コラム 人事コンサルタントの視点

OPQで読む職場の人間図鑑シリーズ~第3回:他人への配慮編

第3回のテーマは「他人への配慮」です。OPQの「他人への配慮」は、謙虚さ、協議性、面倒みという3つの因子から構成されています。
  • 謙虚さ:自分の業績や地位をどれだけ前に出さず、謙虚でいられるか
    • 高得点者の特徴:自分が達成した物事について話すことを嫌う。自分の成功について黙っている。
    • 低得点者の特徴:自分の得意なことや達成したことを人に知らせる。自分の成功について話す。
  • 協議性:物事を決めるとき、人に相談したり意見を聞いたりすることをどれだけ好むか
    • 高得点者の特徴:広く相談し、他の人に意思決定への参加を求める。自分一人で決定を下すことは少ない。
    • 低得点者の特徴:人に相談せず決定しようとする。自分一人で決定を下すことを好む。
  • 面倒み:困っている人に対してどれだけ真剣な配慮や同情、共感をもって関わろうとするか
    • 高得点者の特徴:他人に共感でき、思いやりがある。世話好きで、他人の個人的な問題にも支援を惜しまない。
    • 低得点者の特徴:誰に対しても思いやりのある態度をとるわけではない。他人の個人的な問題から距離をおく。
前回と同じく、3因子の高低の組み合わせから8通りのキャラクターを登場させます。今回は第1回の営業チームから二人に再登場してもらいます。

今回の舞台は顧客のクレームへの対応を検討する会議室。そこで起きているのは職場の一番難しい場面のひとつ、インシデントの事後対応です。

登場人物紹介

舞台はある月曜午前の会議室。8人は同じ案件を前にしながら、それぞれまったく異なる「他人への配慮」のスタイルを持っています。OPQの「他人への配慮」を構成する3つの因子(謙虚さ、協議性、面倒み)の高低の組み合わせが、8通りの個性を生み出しています。

奉田(ほうだ) 人事部長

「みんなで決めて、みんなで助ける。私の出番は、誰かが困っている時だ」
自分のことは後回し。物事はみんなで決めることを好み、困っている人を見ると黙っていられない。会議では最も声を上げる機会が多い人物ではないが、最も場の空気を温める。

因子名 標準点
12345 678910
           
謙虚さ 8
           
協議性 9
           
面倒み 9
           

合規(ごうき) コンプライアンス課長

「みんなの意見は聞きます。感情に引きずられず、正しく結論を出すために」
自分の専門知識をひけらかさず、場の意見を丁寧に確認してから整理する。ただし、情に動かされることはない。個人の事情より手順と規程が優先される。

因子名 標準点
12345 678910
           
謙虚さ 8
           
協議性 8
           
面倒み 1
           

守田(もりた) 情報システム部サポート課長

「みんなで合意するよりも、それぞれが役割を果たすべき。あなたが困っているなら、私が動く」
自分の判断で動き、人に相談することを好まない。しかし部下への配慮は誰よりも深い。今日の会議では、その二つが複雑に絡み合っている。

因子名 標準点
12345 678910
           
謙虚さ 10
           
協議性 3
           
面倒み 9
           

基山(もとやま) 情報システム部長

「自分のことは語らない。人のことにも踏み込まない」
自分の実績を語ることもなく、他人の事情に立ち入ることもない。技術的な判断には確信を持って臨むが、その確信が今日は重要な意味を持つ。

因子名 標準点
12345 678910
           
謙虚さ 8
           
協議性 3
           
面倒み 3
           

江末(えすえ) 営業課長 ※第1回より登場

「みんなの意見を聞きたいし、私の意見も聞いてほしい。意思決定は合理的に」
自分の立場と判断を前に出すことを厭わないが、意見は集める。顧客との関係、チームの動き、組織の体裁。江末の頭の中は常に実務で埋まっている。

因子名 標準点
12345 678910
           
謙虚さ 3
           
協議性 9
           
面倒み 2
           

統川(とがわ) 営業担当 ※第1回より登場

「全員の話を聞いて気持ちに寄り添いたい。私の気持ちもわかって欲しい」
困っている人に共感し、力になりたいと考える。今日の会議でも顧客の顔が頭から離れない。周囲の意見を引き出しながら、場を動かそうとする。

