経営戦略を実現するための新たな人事組織を立ち上げた積水ハウス。
次世代を担うビジネスリーダーを計画的・戦略的に育成するタレントパイプライン構築の取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

積水ハウス株式会社

事業内容

戸建住宅事業、賃貸住宅事業、建築・土木事業、リフォーム事業、不動産フィー事業、分譲住宅事業、マンション事業、都市再開発事業、国際事業

業種

建設業

従業員数

16,616名(2020年4月1日現在)

インタビューを受けていただいた方

安信 秀昭 様
増田 貴久 様

積水ハウス株式会社
人事部 人材開発室 室長(写真右)
人事部 人材開発室 課長(写真左)

インタビューの要約

経営戦略を実行するために計画的なビジネスリーダーを育成するという課題があった。
次世代リーダー発掘プログラム「SHINE! Challenge Program」を創設し、タレントパイプラインの構築に着手した。日本エス・エイチ・エルのアセスメントを用いて、高業績かつ光る人材を効率的に選抜できた。
経営戦略の実現のため、人事制度の変革にも取り組みたい。
今後は採用や育成含めて、様々な場面で日本エス・エイチ・エルのアセスメントを活用していきたい。

人事戦略を実行するため、タレントパイプライン構築と人事制度変革に着手。

これまでオペレーショナルな業務が中心であった人事部を、10年後、20年後を見据えて経営戦略に沿った人事戦略を担う専門組織にすべく、人材開発室という新たな組織が作られました。様々な人事課題を検討する中で、まずは①タレントパイプラインの構築と②職能資格を中心とした年功序列的な人事制度の変革を、大きな柱として取り組むことになりました。日本エス・エイチ・エルに相談したのは、このタレントパイプラインです。


社長をはじめ、取締役・執行役員、そして一番のキーポジションである支店長のサクセッションプランニングが課題です。私たちは、中堅・若手クラスの中から将来のビジネスリーダーになれるような人を早期に発掘して計画的に育成する、人材プールの作成を経営層に提案しました。
この課題の背景には、過去の反省がありました。営業中心の会社ですから、これまで支店長になる人はどちらかというと業績重視でした。そこで、マネジメント能力や人格など、より多角的に評価を行い、計画的に人材を育成し、登用する必要があると考えました。

人事戦略を実行するため、タレントパイプライン構築と人事制度変革に着手。

次世代リーダー発掘プログラム「SHINE! Challenge Program」

私たちの組織が発足する少し前に、支店長養成研修「経営塾」がスタートしました。支店長や部長になる登竜門のようなもので、受講生の選抜方法は上長推薦です。1年間でリベラルアーツや行動経済学、DX、イノベーションなどを大学教授、外部有識者から学びます。幅広く勉強してもらい、その成果を支店経営に活かしてもらうことがねらいです。

続いて、35歳以下の選抜研修を新たにスタートさせました。「Sekisui House Innovators and Entrepreneurs」の頭文字をとって、「SHINE! Challenge Program」と名付けました。15名限定で約1年間、多くの外部講師や社内の最先端にいる人からインプットを得ます。普段実務に専念している人たちに、視野を広げ、視座を高めてもらい、将来の積水ハウスの価値創造を考える機会を提供しています。全体を通して外部コーディネータに伴走してもらいながら、得た知識をどう活かすかアクション・ラーニングを行います。最終的には、研修を通じて得た経営課題からビジネスプランを作成し、経営陣の前で発表します。参加者からは、日常とは異なる視座で会社を考える機会が得られた、他の参加者からよい刺激が得られたとの声が寄せられました。

アセスメントで光る人材をどう見つけるか。

「SHINE! Challenge Program」は名前の通り、イノベーターやアントレプレナーの素養がある人を探して輝かせることを目的としています。そのイノベーター、アントレプレナーをどのように見つけるのかについて、日本エス・エイチ・エルのコンサルタントに相談して、選抜方法を決めました。

基本的に人材開発室がプログラム参加者の15人を選んでいます。候補者は30歳前後から35歳ぐらいまでの社員約1,100名です。選抜基準は2つ。一つは人事考課などの実績、もう一つはポテンシャルです。日本エス・エイチ・エルのタレントアセスメント(知的能力検査、パーソナリティ検査OPQ、モチベーション検査MQ)を使ってポテンシャルを評価しています。特にOPQから算出されるマネジメント能力やアントレプレナーのポテンシャルに注目しています。

選抜基準の2つの評価を縦軸と横軸にとり(実績を縦軸、ポテンシャルを横軸)、各軸を3つのレベルに分けることで、9つの区分(9ボックス)を作り、右上の区分に入る人から15人を選んでいます。

アセスメントで光る人材をどう見つけるか。

日本エス・エイチ・エルには採用のアセスメントを長年提供してもらっており、何度も尺度や基準の見直しの相談をして、真摯に協力してもらいました。「SHINE!Challenge Program」の軸を作りたいとなったときに、他のアセスメントも検討しましたが、長年のデータ分析と活用の実績でわかったアセスメントツールの信頼性と妥当性の高さ、カスタマイズの柔軟性から日本エス・エイチ・エルのアセスメントを使うことに決めました。その後、担当コンサルタントと時間をかけて打ち合わせをしながら、選抜手法や評価軸の構造などを決めていきました。

採用でも引き続きご協力いただき、さらに進んだ人材データ分析を行いたいと思っています。また、育成の面では、現場からアセスメント結果をうまく使いたいという声もあがっています。職場風土を変革するために、上下関係や社員同士のコミュニケーションを改善したり、ダイバーシティを推進するため、アンコンシャスバイアスに気付かせたり、といった取り組みを進めています。その中でOPQ、MQを自己理解や他者理解の促進に使いたいと考えています。読みやすく、あつかいやすいレポートやユーザーインターフェイスでアセスメント結果を本人やマネジャーにフィードバックできるとありがたいですね。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 大阪オフィス 部長

岡松 太郎

中堅、若手社員の早期選抜は、今や多くのクライアントで取り組まれている重要テーマですが、SHINE! Challenge Programはオンラインアセスメントデータの活用先端事例と思います。自社で保有する業績指標(パフォーマンス)とSHLハイポテンシャルモデル(グローバル経営リーダーに必要な資質)を掛け合わせた人材選抜は、客観性と予測精度を担保できる仕組みと言えます。
また、入社時と現在でのアセスメントデータの変化や、業績、昇格スピード等の各種パフォーマンス指標との関連性など、多岐にわたり検証しながら進める機会をいただきました。
20年近く当社サービスをご利用いただいておりますので、私よりも当社サービスにお詳しい方々ですが、今後も全社的にご活用いただけるよう、支援させていただきます。

全社員にアセスメントを実施し、ポテンシャルやコンピテンシーの客観的情報をデータベース化。
あらゆる人事施策にアセスメント情報を活用している、理想科学工業の取り組みを紹介します。

※本取材は2021年3月に行いました。ご担当者の役職およびインタビュー内容は取材時のものです。

理想科学工業株式会社

事業内容

高速カラープリンターオルフィス、デジタル印刷機リソグラフのハード及び関連機器、消耗品の開発・生産・販売・保守を中心としたプリントワークソリューション

業種

機械製造業

従業員数

1,750名〔グループ全体 3,480名〕(2020年9月30日現在)

インタビューを受けていただいた方

小野 葉月 様

コーポレート本部 人事部 人事企画課 課長

インタビューの要約

人材情報に客観的な視点を取り入れるため、全社員にアセスメント(万華鏡30)を実施し、コンピテンシーやポテンシャルの情報をデータベース化するプロジェクトが発足。
全社員のコンピテンシーやポテンシャルの情報は、「プロフィールシート」として人事システム上で管理。海外マネジャー候補者プールや次世代リーダー候補者プールの作成、選抜型研修参加者の選定など、あらゆる人事施策にアセスメント結果を参考情報として活用。
今後実施したいことは、コンピテンシーとパフォーマンスに加えビジネススキルを加味した3軸での人材配置と、「スクリレ」をはじめとしたスタートアッププロジェクトへのメンバー選定にアセスメントを活用すること。

「人が人を評価する時のバイアス」を是正するため、 全社員のポテンシャル情報をデータベース化したい。

私は直販営業として入社し、営業支援スタッフ、広報、開発と様々な部門を経て、人事部に来ました。人事部では人事企画課長として着任し、人事課題を解決するための施策に着手しました。その中の一つである「全社員にアセスメントを実施し、ポテンシャル情報をデータベース化する」施策は着任後数か月で実施しました。当時、様々な人事上の課題(部長候補者の可視化など)がありましたが、課題の根本的な問題は、人が人を評価したり、登用したりするときに生じるバイアスを最小限に抑えなければならないというものでした。人が人を評価する際には、恣意的な判断や認知による歪みが必ず生じるので、それだけに頼るとどうしても不公平感が出てしまいます。人材評価を客観的に行うためには、アセスメント情報を活用する必要があります。アセスメント情報100%でもなければ、人の目100%でもない、自社にとってちょうどよいバランスに調整して、人材を評価し、育成することを目指しました。

「万華鏡30」の全社員受検を実施。

この考え方に基づき、当社の役員含め、全社員がパーソナリティアセスメントOPQ「万華鏡30」を受検しました。受検結果は賞与評価とは関係がないこと、受検結果による不利益はないことを説明して実施しましたので、社内からの否定的な反応はありませんでした。万華鏡30のフィードバック機能を使って、受検後すぐに自分の結果を見られるようにしました。今でも新入社員や中途入社社員にアセスメントを実施して、全社員のデータを維持しています。

