オフィスオートメーションからデジタルサービスの会社へと変革を続けるリコー。
なかでも新規事業創造をミッションとする組織のチーム作りに科学的な知見を活用すべく、調査研究に取り組みました。
※本取材は2023年10月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。
株式会社リコー
デジタルサービス、印刷および画像ソリューションの提供
電機機器
81,017名(連結、2023年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方
入佐 孝宏 様
稲井 麻貴 様
株式会社リコー
コーポレート上席執行役員 、リコーデジタルサービスビジネスユニット プレジデント、前 リコーフューチャーズビジネスユニット プレジデント (写真左)
リコーフューチャーズビジネスユニット インキュベーションセンター 事業創造室 BRグループ リーダー、HRBP長 (写真右)
インタビューの要約
デジタルサービスの会社へ変革を進めるリコーは、カンパニー制への移行に際して新規事業創造を組織的に行う「リコーフューチャーズ(RFS)」ビジネスユニットを設けた。
RFSの8つの事業は事業開発の進捗が異なり、また、リーダーのキャリア・人物タイプもそれぞれに特徴がある。組織能力を最大化する、リーダーを中心とするチーム編成への問題意識を持った。
リーダーのタイプによって組織がどのような影響を受けるかをパーソナリティ検査結果とエンゲージメントサーベイスコアを用いて調査した。
パーソナリティ検査結果は「顧客価値の創造をリードする人材・事業創造型のリーダー」としてポテンシャルの高い人材を発掘する際に役立てている。
社会課題を解決する新規事業を生み出す組織、リコーフューチャーズ
リコーは2020年にデジタルサービスの会社への変革を宣言し、2021年には経営機構をカンパニー制へ移行させるとともに、人事面ではジョブ型人事制度の導入を決定しました。現在、グループ本部と5つのビジネスユニットがあり、各ビジネスユニットが事業企画・商品企画から開発設計・生産・販売まで一気通貫した機能を担うなかで自立的にビジネスを運営しています。人事機能においてもHRBPとしてそれぞれのビジネスユニットに所属しているメンバーがいます。
リコーフューチャーズビジネスユニットは、リコーの強みである独自の技術を活用したイノベーションを通じて、新規事業を実現させつつ社会課題を解決していく組織です。現在8つの新規事業を手掛けています。もともとリコーには新しいことに取り組む風土があり、各々で活動をしていました。これら新規事業のうちの8つをひとつのビジネスユニットのなかで運営することで、ポートフォリオマネジメントを進めています。各事業の期待値や事業進捗に応じて、予算含めた投資のメリハリをつけ、事業開発に関する厳しい議論を正しく行うことができるようになりました。

チームの能力を最大化するメンバーの組み合わせを科学的に検討する
8つの事業を見ていると、各チームの特徴が出てきます。例えば、コミュニケーションが得意なリーダーのチームはまとまっているけれどもアイデアが生まれにくい、かたやクリアな世界観を表現することができるリーダーのチームはまとまりが欠けているなど。これらのチームをマージすることが出来たら強力なチームになるだろうと常々考えておりました。
また、新規事業を0から1にする段階と、1から10にする段階とでは求められるリーダーシップが異なるのではないか、またリーダーが必要な経験や能力を備えていない場合には、リーダー及びリーダーを支えるメンバーのチーミングによって補う必要があるのでは、とも考えました。加えて新規事業は未経験の領域に挑むため、経験だけではなく各個人の資質も重要な要素になります。
どのようなメンバーの組み合わせであればチームの能力を最大化させられるか思索しているなかで、別のプロジェクトでリコー国内従業員約3万人を対象に実施したエス・エイチ・エルの パーソナリティ検査万華鏡30のデータを活用できないかと思い立ちました。各事業センターのリーダー数名の万華鏡30を詳しく解説していただいたところ自分が経験を通じて培った「人への見立て」と符合しており、感覚的ではなく科学的に人の資質は捉えられるだろうと確信しました。
リーダータイプとチームのエンゲージメントの関係性を明らかにする
社員直属上司である課長層とその1つ上の階層である室長層の社員の万華鏡30の結果データと2021年に実施したエンゲージメントサーベイの組織別のスコアとを用いて、統計分析を行いました。パーソナリティ検査結果からリーダーのタイプを3つに分類し、室長層と課長層のリーダーのタイプの組み合わせごとに組織のエンゲージメントサーベイスコアにどのような傾向がみられるかを確認しました。
組合せの数(対象となる組織数)が少ないため引き続き検証が必要ですが、大きく2点の発見がありました。一つは室長と課長がどちらも“ひっぱり型リーダー”(メンバーの競争心に刺激を与え、目標達成に向けてチームを引っ張る)の場合、仕事環境、具体的には人間関係の満足度が低くなる傾向があること。この組み合わせはできれば避けたほうがいいだろうと考えられます。もう一つは、同じタイプのリーダー同士で構成される組織の場合は、リーダー・経営層への信頼が低下する傾向があることでした。

調査研究の結果は、個人的な経験や感覚とも符合しました。例えば私(入佐様)はチームタイプの“アイデアマン”と“まとめ型リーダー”の傾向が強く出ており、ときに歯止めが効きづらくなるとも自認しておりますため、リコーフューチャーズの責任者となるにあたっては、私に苦言を呈することができる人材を私のパートナーに選びました。彼の万華鏡30の結果をみると、私の結果とちょうど真逆でした。やはり資質は科学的に分析することができると考えています。
「顧客価値の創造をリードする人材・事業創造型のリーダー」としてポテンシャルの高い人材を発掘するため、私(入佐様)が現在担当しているリコーデジタルサービスビジネスユニット(RDS)では結果を主に二つの場面で使用しています。一つは既にあるサクセッションプランの中でサクセッサーとなっている人材の資質を改めて確認する場面。もう一つは、社内公募で募集しているポジションによっては万華鏡30の結果を面談結果と合わせてみて、適性を判断する場面です。全社的にシステマチックな活用はまだできていません。
私(入佐様)はいくつかのアセスメントを受けていますが、人物タイプを見極めるには万華鏡30が一番適切と感じています。エス・エイチ・エルグループが持つ最新のアセスメントにも興味があり、実験的な取り組みも含め今後も積極的にご支援いただければと思います。
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント
重野 達也
新規事業創造において”個”に焦点を当てる研究には多くの課題が残っています。そのようななかで、今回の研究とその結果の活用は、リーダーの組合せから新規事業創造を捉えようとする新たな試みでした。リーダーのパートナーを誰にするかによって、組織のエンゲージメントスコアは大きく変わります。エンゲージメントスコアが組織の強さと活性度を表しているとすれば、リーダーの組み合わせは極めて重要な人事的意思決定となります。今回の研究から、人の組み合わせと事業創造の関係についての貴重な知見を得ることができました。今後も実験的な取り組みを行いつつ、リコー様の更なる発展に向け尽力致します。
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創業100周年に向けて、多彩なValue Creatorが共創する組織へ。
社員一人ひとりのビジョンの実現をサポートする「人材成長プログラム」についてご紹介します。
※本取材は2022年6月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。
株式会社ポーラ
化粧品、健康食品、ビューティーケア、エステサービス
化粧品製造販売業
1,359名(2021年12月末現在

インタビューを受けていただいた方
岸 夏海 様
人事戦略部 ヒューマンバリューチーム
インタビューの要約
化粧品事業の枠に捉われない新たな挑戦や変革のため、多彩な社員一人ひとりのビジョンの実現に向けたキャリアサポートを行う「人材成長プログラム」が発足。
「人材成長プログラム」は4段階。まずは自身の強みを「知る」、次にビジョンや実行計画を「描く」、オンラインスクールやスキル開発プログラムで「学ぶ」、そして実際の業務で能力を「活かす」。
「知る」のフェーズでは、日本エス・エイチ・エルの万華鏡30を活用。個々人の自己理解が深まっただけでなく、強みを生かした現場でのアサインメントや、社内の人材の可視化が促進される効果も。
社内アンケートの結果、キャリアに対する社員の主体性がアップ。今後も施策全体のPDCAを回していきたい。
既存事業の枠を超えた挑戦のために、多彩な人材のキャリアデザインを支援する「人材成長プログラム」。
弊社は創業100周年の節目に向けて、これまでの化粧品事業の枠に捉われない、新たな挑戦や変革を進めています。組織としてのありたい姿は、多彩な「Value Creator」による共創。社員一人ひとりがValue Creatorとして、最大限能力を発揮し、個人と組織がお互いを高め合う関係の中で、ワクワクするような面白い挑戦により、価値を創出している組織を目指しています。
人事としてValue Creatorの挑戦と成長を引き出すためには、多彩な社員の個の尊重と、チームとしての創発力を最大化しつながりを高めること、そして社員一人ひとりのWillや自らがポーラを通して描いた未来に、自分の意志で向かっていく力強さが必要不可欠だと捉えています。そんな視点をもって打ち出したのが、「人材成長プログラム」という弊社独自のプログラムです。このプログラムは、「知る」、「描く」、「学ぶ」、「活かす」という4つのフェーズに沿って、キャリアを描く機会、成長する機会、そして能力発揮の機会までを提供する様々なコンテンツを実施しています。
「人材成長プログラム」は4段階。自分を知り、ビジョンを描き、 実現に向けて学び、能力を発揮する
「人材成長プログラム」の「知る」というフェーズでは、日本エス・エイチ・エルの「万華鏡30」を用いて、一人一人の個性や強み・弱みを可視化し、自己理解を深めてもらいます。次に「描く」では、今後の自分のキャリアビジョンと実行計画を描きます。具体的にはキャリアデザインのeラーニングや、世代別研修を実施しています。「学ぶ」では、ビジョンの実現に向けて、オンラインスクールや領域限定のスキル開発プログラムを活用しながら、能力開発を行います。最後が「活かす」です。実際に業務に携わる中でさらに成長し、高めた力を最大限発揮していただく。そのために、人事としては適切な異動配置を考えることも課題の一つです。弊社ではタレントマネジメントシステムに社員のスキルやキャリアプランなどを一元管理し、これまでの一律のジョブローテーションを少しずつ個人に合わせたキャリアとすることを目指しています。
これらを体系的に実施しながら、さらに効果を高めるポイントが、上長による定期的な1on1。それぞれのフェーズにおいて上長によるキャリア支援を必須とし、人事と上長は情報連携やフォロー体制を整えながら、人材成長プログラム全体を動かしています。

