コラム 人事コンサルタントの視点

OPQで読む職場の人間図鑑シリーズ~第6回:物事の進め方編

思い通りにいかないときこそ、人は自分の流儀で物事を進めようとするものです。
今回のテーマは「物事の進め方」です。OPQの「物事の進め方」は、計画性、緻密、几帳面という3つの因子から構成されています。

  • 計画性:物事を計画的に行い、先を考えて予想する度合い
    • 高得点者の特徴:先の計画を立てる。自分の達成度を確かめることができるように目標を設定する。計画の頻繁な変化やその場で考えることが必要な状況をあまり好まない。
    • 低得点者の特徴:計画を立てるのが嫌いで、筋書きなしの行動を好む。予測できない難事が起きたとき、計画というのは人間の自発性を損なうと考えている。
  • 緻密:細かいことを正確に順序だてて行う度合い
    • 高得点者の特徴:整然とした状態で仕事をするのが好きで、順序正しく記録書などを保管している。間違いがないようにチェックし、正確かつ順序立てた方法で仕事をする。
    • 低得点者の特徴:緻密な作業が嫌いで確認作業は人に任せる。決められた時間の中で自由にやることが好きで、順序立ててやる仕事に飽きてしまい、物事の細部を見落としたりする。
  • 几帳面:締め切りや約束事を几帳面に守ろうとする度合い
    • 高得点者の特徴:物事の最後を見届けたがる。締め切りに忠実でスケジュールに固執する。同時にいくつもの仕事を抱えるのを嫌がる。
    • 低得点者の特徴:ある程度のことがうまくいっていれば多少終わりがどうなろうとあまり気にしない。飽きやすく、仕事をあまり完全にはしない。
この3因子は、仕事を正確に進めることに関連するものですが、それぞれは独立した特徴です。今回は計画性(計画を好むかアドリブを好むか)、緻密(細かく見るか大きく見るか)、几帳面(締め切りやルールを厳守するか柔軟にとらえるか)の3因子の高低を組み合わせた8通りのキャラクターが登場します。

今回の舞台はベンチャー企業の会議室。彼らは装着するだけで視界に情報が浮かぶスマートコンタクトレンズを開発しています。そんな彼らが、合宿から持ち帰ってきた荷物の取り違えから物語は始まります。8人の慌ただしい一夜を通して3因子の高低が作るキャラクターの違いを見てください。

登場人物紹介

眺野(ちょうの) CEO

まず、どこを目指すか。そこさえ決まれば動ける
先のゴールと大きな道筋は思い描く。ただし、その細部を一つずつ詰めることや、期日に間に合わせることには、あまりこだわらない。

因子名 標準点
12345 678910
           
計画性 9
           
緻密 2
           
几帳面 2
           

手堅(てがた) 開発リーダー

計画を立てて、一つずつ確かめて、最後までやり切る
段取りを組み、細部を点検し、締め切りと品質を守る。すべてを揃えてから進めたいので、土台となる手順がないと動き出しにくい。

因子名 標準点
12345 678910
           
計画性 10
           
緻密 10
           
几帳面 10
           

企久(きく) ハードウェア担当

設計はきっちり。あとは動かしながら直せばいい
計画づくりも細部の作り込みも得意。ただ、最後の仕上げは「だいたいできたら次へ」と、手前のところで先に進みたくなる。

因子名 標準点
12345 678910
           
計画性 8
           
緻密 8
           
几帳面 2
           

締田(しめだ) 事業開発担当

いつまでに何を、から逆算して決めましょう
ゴールから逆算した段取りと期日の管理は得意。その一方で、細かいところは人に委ねて、自分ではあまり目を向けない。

因子名 標準点
12345 678910
           
計画性 9
           
緻密 3
           
几帳面 8
           

細井(ほそい) ソフトウェア・光学担当

とりあえず始めます。ただし、一つずつ確かめながら
段取りを待たずに手が動く。動き出すと細部まで丁寧に確かめたくなるので、仕上がりは正確だが、時間はかかる。

因子名 標準点
12345 678910
           
計画性 3
           
緻密 9
           
几帳面 9
           

綿密(わたみつ) コーポレート(経理・総務)担当

小さな違いには気づきます。締め切りは……まあ、そのうちに
細かいことやわずかな差によく気づき、記録も整然と残す。ただ、期日や締め切りへのこだわりは、それほど強くない。