全社員が受検した後、日本エス・エイチ・エルに職種別・階層別に社員のコンピテンシーとパーソナリティの傾向を分析してもらいました。データ分析の結果と自社のイメージには乖離がなく、納得感をもって受け入れることができました。たとえば営業職におけるハイパフォーマーの傾向なども、他社と異なる当社の事業環境が表れているな、という発見がありました。

「万華鏡30」の全社員受検を実施。

人事システム上でプロフィールシートとして管理されるほか、 本部ごとの人事施策の参考情報に。

万華鏡30の結果は、人事システム上にプロフィールシートとして格納されています。プロフィールシートには、顔写真、個人情報異動履歴、研修履歴などの人事データ、万華鏡30の結果(マネジャーポテンシャル、プロフェッショナルポテンシャル、アントレプレナーポテンシャル、チームタイプ)等が載っています。プロフィールシートは、役員とHR部門の部長、人事部の一部の社員にしか公開されていません。この結果は、選抜研修の参加者選定、海外マネジャーのプールの作成、次世代リーダー育成のための選抜などの参考にしており、人事場面で活用されています。
また、万華鏡30の結果は、各本部のHRスタッフのミーティングの中でもご説明しており、本部内での登用や異動の際などに、適宜参考情報として活用されています。

人事部が主催した、選抜型の女性管理職育成プログラム「エンカレッジ研修」。

万華鏡30の活用方法のうち、人事部で主催した研修についてご紹介します。女性活躍推進の一環として、「エンカレッジ研修」という、女性の非管理職者を対象にした選抜型の研修を、過去に2度実施しました。参加者候補は、万華鏡30のマネジャーポテンシャル得点とパフォーマンス評価点の2つの基準で選定しました。人事部が選出した参加者候補をベースに各本部が参加者を決定しました。

この研修の特徴は体験型という点です。自分が企画したプロジェクトを現場でやってみるというのがメインプログラムです。たとえば、自分の関わっている業務の改善プロジェクトを立ち上げ、プロジェクトリーダーとして業務改善を主導しました。研修で集まる時は、プロジェクトの情報共有、参加者間で相談や相互のアドバイスを行いました。期間は約2年間。比較的若い参加者や希望者には現職の女性管理職等がメンターとしてつき、月1回程度のミーティングを行いました。 実際に、参加者数名がマネジャーに登用されました。万華鏡30を用いてマネジャーポテンシャルを勘案した選抜を行ったことで、パフォーマンス評価だけの選抜よりも予測精度が上がったと思っています。

今後は、より効果的な人材配置を行うために、コンピテンシーとパフォーマンスだけでなく、ビジネススキルを取り込んだ3軸を人材情報として活用していきたいです。コンピテンシーとスキルが一部関連する部分もあると思いますが、基本的なビジネススキルをいくつか柱にして整理し、人材配置を行う必要性を感じています。

もう一点は、人間同士の相性に着目して、シナジーを生むチームの形成を行いたいと思っています。当社は新規事業「スクリレ」を立ち上げ、今年の4月よりサービスを開始します。このようなスタートアップの事業を、どのようなメンバーに任せるかの参考情報として、人材データを使いたいと考えています。また、各職務に適した人材を登用するだけではなく、メンバー同士のシナジー効果をデータで予測できるといいですね。

日本エス・エイチ・エルには、万華鏡30だけではなく、適宜いろいろなサービスをご提供いただいています。今後も何か当社に適したアセスメントツールがあれば、ぜひご紹介いただければと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 マーケティング課 課長

水上 加奈子

まだタレントマネジメントという言葉があまり一般的ではなかった7年前、当時の人事課題をご相談いただき、全社員のアセスメント受検プロジェクトをご提案、実施することになりました。背景には、事業環境の変化による危機感と今いる従業員の方のパフォーマンスを最大限に生かしたいという強い想いがあったと記憶しています。役員の方々を始め、全従業員の方にご協力をいただき、様々な観点で分析を行い、私自身も大変勉強になりました。一過性のプロジェクトとして終わらず、7年たった今もアセスメントデータの価値と意味を適切に理解し、様々な場面で継続してご活用いただいていることを、何よりも嬉しく思います。今後も、理想科学工業の様々な人事施策の力になれるよう、精一杯支援を行ってまいります。

オフィスオートメーションからデジタルサービスの会社へと変革を続けるリコー。
なかでも新規事業創造をミッションとする組織のチーム作りに科学的な知見を活用すべく、調査研究に取り組みました。

※本取材は2023年10月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社リコー

事業内容

デジタルサービス、印刷および画像ソリューションの提供

業種

電機機器

従業員数

81,017名(連結、2023年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方

入佐 孝宏 様
稲井 麻貴 様

株式会社リコー
コーポレート上席執行役員 、リコーデジタルサービスビジネスユニット プレジデント、前 リコーフューチャーズビジネスユニット プレジデント (写真左)
リコーフューチャーズビジネスユニット インキュベーションセンター 事業創造室 BRグループ リーダー、HRBP長 (写真右)

インタビューの要約

デジタルサービスの会社へ変革を進めるリコーは、カンパニー制への移行に際して新規事業創造を組織的に行う「リコーフューチャーズ(RFS)」ビジネスユニットを設けた。
RFSの8つの事業は事業開発の進捗が異なり、また、リーダーのキャリア・人物タイプもそれぞれに特徴がある。組織能力を最大化する、リーダーを中心とするチーム編成への問題意識を持った。
リーダーのタイプによって組織がどのような影響を受けるかをパーソナリティ検査結果とエンゲージメントサーベイスコアを用いて調査した。
パーソナリティ検査結果は「顧客価値の創造をリードする人材・事業創造型のリーダー」としてポテンシャルの高い人材を発掘する際に役立てている。

社会課題を解決する新規事業を生み出す組織、リコーフューチャーズ

リコーは2020年にデジタルサービスの会社への変革を宣言し、2021年には経営機構をカンパニー制へ移行させるとともに、人事面ではジョブ型人事制度の導入を決定しました。現在、グループ本部と5つのビジネスユニットがあり、各ビジネスユニットが事業企画・商品企画から開発設計・生産・販売まで一気通貫した機能を担うなかで自立的にビジネスを運営しています。人事機能においてもHRBPとしてそれぞれのビジネスユニットに所属しているメンバーがいます。

リコーフューチャーズビジネスユニットは、リコーの強みである独自の技術を活用したイノベーションを通じて、新規事業を実現させつつ社会課題を解決していく組織です。現在8つの新規事業を手掛けています。もともとリコーには新しいことに取り組む風土があり、各々で活動をしていました。これら新規事業のうちの8つをひとつのビジネスユニットのなかで運営することで、ポートフォリオマネジメントを進めています。各事業の期待値や事業進捗に応じて、予算含めた投資のメリハリをつけ、事業開発に関する厳しい議論を正しく行うことができるようになりました。

社会課題を解決する新規事業を生み出す組織、リコーフューチャーズ

チームの能力を最大化するメンバーの組み合わせを科学的に検討する

8つの事業を見ていると、各チームの特徴が出てきます。例えば、コミュニケーションが得意なリーダーのチームはまとまっているけれどもアイデアが生まれにくい、かたやクリアな世界観を表現することができるリーダーのチームはまとまりが欠けているなど。これらのチームをマージすることが出来たら強力なチームになるだろうと常々考えておりました。

また、新規事業を0から1にする段階と、1から10にする段階とでは求められるリーダーシップが異なるのではないか、またリーダーが必要な経験や能力を備えていない場合には、リーダー及びリーダーを支えるメンバーのチーミングによって補う必要があるのでは、とも考えました。加えて新規事業は未経験の領域に挑むため、経験だけではなく各個人の資質も重要な要素になります。

どのようなメンバーの組み合わせであればチームの能力を最大化させられるか思索しているなかで、別のプロジェクトでリコー国内従業員約3万人を対象に実施したエス・エイチ・エルの パーソナリティ検査万華鏡30のデータを活用できないかと思い立ちました。各事業センターのリーダー数名の万華鏡30を詳しく解説していただいたところ自分が経験を通じて培った「人への見立て」と符合しており、感覚的ではなく科学的に人の資質は捉えられるだろうと確信しました。

リーダータイプとチームのエンゲージメントの関係性を明らかにする

社員直属上司である課長層とその1つ上の階層である室長層の社員の万華鏡30の結果データと2021年に実施したエンゲージメントサーベイの組織別のスコアとを用いて、統計分析を行いました。パーソナリティ検査結果からリーダーのタイプを3つに分類し、室長層と課長層のリーダーのタイプの組み合わせごとに組織のエンゲージメントサーベイスコアにどのような傾向がみられるかを確認しました。

組合せの数(対象となる組織数)が少ないため引き続き検証が必要ですが、大きく2点の発見がありました。一つは室長と課長がどちらも“ひっぱり型リーダー”(メンバーの競争心に刺激を与え、目標達成に向けてチームを引っ張る)の場合、仕事環境、具体的には人間関係の満足度が低くなる傾向があること。この組み合わせはできれば避けたほうがいいだろうと考えられます。もう一つは、同じタイプのリーダー同士で構成される組織の場合は、リーダー・経営層への信頼が低下する傾向があることでした。

調査研究の結果は、個人的な経験や感覚とも符合しました。例えば私(入佐様)はチームタイプの“アイデアマン”と“まとめ型リーダー”の傾向が強く出ており、ときに歯止めが効きづらくなるとも自認しておりますため、リコーフューチャーズの責任者となるにあたっては、私に苦言を呈することができる人材を私のパートナーに選びました。彼の万華鏡30の結果をみると、私の結果とちょうど真逆でした。やはり資質は科学的に分析することができると考えています。