キャリアデザインの第一歩はアセスメントによる自己理解。 個人の内省だけでなく、適材適所が促進される効果も。
今回、「知る」というフェーズで日本エス・エイチ・エルの「万華鏡30」を活用させていただきました。受検対象は全正社員で、受検後に1時間の「自己理解研修」や上長との1on1での結果の活用を行うことで、さらに自分自身に対する理解や内省を深めています。
導入後の効果は大きく2つあります。一つ目は従業員同士のコミュニケーションです。チームや上司・部下間でお互いのアセスメント結果を見ながら、業務分担を行ったり、個人の強みを生かすようなアサインメントが行われたりするようになりました。二つ目は、人事視点での全社分析が可能になったことです。この万華鏡30の導入により、社員を同一基準で解釈することが可能になりました。
この結果を様々な分析にかけることで、社員の性格傾向がわかりやすく表現され、社内にどのような人材が分布していて、どのような人材が不足しているのかなど、人材分布から育成課題等も可視化されるようになりました。
これらの施策はすべて発展途上ですが、少しずつ変化の兆しが見えてきました。今年の社員アンケートの結果、「自ら主体的にキャリアを描き切り開くマインドが自身に備わっていますか?」という質問に「はい」と答える割合が、昨年と比べ10ポイント以上高まりました。組織として大きな変化が起きるのはこれからと認識しておりますが、今後も情報収集を続け、施策全体のPDCAを回していきたいと思っております。
先般、この取り組みを日本エス・エイチ・エル主催のタレントマネジメントウェビナーでご紹介しました。このウェビナー出演をきっかけに他社の人事担当者と情報交換の機会を得ることができました。お会いした各社さんとも、独自の工夫を凝らしたタレントマネジメント施策を導入されていて大変勉強になりました。今後も情報交換を続けていくつもりです。日本エス・エイチ・エルはアセスメントの専門性が特徴的な会社ですが、人事担当者のネットワークを提供してくれる点も魅力の一つです。
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング3課 課長
横山武史
多彩なValue Creatorによる挑戦と変革という今回のお取り組みは、当社の「人のポテンシャルを見いだし、登用することで能力の発揮を支援する」という考え方と一致しており、私としても大変共感を覚えます。
このお取り組みは2021年11月、岸さんをはじめとする人事戦略部の方に、トライアルで万華鏡30の1on1フィードバックを実施するところからスタートしました。トライアルから数か月間でここまでの仕組みを作り、施策を動かしておられる実行力に感服しました。
また、岸さんの他社と積極的に交流しオープンに情報交換する姿勢、自ら人材データ分析に取り組まれる熱意は、新しいHRパーソンの在り方を示してくれていると感じます。
これからも当社およびSHLのグローバルな知識と経験でお役に立てるよう全力で努めてまいります。
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変化する製薬業界で大きな成果を出す、ファイザーの人材要件定義プロジェクトをご紹介します。
※本取材は2021年4月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。
ファイザー株式会社
医療用医薬品の製造・販売・輸出入
医薬品製造業
約3,600名 (直雇用社員数 2020年12月1日現在)

インタビューを受けていただいた方
岩崎聖子 様
人事・総務部門
インタビューの要約
製薬業界を取り巻く環境やビジネスモデルの大幅な変化を受け、採用要件を刷新。
優秀者の傾向分析や経営層へのビジョナリーインタビューを通し、採用要件を策定。新しい採用要件で選考できるように、評価シートの刷新と面接官へのトレーニングも実施。
今後は、トレーニングチームとの連携や配属先のマネジャーへのメッセージ発信を通して、受け入れ態勢の強化を行いたい。
変わりゆく製薬業界で、新たな人材像の必要性を実感。
私は新卒で入社し、営業と医薬品安全性統括部を経験した後、社内公募で人事企画グループに異動しました。人事企画グループでは、セミナー企画や就業規則の改定などの業務行い、その後再び社内公募で採用グループに異動し新卒採用と外部採用に従事しています。当社は同じ事業部内であっても業務を変える際は公募制を採用しており、各々が手を挙げることでキャリア形成を促します。
今回の採用要件の再定義を実施した背景には、ビジネス環境の激しい変化がありました。当社では10年ほど前に、日本エス・エイチ・エルに協力いただき、MR(医薬情報担当者)の採用基準を設計していました。しかし、医療業界を取り巻く環境に伴い、当社のビジネスモデルは、その頃と大幅に変化をしています。加えて、2年前にはCEOが交代し、企業目的も刷新しました。経営方針も、これまでは合併を繰り返して規模拡大を目指していましたが、サイエンスを原動力とする革新的なバイオファーマになるべく変わりました。

環境変化は医師への医薬情報提供活動にも影響が及んでいます。「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」が2019年4月1日より施行され、今後のMRには今までにも増して新たな役割が期待されるようになりました。更に、コロナ禍以前から病院への訪問規制が厳しくなっており、MRは規制の多い中、オンライン面会などデジタルを活用した新しい手法の提案を余儀なくされました。以前のように足しげく通うのではなく、透明性のある正確な情報を、医師の求めるタイミングで適切に提供することが必要となりました。また、希少疾患などの薬剤開発に伴い、専門医に対してより高度な情報提供が求められるようになってきています。
製造・臨床開発部門は、専門性の高い部門のため、選考においては現場のマネジャーの判断に頼っている部分がありましたが、改めて議論がなされました。臨床開発部門は、世界で同時に発売を目指すため、複数の国や地域で同時に行われる国際共同治験に日本も進んで開発に参加し、ドラックラグを無くすことでいち早く患者様に新薬を届けるため、グローバルな環境でもチームをリードできる人材が必要です。製造部門も世界各国にある約40か所以上の製造拠点がつながっており、各拠点と連携できる社員が必要です。また日本の成功事例を海外へ発信し、ファイザージャパンがグローバルファイザーの中で存在感を高めることに貢献できる人材が重要になってきます。
各部門の新卒採用に対する共通ニーズは、現場で働くスタッフを採用するのではなく、将来のファイザーを牽引するリーダー候補となり得る人材を採用することです。当社は大量採用を行わず、少数精鋭の優秀な人材の発掘に注力しています。日本から世界に発信し、社内外でのファイザージャパンの存在感を高め、ブレークスルーを生み出すことができる人材を意識して採用する必要があります。
優秀者の分析と経営層へのインタビューを通し、採用要件を策定。
採用要件の定義を実施するにあたり、現在活躍している社員の特徴を把握するため、各職種のハイパフォーマーへのインタビューとパーソナリティ検査による調査を実施しました。また今後の展望を踏まえた要件にするため、各部門のトップに対するビジョナリーインタビューを実施しました。総合的に議論し採用時に評価すべきコンピテンシーを採用要件としました。
現在の代表取締役社長である原田からは、既存の枠組みで活躍している営業社員ではなく、より先進的な営業手法を取り入れている業界の社員の特徴を参照すべきではないかという提案がありました。一方で現在活躍している営業社員の傾向を分析したところ、環境変化に強く創造性やエネルギーも持ち合わせていることが明らかになりました。これは、他の産業界でもリーダー層として活躍している人材のコンピテンシーと共通していることがわかりました。このように、他業界の傾向なども参照しながら、近い将来求められる人材について慎重に協議を行いました。
「新しい評価基準ではマル、でも現場でやっていけるかな?」 そうした人材も、採ってみようと後押しする。
今回新しく設計した採用要件できちんと選考を進められるよう、日本エス・エイチ・エルの面接官トレーニングも実施しました。参加者からは、実施してよかったという意見を数多くもらいました。これまで正式な面接トレーニングを行ってこなかったからかもしれません。ロールプレイで専門家にアドバイスいただき、自分の癖を見直すきっかけになったという声が多くありました。
当社のミッションを「患者さんの生活を大きく変えるブレークスルーを生みだす」に刷新したことも相まって、面接官の意識が現場目線の選考(例:医師に良い印象を与える人材か)から、経営目線の選考(例:今後のファイザーの将来を担う人材か)へと変わってきました。今まさに進行している面接でも、今後必要となる人材やこれまで見られなかった価値観を持つ人材を評価できていると実感しています。「この人材は、評価シートでは全部マルがつく。でも、現場でやっていけるかな・・・」。そういった人材に関しても、「採ってみましょう」と後押しする方向に動いています。

