部署内のコミュニケーション改善のため、チーム長制度を導入した愛知製鋼。
コミュニケーションの要を担うチーム長の育成に、アセスメントをどのように活用したのかをご紹介します。
※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。
愛知製鋼株式会社
鋼材、鍛造品、電磁品の製造と販売
鉄鋼業
2,687名(2020年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方
杉浦裕樹 様
愛知製鋼株式会社
人事部 人材開発室
インタビューの要約
上司部下間のコミュニケーション不足の解消と、若手にマネジメント経験を積ませることを目的に、チーム長制度(4~7名の小集団をチーム長が束ねるという制度)が発足した。
チーム長の研修として、コミュニケーションの基礎となる自己理解を促進するために、OPQを導入した。
OPQを部下とのコミュニケーションの改善に役立ててくれる人もいた。チーム長制度の導入から、マネジメントアンケートの評価は向上してきている。若手をチーム長に登用して研修を受けさせるというサイクルが定着してきた。
当社はかつて少人数によるチーム体制をとっていたのですが、2003年に組織のフラット化をしまして、室長がすべての部下をマネジメントするという組織体制になりました。しかし十数年たつと、上司と部下のコミュニケーションが不十分で、若手の育成や指導が行き届かないという問題が出てきました。そのため、もう一度4~7名の小集団の体制に戻して、細かな指導やコミュニケーションを行っていきましょうということで、2016年頃にチーム制を再導入しました。
「チーム長」というポジションは基幹職の登竜門になっており、チーム長制度は二つの目的を持っていました。その二つというのは、チーム長が小集団を束ねてチーム内のコミュニケーションの活性化を図っていくこと、管理職になったときに円滑に業務を遂行させるためチーム長となった若手に小規模のマネジメントを経験させることです。
チーム長に任命された人の反応は様々でした。もともと役職についてなくても後輩育成を行っていた人からは、きちんとチーム長に任命され指導がやりやすくなった、という声がある一方でプレイヤーとしての業務が忙しい中で責任が重くなったと感じる人もいました。
コミュニケーションの基礎は、自己理解から。
新任チーム長のための研修に、チーム長自身の自己理解のためのアセスメントとして、OPQを活用したコミュニケーション改善のプログラムを取り入れました。きっかけは、数年前に新卒採用で日本エス・エイチ・エルの適性検査を導入した際に、「めっちゃ当たってる」と僕がベタ惚れしたこともあったのですが、コミュニケーションのスタイルを的確に分析できる指標を探した結果として行き着いたのがOPQでした。そもそもチーム長を強化しようとした背景は、チームのコミュニケーションの活性化を図っていこうということなんですが、まずは相手のことを知る以前に、自分のことを理解して、「僕ってこういう人間なんだな」「こういう傾向があるんだ」ということをわかったうえで、「じゃあどうやって相手と接しよう」「僕はこういうところに気を付けないと地雷を踏むな」とか、そういうことを考えるべきではないかなと思っていたんです。そのために、とにかく自分を理解するのに最適なツールを探していました。就職活動中の学生にも自己分析をさせますが、それと同じですね。その際に、「僕ってこういう人間かなあ」と一人で考えても納得感がないので、だったら定量的に見えるものを使って自己理解をしようということで、日本エス・エイチ・エルにお願いしました。

日本エス・エイチ・エルのアセスメントを選んだ理由は、僕が自分の結果を見たときに、新たな自分を発見できたというのもあります。たとえば勝気なところは認識が一緒だなと思ったんですけど、違う部分で意外な傾向が表れた部分もあって。「俺ってこういう傾向ある?」と人に聞いたら「うーん、あります」と。自分が無意識にとっている行動も結果に表してくれるアセスメントだったら自分の新たな側面を発見できるなと思いました。