「顧客価値の創造をリードする人材・事業創造型のリーダー」としてポテンシャルの高い人材を発掘するため、私(入佐様)が現在担当しているリコーデジタルサービスビジネスユニット(RDS)では結果を主に二つの場面で使用しています。一つは既にあるサクセッションプランの中でサクセッサーとなっている人材の資質を改めて確認する場面。もう一つは、社内公募で募集しているポジションによっては万華鏡30の結果を面談結果と合わせてみて、適性を判断する場面です。全社的にシステマチックな活用はまだできていません。

私(入佐様)はいくつかのアセスメントを受けていますが、人物タイプを見極めるには万華鏡30が一番適切と感じています。エス・エイチ・エルグループが持つ最新のアセスメントにも興味があり、実験的な取り組みも含め今後も積極的にご支援いただければと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

重野 達也

 新規事業創造において”個”に焦点を当てる研究には多くの課題が残っています。そのようななかで、今回の研究とその結果の活用は、リーダーの組合せから新規事業創造を捉えようとする新たな試みでした。リーダーのパートナーを誰にするかによって、組織のエンゲージメントスコアは大きく変わります。エンゲージメントスコアが組織の強さと活性度を表しているとすれば、リーダーの組み合わせは極めて重要な人事的意思決定となります。今回の研究から、人の組み合わせと事業創造の関係についての貴重な知見を得ることができました。今後も実験的な取り組みを行いつつ、リコー様の更なる発展に向け尽力致します。

導入事例

変革を推進するためのキャリア開発・人材育成。4つのフェーズで構成されるポーラの「人材成長プログラム」

変革を推進するためのキャリア開発・人材育成。4つのフェーズで構成されるポーラの「人材成長プログラム」

創業100周年に向けて、多彩なValue Creatorが共創する組織へ。
社員一人ひとりのビジョンの実現をサポートする「人材成長プログラム」についてご紹介します。

※本取材は2022年6月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社ポーラ

事業内容

化粧品、健康食品、ビューティーケア、エステサービス

業種

化粧品製造販売業

従業員数

1,359名(2021年12月末現在

インタビューを受けていただいた方

岸 夏海 様

人事戦略部 ヒューマンバリューチーム

インタビューの要約

化粧品事業の枠に捉われない新たな挑戦や変革のため、多彩な社員一人ひとりのビジョンの実現に向けたキャリアサポートを行う「人材成長プログラム」が発足。
「人材成長プログラム」は4段階。まずは自身の強みを「知る」、次にビジョンや実行計画を「描く」、オンラインスクールやスキル開発プログラムで「学ぶ」、そして実際の業務で能力を「活かす」。
「知る」のフェーズでは、日本エス・エイチ・エルの万華鏡30を活用。個々人の自己理解が深まっただけでなく、強みを生かした現場でのアサインメントや、社内の人材の可視化が促進される効果も。
社内アンケートの結果、キャリアに対する社員の主体性がアップ。今後も施策全体のPDCAを回していきたい。

既存事業の枠を超えた挑戦のために、多彩な人材のキャリアデザインを支援する「人材成長プログラム」。

弊社は創業100周年の節目に向けて、これまでの化粧品事業の枠に捉われない、新たな挑戦や変革を進めています。組織としてのありたい姿は、多彩な「Value Creator」による共創。社員一人ひとりがValue Creatorとして、最大限能力を発揮し、個人と組織がお互いを高め合う関係の中で、ワクワクするような面白い挑戦により、価値を創出している組織を目指しています。

人事としてValue Creatorの挑戦と成長を引き出すためには、多彩な社員の個の尊重と、チームとしての創発力を最大化しつながりを高めること、そして社員一人ひとりのWillや自らがポーラを通して描いた未来に、自分の意志で向かっていく力強さが必要不可欠だと捉えています。そんな視点をもって打ち出したのが、「人材成長プログラム」という弊社独自のプログラムです。このプログラムは、「知る」、「描く」、「学ぶ」、「活かす」という4つのフェーズに沿って、キャリアを描く機会、成長する機会、そして能力発揮の機会までを提供する様々なコンテンツを実施しています。

「人材成長プログラム」は4段階。自分を知り、ビジョンを描き、 実現に向けて学び、能力を発揮する

「人材成長プログラム」の「知る」というフェーズでは、日本エス・エイチ・エルの「万華鏡30」を用いて、一人一人の個性や強み・弱みを可視化し、自己理解を深めてもらいます。次に「描く」では、今後の自分のキャリアビジョンと実行計画を描きます。具体的にはキャリアデザインのeラーニングや、世代別研修を実施しています。「学ぶ」では、ビジョンの実現に向けて、オンラインスクールや領域限定のスキル開発プログラムを活用しながら、能力開発を行います。最後が「活かす」です。実際に業務に携わる中でさらに成長し、高めた力を最大限発揮していただく。そのために、人事としては適切な異動配置を考えることも課題の一つです。弊社ではタレントマネジメントシステムに社員のスキルやキャリアプランなどを一元管理し、これまでの一律のジョブローテーションを少しずつ個人に合わせたキャリアとすることを目指しています。

これらを体系的に実施しながら、さらに効果を高めるポイントが、上長による定期的な1on1。それぞれのフェーズにおいて上長によるキャリア支援を必須とし、人事と上長は情報連携やフォロー体制を整えながら、人材成長プログラム全体を動かしています。

「人材成長プログラム」は4段階。自分を知り、ビジョンを描き、 実現に向けて学び、能力を発揮する

キャリアデザインの第一歩はアセスメントによる自己理解。 個人の内省だけでなく、適材適所が促進される効果も。

今回、「知る」というフェーズで日本エス・エイチ・エルの「万華鏡30」を活用させていただきました。受検対象は全正社員で、受検後に1時間の「自己理解研修」や上長との1on1での結果の活用を行うことで、さらに自分自身に対する理解や内省を深めています。

導入後の効果は大きく2つあります。一つ目は従業員同士のコミュニケーションです。チームや上司・部下間でお互いのアセスメント結果を見ながら、業務分担を行ったり、個人の強みを生かすようなアサインメントが行われたりするようになりました。二つ目は、人事視点での全社分析が可能になったことです。この万華鏡30の導入により、社員を同一基準で解釈することが可能になりました。

この結果を様々な分析にかけることで、社員の性格傾向がわかりやすく表現され、社内にどのような人材が分布していて、どのような人材が不足しているのかなど、人材分布から育成課題等も可視化されるようになりました。

これらの施策はすべて発展途上ですが、少しずつ変化の兆しが見えてきました。今年の社員アンケートの結果、「自ら主体的にキャリアを描き切り開くマインドが自身に備わっていますか?」という質問に「はい」と答える割合が、昨年と比べ10ポイント以上高まりました。組織として大きな変化が起きるのはこれからと認識しておりますが、今後も情報収集を続け、施策全体のPDCAを回していきたいと思っております。

先般、この取り組みを日本エス・エイチ・エル主催のタレントマネジメントウェビナーでご紹介しました。このウェビナー出演をきっかけに他社の人事担当者と情報交換の機会を得ることができました。お会いした各社さんとも、独自の工夫を凝らしたタレントマネジメント施策を導入されていて大変勉強になりました。今後も情報交換を続けていくつもりです。日本エス・エイチ・エルはアセスメントの専門性が特徴的な会社ですが、人事担当者のネットワークを提供してくれる点も魅力の一つです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング3課 課長

横山武史

多彩なValue Creatorによる挑戦と変革という今回のお取り組みは、当社の「人のポテンシャルを見いだし、登用することで能力の発揮を支援する」という考え方と一致しており、私としても大変共感を覚えます。
このお取り組みは2021年11月、岸さんをはじめとする人事戦略部の方に、トライアルで万華鏡30の1on1フィードバックを実施するところからスタートしました。トライアルから数か月間でここまでの仕組みを作り、施策を動かしておられる実行力に感服しました。
また、岸さんの他社と積極的に交流しオープンに情報交換する姿勢、自ら人材データ分析に取り組まれる熱意は、新しいHRパーソンの在り方を示してくれていると感じます。
これからも当社およびSHLのグローバルな知識と経験でお役に立てるよう全力で努めてまいります。

導入事例

管理職候補者への動機づけとマネジメント教育を担う、大塚商会のリーダー育成プログラム「リーダーカレッジ」。

管理職候補者への動機づけとマネジメント教育を担う、大塚商会のリーダー育成プログラム「リーダーカレッジ」。

マネジャーの育成と動機づけのために、3階層からなるリーダー育成プログラム「リーダーカレッジ」を発足。
大塚商会のタレントマネジメントをご紹介します。

※本取材は2021年12月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社大塚商会

事業内容

システムインテグレーション事業/コンピューター、複合機、通信機器、ソフトウェアの販売および受託ソフトの開発など。サービス&サポート事業/サプライ供給、保守、教育支援など。

業種

情報・通信業

従業員数

7,429名(連結子会社を含めた従業員数9,119名)※2020年末日現在

インタビューを受けていただいた方

閤師 敏晃 様

株式会社大塚商会
人材開発部 部長

インタビューの要約

「名プレーヤーは名監督にあらず」。管理職候補者に対する体系だったマネジメント教育と動機づけの必要性を実感し、リーダー育成プログラム「リーダーカレッジ」を発足。
リーダーカレッジは3層構造。エントリーレベルである「次世代リーダーカレッジ」では、アセスメント(パーソナリティ検査OPQ)の結果をフィードバック。目指す姿とのギャップや能力開発課題を特定。
候補者のコンピテンシーやスキル、知識レベルなどはプログラム中に適宜評価。情報をデータベース化し、タレントマネジメントに活用する。
今後の課題は、候補者に対する評価をより構造化し、安定的に継続可能な仕組みを構築すること。

