、他の人事施策についても客観的に行うというメッセージにもなります。

特定のポストに対する候補者を見出すときにもアセスメントは重要です。アセスメント結果があることで人事が積極的にしかけていくことができます。新業態の人材選抜は「攻めの人事」だと思います。

請負型の人事ではなく「攻めの人事」へ。

日本エス・エイチ・エルのいいところは、担当者が熱心に、細かく要望を聞いてくれるところ。考えがまとまらなくてモヤモヤしていても整理してくれます。提案内容にしても、クライアントの話をよく聞き、クライアントのことを考えて作っているのが伝わります。こちらはストレスなく進められます。

今後のミッションは、新業態を早く立ち上げられる人材を育てていくこととマネジメントのレベルアップ。加えて部分最適になっている組織をどう全体最適にしていくかが課題です。部門は優秀な人を抱え込みたがります。5年後のために今は我慢してくださいと部長を説得します。

個人的なミッションは、社員個人のモチベーションを引き上げて幸せを感じてもらうこと。個人個人のモチベーションリソース(意欲源)は色々あると思うので、それを気づかせて、実現の力になりたいです。本人もうれしいしお客さんもうれしい、結果として会社もうれしい、そういう環境を作りたいですね。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

太田 啓

別役さんから「新業態に適性のある人材を発掘したい」とご相談をいただいてから、何度も意見交換を重ね今回のプロジェクトに至りました。お打合せの間、常に意識していたのは別役さんのビジョンを正しく理解することでした。
松屋フーズホールディングスは長年弊社のアセスメントをご利用いただいており、過去にも優秀店長の傾向分析を実施しておりましたが、これほど大規模なアセスメントデータの分析は初めての取り組みでした。松屋フーズホールディングスの成長戦略に影響をおよぼす本プロジェクトに携わることができて大変光栄です。
今後は、選抜された新業態人材の育成、全社適正配置の実現、本プロジェクトの効果検証でお役に立てるよう微力を尽くす所存でございます。

導入事例

急成長するLAVA Internationalの科学的人事戦略。

急成長するLAVA Internationalの科学的人事戦略。

日本市場で急速な成長をとげた、ホットヨガスタジオ事業のLAVA International。
組織の急拡大に伴う人事課題にどのように取り組んだのか、そのタレントマネジメント事例を紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社LAVA International

事業内容

ヨガスタジオの運営、ヨガインストラクター養成スクール等の運営、ヨガウェアブランドの展開、ヨガイベントの運営

業種

サービス業

従業員数

グループ全体 5,877人(正社員4,256名、アルバイト1,621名)※2019年8月末現在

インタビューを受けていただいた方

的場 勝己 様

株式会社LAVA International
運営部 部長

インタビューの要約

急拡大に伴う大量採用が求められる中、採用数よりも採用の質を担保する必要性を感じ、入社後のパフォーマンスを予測できるアセスメントを探し始めた。
部長以下の全社員に日本エス・エイチ・エルの適性検査を実施し、データ分析を行った。インストラクター、店長職、SV職、本部系企画職の適性がそれぞれ明らかになった。
採用のフローにアセスメントを組み込み、質の高い採用活動が可能となった。また、インストラクターから本部系企画職へのキャリアチェンジにもアセスメントを導入し、適性に沿った異動が可能となった。また、社内にアセスメントの用語が徐々に浸透し、人材の能力や特徴を表現するための共通言語ができた。

ギリギリ合格した人材の中に、光る逸材がいる。 それがパフォーマンス分析に目を付けたきっかけ。

今の立場は、店舗運営の責任者ですが、日本エス・エイチ・エルのアセスメントを導入した当時は、人材開発部の採用グループのグループ長でした。大量採用のさなか、私の問題意識は、採用数を確保することも大事なのですが、今の採用は成功しているのか否かを、入社後のパフォーマンスで示すべきではないか、ということでした。

このような問題意識を持ったきっかけは、いくつかあります。私自身のキャリアは営業畑が多く、結果がすべて数字でわかる世界です。採用の結果は採用数はもちろんわかりますが、もっと違う形で採用の成果を表したかったというのがまず一つ。もう一つは、採用と教育、現場の立場の相違です。採用と育成は、育成がうまくいかないケースに対し、「なぜこの学生を採用したんですか」と葛藤が起こります。教育と現場は、現場でスムーズに業務が行えなかった場合に、「なぜこの状態で送り出したんですか」と、また葛藤が起こります。このような構造を解消するために、現場でのパフォーマンスをベースとして、こういう理由で採用したのだという根拠を出発点に持ちたかったのです。そのために、採用の視点と現場でのパフォーマンスに相関があることを示す必要がありました。

ギリギリ合格した人材の中に、光る逸材がいる。 それがパフォーマンス分析に目を付けたきっかけ。

もう一つ加えて言うと、大量採用で採用数を確保する必要があったので、ギリギリで受からせた人たちがその後どうなったのかを知りたくて、最終面接評価C-で合格した人材を、自分で追跡調査してみました。その結果、C-で合格した人材は、早期離職はたしかに多かった。でも、入社後パフォーマンスが高い人材の出現率も、C-が多かったのです。このような興味深い結果が表れたことも、パフォーマンス分析に踏み出したきっかけになりました。

選んだポイントはわかりやすさと汎用性、そして「当たっている」ということ。

「採用時のアセスメント結果と入社後のパフォーマンスとの相関をはっきりさせて、より質の高い採用をしたいので、そのための提案をください」と、6,7社くらいにお声がけしました。日本エス・エイチ・エルを選んだのは、最終アウトプットを自分たちがどう使っていくのかイメージしたときに、一番わかりやすかったから。あとは、「今回は入社後のパフォーマンスとの相関を分析するつもりだが、いずれは役職への登用や、本部系の企画職へのキャリアチェンジなどにも使っていきたい。その分析も可能か?」と聞いたら、ことごとくできると言っていただいたので。社員のアセスメントは何かを知りたいというたびに実施するものではないと思うので、一度の実施で色々な活用ができることは大きなメリットでした。

最後の理由は、導入前にモニターとして社員が受検した結果が、本人の特徴を正しく説明していて、役員が感動したからです。「本当だね、この子そうだよね」と。最初はインストラクター採用のためとしか考えていなかったのが、この最終決定に至る過程で上層部に見てもらった時に、これは面白いねとなって、部長以下全員に受検してもらう流れとなりました。

見えてきた各職種への適性をもとに、効率的な採用・異動を実現。

社員のアセスメントデータを分析した結果、インストラクターに必要な特徴に加え、店長職やSV職に求められる特徴、そして本部企画職に求められる特徴がわかりました。店長職やSV職には、インストラクターの資質に加えて求められる資質があり、また本部企画職の適性は、インストラクターの適性とは一部相反することなどがわかりました。