因子名 標準点
12345 678910
           
計画性 1
           
緻密 9
           
几帳面 2
           

限田(げんだ) マーケティング・広報担当

中身はともかく、約束の時間までには形にします
計画も細部も大づかみ。けれど、いったん合意した締め切りや約束だけは、何があっても守ろうとする。

因子名 標準点
12345 678910
           
計画性 2
           
緻密 2
           
几帳面 10
           

行成(ゆきなり) インターン

やってみて、だめなら変えればいい、と思うんです
計画を立てず、細部も追わず、締め切りにも縛られない。柔軟ともいえるし、行き当たりばったりともいえる。

因子名 標準点
12345 678910
           
計画性 1
           
緻密 1
           
几帳面 1
           

そのスーツケース、うちのじゃない

木曜日の午後8時、二泊三日の開発合宿を終えた8人はオフィスに戻った。荷物を置いたら即解散の予定だ。明日午前10時に大イベントが控えている。ベンチャーキャピタルへのピッチ。資金調達の成否がかかった一発勝負の場だ。
その場で披露するのは彼らの主力製品、装着すると視界に情報が浮かび上がるスマートコンタクトレンズの試作デモ機だ。このデモ機の最終調整のために社員全員で泊まりがけの合宿を行っていたのだった。
手堅がデモ機の状態を見るためにスーツケースを開けた。
「これ、うちのじゃない」
中から出てきたのは見覚えのない機材だった。きちんと梱包された荷物。スーツケースは自分たちのものと寸分違わぬメーカー・色・サイズだった。だが、中身が違う。取り違えだ。
合宿先のホテルは週末を控えて団体客や観光客でにぎわっていた。その大勢の宿泊客のうちの誰かと、どこかで荷物が入れ替わったのだ。同じメーカー、同じ色、同じサイズのスーツケース。取り違えても無理はない。
すぐにホテルへ電話を入れた。だが、応対したスタッフからの返答は芳しいものではなかった。宿泊客が多く、夜間に荷物の確認を取ることはできない。明朝確認し見つかり次第連絡するとのことだった。電話を切った締田が時計を見た。午後8時半。ピッチ開始まで、あと13時間半。
「デモ機、戻ってこないかもしれませんね。明日の朝までには」
沈黙が落ちた。明日の朝、ベンチャーキャピタルの前で何を見せればいいのか。この日のために用意したデモ機が手元にない。閉じたスーツケースを部屋の隅に置いた。今、やるべきことに集中しなければならない。

明日の10時は、動かさない

開発室を見渡せば、机の上にも棚の中にも、開発途中の部品や試作の数々が転がっている。だが、すぐに使える完動品はひとつもない。8人は開発室に集まり、重い空気の中で顔を見合わせた。最初に口を開いたのは、CEOの眺野だった。
「ピッチは予定通りに行う。変更はしない」
眺野は腕を組み、宙の一点を見るようにして続けた。
「やることは、はっきりしている。明日の朝までに、先方に見せられるものを用意する。あのデモ機の代わりになるものを動く状態にする。それさえできれば、ピッチは成立する」
進む先と勝負どころが一言で示された。迷いはなかった。
「で、具体的には何時までに、誰が、どこまでやるんですか」
締田が尋ねた。だが眺野は、そこには深く立ち入らなかった。
「そこは君たちのほうが専門家だ。組み立ては任せる。私はピッチのほうを考えておく。実物がきちんと動いてくれれば、ストーリーは私がなんとかする」
そう言うと、眺野はノートパソコンを抱えて執務室に入った。「明日までに、動くデモを用意する」という大きなミッションだけが残された。いつまでに何を仕上げるか。その詰めは7人の手に委ねられた。

行動の前にまず全体の見通しを描こうとする。混乱しかけた場で真っ先に「どこを目指すか」「勝負どころはどこか」という構図を示した。これは計画性の高さがもたらす、頼もしい強みである。
ただし、その計画の精緻さは緻密と几帳面の高低によって大きく変わる。眺野は細部を詰めることも期日を細かく設定することも得意ではない。結果として、大きな絵を描くが、具体的な手順や時間配分は現場に委ねる形となった。