名プレーヤーは名監督にあらず。管理職候補者に対する リーダー育成プログラム「リーダーカレッジ」を発足。

当社は2011年から、「リーダーカレッジ」というリーダーシッププログラムを運営しています。この背景には、「優秀なプレーヤーがそのまま優秀な管理職となるとは限らない」という大前提があります。たとえば、かつては売り上げの多い営業社員がそのまま管理職として登用される事例も多くありましたが、当然ながらセールスの能力とマネジメントの能力は別物です。この齟齬は、上司・部下間の関係性の悪化や、退職の増加など、目に見える形で表れていました。「部下は背中を見て育つ」という時代ではなくなりましたし、マネジメントやコーチングは管理職が仕事として行うべきものです。そこで、リーダー育成のためのプログラムを発足し、候補者を集めてリーダーシップについて学ぶ仕組みを構築したのです。

またリーダーカレッジは、管理職候補者に対する動機づけの役割も担っています。当社ではマネジャーにならずに専門職として活躍するキャリアを選ぶこともできますが、「マネジメントの面白さ・醍醐味」も積極的に伝えていきたいと思っています。リーダーカレッジをきっかけにして、管理職に興味を持ってくれる社員が増えたらありがたいと思っています。

名プレーヤーは名監督にあらず。管理職候補者に対する リーダー育成プログラム「リーダーカレッジ」を発足。

リーダーカレッジのエントリーレベル「次世代リーダーカレッジ」では、 アセスメントのフィードバックを実施し、個々人の能力開発課題を明確化。

リーダーカレッジは3階層に分かれており、それぞれの層で志のある候補者に対し、数年間のプログラムでリーダーシップを育成していきます。アカウンティング、ファイナンス、経営戦略など、経営に必要な知識の習得もここで行います。課長になると、一番下の層である「次世代リーダーカレッジ」に入会する権利が付与されます。入会は手上げ式ですが、熱意のある方に入っていただけるよう、説明会で意識づけを行っています。その次の層はゼネラルマネジャーを、その次の層は役員を育成するプログラムとなります。

エントリーレベルである「次世代リーダーカレッジ」では、まず入会した段階で、日本エス・エイチ・エルのアセスメント(OPQ)を行い、現在の本人の状態、特徴をフィードバックします。また、大塚商会が目指すリーダー像を共有し、2年間のプログラムにおける個々人の能力開発課題を明らかにします。この個人データは、タレントマネジメントの一環としてデータベース化されます。なお、大塚商会の管理職に必要とされる資質・スキル・知識のうち、資質の部分は行動傾向の影響が大きいため、OPQをベースにして要件定義しました。

プログラム中のパフォーマンスも適宜、数値としてデータベース化されます。たとえば、リーダーシップやプレゼンや企画などのスキル、ファイナンスやマーケティングなどの知識。これらの情報はタレントマネジメントデータベースとして、活用しています。

今後の課題は、管理職候補者に対するポテンシャルの把握や評価を、構造化して長期的に継続可能な仕組みに落とし込むことです。その一案として今回、取り組むのが、管理職登用制度の構築です。この管理職登用制度では、まず管理職に求められる要件を定義し、足りないスキルや知識などを明確にしたうえで、1年間の教育を人材開発部が行います。そして最終的にアセスメントを行い、登用者を決めていくという内容になります。今後は管理職候補者の評価を人の目に頼らず、構造化・デジタル化し、継続可能な登用の仕組みとして運営していく必要があります。

日本エス・エイチ・エルとは30年近くお付き合いいただいています。最初にお願いしたのは採用テストでしたが、当時から高業績者の特徴をデータ分析で明らかにする手法を行っていました。要望に応じたきめ細かいカスタマイズに対応してもらえ助かっています。人材測定、サーベイなどで客観性を担保したい人事施策を検討する際には必ず声をかけています。当社にとってブレーン的な会社です

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員

清田茂

大塚商会は当社が最も長くお取引をいただいているクライアント様の1社です。閤師さんとは私が駆け出しのコンサルタントであったころにお会いしましたので、同志のような気持ちでお付き合いさせていただいております。閤師さんは常に人事改革に対して強い情熱を持っておられました。採用の改善、営業力の強化、マネジャー育成、次世代リーダー発掘、コミュニケーション改革など、時代の一歩先を行く改革を実践されています。微力ながら、これら改革のお手伝いができたことを大変うれしく思っています。
既にITは産業の中核を成す分野になっており、今後ますます重要性が高まっていきます。劇的な成長が続く業界ではさらなる組織人事の変革が必要となるでしょう。今後も組織の成長を支える人事戦略に貢献したいと考えております。

導入事例

「自分に合ったスタイル」での成長を促す、日産自動車の販売会社店長育成戦略。

「自分に合ったスタイル」での成長を促す、日産自動車の販売会社店長育成戦略。

販売会社の優秀店長像をアセスメントのデータ分析とインタビュー調査によって明らかにした日産自動車。
販売会社の店長を対象としたタレントマネジメントの取り組みを紹介します。

※本取材は2020年12月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

日産自動車株式会社

事業内容

自動車の製造、販売および関連事業

業種

自動車製造業

従業員数

22,717名(単独)(2020年3月現在) 

インタビューを受けていただいた方

岩村令子 様

日産自動車株式会社
日本戦略企画本部 中期戦略企画部/プログラムダイレクターオフィス 主担

インタビューの要約

販売会社の採用・育成方針の策定に役立てることを目的に、販売会社の優秀な店長像を明らかにするためのアセスメントおよびインタビュー調査を実施した。
全国の販売店店長約1300名がアセスメント(万華鏡30)を受検し、クラスター分析によって4タイプの異なる強みを持った優秀店長像が特定された。
各タイプの優秀店長の代表者数名に対面でインタビューを実施し、それぞれの強みを発揮するために日々実施していることなどを詳細にヒアリングした。
分析・インタビュー結果を各販売会社に報告し、採用・育成・登用の資料として活用してもらった。また、日産自動車本体においても、今後の販売会社への採用・育成支援の方針が得られた。

販売会社の優秀な店長像を特定し、採用や育成に生かすため、 アセスメントおよびインタビュー調査のプロジェクトが発足。

私は中期戦略企画部に所属しています。販売会社の採用や育成、教育を担当する部署は別にありますが、今回のプロジェクトは中長期的な目線で、販売会社の優秀店長とはどういう人材なのかを科学的な手法で明らかにし、それを中長期の採用育成に活かしていこうという、当時の役員の問題意識からスタートしました。

販売会社によって店舗数には違いがあります。数店舗を運営している販売会社であれば、それぞれの店長の特徴を把握できますが、数百店舗を有するような販売会社では、個々の店長に関して経営層が詳細な情報を把握することは困難です。目まぐるしくビジネス環境が変化する中で、今後どういった店長が求められるかを検討したいが、販売会社1社では横断的な分析は難しく、地域的な偏りもある。販売会社からこのような声が挙がっていたことを受け、プロジェクトが発足しました。

販売会社の優秀な店長像を特定し、採用や育成に生かすため、 アセスメントおよびインタビュー調査のプロジェクトが発足。

約1300名の店長の特徴をクラスター分析して見えてきた、複数の優秀店長像。

最初に考えたのは、私には人事系のバックグラウンドがないので、アセスメントに関しては、プロフェッショナルの力を借りる必要があるということでした。その上で、複数社にお声がけをしましたが、日本エス・エイチ・エルを選んだ一番の理由は、シンプルな調査を低コストで受けられるという、続けやすさ。今回は日産自動車が主体で調査を行うが、今後販売会社主体でアセスメントを継続する可能性を考えたときに、販売会社にとって続けやすいプライスであることは必須条件でした。

約1300名の店長にアセスメント(万華鏡30)を実施し、優秀者のタイプを抽出するクラスター分析を行いましたが、まず何をもって優秀者と定義するかが最初に議論になりました。たとえば、優秀な店長でも、困難な状況にある店舗の立て直しを担っている方は、業績が低いです。逆に立地にめぐまれていたり、部下に優秀な人材がいたりすると、店長の実力は隠れてしまいます。ですので、今回は店舗の売上台数等の数値指標に加えて、役員や社長から見た優秀な店長は誰なのか、という定性情報もアンケートで拾い上げていきました。その際は、「どういう観点で優秀としたか」という理由も書いていただいたんですが、育成に長けているとか、とにかくきちんと台数を売り上げるとか、台数だけじゃなく収益管理ができるとか、様々な観点が挙げられました。最初の目的が優秀な店長のタイプ分類だったのですが、店長は個々人が自身の強みやバックグラウンドを活かして仕事をしている個人芸のような部分があり、日産自動車社内でも「タイプ分類は相当難しいぞ」という声がありました。不安を抱えながらのスタートでしたが、日本エス・エイチ・エルの担当者と二人三脚で分析を進めていきました。

各優秀タイプを代表する店長に、インタビューを実施。 現場にとってわかりやすい人材像へと落とし込む。

クラスター分析によって、最終的に抽出された優秀店長のタイプは、異なる強みをもつ独立した3タイプと、ハイブリッド型1タイプの、計4タイプ。かつては、一つの優秀な店長像があって、それを目指せと言うのが基本的な指針だったと理解しています。今回の分析は、「優秀なタイプというのは複数あり、まずはどういうマネジメントの仕方が自分に合っているのかを選び取りながら成長していきましょう。その次は、さらにバランスの取れたこの店長像を目指しましょう」と、だんだんレベルアップするような考え方を可能にしています。それは今までとは異なる新しい育成の考え方でした。