その結果を受けて、採用ではかならずアセスメントを実施して、面接官と見方を共有して評価に使いました。また、インストラクターから本部系職種へのキャリアチェンジの際も、実施して見極めに使うようにしました。インストラクターと本部系職種は、業務内容がまったく異なりますので、アセスメントをして面接してみると、現場よりも本部に適性のある方もいたりします。そういう方を発見できる喜びもあります。

さらに、社内で実施している360度評価の結果を、さらに詳細に解釈する際にも、このアセスメントを組み合わせて使っています。360度評価は、あくまである人の視点なので、時期やペアリングの影響も受けますし、完全に鵜呑みにすべきではないと思っています。本人のアセスメントの結果も併せて参照し、なぜこのような360度評価の結果になったのか、というのを深く理解しようとしています。人には多かれ少なかれ多面性があって、何かきっかけがあれば誰でも異なる側面が出てくるものなので、なるべく客観的な視点をもつよう努力しています。

社内の人材を表す共通言語ができた。

採用や異動を効率的に行えるようになったということのほかに、アセスメントを入れてよかったことは、社員の特徴を的確に表す共通言語ができたことです。実際にアセスメントの結果を目の前にするのは人事系の役職者だけですが、彼らが各部門に対してもアセスメントに使われている用語を使って、採用や育成について話します。アセスメントに使われている表現が社内に浸透すると、他の社員のことを評価するときにその表現で話すので、社内にいる人のコンピテンシーを表すのに共通言語ができます。たとえば、プレッシャーへの耐力がある、というのが正確な表現だとして、それを単に「メンタルが強い」などと表現してしまうと、少し意味があいまいになってしまう。そういう共通言語ができることも、いい人材マネジメントにつながるのかなと思います。

今後の人事施策については二つあります。まず新しく着任した人材開発部長の言葉を借りると、「採用に際して、インストラクターを採るのではなく、全体を対象に利益創出ができる人材をとる」。インストラクターがゴールと見えないような入社後の広がりを感じる採用活動をすることで、良い店長が排出されるようにしたいです。女性が多い会社ですので、妊娠・出産・復帰のサイクルがあることを考えると、もっと役職者を輩出するペースを上げるべきですし、入社当時から自然とキャリアアップを目指したくなる採用をしたいというのは、まさにその通りだなと思います。

もう一つ、私の現在の役割である運営部の目線で言うと、採用を担当していたときから実施したかった、アセスメントを用いた配置や昇進は、まだまだ活用できる余地があると思いますので、今後は運営部でさらに力を入れていきたいと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

下越 千尋

社員の方々のアセスメントデータ分析結果を報告した際、その結果を裏付ける具体的なエピソードや意見が的場さんや役員の方から出てきて、活発なディスカッションとなったのが印象的でした。お客様の持つ仮説がデータによって検証され、それが具体的な言葉や数字となって共通認識された瞬間でした。分析結果を深く理解されようと、実際の現場で起きていることや既存の情報などを組み合わせて多角的に判断しようとされている点は、私自身勉強をさせていただいたことも多かったです。また、私どもが提供するアセスメントツールが現在も社内のコミュニケーションの道具となって活用されていることも、お客様の組織の発展に寄与できているという私たちの自信と誇りにつながっています。お客様がこのツールから得られる知見がより価値の高いものになるよう、引き続き支援させていただきたいと思っています。

通貨処理機等の製造を行うグローリー。昨今の電子決済化など事業環境の変化に対応するため、人材の計画的な発掘・育成・配置の必要性が高まり、タレントマネジメントの基礎として全社員のアセスメントデータを取得し、人材可視化を行いました。

※本取材は2023年5月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

グローリー株式会社

事業内容

通貨処理機・セルフサービス機器の開発・製造・販売・保守、電子決済サービス、生体認証ソリューション、ロボットSI等の提供

業種

機械

従業員数

3,498名(グループ連結:10,792名)※2023年3月31日現在

インタビューを受けていただいた方

永瀬 厚司 様

グローリー株式会社
人材開発部 人材教育グループ グループマネージャー

インタビューの要約

コア技術を新たな事業につなげることができる人材を計画的に育成すべくタレントマネジメントに着手。
全従業員共通のアセスメント(OPQ)を実施。説明会や動画にて自己理解の重要性を伝え、受検率100%を達成。
データ分析により全社および部門別の人材の特徴を可視化。
新任管理者研修内にてOPQの説明パートを設け、部下理解およびキャリア面談での活用を促進。
管理職の要件にPMCコンピテンシーを採用し、今後のさらなる人材育成施策を検討する。

未来に必要な人材を計画的に育成すべくタレントマネジメントに着手。

私は、ソフトウェア技術者として国内および海外での製品開発を経験した後、2019年4月に人材開発部へ異動しました。人材開発部のミッションは、効果的に人材の採用・教育・発掘・育成・配置することです。現在は人材教育グループマネージャーとして、各事業部にある教育部門と連携し、全社の教育を進めています。

グローリーは通貨処理機の開発製造からメンテナンスまで一貫して行う機械メーカーですが、培った技術を活かして電子決済サービスや生体認証、メカトロニクスを活かしたサービスなどの事業も行っています。海外では競合と資本提携を進め、この10年間で海外売上比率は半分以上を占めるまでになっています。キャッシュレス化が進み事業環境が大きく変化する中で、新しい事業の柱を作るビジネスリーダー、技術で牽引する開発のリーダー、資本業務提携先とのシナジーを創出できる人材などが必要となってきました。未来に向けて必要な人材要件の定義、その素養を持つ人材を社内で把握し、全社で共有し、計画立てて育成するには至っていませんでした。これらの課題に対処するために、まず現状把握のため人材可視化に取り組むことにしました。

未来に必要な人材を計画的に育成すべくタレントマネジメントに着手。

全従業員共通のアセスメントデータを収集。受検率100%。

タレントマネジメントを実施する上で、行動特性を示すアセスメントデータは重要な情報の1つです。しかし、当時社内にあったアセスメントデータは対象層によって異なっていたため、全従業員を共通で見られるものさしが必要だと考えました。また、海外関係会社を含めると、外国人比率も高く、グローバル展開できる日本エス・エイチ・エルのOPQを導入しました。また、従業員への負担を考えたときに、受検にかかる時間なども適切でした。さらに、再受検をせずにより詳細のコンピテンシーが見られる万華鏡リポートを追加出力できることも魅力的でした。

従業員に受検を依頼するにあたっては、全員に受検してもらえるように「キャリア自律のために自己理解を深めよう」というメッセージを発信しました。説明会を10回開催し動画も用意し、受検してもらえるよう促した結果、2カ月かかりましたが、受検率100%を達成しました。