実際に、研修を設計運営して思ったことは、コミュニケーションにおける自己理解の大切さを伝えるのは難しいということです。自己理解の重要性をいかに人事として伝えていくかというのは今でも課題ですし、当時は思うようにいかないなと思うこともありました。
逆に良い点は、自分と部下の結果を照らして、「自分と部下はこういう相性なんだ」、「こういう喋り方をすると伝わりにくいのか、だからコミュニケーションがうまくいかないのか」といったことを数字で見ると、特に技術系の人は良く理解してくれます。なんとなく、で言われても彼らは納得しづらいので、その点を定量的に見せて、「だからこういうふうにしたほうがいいですよ」という説明を加えることで、活用してくれる人はいました。チーム長たちが率先して行動を変えてくれれば、いずれ会社がいい方向に向かうと思うので、これは嬉しかったですね。
チーム長だけが対象ではないのですが、職場マネジメントアンケートを2年に1回とっていて、いわゆるマネジャーのマネジメントに対する評価を調査しているのですが、アンケートの結果は年々向上しています。コメントを見ても、小集団規模でうまく組織が回っているという声はあります。
あと、チーム長に若手を積極的に登用して、この研修を受けさせて自己理解させる、という流れが出来てきたと思います。基幹職の意識もチーム長は若手にやらせるものだと変わってきました。
今後は、チーム長が評価者となる仕組みを導入することを検討しています。現在、チーム長の上の室長が評価していますが、メンバーを一番近いところで見ているチーム長に評価とフィードバックをやってもらい、適切にPDCAをまわせるようにしていきます。今はチーム長に対してコミュニケーションや指導を軸にした研修を行っていますが、今後は評価を研修に含める必要があると思っています。
個人的には、チーム長のアセスメントデータが蓄積されてきたので、チーム長適性モデルを開発し、次期チーム長候補の選抜や採用選考の基準として使うことも検討したいと思っています。単一のチーム長適性モデルを作ると、同じような人がチーム長になってしまうので、複数のチーム長タイプを想定して分析したいです。当社は保守的な会社ですので、人を数値化することに慎重ですが、定量的なアプローチで人事からの提案の納得性を高めたいです。
日本エス・エイチ・エルとは長い付き合いで信頼しています。人の特徴を正確に表すアセスメントツールとアセスメントツールを活用したタレントマネジメントのノウハウを持っているので、当社のタレントマネジメント施策を一緒に進めてもらえる会社だと思っています。めちゃくちゃ融通利かせて、当社に寄り添ってアレンジしてくれるので助かっています。今後も先進的なアセスメント活用手法について情報提供してもらいたいと思っています。
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 名古屋オフィス長
杉浦 征瑛
偶然同じ苗字であった杉浦さんとはHR以外の分野についても同じテーマに関心を持っていることが多く、初めてお会いした時から幅広い意見交換をさせていただきました。マネジメントは「人を動かして、組織目標をなんとか達成する」ことですので、人を動かすためのコミュニケーションが欠かせません。コミュニケーションは相手が動くことを目的としており、自分の言動を相手がどのように知覚するのかを知るために、自己理解と他者理解が重要になります。マネジメント力強化のために「自己理解」を取り入れるのは、一見突飛に見えますが実は本質的な取り組みです。研修設計のための行った杉浦さんとの議論は私にとって有意義な経験となりました。今回の研修でのメッセージは、繰り返し形を変えて伝えていく必要があるものです。引き続きお力になれればと考えています。
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優秀社員との対話でみえてきた採用基準の問題点。
真の優秀人財を採用するために日揮ホールディングスが取り組んだ活躍する人財の可視化プロジェクトをご紹介します。
※本取材は2020年7月に実施しました。内容は取材時のものです。
日揮ホールディングス株式会社
グループ人財・組織開発部 人財開発チーム
国内における各種プラント・施設のEPC事業および保全事業
プラントエンジニアリング
7,607名(2020年3月31日現在 連結)