各優秀タイプを代表する店長に、インタビューを実施。 現場にとってわかりやすい人材像へと落とし込む。

その後、ロジカルな分析結果を各タイプの優秀店長像に落としこんでいく際には、実際にそれぞれのタイプに当てはまる優秀店長数名にインタビューを繰り返しながら、ペルソナ的に人材像を具体化していきました。ヒアリングの内容は、その人が強みにしているコンピテンシーはどういう経緯で組み立てられてきたのかを探るキャリアの経緯や、過去に一番心に響いたこと、そのコンピテンシーを日常的に発揮する方法を探るために、一日の仕事の流れや、気を付けていることなどを全て聞いていきました。このヒアリングの結果は冊子にして、最終的に販売会社に配布しました。優秀な店長は毎日何をしているのか、どれくらいスタッフの管理に力を入れているのかをまとめた資料なので、気に入ってくださった販売会社は各店長に「これを読んでおきなさい」と配布してくれたそうです。優秀な店長の取り組みは本当に素晴らしく、私もヒアリングをしていて勉強になりました。

全国にいる販売会社店長の約半数をカバーした大規模調査で、 新しい店長像を見出せた。

その後、販売会社を回って、個々の店長のタイプ分類と、販売会社ごとの店長のタイプ構成比などを報告していきました。最初、アセスメント結果に納得していなかった販売会社の社長にも直接話して、「気になった人、これは違うと思った人を教えてください」と一緒に読み解いていき、各タイプについて説明すると、結果に対する信頼が生まれて、「確かにうちの会社はこういうタイプが多いかもね」と納得してくれました。また、各タイプの人財イメージを表すのに著名なスポーツチーム監督の例を挙げたり、現場で活用しやすいように、腹落ちしやすいストーリーづけをすることを意識しました。
結果の活用法についても、会社ごとに様々なご意見がありました。店長へのフィードバック面談を普段から行っている会社では、フィードバックの際にこのアセスメント結果も一緒に使っていこうという声がありました。また、役員をどんなタイプの人財から選ぶか、タイプ構成比を見ながら登用を考える会社もありました。さらに、販売会社によってあるタイプの店長が非常に多い・少ないといった傾向も明らかになったので、より望ましい方向にカルチャーを変えていこうとする試みもあります。このような取り組みは販売会社ごとに行っていただき、日産自動車サイドでは、今度の店長の育成における基本のコンピテンシーを作る材料にしようとしています。

このプロジェクトの成果は、販売会社が自社の店長のタイプを把握する客観的な資料が得られたことです。「あの店長ってこういうタイプだよね」と、なんとなく思っていたことを裏付けてくれる資料になりますし、逆に「あれ、実はこういう側面があるのかな」といった、一人一人の店長をより深く理解するための材料になりました。日産自動車としても、これまで優秀な店長の形をきちんと把握していませんでした。今回の調査は、全国にいる店長の半数以上をカバーする大規模なものですので、日産における新しい店長の人材像を見出し、今後の販売会社支援の材料になったかと思います。その知見が今、販売会社の育成を支援しているチームに引き継がれています。

日本エス・エイチ・エルのサービスを利用して良かった点ですが、まずアセスメントの一人あたりのコストが安くて、かつ豊富に実績があり、分析の結果にも独自の知見があって信頼性があるところ。もう一つは、データ分析の過程で何度も通っていただいて、一緒に分析の結果を見ながら、このクラスター分類はピンと来ないとか、何点をクラスター分類の閾値にするかといった、細かい点を相談させていただけたことです。定性調査のインタビューでも、全国各地の店長に話を聞きながら迅速にレポートをまとめていただいて、我々が資料を作成する上でもプロの視点でのご指摘やご意見を頂けたのはありがたかったです。ある意味、二人三脚でプロジェクトを進められたのが助かりました。全国津々浦々にわたる調査となり、大変だったと思いますが、すごく感謝しています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

佐藤 有紀

「優秀な店長にはいくつかのタイプがあると思っている。各店長が、自分に似たタイプの優秀者をお手本にして、自分の強みを活かしながら育っていけるような育成支援をしたい。」最初にそのようなご相談を頂いたときに、その自由で新しい発想に心が躍りました。
「個性を活かした活躍」が推奨される昨今においても、教育の個別化は進んでいるとは言いがたく、依然として画一的な優秀さを目指して努力されている方が多いのではないでしょうか。日産自動車の取り組みは、個々人がより自分らしいスタイルで成長でき、自分の強みで勝負できる、新しい育成のありかたを示すモデルケースになると思っております。私どもも、二人三脚でこのようなクリエイティブな挑戦ができたことを、大変嬉しく思います。誠にありがとうございました。

採用基準の作成から全社員のポテンシャルを活かす適正配置まで、「人材マップ」を用いた森永乳業のタレントマネジメントをご紹介します。

※本取材は2020年8月に実施しました。インタビュー内容は取材時のものです。

森永乳業株式会社

事業内容

牛乳、乳製品、アイスクリーム、飲料その他の食品等の製造、販売

業種

食品製造業

従業員数

3,340名(連結従業員数 6,303名)(2020年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方

荒木 久宜 様

森永乳業株式会社
コーポレート本部 人財部人財戦略グループ マネジャー

インタビューの要約

全社員にタレントアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を実施して、採用基準の作成と人材の適正配置を行った。
4象限の人材マップを使って各職種のハイパフォーマーの人材タイプとその比率をとらえ、採用基準、職務適性基準を作成した。基準に基づく採用と配属を実施した。
社員に対してアセスメントの結果をフィードバックし、自分の適性とキャリアについて考える機会を与えると、従来あまり見られなかった他部門への異動希望が増加した。実際に異動した人たちはエンゲージメントが高く、活動が活性化している。

採用基準の作成から始まり、全体の最適配置へ。

私の初期配属は、リテール営業課で、スーパーやコンビニエンスストアへの営業を担当していました。8年間営業を経験した後、人事に異動し新卒採用を3年、社内昇格などを3年担当しました。そこから採用のチーフ兼人材配置担当・ローテーション担当となり、今は人事戦略、人事制度、人件費コントロール等を行っています。

タレントマネジメントのスタートは、まず採用からでした。既存社員にアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を実施し、各職種で「どのような人材がハイパフォーマーとなるか」という分析を行って、それを採用に活かしたいと思いました。社員のアセスメントデータが手に入ると欲が出てきまして、「採用に使うのだけではもったない」となって。OPQの結果をもとに、社員本人に、自分の性格や職務適性を理解してもらい、「こういう仕事が向いているんじゃないか」「こういうチームで働きたい」という前向きな気持ちを持ってもらう機会になればいいと思って、全社員にOPQを実施することにしました。

採用基準の作成から始まり、全体の最適配置へ。

アセスメント結果を、受検者本人が見てわかりやすいことが一番のポイント。

OPQの結果を本人に渡し、月1回の上司面談の際に使ってもらう任意の仕組みを導入しました。年1回のキャリア希望調査時にOPQを受けてもらいます。キャリア希望調査では、5~10年先に何をしたいのか、その前に経験したい仕事は何か、という質問をして自分のキャリアについて考えてもらいます。それに併せて自分の適性について考えてみてくださいとOPQの受検案内をしました。

アセスメントについては他社も検討しましたが、ずっと採用で使っているOPQを信頼していましたし、このプロジェクトでは本人がキャリアを考える上で使いやすい結果リポートが必要と考えたため、OPQで行うことを決めました。OPQの万華鏡リポートは、アセスメント結果を見慣れていない一般の社員にもわかりやすく、今回の目的に合いそうだと判断しました。

取得したアセスメントデータを分析しようとなったときに、社内ではどうにもならないので、日本エス・エイチ・エルの担当コンサルタントに、適切な分析方法について相談しました。そのときに提案されたのが4象限のマップ上に人材をプロットするという方法。チーム編成の検討に使えるということだったので、やってみたいなと思いました。以前、アセスメントデータを使って部門ごとに得点の平均値を算出したことがありました。部門全体の傾向はわかりましたが、今回は個人の特徴をより正確に把握するため4象限へのマッピングをやりたいと思ったんです。

4象限で人材を分けると、社員にもいろいろなタイプの人が存在するということがわかります。4つのタイプが明示されたことで、経営陣も管理部門であれば「堅実頭脳タイプ」、営業なら「柔軟頭脳タイプ」と検討できるようになり、配属先にもなぜ配属したのかをより根拠をもって説明ができるようになりました。今後はチームを活性化させるための配属や、チームに適合させるための配属といった観点で、活用できないかと考えています。

アセスメント結果を本人にフィードバックすることで、 自己理解が促進され、異部門へのチャレンジが増加。

4象限の各象限に目標採用数を設定することで、人材の多様性が確保でき、新卒でスタッフ部門に適性がある人材も採用できるようになりました。事務系採用は営業職を中心に考えていて、とにかくヴァイタリティが高い人がいいという方針が以前はありました。4象限で人材をとらえるようになってから、「堅実頭脳タイプ」に管理部門のハイパフォーマーが多くいることがわかり、内定者にOPQの結果を示し、「あなたのこういう特徴が活かせるから」と説明して、納得してもらった上で管理部門に配属できるようになりました。また以前は営業のハイパフォーマーをマーケティング部門へ異動させることが多くありましたが、今は新入社員を配属することができるようになりました。去年、OPQの結果からマーケティング適性が高いと判断した学生をマーケティング部門に配属したところ現場から好評を得たという成功事例がありました。こうした取り組みは今後もやっていきます。

