あなたの会社の従業員は、本当にAIを使いこなせる状態にありますか?それとも単にツールを使っているだけですか?
世界中の従業員がAIを活用していますが、それを真の成果につなげられているのはごく一部です。調査によれば、「使っていること」と「使いこなせていること」の間にはギャップが存在します。人事部門がこのギャップを埋め、生産性の大幅な向上を実現するにはどうすればよいでしょうか。
本コラムは以前ご紹介した「スーパーワーカー」に関する調査研究に関わる、SHLグループのブログ記事をご紹介します。
AIの導入は進んでいるが、レディネス(活用準備)は十分ではない
組織全体で、AIツールは日々の業務に組み込まれており、最近の調査¹では、従業員の約9割が何らかの形でAIを利用していることが明らかになっています。しかし、そのほとんどは、情報の検索や文書の要約といった比較的単純な用途にとどまっています。
実際に、業務のやり方を大きく変えるようなレベルでAIを活用していると回答していた従業員は約5%にすぎません。これは、AIの「導入」と「活用力(レディネス)」の間に大きなギャップが存在することを示しています。多くの従業員はAIツールにアクセスしていますが、パフォーマンスや生産性を大きく向上させるような方法で活用できる従業員ははるかに少ないのです。
SHLのグローバル調査²は、約100万件の評価結果に基づき、今日の労働力のうちAIへの完全なレディネスを備えているのは約30%に過ぎないことを示しています。つまり、3人に2人は、AIを前提とした職務で成果を上げる準備がまだ整っていないということです。AI主導の変革を目指す組織にとって、これは明確なリスクであると同時に、人事部門が的を絞ったデータ主導型の育成を行う大きな機会でもあります。
AIレディネスのある人材は実際に何を行っているのか?
AIレディネスとは、単にChatGPTにプロンプトを入力することにとどまりません。それは、AIと効果的に連携して業務プロセスを再設計し、意思決定を改善し、創造性を引き出す能力を指します。AIレディネスのある人材に共通する行動は以下の通りです。
- ルーチンワークを自動化および効率化しつつ、プロセス全体を根本から見直す。
- AIのアウトプットを批判的に検討し、その正確性と適切さを評価する。
- 技術の進化に合わせて、新しいAIツールを探し出し、習得する。
- AIに関する知識を共有し、AIを活用した新しい働き方への信頼を周囲に広げる。
SHLの調査が明らかにするもの
データを詳しく見ていくと、以下の重要な傾向が明らかになりました。
- 若手の人材はAIに精通しているが、必ずしもAIレディネスがあるとは限らない。新卒入社者は一般的にAIツールに慣れており、その使い方を知っているが、必ずしも組織の価値を高めるような使い方をしているとは限らない。
- キャリア中後期の人材は、AIリテラシーや情報共有に長けていることが多いものの、時に慎重すぎる傾向がある。責任ある利用や、AIを意思決定や目標に結びつけることにおいては一貫性があるものの、実験的な取り組みや業務プロセスの見直し、AIを活用した業務の全面的な再構築には支援を必要とする。
- 地域や業界によって大きな違いがある。AIスキルの応用においてはヨーロッパが先行している。また、エネルギー、建設、小売、ヘルスケアの分野が他の業界よりも進んでいる。
AIレディネスのギャップを埋める方法
SHLはユニバーサル・コンピテンシー・フレームワークに基づいた「AIレディネス」モデルを開発しました。このモデルは、ジョシュ・バーシンの「スーパーワーカー」コンセプトで定義される4つの主要な能力領域にわたる、8つの重要なスキルを測定します。このモデルにより、組織は大規模かつ一貫して、比較可能、実行可能な形式でレディネスを測定することができます。
これにより、「AIレディネス」は、ベンチマークやトラッキング、そして人材に関する意思決定に直接結び付けることができるものとなりました。レディネスが可視化されることで、様々な取り組みが可能になります。 以下の通りです。
「AIを積極的に活用し、主導していく人材を特定する」
「変革のリスクを軽減する」
「従業員の成長と俊敏性を促進する」
「AIを、破壊から成長の増幅器に転換させる」
- AIを積極的に活用し、主導していく人材を特定する:組織は、日常業務でAIを応用できる人材、AIでイノベーションを起こせる人材、そして新しいAI搭載ソリューションを推進できる人材を客観的に評価できる。
- 変革のリスクを軽減する:組織は、AI関連のスキルギャップを明らかにし新たな役割で成果を出せる人材を特定し、スキルベースの採用戦略にAIレディネスを組み込むことができる。
- 従業員の成長と俊敏性を促進する:組織は、従業員に対し、AIの影響を恐れるのではなく、AIスキルを身につけてAIと協働することに自信を持てるよう、明確で透明性のある知見と的を絞った能力開発の道筋を提供することができる。
- AIを、破壊(Disruption)から成長の増幅器(Multiplier)に転換させる:AIは今後も、制度やシステム導入のスピードを上回る速さで進化し続ける。人事部門の役割は、この進化が人間の能力を圧倒するのではなく、むしろ強化するものとなるようにすることである。
おわりに
AIレディネスの個人リポートや集団のインサイトはグローバルスキルアセスメントを受検している場合に利用可能です。現時点ではSHLグループより英語版のみご提供しております。グローバルスキルアセスメントは、最近日本でも販売を開始したGraduate +8.0 Job Focused Assessmentにも含まれております。ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひ貴社担当者までご連絡ください。
このコラムの担当者
廣島 晶子
日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント 主任
入社以来、アセッサーとして延べ100名以上の管理職アセスメントやフィードバックに従事。面接・グループ討議等の行動観察評価に精通し、評価シート設計や評価者養成も多数手掛ける。現在は、SHLグループ海外拠点との連携や最先端ナレッジのローカライズを推進。グローバル認定講師として、適性検査解釈コースの講師も務める。実務現場の評価視点と世界標準の知見を融合させた、科学的根拠に基づくHRソリューションの発信に注力している。