完璧なデモは、間に合わない

開発室に残された7人はさっそく動き出した。だが、その動き方は見事なまでに異なっていた。
まず声を上げたのは開発リーダーの手堅だ。
「では、再生の手順を確定させましょう。デモ機をもう一台組み上げるなら、工程は、まず光学モジュールの調整、次に表示制御の書き込み、それから……」
手堅はメモに必要な工程を順序立てて書き出していく。その手がふと止まった。
「組み立て手順書はデモ機のスーツケースの中ですね」
手順書がない。手堅の表情が曇った。
「記憶を頼りに進めるのは危険です。一つ手順を飛ばせば動かない。中途半端なものを出すわけにはいきません」

3因子全てが高いからこそ全工程を正確に洗い出し、一つの抜けもなく品質基準を守り抜こうとする。それは大きな強みだが、裏を返せば、拠って立つ手順が欠けた状況では身動きが取りにくい。「中途半端に動くものは出せない」という完璧さが、手順書を失った今、最初の一歩を押しとどめている。

その横で、企久はもう部品箱を開けていた。
「私、組めますよ。構造は頭に入っています。とりあえず光学系から組んで、ここの固定はあとで詰めるとして、まず先に進めましょう」
「あとで、って。その『あとで』で失敗するんです」手堅が眉をひそめる。
「動かしながら直しましょうよ。手順書を揃えてからなんて言ってたら、丸1日はかかります」

計画を立て緻密に組み上げる腕を持つ。手堅と違うのは「最後の仕上げは後でいい」「動かしながら直せばいい」と、完成の手前で次へ進もうとする。スピードを生む長所であると同時に、品質を守り抜きたい手堅とは、どうしてもぶつかる。几帳面の高低ひとつで、これほど進め方が変わるのだ。

2人の議論が平行線をたどりはじめたところで、締田が手を打った。
「待ってください。先に時間を決めましょう。ピッチは10時。デモの動作確認に最低1時間、セッティングに30分、移動に30分。逆算すると、組み上げは朝の8時までに終わっていないといけない。今が夜の9時だから、方針は遅くとも深夜2時までに固めないと間に合いません」
締田はホワイトボードに時刻を書き並べていく。鮮やかな逆算だった。だが、肝心の「何を、どう組むのか」という中身については踏み込まなかった。

期日から逆算して全体の時間割を引く手腕は鮮やかで、「いつまでに何を」の管理にかけては誰よりも強い。しかし緻密が低いため、「具体的に何をどう作るか」という細部には目が向かない。結果として、中身が定まらないまま、段取りの枠だけが先に組み上がっていく。

まず計画から入ろうとするところがこの3人の共通点だが、その計画の中身は全く異なるものだった。
一方、計画性の低い3人は、また別の動きをしていた。
細井は、議論を待たずに、すでに作業台で光学モジュールを手に取っていた。
「とりあえず、始めてます」
そう言いながら、その手つきはあくまで慎重だった。レンズを一枚調整しては光の通り方を確かめ、また一枚調整しては確かめる。
「ん、ここの角度は。測り直します」
正確で慎重ではあるのだが、時間はかかる。

計画や段取りよりも先に着手する。始めると一工程ごとに丁寧に確かめずにはいられない。仕上がりは正確だが、その丁寧さゆえに、なかなか先へ進まない。「すぐ動く」と「最後まできっちり」が同居すると、時間がいくらあっても足りなくなる。

コーポレート担当の綿密は、開発の議論には加わらず、自分の席でパソコンに向かっていた。
「過去の試作、何台あったかしら。購入した部品の履歴、全部とってあるはずだから」
誰に頼まれたわけでもなく、過去の部品の購入記録や、これまでに作った試作機の保管リストを、細かく遡りはじめていた。今すぐ役に立つかはわからない。ただ、その細やかな目だけは、ひとり別の方向へ向けられていた。

締め切りを気にせず、目の前の段取りにも加わらないまま、細かな記録の隅々へと目を向けていく。今すぐ役立つ保証のない作業に見えるが、その細やかな観察眼は、後になって思わぬ形で効いてくることがある。

そして限田は開発室の隅で明日の段取りを淡々と確認していた。
「中身がどうなるかは正直わかりません。でも、10時にピッチが始まることだけは、私が死守します。会場も、投影機材も、受付の動線も、全部押さえてあります」