また、アセスメント結果を本人にフィードバックしたことで部門を超えた異動を希望する人が増えました。これまでのジョブローテーションは部門内での異動がほとんどでしたが、アセスメント結果から自分の職務適性や組織適性、強みや弱みを知り、自分の可能性に気づく人が増えたのでしょう。その年から、「自分は営業をずっとやってきたけど、マーケティングの仕事の方が向いているのではないか。」と上司に相談するようなケースが出てきました。正確に集計していませんが、こうした異動希望が、10ポイントくらい増えたのではないかと思いますし、実際に異動した方もいます。そういう人たちは異動後もモチベーションが高く、現場にすぐ馴染んで新しいことをやろうとします。このような人が増えることによって組織の活性化が進むと感じます。今後は、FA制度とか社内公募をやっていきたいと構想しています。

今後の課題は保有している社員データを活かしたタレントマネジメント施策を行うこと。まずはチーム編成、配置、ジョブローテーションからやっていきます。将来は、各社員が自分の特徴を理解した上で、どういう仕事をしたいか、そのためにどういう人が必要かを考え、自分で声をあげてチームを立ち上げることができるような会社にしたいと思います。

日本エス・エイチ・エルの良い点は、こちらの要望に対して必ずプラスアルファの提案をしてくれるところ。構想が固まっていない状態でのディスカッションにも根気よく付き合ってくれますし、結論がでないまま終了しても次の機会には必ず提案してくれます。ふと思いついたアイデアでも相談してみようかなと思えますし、一緒にやっていて楽しいですね。多くの企業や業界と取引されているので、異業種の情報をいただける点も助かっています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティングチーム 副部長

村井 泰裕

採用だけでなく、タレントマネジメントでも森永乳業のお役に立てないかと考えておりました。そんな時、採用の人財要件定義のため全社員アセスメントとデータ分析が決まり、タレントマネジメントが動き始める予感がしました。
このプロジェクトでは、誰が見てもわかりやすく活用しやすい人材データ分析を提供したいと考え、職種ごとに4象限のマッピングを行いました。この分析結果が人財部の意思決定と社員の自己理解のお役に立てて、とてもうれしかったです。また、プロジェクトミーティングでの荒木さんとの対話は、私にとって楽しく有意義な時間でした。
これからも、森永乳業の組織生産性向上と社員の幸福のために、お力になれるよう努力してまいります。

新入社員から部店長までを網羅するキャリアプランと、各ステップで求められる到達レベルに沿った教育研修体系を構築しているみずほリースの事例を紹介します。

※本取材は2021年1月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

みずほリース株式会社

事業内容

リースを中心とする法人向け総合金融サービス

業種

金融業

従業員数

連結:1,804名、単体:735名 (2020年9月末現在)

インタビューを受けていただいた方

横山 幹彦 様

みずほリース株式会社
人事部 副部長

インタビューの要約

新入社員から部店長レベルまで、職系と経験年数・ステップごとに到達すべき行動レベルや知識/スキル、受講研修を紐づけた「キャリアプラン」を構築し、教育研修制度を整備・拡充した。
日本エス・エイチ・エルの担当する「ヒューマンアセスメント研修」は、管理職準備グレードが対象の研修。ロールプレイなどの演習によるアセスメントとフィードバックで、管理職となる上で求められる能力を認識することが目的。
今後強化していきたいことは、育成を主眼とした戦略的ジョブローテーションと、「3C(challenge、change、create)」の一層の推進。

新入社員から部店長までのキャリアプランを明示し、 教育研修制度の刷新に取り組む。

私が人事部に異動して、4年が経過しようとしています。着任してからは労務以外の人事領域に幅広く関わっています。

配属された当初、階層や職系で研修頻度に偏りがあるのが気になったことから、教育研修制度を大幅に見直すことにしました。まず、職系と経験年数に応じて求められるスキルとそのレベルを定義して、明確なキャリアプランを作りました。具体的には、新入社員から部店長レベルまで、職系とステップごとに到達すべき行動、経験、知識/スキル、受講すべき研修を明文化しました。このキャリアプランを作ったことで研修頻度の偏りが是正されました。拡充した主な研修としては、例えば、営業職のソリューション力を強化するために、仮説構築力、発想力、プレゼンテーション能力を鍛える営業系の研修、総合職と比べて手薄となっていた中堅業務職に対する研修などがあります。

このキャリアプランは社内のポータルサイトに掲示されており、社員が全体感を把握したり、求められる到達レベルを目指して自己研鑽したりするのに活用されています。

管理職準備グレードが受講する「ヒューマンアセスメント研修」。

日本エス・エイチ・エルに委託している「ヒューマンアセスメント研修」は、管理職準備グレードに昇格した社員が対象です。この研修の目的は、受講者がリーダーシップや課題解決、企画立案など、管理職となった際に求められる能力の現在のレベルを知り、能力開発目標を定めることです。受講者は、ファクトファインディング演習(情報収集を通して真実を見抜き、課題解決をする演習)や、部下との対話のロールプレイ演習、プレゼンテーションの演習などを行った後、自身の今の能力や特徴について、日本エス・エイチ・エルのアセッサーから個別にフィードバックを受けます。

昇格者はプレーヤーとして実績を残してきた社員です。今後は、自分だけでなく周囲を巻き込んで組織を成長させていく意識を持ってもらい、今後求められる能力、今の状態とのギャップ、自分の管理職としての強みや弱みを考えてもらう機会にしています。アセスメントを、自分で認識している自分と他者から見た自分との違いを知り、あるべき姿とのギャップを認識するための“きっかけ作りの場”として位置づけています。

管理職準備グレードが受講する「ヒューマンアセスメント研修」。

受講者からは、「今までで一番疲れた研修だ」、「この年齢になってこんなにダメ出しされることはない」といったコメントが多く寄せられます。日常の業務で弱点を直接指摘されることは少ないので、この体験を成長の糧にしてもらいたいと思っています。また、「自分では手ごたえのあった課題で弱みを指摘され、改善すべき点を把握できた」「自分でも認識していない強みや弱みを知ることができた」などの前向きな声も少なからずあり、“気づき”を得ている実感があります。アセスメント結果は上司である部店長にも共有されますが、「弱みが丁寧に解説されているので、今後の育成に役立てたい」などの所見が寄せられています。

育成の今後の課題はジョブローテーション。 個人と組織の両面から「戦略的人事」を進めたい。

人材育成に関して完璧はありません。今後は、社員一人一人の能力、資質、職務経験、キャリアビジョンを踏まえた育成のため、戦略的なジョブローテーションを一層推進していく必要があると考えています。また、個人の能力開発だけでなく、疲弊しているチームがあれば、新しい人材を投入することで活性化させることも重要です。現場の事情や需給バランスなどが障壁となり、ジョブローテーションが社員や組織にとってベストではないケースもあると思います。タレントマネジメントシステムのリリースも間近に控えており、情報の一元化により、より戦略的な人事を行うための体制を整えていきたいと考えています。

2019年、みずほ銀行が出資比率を大きく引き上げ、旧興銀リースからみずほリースに商号を変えて、名実ともにみずほ系中核リース会社となりました。大きな転換期を迎えています。このことでビジネスチャンスが格段に拡がり、即戦力としてのキャリア採用を大幅に増やしています。

旧興銀リースを象徴する形容詞は「堅実」でした。安定している時代なら大きな強みですが、足元の環境は決してそうではありません。現在、challenge、change、createの「3C」を会社の行動指針にしています。変化するため、新しいものを生み出すための起点となるのはチャレンジだと考え、特に重要視しています。

採用に当たっては、「自律」と「多様性」を重視しています。新人と中途入社社員が現場に刺激を与えることで、チャレンジの推進・浸透が加速していくことを期待しています。

また、会社全体としてチャレンジを推進していますが、管理職の中には大きなチャレンジをするのにまだ慣れていない社員もいると思います。ミドルマネジメントの意識や行動を変えていく為には、心理的安全性の確保も欠かせないと思います。

課題は単純ではなくリンクしているので、関われる業務領域が幅広いのはありがたいことです。人事でチャレンジしたいことはまだ沢山ありますね。

私にとって、日本エス・エイチ・エルは「プロ集団」というイメージです。アカデミックで、自社のポリシーがあって、良い意味で迎合しない、プロ意識の高い集団という感じでしょうか。先述の通り、みずほリースはまさに変革のタイミングです。あまり範囲を限定せず、人事領域全般について総合的なお話をしていければと考えています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

畔取 祐介

教育研修制度を改革していく中で、自己理解を能力開発のための重要な機会と再定義され、管理職準備グレードへの研修(アセスメントとフィードバック)を継続いただいたことは、決して単なる継続ではなく、意味と価値の再定義という点で大きなChangeでした。
また、アセスメントを継続してきたおかげで蓄積してきたデータの分析と活用が可能となりました。今後はデータを活用して、貴社のタレントマネジメントの最適化に貢献したいと考えております。横山さんのビジョンの実現に向けて微力を尽くします。

旧体制の人事から脱却し人事運営改革を進めるみずほフィナンシャルグループ。個を活かす人事運営を実現するためタレントアセスメントをどのように活用したのか、タレントマネジメントの取り組みについてお話をうかがいました。

※インタビューの内容は当時の担当者に取材を実施したものです。また、担当者の役職は取材時のものです。本インタビューは2020年7月に行いました。

株式会社みずほフィナンシャルグループ

事業内容

銀行持株会社、銀行、証券専門会社、その他子会社の経営管理、その他銀行持株会社が営むことのできる業務

業種

金融業

従業員数

55,174名(2020年3月連結)