人材の特徴を可視化。キャリア面談でも活用。

受検結果は、人材データベースシステム上で本人と上司が確認できるようにしました。上司には、部下の理解促進のために年1回のキャリア面談でOPQを活用してもらっています。結果の解釈が難しいという声もありましたが、活用度合いに関するアンケートでは、「OPQを活用して部下と対話する」という段階までは60%の方が実施したと回答しており、概ね肯定的に受け入れられたと考えています。しかし、日頃の行動と照らし合わせてフィードバックをしたり、OPQを用いて能力開発計画を立てるなど、さらなる活用段階まで至っておらず、継続したOPQ自体の理解促進や部下とのキャリア面談、1on1のやり方など実践につなげていくための学びの場が必要と考えており、今後の課題です。現場からチームメンバー全員で結果を共有してフィードバックしあい、相互理解が深まったという嬉しい反応もありましたので、こういった活用事例を共有していくことも重要だと思っています。

人材開発部では、結果データを活用し、現状の従業員の全体傾向を可視化しました。具体的には、全体傾向と開発、営業、保守などの部門ごとの傾向を分析しました。結果は従業員の特徴がよく表れており、例えば、顧客と接する職務はOPQの人との関係の領域が高得点の傾向があり、開発は低得点の傾向がありました。また、考え方の領域はその逆でした。

この結果は経営層に報告しましたが、データでの可視化はあくまでも現状把握です。ここから見えてくる仮説と、会社のビジョン達成に向けて、これから必要な人材を計画的に発掘・育成・配置するために会社がすべきアクションにつなげていくことが、次の課題です。

また、会社の経営戦略に基づいて、来年から新たな人事制度の運用が開始します。その中で、管理職の行動評価に万華鏡のPMCの中から当社として重要視する項目をピックアップし、取り入れています。このように、人事戦略、従業員のキャリア形成支援とアセスメントを有機的に機能させることで、人事戦略として掲げている「個人の成長とともに、会社が成長し、一人ひとりがグローリーで働くことに強い魅力を感じ、誇りを持っている」状態を醸成し、会社の持続的成長につなげていきたいと考えています。

日本エス・エイチ・エルは私たちに寄り添い、課題の背景を踏まえて対応策を検討してくれるパートナーです。他社人事の方との情報交換の機会を提供していただけたのも有難いです。今後もタレントマネジメント推進のため様々なご支援をお願いしたいと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

鈴木 悠太

今後の事業展開を踏まえタレントマネジメントの実施に踏み切り、文字通り全社員データを取得、そのデータを様々な人事施策に活用されている本お取組みはタレントマネジメントの好例ではないかと考えております。「アセスメントデータを余すことなく活用したい」、グローリー様が本お取組みに着手され受検率100%を達成し、全社員データを取得した後に永瀬様から改めてご相談いただいたことを今も強く覚えております。次なる人事施策に向けてアセスメントデータをどう活かせるか、都度ご相談を頂戴してお打ち合わせを続け、様々な施策の検討に携われていることは私自身とても大きな経験となっております。グローリー様の「パートナー」と仰っていただいたことに恥じぬよう、今後も微力を尽くして支援させていただきます。

ゲオからセカンドストリートへの事業ポートフォリオの転換を推進するゲオホールディングス。リユース事業であるセカンドストリート800店舗体制に向けて、人数を確保することに加え、質を担保すべく、活躍する店長の要件定義を行いました。

※本取材は2023年3月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社ゲオホールディングス

事業内容

メディア、リユース、モバイル、オンラインサービス事業

業種

小売業

従業員数

従業員数:5,314名(グループ全体)

インタビューを受けていただいた方

高橋 知寿 様

株式会社ゲオホールディングス
組織開発室 組織開発課 マネジャー

インタビューの要約

成熟したレンタル事業から成長しているリユース事業へと事業ポートフォリオの転換を行うために、リユース事業のセカンドストリートを800店舗まで増やすことを目指していた。
活躍する店長の特徴を明らかにするため、人事データ分析を行った。全社員のパーソナリティ検査結果から10タイプに分類し、そこに評価データを組み合わせて、最終的に3つのタイプを事業部と協議の上、採用ターゲットとして決定した。
人員要望書を作成し、異動・登用プロセスの標準化に着手。
今後の課題はターゲット人財を確保していくこと。また、変化し続ける事業に適応できる組織であり続けるため、未来を見据えた要員計画にも取り組んでいる。

経営戦略、事業戦略に必要な人財を供給する。

私は、2006年4月にゲオにアルバイトとして入社し、店長やエリアマネジャーを経験した後、2017年10月に人事に異動しました。人事への異動当初は、人事データを分析してほしいと言われていましたが、人事本来の役割とは何なのか疑問を持っていました。自分なりに書籍やセミナー、他社の方々と話していく中で、人事の役割は事業に必要な人財を用意すること、という答えにたどり着きました。この時、人事がどのように事業に貢献できるのかが分かって、モチベーションが高まりました。当時、会社としては、リユース事業であるセカンドストリートの800店舗体制を目標として掲げ、事業ポートフォリオの転換を目指していました。そのため、セカンドストリートで活躍できる人財を増やすことを目的にデータ分析を行うことにしました。

経営戦略、事業戦略に必要な人財を供給する。

活躍する店長の特徴をデータ分析で明らかにする。

まずは、どのような人が店長として活躍しているのかを明らかにすることが必要と考えました。日本エス・エイチ・エルのコンピテンシーデザインコースで学んだ、カードソートというインタビュー手法を使って、当時のセカンドストリートの責任者にヒアリングをしてコンピテンシーモデルを作成いたしました。また、OPQのデータを活用して、クラスター分析にて10タイプに分類を行い、タイプ別のハイパフォーマーの人数や割合がどのようになっているのか確認したところ、特定のタイプにハイパフォーマーが多く分布している点や、店長・エリアマネジャー・ゾーンマネジャーと役職が高くなるほど、割合が増える傾向が明らかになりました。事業部と作成したコンピテンシーモデルと比較すると共通点が多く、事業部と協議し今後の採用ターゲットに決定いたしました。

当時800店舗体制を目指し、年間50店舗規模の出店を計画、人事主導の採用は「量」が重視されていた中、「質」の視点を示すことができました。

データ分析の経験を異動・登用プロセスに活用。

2020年4月に人事異動の担当となりました。当時は各部門からどのようなオーダーがあったかといった過去の記録があまり残っておらず、異動に関する相談先も担当者だったり、マネジャーだったり、ゼネラルマネジャーとバラバラなことで人財要件が曖昧だったり、追加で確認が発生しながら人事異動が行われている状況でした。そこで、人員要望書(職務記述書のようなもの)を作成し、なるべく要件に合った人財を各部門に配置できるように環境を整えました。