細部や中身には踏み込まないが、「約束した時間を守る」という一点にかけては誰よりも強くこだわる。計画も詳細も大づかみなまま、場を時間どおりに立ち上げることへ力を集中させている。

この3人は段取りを待たずに勝手に動き出していた。そして、その動き方は三者三様だった。
夜は更けていった。それぞれがそれぞれのやり方で懸命に動いていたが、事態は一向に進まなかった。7人には共通の大きな前提があった。全機能を備えたあのデモ機をもう一度作る。この前提が皆を苦しめていた。
やがて、締田がホワイトボードの前でペンを置いた。
「もう、間に合いません。朝までにデモ機を動かすなんて、どう考えても無理だ」
重い沈黙が落ちた。開発室の隅にいたインターンの行成が、小さく首をかしげていた。

完璧なデモは、間に合わない

そこだけ動けば、よくないですか

その沈黙を破ったのは、いちばん頼りないと思われていた声だった。
「あの…」
インターンの行成がおずおずと手を挙げていた。全員の視線が集まる。
「VCの人たちが見たいのって、全部の機能ですか?本当にレンズにちゃんと情報が映るか。知りたいのはそこじゃないですか。そこだけ動けば、よくないですか」
手堅が口を開いた。
「そこだけって。デモ機というのは、全機能が揃って初めて……」
行成は悪びれずに続けた。
「全部を完璧にしようとするから、終わらないんだと思うんです。いちばん見せたいところだけがちゃんと動けばいいんじゃないかな、って」
開発室がしんとなった。誰もが完璧なデモ機をもう一度という前提に縛られていた、まさにそのとき、行成だけがその前提の外にいたのだ。

すべてを完璧に仕上げることにはこだわらない。ある程度うまくいっていれば、細部はあまり気にしない。一見するといい加減に思えるかもしれない。だが、それは裏を返せばいちばん大事なものを見極め、決断する力でもある。皆が完璧なデモ機の再現にこだわり、身動きが取れなくなっていた中で、計画も立てず、細部にもこだわらず、完成度にも頓着しない行成だからこそ、「明日いちばん見せたい一点」だけを、まっすぐに取り出すことができた。

目標が「情報が映る」のみに絞られた瞬間、空回りしていた7人の力が、いっせいに噛み合いはじめた。
最初に動いたのは、ずっと記録を遡っていた綿密だった。
「情報を映すだけなら2年前の試作機。あれの表示、まだ生きている部品が使えます。保管リストにあります」
締田が、ホワイトボードに向き直った。
「表示の一点に絞るなら朝8時までに2台組み上げられる。動作確認は五月雨式にいけば……間に合います」
企久が代替部品を手に取り言った。
「だったらすぐ組みます。表示さえ出ればいい。余計なところは今はやりません」
細井の手元も変わった。機能が表示だけになったことであの丁寧さが完成へとまっすぐ向かう。
「これだけなら、最後まできっちり確かめられます」
しばらく腕を組んで考え込んでいた手堅がゆっくりと頷いた。
「機能を表示だけにするなら、自信を持って出せます」
完動品以外は眼中になかった完璧主義者がようやく納得した。彼が守り抜きたかった品質基準は、機能を絞った瞬間に手の届くところに来たのだった。
「これで確実に間に合いますね」
限田が言った。
開発室に様子を見に来た眺野がデモ機の機能を限定すると聞いて、短くこう言った。
「なら、ピッチもそれでいく。あれこれ並べるより、強みを一つ、実物で見せたほうが早い」
別室で練り直していたピッチの筋は現場がたどり着いた結論と同じ方向を向いていた。

金曜の朝、空がしらみはじめる頃。組み上がったデモ機を細井がそっと目元にかざした。視界の端にちいさく文字が浮かび上がる。試しに映してみたのは簡単な作業手順の案内だった。完璧な一台は、ついに作られなかった。だが、いちばん見せたい一点だけが映る、ささやかな一台が、朝の光の中でたしかに動いていた。