インタビューを受けていただいた方

上ノ山 信宏 様

株式会社みずほフィナンシャルグループ
取締役会室長

インタビューの要約

様々な事業を持つ金融グループになっても旧体制の人事運営を継続しており、優秀人材の資質を踏まえた教育はできていなかった。経営・事業環境が変化する中、人事グループは危機感を強めた。
人の評価に科学的な手法を用いるべきと考え、管理職を除く社員2万人にアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を実施した。
評価者の客観評価スキルを高めるため、上司から部下へアセスメント結果フィードバックを実施。併せて管理職5000人に部下育成にOPQを活用するためのトレーニングを実施した。
この取り組みによって個を踏まえた部下育成の意識が管理職に芽生え、OPQを使った部下マネジメントのための勉強会も発足した。
組織風土を変えることがこの人事改革のゴール。組織風土改革は一朝一夕には実現できず、今後も続く課題。

変化する経営環境に対して、旧体制時代の人事運営では 「勝てるわけがない」と単純に思った。

もともと当社は、大企業や海外を相手にするみずほコーポレート銀行と、リテールを中心とした旧みずほ銀行の、ツーバンクモデルでした。それが2013年に一緒になり、人材の採用と育成の観点で言うと、どうしても「何でもそつなくこなせる人材」を求める発想になっていました。その当時ですら、いろいろな事業が傘下にあって、求められる専門性や資質は全く違うはずだったのですが、判で押したように銀行の支店に配属して、そこから優秀な人材を振り分けていくという発想のままでした。人には向き不向きがありますので、営業店で優秀だった人が、すべての分野で活躍できるなんていうことはありません。結局、古い人事評価や人事運用をずっと引きずっていました。「これで勝てるわけがない」と単純に思いました。

もともと銀行は、人事のやり方に口を出しづらい雰囲気がありました。また、現場の管理職には部下の管理は行うが、人材の確保と育成は人事の責任と考え、人材マネジメントに積極的に取り組んでいるとはいいがたい人もいました。銀行は就職ランキングも高く、優秀な人材が十分に確保できていたという背景もありました。

金融業は一定水準の知能とガッツがあればできるビジネス、と昔は思われていましたが今やそうではなくなりました。競争相手も従来とは全く変わってきましたし、とても今のままの人事管理では立ち行かなくなったというのが実態です。

変化する経営環境に対して、旧体制時代の人事運営では 「勝てるわけがない」と単純に思った。

自然科学における「観察」のように、科学的に人を評価したい。

当時、常務と部長と副部長の私で今後の人材戦略をどうするかを議論していたとき、三人とも競争環境や専門性で他社が強くなってきているというのを肌で感じていました。

社員一人一人の持ち味や資質を把握し、強みを活かす能力開発を行う足掛かりとして、日本エス・エイチ・エルのOPQを資質診断ツールとして使うことを決め、みずほフィナンシャルグループ本体と子会社の従業員約2万人(管理職を除く)に実施しました。自然科学の世界は観察から、エンジニアリングの世界は計測から始まります。人事の基礎は評価だと思いますが、評価は認知バイアスの塊みたいなもので、みんな我流と思い込みで評価を行っています。そんな中で「個の重視」と言っても、らちが明かない。そこで、「人の評価に科学的な手法を用いるべき」と考えました。

日本エス・エイチ・エルを導入した個人的な理由は、私のOPQの結果をみたときに、「ああ、ばれてしまった」と思ったことです。結果を読めば読むほど自分のパーソナリティについて広く深い洞察がなされていることがわかり、「そうだよな」と深く納得しました。このツールは使えるという確信を得ましたね。

旧来の組織風土から、「個」を重視する新しい人事評価へ 変わっていくことの難しさ。

OPQを社員に受検してもらっただけではなく、フィードバック用のリポートを開発し、上司から部下へ結果のフィードバックを行いました。そのために、全管理職約5000名を対象に、OPQの解釈と活用のためのトレーニングを実施しました。

評価者の立場にあるものは、結果的に部下の人事権を持ちます。人事権は組織の戦略にそって行使されるべきものですから、評価者の主観や思い込みで評価することは本来なら許される行為ではありません。しかし、実際は明確な基準も根拠となる情報もないままに「あいつはこの職種はダメだけど、あの職種なら向く」などと言う運用も一部で行なわれていました。そんな中で、きちんと個人にフォーカスして何ができるのか、何ができていないのかを見極めなければならないと思いましたし、評価者は人を客観的に評価できる力を鍛えないといけないという問題意識を持ちました。

苦労したのは、新しい人事運営の方向感について納得感や共感を得ていくところです。「個を尊重する人事評価と言っているけど、本当は違うんじゃないか」という人もいました。このタレントマネジメント施策の導入後、私は異動で人事から離れたのですが、同僚から評価の時期になると「人事が言っていることを額面通りに受け取って良いのか?」と聞かれることもありました。人事制度や運用ルールを変更しても、組織風土を変えなければ人事改革は成功しない、と痛感しました。

今ではだいぶ浸透してきましたが、組織風土として新しい人事評価とその価値観を完全に浸透させるには、これからも現場の理解を促進するための地道な努力が重要だと感じています。

資質診断ツールを使って、部下を理解する勉強会が発足。

この取り組みで良かったことの一つとしては、ERG(エンプロイリソースグループ)※の取り組みの一環で、資質診断ツール(OPQ)を使った部下マネジメントの勉強会が発足したことです。「みずほウィメンズネットワーク」という女性従業員のグループで、会社が女性管理者を増やしていくなかで、管理職ならではの悩みについて話し合っています。このグループの立ち上げメンバーの一人が、資質診断ツール(OPQ)を使って、どのように部下を把握し、どのように部下と接するか、を学ぶ勉強会を始めました。女性管理職はロールモデルが少ないので、この勉強会で学び合っているんですね。この取組みは社内報で紹介されました。

数十人の部下を持つと一人ひとりの人となりを細やかに知ることが難しくなります。OPQは人となりを詳しく表現することに優れていますので、こんな問題を抱えている管理職にはうってつけのツールです。こうしたツールがないと、認知バイアスの影響で、「自分が見たい事実」だけを見てしまうようなことが、どうしても起きるので。 ※エンプロイリソースグループ:共通の特性を持つ従業員同士が特有の問題についての話し合うためのグループ。ダイバーシティ施策として導入する企業が増えつつある。

日本エス・エイチ・エルのいいところは、学問的バックグラウンド。

日本エス・エイチ・エルのいいところは、皆さん勉強していて学問的バックグラウンドがしっかりしている専門家集団だということ。コンサルタントの中には、はっきりした根拠もなくそれらしいことを言う方もおられますが、日本エス・エイチ・エルの社員はきちんとした素地の上で、メリットばかりでなくデメリットも率直に話してくれます。そこが信頼できるところです。できないことはできないと言ってもらえるので、こちらも納得します。

みずほフィナンシャルグループの今後の取り組むべき重点人事課題は組織風土改革、指示待ちから自律への変化です。そのためには失敗を恐れず挑戦することが評価されるように変えなくてはいけない。誰に対しても率直に自分の考えを表明できる組織を作り、自分で考え率先して行動する人を増やしていきたいです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 取締役

清田 茂

人事運営改革という言葉にこの取り組みの本質が含まれています。もともと日本型雇用システムには多様な人材の持ち味を活かす仕組みが備わっています。そして、このシステムを正しく運営するには、柔軟性と客観性を併せ持つ人事評価が必要です。しかし、柔軟な評価は容易に主観的な評価に結びついてしまい、主観的な評価が横行する組織は、組織目標よりも評価者の顔色を優先するようになります。
みずほフィナンシャルグループのタレントマネジメントは、本来の制度趣旨に立ち戻り、未来に向けた運営を取り戻す改革といえます。
本件のご相談をいただいたとき、私はみずほフィナンシャルグループのみならず日本社会が大きく動き出したと感じました。上ノ山さん率いる人事グループの皆さんの改革に対する情熱が本件の原動力になったことは間違いありません。タレントアセスメントの導入は客観評価の第一歩にすぎません。引き続き個を活かす組織の実現に向けてお力になりたいと考えております。

三菱自動車工業では、キーポストのサクセッションプランを作成し、パフォーマンスとポテンシャルの両軸により人材を発掘、評価し、動機づけや研修などの次世代リーダー育成プログラムを実施しています。その全容をご紹介します。

※本取材は2021年3月に行いました。ご担当者の役職およびインタビュー内容は取材時のものです。

三菱自動車工業株式会社

事業内容

(1)自動車及びその構成部品、交換部品並びに付属品の開発、設計、製造、組立、売買、輸出入その他の取引業。
(2) 産業用エンジン等及びその構成部品、交換部品並びに付属品の開発、設計、製造、組立、売買、輸出入その他の取引業。
(3)中古自動車及びその構成部品並びに交換部品及び付属品の売買。
(4)計量器等の販売。
(5)損害保険及び自動車損害賠償保障法に基づく保険の代理業。
(6)金融業。
(7)前各号に付帯関連する事業。

業種

自動車製造業

従業員数

14,407人名〔連結 32,171名〕(2019年度末現在)

インタビューを受けていただいた方

有吉 晋作 様

三菱自動車工業株式会社
人事本部 人事戦略部 マネージャー(タレントマネジメント)