採用要件は作成して終わりではない。 人材の受け入れ態勢と継続的なブラッシュアップが必要。
今回、採用要件を刷新しましたが、このあとは新しいタイプの人材を定着させる取り組みが必要です。これについては、二つの施策を検討しています。一つ目は、トレーニングチームと情報共有し、コンピテンシー開発を重視した研修を行うこと。二つ目は、受け入れ先のマネジャーと情報共有し、現場での能力開発を行うこと。採用要件は定義して終わりではなく、こうした施策がうまく連動することにより、現実的かつ効果的に機能するものだと考えています。
また、一度作成した要件が全てではなく、議論を重ね、更により良い内容にしていくことが大切であると考えております。新しい採用要件を用いることで、採用結果にどのような変化を及ぼしたのか、しっかりと検証を行っていく予定です。何よりも、今回のプロジェクトを実施することにより、採用部門の責任者とマネジャー、人事の採用の目線合わせを行うことの大切さを、採用部門が再認識することができたことが大きな成果でした。この採用要件を独自にブラッシュアップしていこうとする部門もあり、よい機会になったと考えています。
これまで採用できていないが、今後必要となるようなInnovativeな発想をもつ人材を採用するには、社内データの分析や社内議論だけでは、固定概念に囚われて不十分です。日本エス・エイチ・エルのような外部の専門集団のサポートを得ながら、豊富な他業界のデータを参照しじっくりと議論を行うこと、常にブラッシュアップしていくことが非常に大切だと考えています。
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング2課 課長
横山武史
このプロジェクトはスタート前の議論に長い時間をかけました。リーダーを内部育成する組織において、現場スタッフに求められる人材要件と、リーダーに求められる人材要件を、どのように採用要件に織り込んでいくべきかが問題でした。
様々な案を検討した上で、今活躍している人材と未来に活躍する人材の違いを把握するため、各部門のハイパフォーマー調査(人材データ分析、インタビュー)と各部門トップへの調査(ビジョナリーインタビュー)を実施することとなりました。プロジェクト計画が立案された段階では、調査結果に基づきさらなる議論を行い、統合した採用要件を作成することとなっていました。しかしながら調査結果を見てみると、ハイパフォーマーの傾向が他業界のリーダーと多くの点で共通しており、また、ビジョナリーインタビュー結果とも多くの共通点が見られました。実行することの重要性を改めて認識しました。
今後もファイザーのタレントマネジメント施策の立案と遂行のお力になれるよう全力でサポートしてまいります。
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マネジャーの育成と動機づけのために、3階層からなるリーダー育成プログラム「リーダーカレッジ」を発足。
大塚商会のタレントマネジメントをご紹介します。
※本取材は2021年12月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。
株式会社大塚商会
システムインテグレーション事業/コンピューター、複合機、通信機器、ソフトウェアの販売および受託ソフトの開発など。サービス&サポート事業/サプライ供給、保守、教育支援など。
情報・通信業
7,429名(連結子会社を含めた従業員数9,119名)※2020年末日現在

インタビューを受けていただいた方
閤師 敏晃 様
株式会社大塚商会
人材開発部 部長
インタビューの要約
「名プレーヤーは名監督にあらず」。管理職候補者に対する体系だったマネジメント教育と動機づけの必要性を実感し、リーダー育成プログラム「リーダーカレッジ」を発足。
リーダーカレッジは3層構造。エントリーレベルである「次世代リーダーカレッジ」では、アセスメント(パーソナリティ検査OPQ)の結果をフィードバック。目指す姿とのギャップや能力開発課題を特定。
候補者のコンピテンシーやスキル、知識レベルなどはプログラム中に適宜評価。情報をデータベース化し、タレントマネジメントに活用する。
今後の課題は、候補者に対する評価をより構造化し、安定的に継続可能な仕組みを構築すること。
名プレーヤーは名監督にあらず。管理職候補者に対する リーダー育成プログラム「リーダーカレッジ」を発足。
当社は2011年から、「リーダーカレッジ」というリーダーシッププログラムを運営しています。この背景には、「優秀なプレーヤーがそのまま優秀な管理職となるとは限らない」という大前提があります。たとえば、かつては売り上げの多い営業社員がそのまま管理職として登用される事例も多くありましたが、当然ながらセールスの能力とマネジメントの能力は別物です。この齟齬は、上司・部下間の関係性の悪化や、退職の増加など、目に見える形で表れていました。「部下は背中を見て育つ」という時代ではなくなりましたし、マネジメントやコーチングは管理職が仕事として行うべきものです。そこで、リーダー育成のためのプログラムを発足し、候補者を集めてリーダーシップについて学ぶ仕組みを構築したのです。
またリーダーカレッジは、管理職候補者に対する動機づけの役割も担っています。当社ではマネジャーにならずに専門職として活躍するキャリアを選ぶこともできますが、「マネジメントの面白さ・醍醐味」も積極的に伝えていきたいと思っています。リーダーカレッジをきっかけにして、管理職に興味を持ってくれる社員が増えたらありがたいと思っています。

リーダーカレッジのエントリーレベル「次世代リーダーカレッジ」では、 アセスメントのフィードバックを実施し、個々人の能力開発課題を明確化。
リーダーカレッジは3階層に分かれており、それぞれの層で志のある候補者に対し、数年間のプログラムでリーダーシップを育成していきます。アカウンティング、ファイナンス、経営戦略など、経営に必要な知識の習得もここで行います。課長になると、一番下の層である「次世代リーダーカレッジ」に入会する権利が付与されます。入会は手上げ式ですが、熱意のある方に入っていただけるよう、説明会で意識づけを行っています。その次の層はゼネラルマネジャーを、その次の層は役員を育成するプログラムとなります。
エントリーレベルである「次世代リーダーカレッジ」では、まず入会した段階で、日本エス・エイチ・エルのアセスメント(OPQ)を行い、現在の本人の状態、特徴をフィードバックします。また、大塚商会が目指すリーダー像を共有し、2年間のプログラムにおける個々人の能力開発課題を明らかにします。この個人データは、タレントマネジメントの一環としてデータベース化されます。なお、大塚商会の管理職に必要とされる資質・スキル・知識のうち、資質の部分は行動傾向の影響が大きいため、OPQをベースにして要件定義しました。
プログラム中のパフォーマンスも適宜、数値としてデータベース化されます。たとえば、リーダーシップやプレゼンや企画などのスキル、ファイナンスやマーケティングなどの知識。これらの情報はタレントマネジメントデータベースとして、活用しています。
今後の課題は、管理職候補者に対するポテンシャルの把握や評価を、構造化して長期的に継続可能な仕組みに落とし込むことです。その一案として今回、取り組むのが、管理職登用制度の構築です。この管理職登用制度では、まず管理職に求められる要件を定義し、足りないスキルや知識などを明確にしたうえで、1年間の教育を人材開発部が行います。そして最終的にアセスメントを行い、登用者を決めていくという内容になります。今後は管理職候補者の評価を人の目に頼らず、構造化・デジタル化し、継続可能な登用の仕組みとして運営していく必要があります。
日本エス・エイチ・エルとは30年近くお付き合いいただいています。最初にお願いしたのは採用テストでしたが、当時から高業績者の特徴をデータ分析で明らかにする手法を行っていました。要望に応じたきめ細かいカスタマイズに対応してもらえ助かっています。人材測定、サーベイなどで客観性を担保したい人事施策を検討する際には必ず声をかけています。当社にとってブレーン的な会社です
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員
清田茂
大塚商会は当社が最も長くお取引をいただいているクライアント様の1社です。閤師さんとは私が駆け出しのコンサルタントであったころにお会いしましたので、同志のような気持ちでお付き合いさせていただいております。閤師さんは常に人事改革に対して強い情熱を持っておられました。採用の改善、営業力の強化、マネジャー育成、次世代リーダー発掘、コミュニケーション改革など、時代の一歩先を行く改革を実践されています。微力ながら、これら改革のお手伝いができたことを大変うれしく思っています。
既にITは産業の中核を成す分野になっており、今後ますます重要性が高まっていきます。劇的な成長が続く業界ではさらなる組織人事の変革が必要となるでしょう。今後も組織の成長を支える人事戦略に貢献したいと考えております。
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「相手に自分の知らない一面があると思えば、かける言葉も変わるのでは。」初任配属での経験から、コミュニケーションにおける相互理解の重要さを再確認し、全社員アセスメントに踏み切った岡谷鋼機の取り組みを紹介します。
※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。
岡谷鋼機株式会社
鉄鋼、特殊鋼、非鉄金属、電機・電子部品、化成品、機械・工具、配管住設機器、建設関連、食品などの国内販売・輸出入
卸売業
連結:5,115名 単体:683名 (2020年2月期)