要件がより明確になったことで、データ分析の経験も活かし、より要件に合った候補者の選出が出来るようになったこと、エラーが発生した場合でも何が良くなかったのか振り返りが可能になったこと、追加確認が少なくなったことにより、業務効率を高めることができました。

2023年2月に発表した通り、セカンドストリートは800店舗を達成し、中期的に1000店舗体制を目指しております。正直に申し上げると、当社に応募してくれる方々からターゲット人財に該当する人を量・質ともに継続的に採用し続けることは挑戦的なことで、今までの母集団形成や選考方法の仕組みを変えていく必要があると考えています。

また、未来の要員計画に取り組んでおり、店舗のみならず、間接部門の重点職種においても、将来どのような人財がどれくらい必要なのか、今どのような人財がいるのか、どのようにギャップを埋めていくのか、課題解決に取り組んでおります。日本エス・エイチ・エルは、相談がしやすく伴走してくれる会社だと感じています。我々の課題を解決するために、今後もご支援いただきたいと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング3課 主任

内田 敬己

高橋さんは、「ビジネス」を前提とした人事を考え実行されているすごい方です。ただ、「考えて実行する」ために、様々な知識を獲得し続け、困難な社内外の交渉調整業務を乗り越えられている様子が垣間見え、ご苦労も多かったのではないかと拝察いたします。こちらからの各種ご提案に対して「そうはいっても実際のところ」をご教示いただけたのは何よりの学びになっております。約10年間、担当する中で数々の貴重な経験をさせていただき深く感謝しております。引き続き、有効な関わり方ができるよう当社として気を引き締めて対応させていただきます。

導入事例

富士ゼロックスの「営業職5000人の“見える化”」を可能にしたタレントマネジメントの成果

富士ゼロックスの「営業職5000人の“見える化”」を可能にしたタレントマネジメントの成果

複合機ビジネスからの転換期を迎えた富士ゼロックス。現状の営業力の特徴と問題点の洗い出しのために、約5000名の営業社員の可視化に挑戦しました。この取り組みは、社内にどんな変化をもたらしたのでしょうか。

※本取材は2020年6月に実施しました。インタビュー内容は取材時のものです。

富士ゼロックス株式会社

事業内容

精密機器、コンピュータ・通信機器、ソフトウエア、印刷・印刷関連

業種

製造業

従業員数

39,825名(2020年3月 連結)

インタビューを受けていただいた方

石濱 健一郎 様

富士ゼロックス株式会社
販売戦略推進部 営業・SE力強化センター センター長

インタビューの要約

統合的なソリューション営業の強化に課題があり、営業職の「科学的管理=人材見える化」と、各自への動機づけ、および営業部門マネジャーによるフィードバック強化と全体の育成体制の整備に取り組んだ。
全営業職のアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を実施し、OPQ活用のためのトレーニングとOPQ分析結果の解釈・育成施策立案のためのコンサルテーションを受けた。
営業職の人材見える化を実現。誰がどのような能力を持っているかが、個別に把握できるようになった。また、メンバーの育成ポイントを、OPQのデータをもとに話し合う風土ができ、組織全体で「育成マインド」が向上した。

社長から「営業がまったく科学的でない」と言われ、 人材の「見える化」をスタート。

2012年から営業部門の人材育成を担当することになり、新人の導入教育からマネジャーの強化、新任部門長の強化と幅広く取り組んでいました。

当時、技術系出身の社長が就任して「営業がまったく科学的じゃない。行きたいお客さんにしか行かないし、情報ツールも脆弱。竹やりで戦わせているようなものだ。」と指摘されました。「まず、今の戦力がどのように分布しているか、問題点は何なのか示せ。」とも。技術系なら特許件数などデータを出せますが、営業は当時5000人くらい在籍しており、実績以外の情報は整理されておらず、どんな行動しているかはわかりませんでした。

そこで戦力を可視化すべく、パーソナリティ検査を使って行動指標をとっていこうというのが、このプロジェクトを始めたきっかけでした。

社長から「営業がまったく科学的でない」と言われ、 人材の「見える化」をスタート。

汎用性の高いパーソナリティ検査OPQと、 相談しやすさが日本エス・エイチ・エルの魅力。

もともと採用で日本エス・エイチ・エルの適性テストを使っており、新入社員のテスト結果データを採用チームからもらっていました。配属時には上司に新人のデータを渡して、一人ひとりの行動傾向とどんな指導やコミュニケーションが向いているかについて説明していました。あのデータが、まさに社長が言う可視化に繋がるんじゃないかとひらめいたんです。 当時、担当のコンサルタントが人事・人材開発担当の社員に対して適性テスト(パーソナリティ検査OPQ)の読み方講座を開いてくれて、営業のトレーナーも参加していたので、OPQのデータをどう読んで、どのように能力開発(新卒に対する個別の対応)に活かすかはイメージできていました。その経験から今回もOPQが使えるんじゃないかと思いました。

日本エス・エイチ・エルの良かったところは、パーソナリティ検査OPQの汎用性が高かったところ。あと、他社ではコンサルタントに相談する度、料金が発生したりするんですが、日本エス・エイチ・エルのコンサルタントは常に自分たちの目線で相談に乗ってくれたところも。自分たちで作成した営業人材タイプの実用性を確認するため、自分で社員のOPQデータを分析したら、各タイプの違いがはっきりと出たんですね。そのときに「このタイプはこんな違いが出たが、違いとして扱っていいか?」「このデータは、どう見たらいいのか?」といった質問をしたのですが、すぐにわかりやすく答えてくれました。あとは、日本エス・エイチ・エルはもともとイギリスの会社なのに、あらゆるアセスメントやコンサルテーションで使われる言葉が私たち日本人にとって自然でわかりやすいものでした。

全営業職にOPQを実施、 個人の行動特徴を知ることで支店内のコミュニケーションが円滑に。

まず、全営業職5000人にOPQを受検してもらいました。その後、OPQの結果を含む「自己認識シート」を開発し、そのシートを部下にフィードバックをする際のやり方を学ぶために上司用の動画を作成しました。フィードバックの良い例と悪い例を入れて、「お前、なんで売れねえんだよ」と頭ごなしに言ったり、OPQを占いのように予言したりするのはダメだと伝えました。コンテンツ制作では日本エス・エイチ・エルにデータの見方を教えてもらいました。ほめればほめるほど動くタイプや具体的な見返りを示さないと動かないタイプとか、得点が高ければいいというわけではない尺度項目とか。そうした助言を参考にしながら、現場へのメッセージをまとめていきました。