タレントマネジメント課題
業務への適応力が高く、多様性に富む魅力的な人財を、将来にわたって採用する。
面接官の勘や経験によらない客観的な面接評価の仕組みを導入する。
多様な人財を採用するための新しい採用基準を作る。
採用活動を短期に終えるため効率的な選考プロセスを設計する。
導入したタレントマネジメントソリューション
入社10年目以上の社員にタレントアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を実施
社員アセスメントデータを分析し、社員の傾向を把握
分析結果に基づく採用プロセス設計支援(面接評定表の改善、面接官トレーニングの実施)
得られた成果
職種ごとの行動特性と活躍している人財の行動特性が明らかになった。
採用選考の合否判定の信頼性が高まり、選考を効率化できた。
社員の行動特性を可視化したことにより、問題が浮き彫りになり人事課題が明確になった。
マネジメント層の人や組織に対する関心が高まり、社員の多様性を活かそうとする意識が芽生えた。
目的/課題
プラントエンジニアリング業界は、韓国企業、中国企業の参入でコモディティ化が進み、厳しい競争環境にありました。人財は特に重要な競争力の源泉です。当社では「業務に対する適応力が高く、多様性に富む魅力的な人財」の獲得を方針に採用活動を続けてきました。また、入社後もこの方針に基づいた人財育成を行ってきました。しかしながら、この採用と育成の活動は人事と現場管理者の「勘と経験」によって支えられており、科学的な根拠に基づく採用基準・育成基準、選考プロセスや面接手法、研修内容やOJTプログラムは存在しませんでした。
優秀な人財を採用するには、優秀な社員を知らなければいけません。当時の担当者はこう語ります。「私は現場に足を運び、たくさんの優秀な社員と積極的に対話しました。そこで気付いたのです。今まで採用面接で重視していた人財要件と実際の優秀社員の特徴は違う。話せば話すほどその違和感は大きくなっていきました。採用面接では「リーダーシップ」「チームワーク」を評価していましたが、これらの能力に長けていなくても大きな成果を生み出し、周囲からの人望が厚い社員はたくさんいました。」
もう一つの違和感は、採用面接の経験の中で生じました。「面接基準である「リーダーシップ」「チームワーク」に定義が示されておらず、面接官によって評価の視点はバラバラでした。リーダーシップを人望で評価する人、影響力で評価する人、責任感で評価する人のように面接官は好き勝手に面接基準を定義して自分の好みの学生を合格にしていました。」
データ分析に基づく妥当な採用基準を持つことと、採用基準を誰にでもわかるように定義すること。この二つが求められていました。
採用基準を改善するきっかけとなった2つの違和感・今まで採用面接で重視していた人財要件と実際の優秀社員の特徴は異なる・面接官によって面接基準「リーダーシップ」、「チームワーク」の定義が異なる |
導入/経緯
社員のパーソナリティを役職、等級ごとに把握するため、タレントアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を実施して、結果データを集計・分析しました。
タレントアセスメントに日本エス・エイチ・エルのOPQが選ばれた理由は、グローバルに認知されているツールであること、科学的な手法で開発されており、品質に関するデータが開示されていること、人事部員で実施したトライアル受検の結果の主観的納得感が他のツールより強かったこと、の3つでした。パーソナリティの個人差を客観的なデータで把握することが期待されました。
OPQが選ばれた3つの理由1.世界中で知られており、使われているアセスメントツールであるため。2.科学的な開発と開発データが開示されているため。 3.トライアル受検の結果が納得感のあるものだったため。 |
アセスメントの対象者を入社10年目以上にしたのは、業績、能力、特徴の個人差がはっきりするのに10年かかると判断されたためです。社長からの働きかけで、多くの社員が受検し、統計分析に十分なサンプル数が確保できました。