インタビューを受けていただいた方
岡村卓也 様
小本紗由香 様
岡谷鋼機株式会社
人事総務本部 名古屋人事総務部 人事室 室長(岡村卓也 様:写真右)
人事総務本部 名古屋人事総務部 人事室 プロジェクトリーダー(小本紗由香 様:写真左)
インタビューの要約
新入社員の初任配属をもっとフォローしたいという思いをきっかけに、全社員のパーソナリティ受検を実施。新入社員とOJTの先輩の間のみならず、上司・部下間も含めた、全社的なコミュニケーションの向上を目指す。
社内の協力に不安があったが、予想以上の受検率。さらに、現場が率先して活用しコミュニケーションをとる様子も見られた。
今後は、パーソナリティの相互理解によってコミュニケーションを活性化する取り組みをもっと推進したい。目指したいのは、デジタル×アナログのタレントマネジメント。
初任配属でよいスタートを切ってもらうために、 新入社員のまだ見えていない側面が見たい。
当社は、採用段階から人をよく見て、どういったところに配属されると活躍するのか、いいスタートを切れるのかを一人一人時間をかけて検討しています。新入社員の初任配属に際しては、採用時に得た情報や入社後の様子、適性また配属先の仕事内容、先輩社員など可能な限りの情報を収集したうえで配属を決めます。その情報の一つとしてパーソナリティ検査OPQを活用したいなと思ったのが最初のきっかけです。配属先と新入社員をマッチングするために人事が新入社員一人一人と面談を重ねるのですが、新入社員のOPQを活用する事で、私たちが見えていない、表面的ではない部分の人物像が見えるのではないか、と考えました。
昨今の新入社員は自分のやりたいことがしっかりとあって、キャリアに関する理想像もあるので、「なぜこの部署に配属になったのですか」という質問に対して、フィードバックを行う事もあります。いいスタートが切れる事、その後しっかりと活躍する事を念頭に「君にはこういう良いところがあって、こういう仕事が合っていて、こういう先輩と一緒に仕事をすることで、なりたい自分に近づくよね」というメッセージを送っています。また、配属後は配属全部署の上長に対して、OPQや配属までに得た全情報を活用して、教育方法のアドバイス含めた申し送りを実施しています。

「相手に自分の知らない一面があると思えば、かける言葉も変わるのでは。」 初任配属での苦い経験をもとに、全社員受検に踏み切る。
初任配属でのミスマッチの問題は、OJTでつく先輩とのミスマッチとして表れることがあります。非常にタフな仕事であっても、OJTの先輩と合うメンバーは比較的頑張っていけますが、合わないメンバーはスタートでつまずいてしまうという印象があります。その中で過去に一人、人事としてもう少し違うフォローができたのではないかと悔やまれる事例がありました。事後的に、日本エス・エイチ・エルの担当者にこの事例を相談したところ、OPQの結果から配属前に私たちが見えていなかった本人の特徴が読み取れることがわかりました。もし事前にわかっていれば配属部署により良い申し送りができたのではないか、よいスタートを切れたのではないか、と悔しい思いをしました。
こうした経緯で新入社員のOPQをもっと活用したいと考えたのですが、そうなるとOJTの先輩の結果も気になります。さらに全社でOPQを活用すれば社内のコミュニケーションの質をもっと高められると考えました。初任配属の問題に限らず、上司が正しく部下の特徴を理解しないまま指導しているようなケースも存在すると思います。もし、相手に自分の見えていない一面があるかもしれないと思ったら、かける言葉も変わるでしょう。全社員にアセスメントを実施すれば、上司が部下の知らなかった一面を見る機会が生まれ、コミュニケーションや関係の質が向上していく。こんなことを考えていました。
この構想を上司に話し、育成者の対人関係能力を強化することを人事の目標として掲げ、世の中のビジネス環境を鑑み、OJTのあるべき姿を描いていきました。本部長から「そう思うのであればやってみたら」と即承認をもらいました。これは当社の社風です。一部、社内のコミュニケーション能力が低下しているとは思わないという反対意見もありましたが、ビジネス環境の変化に対応するためには今動き出さなくてはならないと主張し、プロジェクトを開始しました。
心配をよそに、驚異の受検率。背後には、社内共通の成長意欲も。
社員に受検を案内したら予想以上に多くの人が受けてくれました。初期の受検率は98%以上です。はじめは受けてくれなかった方も色々な方法でお願いしたところ、ほぼ全員が受けてくれました。受検後に返される結果報告書(万華鏡)のサンプルを提示したことも奏功し、社員の自分自身を知りたいという思いと強い成長意欲に繋がったのだと思います。

現場では予想以上に積極的に活用。今後はもっと仲間を増やしていきたい。
今後は課長に対してOPQ結果を用いた研修を行う予定です。
予想以上に現場はOPQを活用してくれています。私がOPQ活用の施策を出す前に、ある部署では部署内で結果を開示しながらコミュニケーションをとっているという話も聞きました。入社時の結果がある社員に対して上司がOPQを使ってパーソナリティの変化について対話したケースも出てきました。
私としては、OPQを使ってコミュニケーションを活性化しようとする仲間を増やしていき、全社に波及させたいと思っています。そのために1on1ミーティング等コミュニケーションの幅を広げるアイデアを社内に紹介していきたいです。
今後はデータとアナログを掛け合わせたタレントマネジメントをやっていきたいです。部署ごとに人材データを分析して、そこに敢えて違うタイプの人材を入れ、どのように組織が成長していくかを試していくのも面白いと思います。
従来の採用・配属の方法では特定の人材タイプを採用・配属しがちですが、実際には色々なタイプの人が活躍しています。職務や職場環境と活躍する人材の関係を構造的にとらえ、採用・配属等の人員配置に活用出来ればと考えます。また、アセスメントを定点観測のように活用し、育成目的のフィードバックで使いたいとも思っています。
日本エス・エイチ・エルのコンサルタントには、本当にお世話になっています。アセスメント結果の解釈に不安があるときは、担当コンサルタントに相談して助けていただいています。今後もサポートいただけるとうれしいです。
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント
柳 成美
「気になる社員がいらっしゃるのであれば、OPQではどのように読み取ることができるか試してみませんか?」全社員受検のプロジェクトが決まる約1年前、その様にお声がけしたことを今でも覚えています。配属のミスマッチの問題に直面した時に、原因を社員だけに求めるのではなく、人事としてもっとやれることがあったのではないか?という想いを持ってご相談をいただけたこと、本当にうれしく思います。
この様な新しい施策を導入いただく際、取り組んだ内容がうまく社内に浸透する場合と途中で立ち消えてしまう場合があります。もちろん岡谷鋼機での施策は前者であると、その後の反響を追ってみても強く感じています。施策がうまく社内に浸透するためには、明確な「困った」を解決することを目的としていることと、その「困った」は経営・人事・現場等多様な立場にとって共通した問題であるということが重要です。今回はこの条件が揃っていたことに加え、岡谷鋼機という組織が長年社員一人一人を大切に育てるという風土で取り組んできたことによる賜物だと感じています。
今後は、OPQの活用がより進むような勉強会の実施やデータの分析などで少しでもお役に立てればと考えています。
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工場設備の保全作業で発生しうる災害。
保全員の行動傾向から潜在的なリスクを予測し、マネジメントや指導に活用している事例をご紹介します。
※本取材は2022年4月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。
日産自動車株式会社
自動車の製造、販売および関連事業
自動車製造業
22,825名(単独)