現場への通知の仕方は、まず役員から部門長に目的と内容を周知してもらい、我々からはマネジャーに「みなさんの部下に自己認識シートを渡しているのでみなさんからフィードバックしてください」とガイダンスとともに連絡しました。
OPQの浸透をはかるため各拠点に赴いて、評価会議で私たちがOPQを活用したファシリテーションを行いました。会議で「○○君の情報について直属のAグループ長がこう指摘しているが、Bグループ長はどう見ていますか?」と投げかけると、Aグループ長が気付いていない強みや弱みをBグループ長が指摘したり、「せっかくだから、うちのグループの△△君と同行させようか」といった発言が出たりしました。OPQは各社員の行動の特徴を正確に言い当てているという声は多く、「自発的なタイプなので、目標を与えたら計画は自ら考えさせてください」とか、「指示する際には必ず前提となる目的を説明してください」といったコミュニケーションでの注意点は、素直に聞いてもらえました。

全営業職にOPQを実施、 個人の行動特徴を知ることで支店内のコミュニケーションが円滑に。

OPQが便利な点は、個人の行動特徴がきちんと数値化されていることと、本人の回答だから結果を本人が受け入れやすいこと。最近はグループ長より年上の部下も多くなっていて、実績が出ない年上の部下へのフィードバックは難しい。実績から離れて、行動特性や強み、弱みについて話すことでフィードバックのきっかけがつかめたという声が多かったです。 その他、部門長と支店内の優秀人材とそうでない人材の違いを、OPQデータをもとに話し合いました。どんな特徴に違いがあるか、どう対応すれば各人を優秀なセグメントにもっていけるかについて話し合いました。

人材の「見える化」が進み、 マネジャーの意識も大きく変化してきた。

人材の見える化はかなり進みました。営業部門全体で高業績者がどこにいるかわかりますし、例えば「セキュリティ案件に強いメンバーを集めろ。」と言われたら、すぐ適任者をリスト化できるようになっています。 またマネジャーの意識が変わったこともこのプロジェクトの成果です。部下のOPQデータを見ることで、個性にあわせた育成ができるようになったことは大きな成果です。

「自己認識シート」はマネジャーと部下が話し合うきっかけにすぎないのかもしれませんが、それだけでも役割を果たしていると思ってます。話し合いができているチームは評価への納得度が上がり、マネジメントのやり方の変化を少しずつですが実感しています。

今後はビジネスインテリジェンスツール(BIツール)を入れて、現場社員が自ら強みや弱みを踏まえた営業スタイルを考え、実行に移せるようにしたいと思っています。今の「自己認識シート」はこちらがデータを作って提供しているので、現場は決まったデータを見るだけしかできません。自らデータを扱うことで、自らやる気を起こし目標達成に繋がるようにしていきたいです。

今後も日本エス・エイチ・エルには、人材のデータに関する新しい知見やパフォーマンスを改善するために効果的なデータ活用法などの情報提供を期待しています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 取締役

清田 茂

石濱さんからお話をいただいた時、営業プロセスとパーソナリティを結びつけることが営業活動の無駄を減らしていくだろうと直感しました。また、過去の経験から営業成績や営業のKPI、営業スタイルとOPQとの相関分析は、はっきりとした傾向がみられると確信していましたので、この取り組みは効果的なタレントマネジメント施策になると思っていました。
営業のパフォーマンスマネジメントにおいて社員のパーソナリティや営業スタイルを把握することは何よりも大切ですが、実際にOPQを活用している会社はまだ多くありません。何としても富士ゼロックスには成功していただき、その成功モデルを一緒に世の中に広めることができたらと考えておりました。
石濱さんの構想力とオーガナイズ能力のおかげで円滑にプロジェクトを進めることができました。心から御礼申し上げます。

導入事例

複線型キャリアと絶対評価によるスペシャリスト育成。業界をリードする高度ソフトウェアエンジニア集団を目指すデンソークリエイトの人事制度改革。

複線型キャリアと絶対評価によるスペシャリスト育成。業界をリードする高度ソフトウェアエンジニア集団を目指すデンソークリエイトの人事制度改革。

高度ソフトウェアエンジニア育成のための新人事制度を導入した、デンソークリエイトの企業改革をご紹介します。

※本取材は2021年12月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社デンソークリエイト

事業内容

車載組込ソフトウェアに関連する研究開発および先行開発、開発支援ソフトウェア(プロジェクトマネジメントツール、レビュー支援ツールなど)の開発、ソフトウェア技術者教育、プロセス改善・品質監査およびソフトウェア構造改革推進

業種

情報・通信業

従業員数

277名(2022.1.1現在)

インタビューを受けていただいた方

加藤 宏幸 様

株式会社デンソークリエイト
取締役

インタビューの要約

自動車産業におけるソフトウェアへのニーズの急拡大に対応するため、企業改革を実施。「高度ソフトウェアエンジニア集団としてグループ・業界をリードする会社」を目指し、スペシャリスト育成に振り切った新人事制度を導入。
新制度のポイントは、早期のキャリア複線化、キャリアアップ計画の作成、能力基準(コンピテンシー)とスキル基準(ソフトエンジニアとしてのスキル)に基づく絶対評価の人事考課、年功色の薄い処遇など。
コンピテンシー基準は日本エス・エイチ・エルのアセスメントをもとに作成。これに則り毎年の評価者研修を徹底。また、昇格候補者の審査にも同様のコンピテンシーが適用されている。
新人事制度導入以降18名のスペシャリストが誕生し、社員満足度調査の結果も向上。人事考課アンケートや社員満足度調査によるフィードバックを得ながら、現在も制度の改善を続けている。

ソフトウェアニーズの急拡大により会社への期待が増大。高度ソフトウェアエンジニア集団としてグループと業界をリードする会社を目指し、企業改革を実施。

当社は自動車がソフト化する将来を見据え、優秀なソフトウェア技術者の獲得を主な目的として、名古屋の小さなIT企業として誕生しました。ソフト開発を行うのは人であり、人だけが財産の会社です。親会社とは異なる、当時としては思い切った独自路線で、人事の仕組みを作成しました。コアタイムなしのフレックスタイム制、服装は自由、「アトリエ」という担当業務以外を含む組織でのコミュニケーションと自己研鑽などが特色でした。