分析では、役職・等級ごとの特徴を明確化することに加え、多様な人財がいることを検証するため、パーソナリティタイプ別の社員数を集計し、優秀社員はどのタイプに何人存在しているかを調べました。これらの分析結果をもとに人事部内で議論し、採用基準が完成しました。さらに、多くの面接官や現場マネジャーに興味を持ってもらうため、分析結果に関する説明会が開かれました。
成果
社員全体の特徴として「問題解決力が高い」という結果が得られたため、「問題解決力」を採用基準としてました。一方、これまで重視してきた「チームワーク」は職務遂行能力とあまり関係がないことが判明しました。「問題解決力」型人財が多くいる集団に「チームワーク」型人財が入ってくることのメリット・デメリットについて、既に発生した人事上の出来事に照らしながら有益な議論が行われました。
職種、役職、等級ごとの差異も明らかになり、採用以外の人事施策を考える材料となりました。OPQによって社員のポテンシャルが可視化されたことで、部門マネジャー、プロジェクトマネジャーが人や組織により強い関心を持つようになり、上司部下の相互理解が進み、多様な部下の持ち味を活かそうとする意識が芽生えました。
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激化するグローバル競争を勝ち抜くため組織体制を強化するジェイテクト。
タレントアセスメントを用いた経営人材の発掘と育成の取り組みをご紹介します。
※本取材は2020年9月に行いました。内容は取材時のものです。
株式会社ジェイテクト
人事部 人事企画室 企画グループ
ステアリングシステム、軸受、駆動部品、工作機械、電子制御機器などの製造・販売
製造業
49,933名(2020年3月 連結)
タレントマネジメント課題
グローバルに活躍できる経営人材の発掘、育成
現在の業績と行動評価だけではなく、上位職におけるポテンシャルを加味した登用審査の実現
複数事業部門で、横串を通した人材評価制度の構築
導入したタレントマネジメントソリューション
管理職及び管理職候補者へのタレントアセスメントの実施(タレントセントラル:知的能力テストVerify、パーソナリティ検査OPQ、意欲検査MQ)
管理職のコンピテンシーモデリング (マッピング、データ分析)
OPQによる自社独自の管理職適性尺度の開発
得られた成果
管理職としてのポテンシャルを勘案した科学的な登用検討が、できるようになった。
どのような特性を持つ人材が管理職として活躍するのかを、データで明らかにすることができた。
事業部門独自の人事施策にもデータ活用が広がった。
目的/課題
ジェイテクトは、軸受メーカーの光洋精工と工作機械メーカーの豊田工機が合併し、2006年に発足した会社です。ステアリング、駆動、軸受、工作機械・メカトロなどの多様な領域でナンバーワン製品・オンリーワン技術を保有しているグローバルメーカーですが、グローバル企業としての組織基盤や体制が整っていませんでした。自動車関連事業を始めとして各事業ともグローバル競争は激化しており、事業をリードする強い経営人材の発掘育成が喫緊の課題でした。
一方で、これまでの管理職登用は各評価実績を中心に登用しており、「複雑化する社会のニーズに応え、事業をリードする管理職として相応しい資質を持っているか」という点を踏まえた登用ができていないという課題がありました。
導入/経緯
「管理職としての資質」を測定するアセスメントツールの選定にあたって、予測妥当性の高さやグローバル対応(多言語で実施可能、世界中の比較データを持つこと)、育成施策への展開の容易さなどの観点で検討がなされました。グローバル対応ができる海外のアセスメント会社も検討した上で、アセスメントツールの品質の高さと日本での活用支援体制が整っているという点からSHLのアセスメントツール「タレントセントラル(知的能力検査Verify、パーソナリティ検査OPQ32、モチベーション検査MQ)」が選ばれました。
登用審査の導入前に、現管理職に対してタレントセントラルを実施し、第一線で活躍している人材の特性をデータで明らかにしました。全社共通の価値観「ジェイテクトウェイ」との対応関係も整理した上で、管理職の人材要件定義を行いました。
アセスメント結果から自社独自の管理職適性得点を算出し、各事業部門に共有することで、登用検討に客観的なポテンシャル情報を組み込む事ができるようになりました。