インタビューを受けていただいた方
淡路秀夫 様
日産自動車株式会社
横浜工場 第一製造部 エンジン課 安全健康管理係長
インタビューの要約
工場設備の保全作業で発生する災害について、保全員の安全にかかわる行動傾向を特定するためにアセスメントを活用することを検討。
保全員にパーソナリティ検査OPQを実施し、実際の災害事例と当事者のパーソナリティを照らし合わせたところ、結果と行動事例が一致。潜在的に事故につながる可能性のある行動傾向を抽出することができた。
保全員のアセスメントの結果を、現場の工長(監督者)に共有。潜在的なリスクを持つ行動傾向について理解の上、日々の指導に活かしてもらっている。
保全作業は共同で行われることから、今後はチーム編成にもアセスメントデータを応用したい。特に小集団における意思決定に、メンバーの組み合わせが与える影響を検討したい。
工場設備の保全作業で発生しうる災害。 保全員の安全を守るためにアセスメントを活用したい。
私が勤務する日産自動車横浜工場は、エンジン博物館・歴史資料館を備えた歴史ある工場で、当社の発祥の地でもあります。「全員の高い安全意識で、すべての災害を防止する」を基本理念に、エンジン・モーター・アクスル・サスペンションを主に生産しています。私は設備保全を担当する課に所属し、生産設備のメンテナンスを行う保全員の安全・衛生・健康の確保に努めています。
我々にとって、保全員の安全確保は重要課題となっています。設備の保全作業は、多くが突発的に発生する非定常作業であり、「故障が多岐にわたり」「経験が少ない中で」「早期復旧」のための修理を行わなければならず、その際の安全確保には個人の資質が大きく影響します。これまでは当社独自に開発した個人安全資質評価表を用いて個人の弱点を把握し、個別の安全活動目標を設定の上フォローアップを行う活動に取り組んできました。
しかしながら、「潜在的な危険敢行性」に起因するリスクを伴う危険作業は後を絶たず、これまでの評価表ではとらえられない個人の危険に対する資質を把握する必要性が生じました。危険敢行性とは、「危険を感じ取っていても敢えてその危険を避けようとせず、危険事態に入り込んでいく性質」を指します。このような特徴をとらえることができるアセスメントツールを模索し、当社人事部に相談したところ、日本エス・エイチ・エルを紹介されました。
保全員にパーソナリティ検査を実施。 事故事例と当事者の特徴を照らし合わせると、背景が見えてきた。
日本エス・エイチ・エルのパーソナリティ検査OPQを課員全員に実施し、担当コンサルタントに相談したところ、「潜在的な危険敢行性」を示す特徴を得点で表すことができました。実際に、これまで災害要因として挙げられた行動事例と特徴を重ね合わせた結果、行動事例と得点が合致した結果を得ることができました。
また、複数の災害事例と当事者のパーソナリティから、事故につながりうる行動傾向の知見を見出すケーススタディも実施したところ、危険敢行性とは別に、「違和感を覚えても口に出せない、助けを求められない」というような特徴も、状況によっては事故につながるケースがありました。状況と個人の特徴を照らしあわせることで、事故の背景がより明確にわかるようになり、適切な指導に繋げられるようになりました。
災害当事者と似た特徴を持つメンバーを抽出すると、同様のリスクを抱えると思われる集団を特定することができます。個人が持つ、定量化できない「あやうさ」を、明確に示してくれるのがパーソナリティ検査だと感じます。

余裕がない時にとっさの行動に表れるのが、パーソナリティ。 アセスメント結果を監督者に共有し、リスクマネジメントを行う。
現在は、パーソナリティのデータから様々な因子を組み合わせ、危険行動につながる特徴をもつ可能性の高い方を絞り込み、監督者と共有し、マネジメントや教育に活用しています。心理学分野の専門性がないため時間をかけながらですが、日本エス・エイチ・エルのマニュアルと担当コンサルタントのアドバイスを頼りに進めています。
まだまだ手探りの面もありますが、過去発生した災害事例と個人の行動特性を照らし合わせることで、何故あのような行動をとってしまったのか、という深堀りができるようになりました。災害発生時は当事者も反省しますが、反省だけでは次にはつながらないことが多いです。「このような性格であるがゆえに、このような状況でこのような判断をしてしまった」という背景まで理解することで、監督者からも適切な声掛けや指導ができるのではないかと思っています。特に、余裕がない時や急いでいる時、その人が持つ傾向が顕著に表れます。アセスメントはこうした潜在的なリスクを把握し、適切なマネジメントに役立てることができるものだと思います。
アセスメントの結果は、チーム体制変更時にも活用しています。チームメンバーのコンピテンシーポテンシャルデータを分析することで、各チーム全体としての強みや弱みをとらえることができるようになり、体制変更に伴う各チームの能力変化も把握することができるようになりました。
他事業所保全課においても同様の問題意識がありますので、全事業所の保全安全係長が定期的に集まる会議の場で本事例紹介を行っています。今後は、保全作業が基本的に共同作業で行われることから、小集団における危険メカニズムを分析し、作業者の組み合わせに関するリスク分析についても活用したいと思っています。最終的なねらいは、個人の組み合わせによりチームのパフォーマンスを向上させ、かつ安全に作業できる小集団を意図的に編成できることです。
人事系のコンサルティングを利用するのは初めてでしたが、日本エス・エイチ・エルはコストが手頃であることに加え、担当コンサルタントが包み隠さず丁寧な説明をしてくださるのがありがたかったです。今後こうした安全に関する事例がもっと出てくるといいですね。
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング2課 主任
清水智昭
今回のお取組みはパーソナリティ検査OPQの新たな可能性を見出した稀有な好例です。従来のパーソナリティ検査は実績や上司評価などの「パフォーマンス」を予測するツールとしての活用でしたが、「危険行動」を予測するという新たな活用に、パーソナリティ検査OPQの活用の幅広さに気づかされました。
人事経験のない生粋の技術者である淡路様が「潜在的な危険敢行性」をアセスメントツールから見出そうとなされた本事例は、検証の切り口や着眼点が素晴らしく、多角的で実際に発生した事象に基づいた分析は納得感がありました。
加えて本件の課題は、メーカーの共通課題であると改めて感じました。工場における災害は命にかかわる大惨事につながる危険性を持ちあわせています。誰もが安全に働くことができる、そんな当たり前のことをアセスメントを通じてこれからもご支援させていただきます。
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採用基準の作成から全社員のポテンシャルを活かす適正配置まで、「人材マップ」を用いた森永乳業のタレントマネジメントをご紹介します。
※本取材は2020年8月に実施しました。インタビュー内容は取材時のものです。
森永乳業株式会社
牛乳、乳製品、アイスクリーム、飲料その他の食品等の製造、販売
食品製造業
3,340名(連結従業員数 6,303名)(2020年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方
荒木 久宜 様
森永乳業株式会社
コーポレート本部 人財部人財戦略グループ マネジャー
インタビューの要約
全社員にタレントアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を実施して、採用基準の作成と人材の適正配置を行った。
4象限の人材マップを使って各職種のハイパフォーマーの人材タイプとその比率をとらえ、採用基準、職務適性基準を作成した。基準に基づく採用と配属を実施した。
社員に対してアセスメントの結果をフィードバックし、自分の適性とキャリアについて考える機会を与えると、従来あまり見られなかった他部門への異動希望が増加した。実際に異動した人たちはエンゲージメントが高く、活動が活性化している。
採用基準の作成から始まり、全体の最適配置へ。
私の初期配属は、リテール営業課で、スーパーやコンビニエンスストアへの営業を担当していました。8年間営業を経験した後、人事に異動し新卒採用を3年、社内昇格などを3年担当しました。そこから採用のチーフ兼人材配置担当・ローテーション担当となり、今は人事戦略、人事制度、人件費コントロール等を行っています。
タレントマネジメントのスタートは、まず採用からでした。既存社員にアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を実施し、各職種で「どのような人材がハイパフォーマーとなるか」という分析を行って、それを採用に活かしたいと思いました。社員のアセスメントデータが手に入ると欲が出てきまして、「採用に使うのだけではもったない」となって。OPQの結果をもとに、社員本人に、自分の性格や職務適性を理解してもらい、「こういう仕事が向いているんじゃないか」「こういうチームで働きたい」という前向きな気持ちを持ってもらう機会になればいいと思って、全社員にOPQを実施することにしました。

アセスメント結果を、受検者本人が見てわかりやすいことが一番のポイント。
OPQの結果を本人に渡し、月1回の上司面談の際に使ってもらう任意の仕組みを導入しました。年1回のキャリア希望調査時にOPQを受けてもらいます。キャリア希望調査では、5~10年先に何をしたいのか、その前に経験したい仕事は何か、という質問をして自分のキャリアについて考えてもらいます。それに併せて自分の適性について考えてみてくださいとOPQの受検案内をしました。
アセスメントについては他社も検討しましたが、ずっと採用で使っているOPQを信頼していましたし、このプロジェクトでは本人がキャリアを考える上で使いやすい結果リポートが必要と考えたため、OPQで行うことを決めました。OPQの万華鏡リポートは、アセスメント結果を見慣れていない一般の社員にもわかりやすく、今回の目的に合いそうだと判断しました。