設立から四半世紀が過ぎ、会社の規模が拡大するにつれ、トップが全員の能力を把握して処遇するようなことはできなくなりました。人材管理、配置・育成をしくみで行うこと、いわゆるタレントマネジメントが必要になったのです。
ソフトウェアに対するニーズの急拡大により、会社への期待が一気に高まる環境変化に対応し、2016年から企業改革を開始しました。目指したのは「高度ソフトウェアエンジニア集団としてデンソーグループ・業界をリードしていく会社」。親会社からの依頼に対応するだけではなく、ひとり一人が主体性を持って考え、提案し、自身のキャリアを描いて切磋琢磨する組織風土を目指しました。

スペシャリスト育成のための新人事制度をスタート。キャリアの複線化、キャリア計画の作成、コンピテンシーとスキル両面の能力開発、絶対評価などを導入。

改革の目玉として、2017年に新人事制度をスタートしました。それまでのトップの関与が強く、個別に判断して決める傾向があった人事から、仕組みで回す総合的な人事制度を構築して導入。人事の方針は、ソフト技術者は労働市場において流動性が高いことを前提とした考え方から、長期雇用・育成重視へと舵を切りました。
新制度のポイントは、スペシャリスト育成のための早期のキャリアの複線化と、それに付随するキャリアアップ計画の作成。そして能力基準(コンピテンシー)とスキル基準(ソフトエンジニアとしてのスキル)の作成、これに基づく絶対評価の人事考課と、年功色の薄い処遇などです。

スペシャリスト育成のための新人事制度をスタート。キャリアの複線化、キャリア計画の作成、コンピテンシーとスキル両面の能力開発、絶対評価などを導入。

新人事制度の導入に際しては、日本エス・エイチ・エルの協力のもと、評価・育成の根幹となる人材要件(コンピテンシー)を設計しました。このコンピテンシーに基づき、毎年の評価者研修や、昇格候補者の審査等を行っています。また「万華鏡30」を全社員が継続的に受検し、本人と上司が結果を共有の上、キャリアアップ計画作成や能力開発に活用しています。昇格候補者は別途アセスメントを受検し、その結果について日本エス・エイチ・エルのコンサルタントからフィードバックを受け、上司と本人と人事の三者で共有の上、行動改善に役立てています。 ソフトウェア技術者は科学的なアプローチを好むため、能力開発にも計測・データ解析に基づく根拠を示すことは非常に有効です。言葉だけよりも説得力が高まり、行動改善に繋がる可能性が高いと考えています。

新人事制度の成果は、活躍するスペシャリストの誕生、社員満足度の向上。

複線型人事は、会社ニーズだけでなく社員のニーズにも合致していましたので、歓迎されました。管理職ではなく専門職としてキャリアを積みたい人材も数多くいます。結果として18人のスペシャリストが誕生しました。その認定や昇格は、課題発表やアセスメントデータにより吟味して決定しているため、認定・昇格後はほぼ期待通りに活躍してくれています。会社に対するグループ内の評判も向上してきていると感じています。

また、毎年行っている「社員満足度調査」の結果では、新人事制度導入後、人事制度・育成制度に対する満足度は着実に向上しました。会社全体への満足度を示す「総合満足度」は、約50%から70%まで大幅に向上しており、人事の施策は間違ってはいないと自負しています。

新制度の導入は終わりではなく、始まりだと思っています。特に人事制度の要となる人事考課制度については、毎年評価者研修を実施し、評価の行い方と目線を統一しています。また運用の実態を把握するため、人事考課アンケートや社員満足度調査の結果を検討し、評価者やフィードバック者の変更、業績評価の簡素化など、試行錯誤を繰り返しています。

今後の課題は、実務的には、複線化したスペシャリストコースの拡充と認定方法の改善。先が見通し難い世の中で、キャリア形成の仕方をどう考えるかも課題です。また、どちらかと言えば内向きでモノを言いたがらないソフト技術者の意識を変えて、活発な議論が起きる企業風土へと改革を目指すべく、新たな打ち手を考えています。最終的な目標は、デンソークリエイトを日本のソフトウェア産業を代表する会社にし、社員が誇りを持って笑顔で毎日働けるようにすること。人事制度はそのための手段と考えています。

日本エス・エイチ・エルは、グローバルの膨大なデータと知見を持ちながらも、自社の理論を押し付けずに、常に同じ目線に立って寄り添ってくれる点がありがたいです。企業の信頼度だけでなく、適性検査の正確さ、コンサルタントの方の力量も大きいです。長年実施しているフィードバック面談は非常に好評で、今や欠かせない年中行事になっています。これからも宜しくお願いします。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

改正 晃大

高度なスペシャリストを育成するための先進的な人事制度やタレントマネジメント施策はIT業界のみならず、日本の産業をリードする取り組みです。この様なタレントマネジメント施策の設計と運用に深く関わることができ、大変光栄です。「新制度の導入は終わりではなく、始まり」という言葉の通り、制度は導入することが目的ではなく、制度の運用を通じて人が育ち、組織を発展させることが目的です。これからもデンソークリエイト様が目指す「日本のソフトウェア産業を代表する会社」に向けて、コンサルタントとして共に試行錯誤し、お力になりたく存じます。

中部電力グループ唯一のIT企業として、「エネルギーの安定供給」をシステムインテグレーターとして支える中電シーティーアイ。電力自由化等によって事業環境が変化し、DXのさらなる推進のために社員一人ひとりのキャリア形成を支援する人事制度改革を行いました。

※本取材は2023年8月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社中電シーティーアイ

事業内容

アプリケーション開発保守サービス、インフラセキュリティサービス、解析サービス、大量データ処理サービス、IT運用サービス

業種

情報・通信

従業員数

1,271名(2023年6月1日現在)

インタビューを受けていただいた方

林 達也 様
正村 宣美 様

株式会社中電シーティーアイ
経営管理本部 人事部 採用・人事企画グループ マネージャー(写真右)
様経営管理本部 人事部 採用・人事企画グループ 専門課長 (写真左)

インタビューの要約

サービスの高度化に合わせて、人材の配置や育成の仕組みを変革すべく、企画から1年で人事制度改革などの様々な施策の運用を開始。
社員のキャリア形成を支援するために、社長・役員も含めてアセスメントを実施。結果の見方研修や説明資料により社内への浸透を促進。
取得データは日々のマネジメントからプロジェクトへのアサイン、全社や部署の特徴の可視化など人事施策の様々な場面で活用。
一気呵成に行った人事施策について、社員の反応や声をしっかりと聞きながら定着させていく。