成果
事業部門に関わらずジェイテクトの将来を担う管理職の人材要件を明確化でき、科学的手法を用いた測定の仕組みを構築できたことが成果でした。この取り組みをきっかけに、これまで目的毎に異なっていた新卒採用から人材育成に関わる全てのアセスメントツールを一本化しました。これにより、各人事施策で比較可能なデータを入手・蓄積することができ、横断的にタレントマネジメントを改善していくことが可能となりました。
また、各事業部門で独自に行っている人材育成施策にもSHLのアセスメントが活用されるようになり、人材データの活用が活発になったのも大きな成果の一つです。
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感覚的な判断が支配する人事の世界に、科学的な目線を導入する第一歩。
「面接員の主観・評価傾向」をデータで可視化する三井物産の取り組みを紹介します。
※本取材は2020年7月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。
三井物産株式会社
金属資源、エネルギー、ヘルスケアなどの分野における多種多様な商品販売と各種事業の展開
卸売業
5,676名 (連結従業員数45,624名)(2020年3月31日現在)

インタビューを受けていただいた方
清水 英明 様
三井物産株式会社
人事総務部人事企画室 マネージャー
インタビューの要約
主観的な面接評価に対する課題意識があり、面接員の「評価の目線」を科学的・定量的に可視化することに挑戦した。
学生と面接員へのアセスメント(パーソナリティ検査OPQ)を行い、面接員の評価傾向を分析した結果、面接員ごとに固有の評価傾向(評価のクセ)が浮き彫りになった。
適切な評価を行えるように面接員トレーニングを拡充し、面接手法の改善に成功。
今後の目標は、「人事にデータを使う」ということを、人事総務部の施策に浸透していくこと。数字や明確な根拠に基づく、科学的なタレントマネジメントを推進していきたい。
「なぜ合格?なぜ不合格?」科学的じゃない採用の世界に危機感。
私は大学で農学を勉強しており、大学卒業後、青年海外協力隊としてアフリカで果樹栽培指導員として活動し、その後、大学院でアフリカの農家に関する調査研究をしました。三井物産に入社し、食料部門のチョコレート原料などのトレーディング、シンガポール駐在時の戦略企画業務、再び食料部門の乳製品のトレーディング・事業投資などに従事していました。学生向けのインターンシップに現場社員の立場として協力したことが契機となり、当時の採用担当の室長から「人事総務部に来て採用を担当しないか」というお声がけをもらい・・、といった流れで人事に異動してきたという経緯です。
人事に来て初めての採用面接を終えた夏。採用って“科学じゃない”なぁと思いました。この学生はなぜ合格?なぜ不合格?これって科学的に説明できるのだろうか、何に基づいて判断しているのだろうかと。人事の世界は感覚的に判断している部分が多く、面接員の主観に基づいて意思決定されるところに危機感を持ちました。ちょうどその時、前任者が進めていた日本エス・エイチ・エルのパーソナリティ検査OPQによる人材可視化プロジェクトを引き継いだので、彼の蓄積してきた知見をどうにか使えないだろうかという気持ちもありました。
まずは面接員へのトレーニングが必要と考え、研修内容を作りこんでやってみたはいいものの、結果としては従来の傾向に変化はありませんでした。2年目の採用面接でも、私のモヤモヤは残りました。

面接員の「主観」は数字にできる!採用から科学的人事への第一歩。
このままじゃいけないと思っていた矢先、日本エス・エイチ・エルからある分析事例についてのダイレクトメールを受け取りました。その分析というのは、面接員の評価傾向をOPQで定量化・可視化するというもの。「これ、使える!」とスイッチが入りました。どのように面接員の評価傾向を可視化するのかを尋ね、自分で分析してみたところ、面接員の主観や評価傾向が明らかになり、これはすごいことになりそうだと思いました。まずはインターンシップに参加する学生を選ぶ面接で試してみました。面接参加者のOPQの各因子得点と面接評価点を分析してみると、予想通り面接員毎の「主観」の傾向が出たので本格的に動き出しました。