取得したアセスメントデータを分析しようとなったときに、社内ではどうにもならないので、日本エス・エイチ・エルの担当コンサルタントに、適切な分析方法について相談しました。そのときに提案されたのが4象限のマップ上に人材をプロットするという方法。チーム編成の検討に使えるということだったので、やってみたいなと思いました。以前、アセスメントデータを使って部門ごとに得点の平均値を算出したことがありました。部門全体の傾向はわかりましたが、今回は個人の特徴をより正確に把握するため4象限へのマッピングをやりたいと思ったんです。
4象限で人材を分けると、社員にもいろいろなタイプの人が存在するということがわかります。4つのタイプが明示されたことで、経営陣も管理部門であれば「堅実頭脳タイプ」、営業なら「柔軟頭脳タイプ」と検討できるようになり、配属先にもなぜ配属したのかをより根拠をもって説明ができるようになりました。今後はチームを活性化させるための配属や、チームに適合させるための配属といった観点で、活用できないかと考えています。
アセスメント結果を本人にフィードバックすることで、 自己理解が促進され、異部門へのチャレンジが増加。
4象限の各象限に目標採用数を設定することで、人材の多様性が確保でき、新卒でスタッフ部門に適性がある人材も採用できるようになりました。事務系採用は営業職を中心に考えていて、とにかくヴァイタリティが高い人がいいという方針が以前はありました。4象限で人材をとらえるようになってから、「堅実頭脳タイプ」に管理部門のハイパフォーマーが多くいることがわかり、内定者にOPQの結果を示し、「あなたのこういう特徴が活かせるから」と説明して、納得してもらった上で管理部門に配属できるようになりました。また以前は営業のハイパフォーマーをマーケティング部門へ異動させることが多くありましたが、今は新入社員を配属することができるようになりました。去年、OPQの結果からマーケティング適性が高いと判断した学生をマーケティング部門に配属したところ現場から好評を得たという成功事例がありました。こうした取り組みは今後もやっていきます。
また、アセスメント結果を本人にフィードバックしたことで部門を超えた異動を希望する人が増えました。これまでのジョブローテーションは部門内での異動がほとんどでしたが、アセスメント結果から自分の職務適性や組織適性、強みや弱みを知り、自分の可能性に気づく人が増えたのでしょう。その年から、「自分は営業をずっとやってきたけど、マーケティングの仕事の方が向いているのではないか。」と上司に相談するようなケースが出てきました。正確に集計していませんが、こうした異動希望が、10ポイントくらい増えたのではないかと思いますし、実際に異動した方もいます。そういう人たちは異動後もモチベーションが高く、現場にすぐ馴染んで新しいことをやろうとします。このような人が増えることによって組織の活性化が進むと感じます。今後は、FA制度とか社内公募をやっていきたいと構想しています。
今後の課題は保有している社員データを活かしたタレントマネジメント施策を行うこと。まずはチーム編成、配置、ジョブローテーションからやっていきます。将来は、各社員が自分の特徴を理解した上で、どういう仕事をしたいか、そのためにどういう人が必要かを考え、自分で声をあげてチームを立ち上げることができるような会社にしたいと思います。
日本エス・エイチ・エルの良い点は、こちらの要望に対して必ずプラスアルファの提案をしてくれるところ。構想が固まっていない状態でのディスカッションにも根気よく付き合ってくれますし、結論がでないまま終了しても次の機会には必ず提案してくれます。ふと思いついたアイデアでも相談してみようかなと思えますし、一緒にやっていて楽しいですね。多くの企業や業界と取引されているので、異業種の情報をいただける点も助かっています。
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティングチーム 副部長
村井 泰裕
採用だけでなく、タレントマネジメントでも森永乳業のお役に立てないかと考えておりました。そんな時、採用の人財要件定義のため全社員アセスメントとデータ分析が決まり、タレントマネジメントが動き始める予感がしました。
このプロジェクトでは、誰が見てもわかりやすく活用しやすい人材データ分析を提供したいと考え、職種ごとに4象限のマッピングを行いました。この分析結果が人財部の意思決定と社員の自己理解のお役に立てて、とてもうれしかったです。また、プロジェクトミーティングでの荒木さんとの対話は、私にとって楽しく有意義な時間でした。
これからも、森永乳業の組織生産性向上と社員の幸福のために、お力になれるよう努力してまいります。
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安全運航を支える海のプロフェッショナル「海上職」の適性をデータから明らかにする、商船三井の取り組みをご紹介します。
※本取材は2021年6月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。
株式会社商船三井
ドライバルク船事業、油送船事業、LNG船事業、海洋事業、自動車船事業、コンテナ船事業、港湾ロジスティクス事業、フェリー・内航RORO船事業などを含む総合外航海運業
海運業
1,119名(陸上794名 海上325名):他社への出向者等を除く(2021年3月31日現在)
※SMBC日興証券単体

インタビューを受けていただいた方
小林 裕美 様
株式会社商船三井
人事部 採用チームリーダー
インタビューの要約
明確な言葉で定義しづらかった海上職の適性を、データを使って見える化することに挑戦した。
現有海上職社員にパーソナリティ検査を実施し、協力者には万華鏡30を使って結果をフィードバック。若手から役員までほとんどの社員が協力してくれた。
社員の分析結果をもとに採用要件を決定すべくディスカッションを行った。スキルを重視する海上職において、行動特性の重要性を解釈するのに苦労した。
新しい採用要件について社内でコンセンサスを形成し、コンピテンシーを構造的に見極めるために選考手法を改良した。
今後取り組みたいことは、エンゲージメントの向上や乗り合わせの検討を含めた、海上職に対するタレントマネジメント。
誰も言葉にできない「海上職」の適性。 俗人的な判断ではなく、定量的なKPIを設けたい。
私は入社から約10年で営業部、一度目の人事部での採用・育成業務、シンガポール駐在などを経験しました。その後、自分の専門領域として人事の仕事にもう一度取り組むことを希望し、現在は採用と若手の育成に携わっています。今はHRBPなど、10年前とは違う戦略人事の概念が出てきて、経営に近いコアな部分の業務を担える可能性があるということを魅力に感じています。現場と経営をつなぐような立場が担えたらと思います。
採用と育成に加え、今取り組みたいのはタレントマネジメントです。当社はタレントマネジメントシステムを導入しており、配置における運用などは他のチームで検討していますが、私はタレマネシステムで管理されている評価・パフォーマンスデータと採用の人材要件をつなげることに着目しました。採用の人材要件を俗人的な判断ではなく「見える化」して、定量的なKPIを設けたい。これが今回の人材要件設計プロジェクトの始まりです。