電話は、9時半に鳴った

金曜日の朝、9時半。ピッチ開始まで、あと30分。オフィスを出発しようとしていたそのとき、電話が鳴った。締田が受話器を取る。聞こえてきたのは、落ち着いた、どこか律儀な声だった。
「朝早くに恐れ入ります。昨日、スーツケースを取り違えてしまった件で、範安と申します。こちらの手元に、おそらく御社のものが届いておりまして」
「あっ、で、中の機材は」
「ええ、しっかりと梱包されたまま、こちらでお預かりしております。ご安心ください」
受話器の向こうの相手は、こちらを急かすでも責めるでもなく、ただ淡々と誠実に話を進めていく。交換の段取りもすぐに決まった。互いのスーツケースが手元に戻るのは明日の土曜日。宅配便での直送ということになった。締田は受話器を置き、振り返って、皆に告げた。
「デモ機、無事でした。ただ、戻ってくるのは明日です」
開発室が一瞬静まりかえった。目の前には、徹夜で組み上げた、あの小さな一台がある。
口火を切ったのは企久だった。
「じゃあ……徹夜の甲斐がありましたね」
誰からともなく、力の抜けた笑いが漏れた。

そして、10時。ベンチャーキャピタルの会議室で眺野が話し始めた。手元には、即席の一台。
「我々の技術をお見せします」
デモ機といっても、まだ目に入れられる段階ではない。試作レンズは、眼球を模した小さなカメラユニットに取り付けられていた。レンズ越しにカメラがとらえた像が、そのまま正面のモニターに映し出される。いわば、装着者の「見ている景色」を、その場の全員で共有できる仕組みだ。
眺野が合図すると、モニターに室内の風景が映った。次の瞬間、その風景の手前に、すっと文字が浮かび上がる。目の前のものに重なって表示される簡単な案内の文字だった。あれこれと機能を並べ立てることはしない。ただ視界に情報が重なる、その核心の一点だけを示した。
担当者たちが身を乗り出した。いちばんの強みだけを実物で見せるその潔さは、いくつもの機能を口頭で並べられるよりもずっと雄弁だった。
完璧な一台が間に合わなかったからこそ、彼らはいちばん大事なもので、その朝の勝負に臨むことができたのだった。

電話は、9時半に鳴った

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は、計画性、緻密、几帳面の3因子の組み合わせで仕事の進め方は驚くほど変わることをお伝えしました。
物語の中で、計画性の高い3人は、まず計画を立てましたが、ある人は手順書なしでは動けず、ある人は仕上げを後回しに、ある人はスケジュールだけを引きました。計画性の低い3人は、それぞれの得意分野で動きはじめましたが、完璧なデモ機には近づきません。流れを変えたのはインターンの一言。計画も立てず、細部も追わず、完璧にもこだわらない。このいい加減さがこのときばかりは大切なものを見極める力に変わりました。

ところで、経営の世界には「実行(エグゼキューション)」という考え方があります。優れた戦略を描くことと、それを現実に成し遂げることは別の能力だ、という視点です。実行は、戦略、人、オペレーションという3つが 噛み合った初めて立ち上がるとされます。今回の物語に重ねれば、適材適所(誰が何をどのように進めるか)と現場オペレーション(限られたリソースにおける選択と集中)の2つが噛み合った瞬間にデモ機再生は動き出しました。実行の推進力は様々な進め方が補い合うことで生まれるものなのかもしれません。

OPQ因子に良い悪いはありません。8人それぞれの進め方が補い合って初めて、あの朝のピッチは成立しました。あなたの職場の8人は、それぞれどんな仕事の進め方をしているでしょうか。
※この物語はフィクションであり、登場する人物・企業・団体は実在のものとは関係ありません。

次回のテーマは「不安感情」です。プレッシャーのかかる場面で、人は何を感じどう振舞うのか。どうぞお楽しみに。

参考文献:ラリー・ボシディ、ラム・チャラン、チャールズ・バーク『経営は「実行」――明日から結果を出す鉄則』高遠裕子訳、日本経済新聞社、2003年(原著 Larry Bossidy, Ram Charan, Charles Burck, Execution: The Discipline of Getting Things Done, Crown Business, 2002)

清田 茂

このコラムの担当者

清田 茂

日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員

創業期メンバーとして入社以来30年、HRコンサルタントとして日本の人事アセスメント界を牽引。大手を中心にコンピテンシーモデリングから選抜設計、サクセッションプラン構築まで広範なプロジェクトを完遂。特に経営層との対話を通じた次世代リーダー育成に高い実績を持つ。 2002年取締役、2020年より執行役員として直販部門を統括。最前線で「人と仕事と組織の最適化」を追求する傍ら、SHLグループのグローバル知見の国内導入も推進。

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