DX推進のため、人材の流動性を高め、キャリア形成を支援する。

電力自由化により、一層の経営効率や新規サービスに取り組むことが求められるようになりました。その中でITの力は戦略上欠かせません。DXを一層推進する必要があります。これまではどちらかといえば受け身でシステムを作る仕事がほとんどでしたが、より高度な仕事をすることが求められるようになり、仕事の仕方そのものを変えなければいけないという問題意識がありました。組織として人員をなるべく高度領域の仕事にシフトし、保守運用の仕事を海外を含めて外注するという大改革を行うことになり、人の配置育成の仕組みも見直しました。まず、IT技術者としてどのような人を求めるのかを定義し、人事制度と連動する高度IT技術の認定制度を構築しました。次に、個人のキャリア形成支援のために、社員向けにアセスメントを実施しました。さらに、従来は人事異動が硬直的でしたが、流動性を高めるために社内公募制やFA制などを導入しました。また、各職場において年度当初に掲げた業務執行計画を確実に達成させるために、人事評価の運用にクラウドを利用したシステムを導入し、上司と部下のコミュニケーションによる目標管理の手法をより強化しました。

現社長は人事業務の経験も深いため、一体となって変革を進め、21年度に様々な施策を企画して22年度に運用開始することができました。

DX推進のため、人材の流動性を高め、キャリア形成を支援する。

自己理解促進のため、アセスメントを実施。経営層が積極的に受検。

社員一人ひとりが成長することで会社も成長のチャンスが増えます。しかし、若手社員はキャリア形成の道筋やお手本を求めているものの、お客様の課題解決のために必要となるITスキルの変化が激しく、上司も経験がない仕事をしているために指導が難しい状態でした。そこで、人事アセスメントを活用することを考え、既に採用で使用していた日本エス・エイチ・エルのアセスメント、OPQを社員に実施しました。当初は若手IT人材のみを対象とすることを考えていましたが、社長が「対象者の上司が結果の扱い方をよく理解する必要がある」と、自らも率先して受検し、ほかの役員や管理職も積極的に受検してくれました。合計1,138名が受検し、受検率は約90%でした。受検を依頼する際には、「自身の適性を客観的に把握する」という目的を丁寧に説明するよう心掛けました。公募制、FA制度にチャレンジする際の自己PRに活用できることや、現状社内にあまり存在していないコンサルティングやプロジェクトマネジメントなどの業務に対する適性を知るのに役立つこと、今後も数年に1度、定期的に実施する予定であることを、社員の皆さんに伝えました。

1on1から、アサインプロセス、人材可視化まで広範囲に活用。

取得したデータは目標管理のクラウドシステムに格納し、本人とその上司が結果を見ることができます。上司は部下の職種適性などを見て、キャリア形成のアドバイスや1on1ミーティングの材料などに活用してもらっています。結果の解釈の仕方については、解説動画を社内ポータルに用意しており、70%弱の方が視聴済みです。加えて、上司向け、全体向け、職種適性の能力開発ガイドなどの資料も配布しました。人事主導の施策ゆえ、結果の扱われ方に対する不安を払拭するためにも、なるべく多くの情報を提供しました。

客観的な物差しということもあり、結果はおおむね前向きに受け止められています。また、部署内でお互いに結果を共有することもあります。

人事側では、人事異動やプロジェクトへのアサインを検討する際、1つの参考材料として活用しています。人事内ではかなり浸透してきており、何か判断をする際に「(OPQの)結果はどうなっているの?」という声が聞こえてきます。また、全社あるいは部署ごとの特徴を把握するためにデータ分析も行い、実感を客観的なデータで再確認することができました。

また、これまでは人事異動が少なくずっと同じメンバーと仕事をしてきましたが、今後人材が流動化すると初対面の人々とプロジェクトを進めていくことが増えます。その際OPQという共通言語があれば、コミュニケーションも円滑になるのではないかと思います。

昨年は、盛りだくさんの人事施策を、短期間のうちに今までにないスピードで実施しました。社員にとっても目まぐるしい変化であったのではないかと思います。今後は、社員の反応や声をしっかりと聞き、必要なものを見極めて定着させていくことが大事だと思っています。社員が忖度せずに率直に意見を表明できる風通しの良さの表れなのか、毎年実施している社員の満足度調査では、人事評価結果に対して厳しい意見もありました。社長は常々「社員に何も言ってもらえなくなったら終わり。言ってくれるうちが華」と言っています。改革後の満足度は微増となりましたが、今後もアンケートなどで社員の声に気付くことができるようにしたいです。

日本エス・エイチ・エルは私たちのパートナーだと思っています。「言ってもらえなくなったら終わり」という言葉はどのような関係性にも言えることですので、今後も様々なアドバイスを期待しています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

改正 晃大

「社員一人一人がキャリアについて考えるきっかけを与えたい」という思いの下、細心の注意を払い進めていたことをとても印象深く覚えております。受検結果の開示だけでなく、OPQの解釈方法や活用に関する案内、部門ごとの分析結果の開示など、キャリアについて考えるための情報提供を惜しみなく行っており、皆様の思いがあって初めて実施できた取り組みだと考えております。これからも「パートナー」と言って頂けるよう、微力ながら尽力させて頂きます。

導入事例

タレントマネジメントシステム×適性検査データの広範的活用。ブラザー販売の人材可視化プロジェクト。

タレントマネジメントシステム×適性検査データの広範的活用。ブラザー販売の人材可視化プロジェクト。

人事データ・適性データをタレントマネジメントシステムに統合し、キャリア面談、採用基準作成、プロジェクトへの抜擢など様々な活用をするブラザー販売の取り組みをご紹介します。

※本取材は2021年11月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

ブラザー販売株式会社

事業内容

インクジェット複合機、モバイルプリンター等情報機器、家庭用ミシン等の商品企画・広告宣伝・営業・営業企画・アフターサービス等、ブラザーグループの国内マーケティング事業

業種

卸売業

従業員数

347名(2021年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方

山内 優 様
渡部 しのぶ 様
舩橋 優太 様

ブラザー販売株式会社
人事総務部 人財戦略グループ シニアマネージャー(写真中央)
人事総務部 人財戦略グループ チームリーダー(写真左)
人事総務部 人財戦略グループ(写真右)

インタビューの要約

ダイバーシティ推進と人事業務効率化のために、タレントマネジメントシステムを導入。いわゆる人事データのみならずポテンシャル適性データも統合して全体最適な人事を行うべく、「万華鏡30」の全社員受検を実施。
適性データをタレントマネジメントシステムで統合し、社員が自身のポテンシャルや似た特徴を持つ社員の分布を把握できるように構築した。またキャリア面談での上司とのトークテーマとし、適性データを見ながら能力開発や能力発揮の支援に活用できるようにした。
勉強会のメンバーの推薦や、採用基準の再設計にも適性検査データを活用。ローテーションや次世代リーダー発掘に生かすため、今後は質的なディスカッションを重ね、各部門で求める人材像を策定する予定。
目指すのは、受け身ではなく主導的な立場で提案できる人事。人事が能動的に動くためのツールとして、今後も人材データを活用していきたい。