最も課題だと感じたのは、事務系の人材要件を海上職にも適用していたこと。海上職は、6カ月間船に乗りっぱなしの非常に特殊な環境で職務を遂行します。しかし、その適性は誰も明確な言葉で説明できませんでした。職務が変われば、当然人材要件も異なるはずです。採用時点のアセスメントデータを活用しようにも、アセスメントツールをころころ変えていたためデータ蓄積がなく、効果測定ができない状態でした。海上職において、採用時点で見極めるべき指標をきちんとしたアセスメントデータを取得して作るべきではないかと思いました。
海上職社員にパーソナリティ検査を実施し、パフォーマンスとの関連を分析。 結果の解釈に議論を重ねる。
海上職の現有社員にパーソナリティ検査OPQを受検してもらい、そのデータをパフォーマンスと紐づけて統計分析にかけることにしました。「社員の傾向をもとに採用要件を作成するため、受検にご協力をお願いします。協力してくれた方には、ご自身の検査結果をフィードバックします。」と社内告知しました。参加は任意でしたが、若手社員から役員までほぼ受検してくれました。最初は反発を受けるのではないかと心配しましたが、特にネガティブな反応はありませんでした。
収集されたデータを日本エス・エイチ・エルに分析してもらいましたが、この結果を解釈するのが今回一番難しかったところ。なぜこのような結果が出るのか読み解かなければならないのですが、私は海上職ではないので確信がもてず、海上職の社員も日頃アセスメントデータを扱うことはありませんので、結果は受け止めていただいたものの、議論をするとなると難しい。もともと海上職はスキルを持っているということが非常に重要であり、行動特性への着目が進んでおらず、これがディスカッションを困難にした一因であったと思います。人材要件に落とし込むまで、何度も人事部内でディスカッションを重ねました。
結果を一部共有すると、海上職は陸上職に比べて、きちんとプランニングして手抜かりなく職務を遂行するというコンピテンシーがとても大事でした。パフォーマンスを発揮する海上職の方は、危険を予知して事前に準備しリスクを最小化するための努力ができます。これは行動的資質の部分が大きく、採用時点で行動特性としてみないと、安全運航で人命を支えている海上職においてはクリティカルな問題になると感じました。
新しい人材要件を見極められるように、採用選考を構造化。
新しい採用要件について社内でコンセンサスを形成した後、選考プロセスを改良しました。日本エス・エイチ・エルの協力のもと、新しい人材要件をエントリーシートの設問から面接での質問事項まで落とし込み、これをベースに面接官トレーニングを実施し、さらに評価のブレを抑制するため、誰でもセルフチェックができるような面接マニュアルを作成しました。これまでの面接は、業務内容を説明して覚悟を問うような場になっていましたが、より構造的に必要なコンピテンシーを見極める場とすべく努めました。今期の採用活動を終え、優秀な方を採用できたと認識していますが、最終的には実際の職務での活躍を見て、検討を続けていく必要があります。
将来的な目標は海上職のタレントマネジメントを行うことです。海上職は就労環境の特殊性から、安定した人材定着に繋がりにくい側面があります。上司のマネジメントによって左右される部分も大きいので、管理職の人材育成・能力開発をする必要があると思っています。また現在、継続的なエンゲージメント調査を行っており、誰が不調を抱えている可能性があるかを人事部がモニタリングしています。このエンゲージメントとパーソナリティの関連を今年検証する予定です。もしかしたら、コンピテンシーに関連する部分で、エンゲージメント低下の原因が見えるかもしれません。また、船での乗り合わせ(メンバーの組み合わせ)も大事です。メンバーが変われば、同じ仕事でもエンゲージメントが回復する場合もあるのです。タレントマネジメントにおける適正配置という概念になると思いますが、乗り合わせの検討にも適性検査が使えるといいですね。
日本エス・エイチ・エルの良いところは、適性検査の信頼性・妥当性の高さ。今回、海上職の採用テストとしていくつかのベンダーの適性検査を比較しました。採用で使用する適性検査には必ず社会的望ましさ(回答者が自分をよく見せようとするために回答がゆがむ効果)の問題が生じますが、自己相対化をさせるアセスメント形式が用途に合っていると感じます。また、担当コンサルタントによるサポートが手厚く、問題を整理する際の議論相手になってくれるため、感謝しています。
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング2課 課長
横山 武史
小林さんが陸上総合職(事務系)の採用のみならず、海上職の採用も担当することになり、このプロジェクトはスタートしました。陸上総合職(事務系)では採用選考におけるデータ活用が進んでおりましたが、海上職では人材要件が明文化されておらず、採用選考が体系化されていないことに、小林さんは問題意識を持たれていらっしゃいました。
海上職の適性を説明できる人がいないというお話しを伺い、OPQの社員受検とハイパフォーマー分析をご提案申し上げました。ハイパフォーマー分析の結果、陸上総合職とは異なる特徴を見つけ出すことができ、海上職の人材要件定義に貢献することができました。当プロジェクトでは要件定義を行ったうえで、採用選考へ落とし込むところまでサービス提供を行いました。
ここからは効果検証に入ります。当プロジェクトを通して海上職採用の改善が見られたという証明ができるまで責任をもって取り組みます。また、今後は商船三井の採用戦略の立案と遂行だけでなく、広くタレントマネジメントのお力になれるよう全力でサポートしてまいります。
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新入社員から部店長までを網羅するキャリアプランと、各ステップで求められる到達レベルに沿った教育研修体系を構築しているみずほリースの事例を紹介します。
※本取材は2021年1月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。
みずほリース株式会社
リースを中心とする法人向け総合金融サービス
金融業
連結:1,804名、単体:735名 (2020年9月末現在)

インタビューを受けていただいた方
横山 幹彦 様
みずほリース株式会社
人事部 副部長
インタビューの要約
新入社員から部店長レベルまで、職系と経験年数・ステップごとに到達すべき行動レベルや知識/スキル、受講研修を紐づけた「キャリアプラン」を構築し、教育研修制度を整備・拡充した。
日本エス・エイチ・エルの担当する「ヒューマンアセスメント研修」は、管理職準備グレードが対象の研修。ロールプレイなどの演習によるアセスメントとフィードバックで、管理職となる上で求められる能力を認識することが目的。
今後強化していきたいことは、育成を主眼とした戦略的ジョブローテーションと、「3C(challenge、change、create)」の一層の推進。
新入社員から部店長までのキャリアプランを明示し、 教育研修制度の刷新に取り組む。
私が人事部に異動して、4年が経過しようとしています。着任してからは労務以外の人事領域に幅広く関わっています。
配属された当初、階層や職系で研修頻度に偏りがあるのが気になったことから、教育研修制度を大幅に見直すことにしました。まず、職系と経験年数に応じて求められるスキルとそのレベルを定義して、明確なキャリアプランを作りました。具体的には、新入社員から部店長レベルまで、職系とステップごとに到達すべき行動、経験、知識/スキル、受講すべき研修を明文化しました。このキャリアプランを作ったことで研修頻度の偏りが是正されました。拡充した主な研修としては、例えば、営業職のソリューション力を強化するために、仮説構築力、発想力、プレゼンテーション能力を鍛える営業系の研修、総合職と比べて手薄となっていた中堅業務職に対する研修などがあります。
このキャリアプランは社内のポータルサイトに掲示されており、社員が全体感を把握したり、求められる到達レベルを目指して自己研鑽したりするのに活用されています。
管理職準備グレードが受講する「ヒューマンアセスメント研修」。
日本エス・エイチ・エルに委託している「ヒューマンアセスメント研修」は、管理職準備グレードに昇格した社員が対象です。この研修の目的は、受講者がリーダーシップや課題解決、企画立案など、管理職となった際に求められる能力の現在のレベルを知り、能力開発目標を定めることです。受講者は、ファクトファインディング演習(情報収集を通して真実を見抜き、課題解決をする演習)や、部下との対話のロールプレイ演習、プレゼンテーションの演習などを行った後、自身の今の能力や特徴について、日本エス・エイチ・エルのアセッサーから個別にフィードバックを受けます。
昇格者はプレーヤーとして実績を残してきた社員です。今後は、自分だけでなく周囲を巻き込んで組織を成長させていく意識を持ってもらい、今後求められる能力、今の状態とのギャップ、自分の管理職としての強みや弱みを考えてもらう機会にしています。アセスメントを、自分で認識している自分と他者から見た自分との違いを知り、あるべき姿とのギャップを認識するための“きっかけ作りの場”として位置づけています。

受講者からは、「今までで一番疲れた研修だ」、「この年齢になってこんなにダメ出しされることはない」といったコメントが多く寄せられます。日常の業務で弱点を直接指摘されることは少ないので、この体験を成長の糧にしてもらいたいと思っています。また、「自分では手ごたえのあった課題で弱みを指摘され、改善すべき点を把握できた」「自分でも認識していない強みや弱みを知ることができた」などの前向きな声も少なからずあり、“気づき”を得ている実感があります。アセスメント結果は上司である部店長にも共有されますが、「弱みが丁寧に解説されているので、今後の育成に役立てたい」などの所見が寄せられています。
育成の今後の課題はジョブローテーション。 個人と組織の両面から「戦略的人事」を進めたい。
人材育成に関して完璧はありません。今後は、社員一人一人の能力、資質、職務経験、キャリアビジョンを踏まえた育成のため、戦略的なジョブローテーションを一層推進していく必要があると考えています。また、個人の能力開発だけでなく、疲弊しているチームがあれば、新しい人材を投入することで活性化させることも重要です。現場の事情や需給バランスなどが障壁となり、ジョブローテーションが社員や組織にとってベストではないケースもあると思います。タレントマネジメントシステムのリリースも間近に控えており、情報の一元化により、より戦略的な人事を行うための体制を整えていきたいと考えています。
2019年、みずほ銀行が出資比率を大きく引き上げ、旧興銀リースからみずほリースに商号を変えて、名実ともにみずほ系中核リース会社となりました。大きな転換期を迎えています。このことでビジネスチャンスが格段に拡がり、即戦力としてのキャリア採用を大幅に増やしています。
旧興銀リースを象徴する形容詞は「堅実」でした。安定している時代なら大きな強みですが、足元の環境は決してそうではありません。現在、challenge、change、createの「3C」を会社の行動指針にしています。変化するため、新しいものを生み出すための起点となるのはチャレンジだと考え、特に重要視しています。
採用に当たっては、「自律」と「多様性」を重視しています。新人と中途入社社員が現場に刺激を与えることで、チャレンジの推進・浸透が加速していくことを期待しています。
また、会社全体としてチャレンジを推進していますが、管理職の中には大きなチャレンジをするのにまだ慣れていない社員もいると思います。ミドルマネジメントの意識や行動を変えていく為には、心理的安全性の確保も欠かせないと思います。
課題は単純ではなくリンクしているので、関われる業務領域が幅広いのはありがたいことです。人事でチャレンジしたいことはまだ沢山ありますね。
私にとって、日本エス・エイチ・エルは「プロ集団」というイメージです。アカデミックで、自社のポリシーがあって、良い意味で迎合しない、プロ意識の高い集団という感じでしょうか。先述の通り、みずほリースはまさに変革のタイミングです。あまり範囲を限定せず、人事領域全般について総合的なお話をしていければと考えています。
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント
畔取 祐介
教育研修制度を改革していく中で、自己理解を能力開発のための重要な機会と再定義され、管理職準備グレードへの研修(アセスメントとフィードバック)を継続いただいたことは、決して単なる継続ではなく、意味と価値の再定義という点で大きなChangeでした。
また、アセスメントを継続してきたおかげで蓄積してきたデータの分析と活用が可能となりました。今後はデータを活用して、貴社のタレントマネジメントの最適化に貢献したいと考えております。横山さんのビジョンの実現に向けて微力を尽くします。
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旧体制の人事から脱却し人事運営改革を進めるみずほフィナンシャルグループ。個を活かす人事運営を実現するためタレントアセスメントをどのように活用したのか、タレントマネジメントの取り組みについてお話をうかがいました。
※インタビューの内容は当時の担当者に取材を実施したものです。また、担当者の役職は取材時のものです。本インタビューは2020年7月に行いました。
株式会社みずほフィナンシャルグループ
銀行持株会社、銀行、証券専門会社、その他子会社の経営管理、その他銀行持株会社が営むことのできる業務
金融業
55,174名(2020年3月連結)