インタビューの要約

次世代リーダー人材の不足、育成における透明性や中長期的視点の欠如などの課題を背景に、アライアンスへの加入のタイミングでタレントマネジメントを開始。
タレントマネジメントの主体となる人事諮問委員会を設置、キーポストのサクセッションプランを作成、人材の評価を行うキャリアコーチなどを軸にした、次世代リーダー育成施策を実施。
今後実現したいのは、若手世代からリーダーが育つ土壌の整備と、各部門人材育成との連携により、将来のビジネスリーダー育成に取り組む、全社的なタレントマネジメント。

次世代リーダー人材の不足感を背景に、 アライアンスのタレントマネジメントに参画。

私は購買部門でのバイヤー業務、生産管理部門での生産計画・物流の業務を経験したあと、かねてより希望していた人事部に異動しました。工場の人事業務、本社での新卒採用のマネージャー業務を経て、現在は人事戦略部に在籍し、タレントマネジメント領域を担当しています。

タレントマネジメントが導入された当時、複数の課題がありました。一つ目は、将来の経営を担うリーダー人材の不足感。経営的に堅調でなかった時期もあり、やや受け身の判断をするリーダー層のスタンスが強くなっていました。二つ目が、優秀人材の囲い込み。人員管理を徹底する中で、各部門はパフォーマンスの高い優秀人材ほど抱え込む傾向にあり、育成が停滞する傾向がありました。三つ目は、人材育成における透明性の欠如。客観的なファクトに基づく人選ではなく、特定の上長が主観的にリーダーを選ぶような形で人材育成がされていました。四つ目が、中長期視点の欠如。短期的に成果を出せる人材をリーダーとして選出しており、リーダーとなってからの活躍ポテンシャルが加味されていませんでした。

これらの課題を背景に、2016年にはルノー・日産アライアンスに加入し、三菱自動車もアライアンスのタレントマネジメントに参画することになりました。アライアンスのパッケージでタレントマネジメントを導入できたこともあり、比較的短期間でスムーズな導入を果たしました。

ここからは、タレントマネジメントの具体的な導入施策を紹介します。

1.人事諮問委員会の発足

タレントマネジメント活動の主体となる、人事諮問委員会を発足しました。経営陣がメンバーで、そこにアドバイザーとしてキャリアコーチ、事務局として人事が参加します。人事諮問委員会では、後述のサクセッションプランを議論し、後任候補としてノミネートされた方を次世代リーダー候補人材として特定します。

2.サクセッションプランの作成

議論の土台となるサクセッションプランについて紹介します。当社は、経営上重要なポストをキーポストとして特定しています。このキーポストのサクセッションプランを、キャリアコーチと各部門のトップ、現任者が共同で作ります。キャリアコーチは、このサクセッションプラン作成にあたり、候補者と繰り返し面談を行って、人物の評価をします。社内だけでサクセッションプランを作成すると人材パイプラインが枯渇することもあるため、Buy(採用)、Borrow(出向)などによりパイプラインの充実化に努めています。

3.次世代リーダー候補人材の発掘

パフォーマンスとポテンシャルの両軸で評価します。ポテンシャルの評価の1つは、キャリアコーチとの日々の面談です。奥底にある志の高さなどの評価軸をもとに、5年以内にNext Postに就けるかどうかを基準にポテンシャルを評価していただきます。また、SHLのアセスメントもファクトデータとして活用し、英語などの必須能力も確認します。こうしたポテンシャルとパフォーマンスの両面で認定した人材に対し、施策を行っていきます。

4.経営陣とのクロスインタビュー

施策の一つに、経営陣と次世代リーダー候補人材のクロスインタビューがあります。これは一見地味に思われるかもしれませんが、私はもっとも効果的な施策の一つと考えています。タレントマネジメントを一から始めるなら、まずここから始めることをお勧めします。次世代リーダー候補人材の中でも厳選した方に対して、経営幹部との1on1の面談機会を提供します。最大の目的は、経営幹部に人材をモチベートしていただくこと。話題は、現在・過去の業務、修羅場経験、将来のプランなど様々ありますが、最終的には必ずEncourage(激励と、支援の約束)していただく点をお願いしています。このような地道な声掛けや、経営幹部と話す機会を得たという特別感は、モチベーション形成の面で非常に重要と捉えています。

5.各部門・各拠点への展開

三菱自動車本体の中でも部門ごとに諮問委員会、サクセッションプランを議論する場を作っていますが、同時に海外の各拠点にもキーポストのサクセッションプランを議論する委員会を設定しています。現在、ASEAN拠点を中心に人事諮問委員会を展開しています。まずは各拠点で完結するように委員会を開催していますが、今後は拠点間の人材交流や合同研修が実施できればと思います。タレマネは人材流動の比較的激しい海外の方がむしろ受け入れられやすくニーズも高いので、導入はスムーズに実施できています。

6.リーダーシップ・ディベロップメント・プログラム(LDP)の導入

リーダーシップ・ディベロップメント・プログラム(LDP)は、約半年間、計12日間の研修です。リーダー人材の基礎ビジネススキルやマインドセットの獲得を目的にしています。次世代リーダー候補人材やその候補者を中心に、部門・キャリアコーチの推薦によって、プログラム対象者を決定します。研修でのアクションラーニング、職場での実践をハイブリッドにしたプログラムです。経営層の課題認識やアセスメントの傾向を通じて見えてきた、当社のリーダー人材の弱みの部分を取り上げ、強化しています。研修の効果測定は難しいですが、短期的には研修で学びを得た項目のインプット状況を確認し、中長期的には今後この研修を通してリーダーがキーポストに任命されていくことが、研修成果の一つと考えています。

7.グローバル・キャリア・ディベロップメント・プログラム(GCDP)の導入

最後に、海外の短期派遣プログラムである、グローバル・キャリア・ディベロップメント・プログラム(GCDP)を紹介します。従来、海外拠点の現地語を学ぶ語学研修プログラムがありましたが、現地でのジョブと連動させた武者修行プログラムを加え、2020年度から新たに募集・選抜・派遣を行いました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、海外への渡航が限定されましたので、これから状況を見ながら実施数を増やしていく予定です。リーダー人材の属性として、キャリアの早期に海外経験をしている方は非常に多く、次世代リーダー候補人材の上位層では70%以上が海外赴任、駐在経験があります。経験の濃密さという観点で、リーダー育成に適しているプログラムと考えています。

導入後の課題と、潜在的な問題。

これらの施策の導入後、浮き彫りになった課題があります。まず、人材育成のための理想的なキャリアパスが実現しないことがありました。この点について掘り下げると、根本的にリーダーが育つ土壌ができていないという問題に行きつきます。優秀人材の抱え込みという課題もありますが、より日常のレベルまで踏み込むと、「(自身の)志は何か?」を社員に考えてもらう研修機会や、上司による日々の問いかけ、寄り添いも不足していたのではないかと思います。こうした環境が備わらないと、人材パイプラインが充実せず、リーダー育成が頭打ちになってしまうことが予想されます。

キャリアパスの実現のためには、上司と部下が相互に協力して高め合う環境を作り上げ、また各部門間でも人材の情報を共有し、現場での育成配置につなげてもらうなど、実態との乖離を埋めていく工夫が必要だと感じています。

今後は、一番下のジュニア世代から、全社でDevelopment Cultureを作ることがポイントだと考えています。まず新入社員~3年目あたりまでオンボーディングを行い、社会人の土台を作る。次のステップでは、事業部門においていずれかの専門性を身に付けることを目指し、高いパフォーマンスを発揮してもらう。その中から一部をマネジメント層に育て、さらに情熱を形成し高めたうえでビジネスリーダーを作り上げる、という育成の流れをイメージしています。

今後の展望としては、人材育成の道筋として部門のキャリアパスを充実させるべく、自動車メーカー特有のバリューチェーンを活かし、関係性の強い部門間での異動を仕組み化し、期限付きの異動やローテーションを整備することで、人材育成に寄与できればと考えています。他部署で人間関係を構築できる効果もあり、ストレッチアサインメントにも繋がりやすくなるはずです。また、管理職になってからのジョブローテーションは、組織のパフォーマンスを一時的に落としてしまうリスクもあるので、キャリア早期での育成目的異動を計画的に実施しておくことが組織開発面でも有効です。

その他にも、キャリア開発のPDCAを回す施策として、上司が部下を育てるためのスキル、例えばキャリア研修や1on1研修などを提供したいです。また、部門とのタレントレビューの機会をつくり、各部門にも人材の情報を共有することで、ストレッチアサインメント、ジョブローテーション等、部門の中での人材育成につなげていくことを考えています。

これから変革期を迎える自動車メーカーの中で、社会課題の解決に向けて新しい価値を提供できるリーダーの育成に貢献したいです。部門が10年先を見てビジネスを考えているなら、人事はさらにその先の20年先を見て人材育成のアシストをする必要があり、その点が人事の付加価値であり存在価値だと思いますので、そういう人事になりたいです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング2課 課長

横山 武史

多くの企業が次世代リーダー育成の重要性を認識していますが、それを仕組み化している企業は多くありません。三菱自動車工業はアライアンスのパッケージがあったとはいえ、異例の早さでタレントマネジメントを導入しました。私は三菱自動車工業にタレントマネジメント部が発足した2017年から本件の導入支援を担当させていただきました。この経験での学びは「まず始めてみることの大切さ」です。自社用に調整しながら速やかに導入し、今もなお改善を繰り返しています。
現在は、人材のポテンシャルを測定するアセスメントと、アセスメント結果をフィードバックするキャリアコーチのトレーニングをご提供しておりますが、これからは有吉さんのおっしゃる20年先を見据えたタレントマネジメントに貢献できるよう取り組んでまいります。