この取り組みに日本エス・エイチ・エルのアセスメントを用いたのには、いくつかの理由があります。日本エス・エイチ・エルの主催する勉強会に頻繁に参加していたこと、グローバル展開していること、継続的に面接員トレーニングを依頼していたこと。また、重要なのは相手の価値につながるかどうか、こちらが何を売りたいかではなく、相手が何を求めているかが第一、という私自身が営業時代に大事にしていた価値観を言葉にせずともわかってくれる。それが日本エス・エイチ・エルに色々と相談している理由です。

三井物産に必要な人材を採用する、集中的な面接員トレーニングに成功。
面接員の分析によって得られた結果は2つあります。一つは、面接員個々の評価の可視化。それぞれの面接員がどのような学生を合格にする傾向があったか。言わば個々の主観の数値化です。もうひとつは、三井物産の面接全体の評価傾向の可視化。全面接員の評価を通じて、どのような学生を合格にする傾向にあったかです。これらは面接評価点とパーソナリティ検査OPQの各因子得点との相関関係を分析することで検証できました。

最初にこの傾向をつかんだので、インターンシップ選考の時に構造化面接を導入し、着目すべきパーソナリティ因子について深堀をする設計にしました。その結果、評価傾向の波形が、意図した通りに変化しました。つまり、面接員の評価傾向は数字にできるし、面接の設計によってある程度コントロールできる、ということです。
そこで当社の求める人材はどういう人材か、求める人材を選抜するためにどのような面接を行うべきかを再検討し、面接員トレーニングを作り直しました。まずは当社社員として必ず必要となる、ある一つの側面に焦点をあてて1次面接をしようと面接員に説明しました。加えて面接員に過去3年分の自分の面接評価傾向を見せ、自分の主観の傾向や見逃しがちな点について意識づけし、本選考を実施しました。その結果、願った通りの結果となりました。
もう一つの企みは、データに基づく人事施策への意識醸成。
私にはもう一つの企みがありました。「人事に数字を使う」という意識を、現場社員である面接員や人事総務部全体に醸成することです。こういった取組が、数字や明確な根拠に基づく科学的なタレントマネジメントをするべきだという意識醸成につながる第一歩にしたいと思っていました。面接員が普段仕事をする現場でもそういう考え方が浸透するのは大事なことですよね。人事施策はデータに基づいて行うものだという雰囲気を作るつもりでやっていました。
今後のタレントマネジメントの進め方についてですが、まずは各自が脳内に持っている、人に対する印象や記憶を、できるだけ客観データに変換して蓄積していきます。あるポストの候補者を探そうというとき、上司の直感だけで「あいつだ」と決めてしまうと、情報範囲が限定的になってしまう。頭の中の情報を客観的なデータとしてアウトプットして、そのデータを使いながら配置を検討すべきです。候補者として世界各国で採用された人が同じように並び、比較され、よりポストに見合った人が配置される、そういうタレントマネジメントが理想です。
頭の中の情報をアウトプットすることは今回の分析と繋がっています。主観的な面接評価傾向を客観的な数値に置き換え、より良い方向へ最適化していく、そういった取組をグローバルタレントマネジメントでも実現したいですね。

今、私は次世代の人事総務システムプロジェクトを担当しています。このプロジェクトには国内の人事給与システム再構築とグローバルタレントマネジメントという二つの柱があります。これまでは日本で採用された社員が中心だった人材情報の可視化を海外で採用された人材にも拡げ、その人材データをもって適材適所を検討できるようにプロジェクトを進めています。ちなみに、グローバルタレントマネジメントについての問題意識はシンガポール駐在時の経験によって形成されました。現地で採用された優秀な社員は三井物産でのキャリアに限界を感じていました。これでは本当の適材適所ではないですよね。また、会社が今後目指す方向であるグローバルマーケットにおいては、多様な人材のポテンシャルを最大限に活用する必要があります。今はまだこれらを推し進める仕組みが十分とは言えません。