インタビューを受けていただいた方
上ノ山 信宏 様
株式会社みずほフィナンシャルグループ
取締役会室長
インタビューの要約
様々な事業を持つ金融グループになっても旧体制の人事運営を継続しており、優秀人材の資質を踏まえた教育はできていなかった。経営・事業環境が変化する中、人事グループは危機感を強めた。
人の評価に科学的な手法を用いるべきと考え、管理職を除く社員2万人にアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を実施した。
評価者の客観評価スキルを高めるため、上司から部下へアセスメント結果フィードバックを実施。併せて管理職5000人に部下育成にOPQを活用するためのトレーニングを実施した。
この取り組みによって個を踏まえた部下育成の意識が管理職に芽生え、OPQを使った部下マネジメントのための勉強会も発足した。
組織風土を変えることがこの人事改革のゴール。組織風土改革は一朝一夕には実現できず、今後も続く課題。
変化する経営環境に対して、旧体制時代の人事運営では 「勝てるわけがない」と単純に思った。
もともと当社は、大企業や海外を相手にするみずほコーポレート銀行と、リテールを中心とした旧みずほ銀行の、ツーバンクモデルでした。それが2013年に一緒になり、人材の採用と育成の観点で言うと、どうしても「何でもそつなくこなせる人材」を求める発想になっていました。その当時ですら、いろいろな事業が傘下にあって、求められる専門性や資質は全く違うはずだったのですが、判で押したように銀行の支店に配属して、そこから優秀な人材を振り分けていくという発想のままでした。人には向き不向きがありますので、営業店で優秀だった人が、すべての分野で活躍できるなんていうことはありません。結局、古い人事評価や人事運用をずっと引きずっていました。「これで勝てるわけがない」と単純に思いました。
もともと銀行は、人事のやり方に口を出しづらい雰囲気がありました。また、現場の管理職には部下の管理は行うが、人材の確保と育成は人事の責任と考え、人材マネジメントに積極的に取り組んでいるとはいいがたい人もいました。銀行は就職ランキングも高く、優秀な人材が十分に確保できていたという背景もありました。
金融業は一定水準の知能とガッツがあればできるビジネス、と昔は思われていましたが今やそうではなくなりました。競争相手も従来とは全く変わってきましたし、とても今のままの人事管理では立ち行かなくなったというのが実態です。

自然科学における「観察」のように、科学的に人を評価したい。
当時、常務と部長と副部長の私で今後の人材戦略をどうするかを議論していたとき、三人とも競争環境や専門性で他社が強くなってきているというのを肌で感じていました。
社員一人一人の持ち味や資質を把握し、強みを活かす能力開発を行う足掛かりとして、日本エス・エイチ・エルのOPQを資質診断ツールとして使うことを決め、みずほフィナンシャルグループ本体と子会社の従業員約2万人(管理職を除く)に実施しました。自然科学の世界は観察から、エンジニアリングの世界は計測から始まります。人事の基礎は評価だと思いますが、評価は認知バイアスの塊みたいなもので、みんな我流と思い込みで評価を行っています。そんな中で「個の重視」と言っても、らちが明かない。そこで、「人の評価に科学的な手法を用いるべき」と考えました。
日本エス・エイチ・エルを導入した個人的な理由は、私のOPQの結果をみたときに、「ああ、ばれてしまった」と思ったことです。結果を読めば読むほど自分のパーソナリティについて広く深い洞察がなされていることがわかり、「そうだよな」と深く納得しました。このツールは使えるという確信を得ましたね。
旧来の組織風土から、「個」を重視する新しい人事評価へ 変わっていくことの難しさ。
OPQを社員に受検してもらっただけではなく、フィードバック用のリポートを開発し、上司から部下へ結果のフィードバックを行いました。そのために、全管理職約5000名を対象に、OPQの解釈と活用のためのトレーニングを実施しました。
評価者の立場にあるものは、結果的に部下の人事権を持ちます。人事権は組織の戦略にそって行使されるべきものですから、評価者の主観や思い込みで評価することは本来なら許される行為ではありません。しかし、実際は明確な基準も根拠となる情報もないままに「あいつはこの職種はダメだけど、あの職種なら向く」などと言う運用も一部で行なわれていました。そんな中で、きちんと個人にフォーカスして何ができるのか、何ができていないのかを見極めなければならないと思いましたし、評価者は人を客観的に評価できる力を鍛えないといけないという問題意識を持ちました。
苦労したのは、新しい人事運営の方向感について納得感や共感を得ていくところです。「個を尊重する人事評価と言っているけど、本当は違うんじゃないか」という人もいました。このタレントマネジメント施策の導入後、私は異動で人事から離れたのですが、同僚から評価の時期になると「人事が言っていることを額面通りに受け取って良いのか?」と聞かれることもありました。人事制度や運用ルールを変更しても、組織風土を変えなければ人事改革は成功しない、と痛感しました。
今ではだいぶ浸透してきましたが、組織風土として新しい人事評価とその価値観を完全に浸透させるには、これからも現場の理解を促進するための地道な努力が重要だと感じています。
資質診断ツールを使って、部下を理解する勉強会が発足。
この取り組みで良かったことの一つとしては、ERG(エンプロイリソースグループ)※の取り組みの一環で、資質診断ツール(OPQ)を使った部下マネジメントの勉強会が発足したことです。「みずほウィメンズネットワーク」という女性従業員のグループで、会社が女性管理者を増やしていくなかで、管理職ならではの悩みについて話し合っています。このグループの立ち上げメンバーの一人が、資質診断ツール(OPQ)を使って、どのように部下を把握し、どのように部下と接するか、を学ぶ勉強会を始めました。女性管理職はロールモデルが少ないので、この勉強会で学び合っているんですね。この取組みは社内報で紹介されました。
数十人の部下を持つと一人ひとりの人となりを細やかに知ることが難しくなります。OPQは人となりを詳しく表現することに優れていますので、こんな問題を抱えている管理職にはうってつけのツールです。こうしたツールがないと、認知バイアスの影響で、「自分が見たい事実」だけを見てしまうようなことが、どうしても起きるので。 ※エンプロイリソースグループ:共通の特性を持つ従業員同士が特有の問題についての話し合うためのグループ。ダイバーシティ施策として導入する企業が増えつつある。

日本エス・エイチ・エルのいいところは、学問的バックグラウンド。
日本エス・エイチ・エルのいいところは、皆さん勉強していて学問的バックグラウンドがしっかりしている専門家集団だということ。コンサルタントの中には、はっきりした根拠もなくそれらしいことを言う方もおられますが、日本エス・エイチ・エルの社員はきちんとした素地の上で、メリットばかりでなくデメリットも率直に話してくれます。そこが信頼できるところです。できないことはできないと言ってもらえるので、こちらも納得します。
みずほフィナンシャルグループの今後の取り組むべき重点人事課題は組織風土改革、指示待ちから自律への変化です。そのためには失敗を恐れず挑戦することが評価されるように変えなくてはいけない。誰に対しても率直に自分の考えを表明できる組織を作り、自分で考え率先して行動する人を増やしていきたいです。
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 取締役
清田 茂
人事運営改革という言葉にこの取り組みの本質が含まれています。もともと日本型雇用システムには多様な人材の持ち味を活かす仕組みが備わっています。そして、このシステムを正しく運営するには、柔軟性と客観性を併せ持つ人事評価が必要です。しかし、柔軟な評価は容易に主観的な評価に結びついてしまい、主観的な評価が横行する組織は、組織目標よりも評価者の顔色を優先するようになります。
みずほフィナンシャルグループのタレントマネジメントは、本来の制度趣旨に立ち戻り、未来に向けた運営を取り戻す改革といえます。
本件のご相談をいただいたとき、私はみずほフィナンシャルグループのみならず日本社会が大きく動き出したと感じました。上ノ山さん率いる人事グループの皆さんの改革に対する情熱が本件の原動力になったことは間違いありません。タレントアセスメントの導入は客観評価の第一歩にすぎません。引き続き個を活かす組織の実現に向けてお力になりたいと考えております。
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