ダイバーシティ推進において、大局的視点の必要性を実感。 散在する人事データを統合するため、タレントマネジメントシステムを導入。

もともとダイバーシティ推進において、個人の特性を生かし全社的に最適な人事判断をするための材料が不十分であることに問題意識がありました。当社内の人材を俯瞰することができないと、どうしても局所的な視点から人事異動やリーダーの抜擢が行われてしまう懸念があります。本当のダイバーシティを実現するためにどうすればいいかと考えていたところ、タレントマネジメントシステムが盛り上がりを見せ、興味を持ちました。

様々な人事データが散在しており、業務効率化の観点でも人事データを統合したかったところに改善活動推奨の追い風もあり、タレントマネジメントシステムの導入を決めました。タレントマネジメントシステムをローテーションなどの人事施策に活用するためには、人事データだけではなく、ポテンシャルやモチベーションなど適性データも統合する必要があります。そこで、直接雇用の全社員に対して万華鏡30を実施しました。

ダイバーシティ推進において、大局的視点の必要性を実感。 散在する人事データを統合するため、タレントマネジメントシステムを導入。

最初は新しいシステムの導入にハードルがあるのではないかと思いましたが、社内で反対はまったくありませんでした。折しもコロナ禍でリモートワークが始まり、DXやデータ活用の機運が高まっていたため、とんとん拍子でプロジェクトが進みました。

全社員の適性検査データをタレントマネジメントシステムに統合し、 いつでも自分の情報を見られるように。
コロナ禍で減ったフィードバックの効果も期待。

直接雇用の全社員に対して万華鏡30を案内し、約95%の社員が受検してくれました。受検に際して、「全社的な適材適所を実現するために、個々人の職務に関連する行動スタイルを可視化したい。今後は採用基準やローテーション、育成計画のためにデータを活用する。」という趣旨の案内をしました。 受検結果をタレントマネジメントシステムに取り込み、本人と本人の上司、および事務局のみが結果を見られるようにしました。自分のポテンシャル値が領域ごとにレーダーチャートで表示され、似た波形をもつ社員を把握できるようにしました。加えて、自分の能力開発ニーズに基づいて上司とキャリア面談をできるようにしました。

高い受検率の背景には、コロナ禍の影響もありました。リモートワークが始まり、他者からフィードバックを受ける機会が減りました。その中で、「自分はどのような人間なのだろう」「どのような強み・弱みがあるのだろう」ということを見つめなおしたいというニーズがあったのだと思います。

キャリア面談、特定のプロジェクトへの抜擢、採用基準設計など 広範囲にデータを活用。
今後はディスカッションも併せ、求める人材モデルを作りたい。

タレントマネジメントシステムに集積したデータは、職務を離れて上司と価値観やキャリアなどをディスカッションするキャリア面談に活用されています。本人が自分の結果をもとに、「発揮できている能力」「もっと発揮したい能力」「克服したい能力」「工夫で乗り切りたい能力」などを選び、その情報をもとに上司と面談できるようにしました。キャリアを描く際に、科学的に推測された自分の強み・弱みの情報を活用できることは、社員にとってメリットが大きいと思います。

また、DXに関する自主勉強会の企画が持ち上がった際に、万華鏡30のあるコンピテンシー群の数値をもとに、若手社員の中から推薦者を抽出してみました。浮上したメンバーは事務局のイメージした人材像に近く、前向きな人ばかりでした。人材を探そうとなったときに、特定の条件ですぐに抽出できることの利便性を感じました。

キャリア面談、特定のプロジェクトへの抜擢、採用基準設計など 広範囲にデータを活用。 <br>今後はディスカッションも併せ、求める人材モデルを作りたい。

さらに、集積したデータをもとに、採用基準の見直しも実施しました。データを使ってローテーションや次世代リーダーの発掘も行う予定でしたが、これはサンプル数の問題もあり、まだ着手できていません。しかし最近、コンピテンシーの書かれたカードを使ったディスカッションの方法(カードソート法)をご提案いただき、まずは3年目に求める要件、DX人材に求める要件、そしてマネジャーに求める要件とディスカッションを重ねたところ、共通した人材像が見えてきて手ごたえを感じました。今は各部門で求める人物像や次世代リーダーの人物像を明確化し、採用や育成にフィードバックしていこうと思っているところです。

適性検査データの解釈には注意すべき点もあります。たとえば、ある部門に求める人材像を定義しても、すべてを満たす人材はほとんどいません。理想的な人材像を定めた上で、その中での優先順位や、能力開発で伸ばしやすい部分、素養として持っているのが望ましい部分などを細かく選定しておくことが、運用上必要でしょう。また、個々人がデータをどう解釈するかも重要です。若い社員が「このデータが私のすべて」というような解釈をしてしまうと、自己認識を必要以上に固定化するリスクもあります。結果はあくまで現時点のポテンシャルであって、自分に限界を定めないように啓発することも併せて必要だと思います。

上司が部下の適性データを解釈できるようになるためのサポートも必要です。リモートワークで上司が部下を直接見る機会が減ったため、データの重要性は高まっています。また、コンピテンシーに関する理解は、今後求める人材像をディスカッションしてゆく中でも必要な土台になると思われます。

今までの大きな問題は人事が受け身だったこと。今後は情報を出してと言われて開示するのではなく、主導的な立場でデータを提供して判断を仰ぐ、もしくは人事から提案するべきと考えます。人事が能動的に動くためには集積したデータが必要です。タレントマネジメントシステムには、適性データ以外にも様々な人事データが統合されていますので、それを概観してタレントマネジメントの判断材料にしていきたいです。

日本エス・エイチ・エルには適性検査の見方や他社の事例など、今後もご提案をいただけると助かります。打ち合わせで様々なディスカッションができるのを毎回楽しみにしています。これからも良き伴走者になっていただけるとうれしいです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

松波 里奈

人材可視化から人材データ分析、活用支援までを行う重要なプロジェクトをご依頼頂いた際には、ワクワクすると同時に身の引き締まる思いで毎回の打合せに臨んでいました。 お打合せでの議論においても、当社からのご提案について多様な観点でご質問を頂くなど、社員のポテンシャルを引き出したい、より組織を活性化させたいというお三方の強い思いを感じさせる時間でした。現有社員の特徴を踏まえて、必要とされる人材要件を定義し、採用基準を一新できたことは、皆様と一緒に作り上げた一つの成果だと思っています。一方でタレントマネジメント施策には終わりがなく、よりよい人材配置や人材育成を実現する為に次の議論をスタートさせて頂いていることは、大変光栄に感じております。よき伴走者として頼って頂けるように、私自身も尽力して参ります。