グローバルタレントマネジメントに関する日本エス・エイチ・エルへの期待として、人材アセスメントにおいて蓄積するデータ・分析手法・結果の活用について、ぜひアドバイスが欲しいですね。
次世代の人事・総務システムプロジェクト・二つの柱
- 国内の人事給与システムの再構築
- グローバルタレントマネジメント
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング2課 課長
横山 武史
清水さんから面接員の評価傾向の可視化について話をいただいた際、私は評価傾向をとらえた後、その結果をどのように具体的な選考に活用するかが重要ですと申し上げました。すると、データそのものを選考に用いるのではなく面接員の評価を適切な方向に導く指標としてデータを活用できるのではないかとおっしゃいました。そうであればと、私はOPQの分析方法と注意点をお伝えし、今まで当社が行ってきた面接員ごとの評価傾向分析や面接評価構造分析の事例を紹介しました。もちろん分析業務を当社でお受けすることもできましたが、清水さんがご自身でデータを扱うほうが仮説検証を素早く繰り返すことができると思いましたし、清水さんもそれを希望されていました。その後の分析は順調に進み、分析結果を面接員のトレーニングに活用したいというご要望をいただきました。
分析結果を面接員の評価改善につなげる清水さんのアイデアを具現化する面接員トレーニング開発に携わらせていただけたのは我々にとって有意義な経験でした。どうもありがとうございました。
現在進行中のグローバルタレントマネジメントにおいてもSHLグループの知見と情報を駆使してお力になりたいと考えております。
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オリジナルwebテストとは?
テスト科目や結果リポートデザインなど、ニーズに応じてゼロから作り上げるWebテストです。自由度が高く、用途に応じて複数のリポートを作成できます。選考のみならず社内の人事施策でも活用できる設計にすることも可能です。また、応募者管理システムとテストを連携させてテスト運用の手間を大幅に削減したり、「自社適性」や「定着性予測」など、お客様の社内分析結果をもとに独自の指標を結果リポートに盛り込むこともできます。
※連携できない応募者管理システムもございますので、当社までご相談ください。
※仕様確定~納品まで、一定の開発期間が必要になります。
導入シーン
自社独自の適性を予測したい
データ分析で社内のポジションごとに人材要件定義を行った結果を、オリジナル尺度として帳票に出力することが可能です。自社への適性値が一目で判別できます。

面談や配属時の参考資料に
人事側の資料だけでなく、受検者向けのフィードバック資料や「配属用」「フィードバック用」など利用場面に応じて必要な尺度や表現を盛り込んだリポートが可能です。単なる採用選考ツールではなく、タレントマネジメントの一環としてテストを活用できます

テスト運用の様々な手間を省きたい
応募者管理システムを利用している場合、テストの受検者登録をせずマイページ上に受検ボタンを表示したり、受検結果データをシステムに反映するなど、テスト実施の工数削減が期待できます。
※連携できない応募者管理システムもございます。連携可否、連携の範囲については当社までご相談ください。

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会社として求める人物像をより明確化したいという問題意識を抱えていたイムラ封筒。
採用から育成までをつなぐ人材要件定義のお取り組みについての事例を紹介します。
※本取材は2020年9月に行いました。事例記事は取材時のものです。
株式会社イムラ封筒
人事部人事課
1. 封筒・袋等の紙製品、文具等の製造・販売、
2. 不織布・フィルム等を素材とする封筒、袋類等の製造、販売、
3. 印刷物やダイレクトメールの企画・制作、封入、封緘、発送・保管及び情報処理業務の受託、
4. 広告代理業務、
5.コンピュータや周辺機器の販売、ソフトウェアの開発・制作、販売及び保守管理
パルプ・紙
868名(2020年1月末現在)
タレントマネジメント課題
会社として求める人物像をより明確化したかった。
採用、育成、ジョブローテーションが戦略的に行われていなかった。
導入サービス
人材データ分析とインタビューによる営業部門の人材要件定義を実施した。
営業部門の全社員にパーソナリティ検査OPQを実施して、人事評価とOPQの各因子得点との相関分析を行った。加えてハイパフォーマーに対してインタビューを行った。これらの結果を統合して営業部門3区分(上級、管理、一般)の人材要件を定義した。
得られた成果
人材要件を採用基準として活用することで、面接精度と面接官満足度が向上した。
現有社員の特徴を把握できたことで戦略的な人材育成施策を実行できた。
キャリアビジョンの提示、キャリア開発支援を行うための準備が進んだ。エンゲージメントとパフォーマンスの向上に向けての土台ができた。
目的/課題
イムラ封筒は、採用、人材育成、ジョブローテーションを行う上での方針や目標を明確にするため、会社として求める人物像をより鮮明にしたいという問題を抱えていました。
採用面接では、面接官は自身の判断基準によって評価するため、評価のバラつきが散見されました。人材育成においても、各職種、年次、階層の社員に対して目指すべき人材像、開発すべき能力、課すべき研修を明示できず、社員本人のキャリア意識や上長の育成力に依存した人材育成となってしまうことがありました。
ジョブローテーションについても、状況対応型の運用になりがちで、各職務の経験を能力開発に活かすためのより戦略的な運用が必要な状況でした。
このような状況下で、人事部は求める人物像の明確化を重要課題と位置付け、実行のための準備に入りました。
導入/経緯
人事部内での議論を進めていく中で、社内の視点だけではなく、第三者の視点を入れて人材像を作っていくべきとの結論に至り、日本エス・エイチ・エルに声をかけました。人材要件作成の経験が豊富であること、ベンチマークとなる人材データを豊富に保有していることを条件にコンサルタント会社を選定しました。
当初は、全社共通の人材モデルから各階層、各職種に至るまでの人材要件作成を考えていましたが、議論の末、営業部門の人材要件定義からはじめることにしました。最も業績向上にインパクトがあり、比較的短期間で効果が得られると判断したからです。また、ソリューション営業の定着が中期計画にも掲げられていました。
具体的な取り組みとして、営業職の職位を上級、管理、一般の3つに分け、各ポジションについて人材要件を定義しました。調査方法は、パーソナリティ検査OPQを用いた人材データ分析とインタビューを用いました。営業部門の全社員を対象に、OPQの各因子得点データと過去2年分の人事評価データの平均値との相関分析を行い、職位別の高業績者特徴を明らかにしました。インタビューは、各職位のトップパフォーマーに対して、ビジネス環境の予測と戦略、各職位に求められる役割期待や望ましい行動をテーマに、日本エス・エイチ・エルのコンサルタントが行いました。これらの結果を統合して、職位ごとのコンピテンシーモデルを作成しました。
成果
まずは、このコンピテンシーモデルを採用に活用しました。新卒採用で活用できるよう、採用用のコンピテンシーとして整理し、この採用基準にそった面接官訓練を行いました。その結果、評価のブレが軽減しただけではなく、面接官が応募者としっかり対話するようになり、より詳しく応募者を知ることができるようになりました。面接官から評価がやり易くなったと高評価を得ることができました。
また、OPQデータの取得により、現有社員の特徴を客観的にとらえられたことも大きな成果でした。この取り組みによって得られたコンピテンシーモデルに基づき、若手の能力開発、部長と課長を対象とした次世代リーダーとしての意識強化を行いました。今後人事制度を改善するための有益な情報も得られました。
このタレントマネジメント施策を通じて、人事部は新たな目標を設定しました。経営陣と危機感を共有し、高い熱量で頑張る社員を増やすことです。社員にTo doを指示する組織から、To beを提示する組織への変化を目指します。キャリアビジョンを見せ、キャリア開発を支援し、エンゲージメントを向上させ、現場の活性化とパフォーマンス向上を促進していきます。