因子名 標準点
12345 678910
           
謙虚さ 1
           
協議性 8
           
面倒み 10
           

源田(げんだ) 情報システム部システム開発課長

「相談は求めない。ただ、困っている人がいれば必ず助ける」
自分の領域のことは自分で判断する。誰かに意見を求めることはあまりないが、言いたいことははっきり言う。困っている人を放ってはおかない。

因子名 標準点
12345 678910
           
謙虚さ 1
           
協議性 3
           
面倒み 8
           

独崎(どくさき) 営業担当役員

「自分で決めて、自分で責任を取る。自分の責務を全うするのみ」
自分の判断と権限を明確に持ち、感情に流されることなく結論を出す。今日の会議の最終決裁者。この人物が会議の最後にどう動くかが、今回の焦点になる。

因子名 標準点
12345 678910
           
謙虚さ 2
           
協議性 2
           
面倒み 2
           

矢島(やしま) 情報システム部サポート課担当者(会議には不在)

先週金曜の夜、夜間シフト中に単独でシステムの設定変更を行い、変更管理規程に違反したとして今回の会議が招集された。ただし本人は月曜に有給休暇を取得しており、この会議には出席していない。今回は8人の「他人への配慮」の高低が、この不在の人物へどう向かうかを描く。

事件のはじまり

【金曜夜:矢島の判断】

金曜の夜21時、夜間サポートシフトに入っていた矢島は、システムのアクセスログに目を止めた。
大口顧客であるスマートメトリクス社のパイロット運用中のシステムに通常とは異なるアクセスパターンが記録されていた。管理職400名を対象にしたアセスメントの受検期間中だった。
矢島は詳細にログを確認し、ため息をついた。
認証設定を変更し終え、時計を見ると21時50分。変更内容と理由と時刻を社内ログに記録し、守田課長にメールで報告した上で、22時に退社した。

【月曜午前:クレームの発覚】

月曜の朝一番、スマートメトリクス社の人事部長から統川に電話が入った。
「先週末から受検できないという報告が複数届いています。御社のシステムに問題があったのではないですか」
統川はすぐに江末課長に報告し、二人でスマートメトリクス社の人事部長とオンラインミーティングを行った。先方は相当動揺していた。週末に受検しようとした管理職から人事部にクレームメールが届いており、その中には役員も含まれているという。本日中に原因の説明と再発防止策を求めるとのことで、18時に再度ミーティングを設けることが決まった。
ミーティングを終えた統川がサポート課に状況確認の連絡を入れると、土曜の朝に複数の受検エラーに関する問い合わせメールが届いており、出勤していたサポート担当者が対応していたことがわかった。原因はすでに特定されていた。金曜夜の矢島による設定変更が、変更前から有効だったセッションを持つ受検者のキャッシュを強制クリアし、ログインエラーを引き起こしていた。
矢島は月曜に有給休暇を取得していた。
江末が関係各所に連絡を入れ、11時に会議が招集された。

事件のはじまり

会議室シーン

「今日の目的は二つ」と独崎が口を開いた。「18時のスマートメトリクス社への説明内容の確認と、再発防止策の方向性を決めること。江末さん、経緯を」

【フェーズ1:事実確認】

江末が報告した。月曜朝にスマートメトリクス社の人事部長からミーティングの要請があり、統川と二人で対応したこと。先方から18時に改めての説明と再発防止策を求められていること。江末の報告はいつも事実だけで構成されている。

自分が受けたクレームについて臨場感をもって人に伝える。それは感情的な訴えではなく、客観的な情報の共有である。顧客の感情的な文脈よりも事実を重視し、言いたいことはすべて話す。

「補足させてください」と統川が続けた。「先方の人事部長は相当動揺されていました。管理職の方々から人事部にクレームが届いており、パイロット運用への信頼が揺らいでいると言っておられました。特に土曜の午前中に受検しようとされた方の中には、役員の方も含まれていたようです」
江末が省いた顧客の温度感を、統川は丁寧に補った。

顧客の感情と状況への共感が強く働く。今この瞬間の統川の頭の中にあるのは先方人事部長の表情だ。場の全員に状況を正確に理解してもらいたいという気持ちが、この補足を自然に引き出した。

守田がシステムログと土曜勤務者からの聴取内容を報告した。設定変更の時刻、エラーの発生範囲、受検者への影響。そして最後にこう付け加えた。「矢島からのメールには、上司とシステム開発に連絡を試みたと記載がありました」
そこで守田は一瞬言葉を止めた。自分がその「連絡を試みた相手」の一人だったことには触れなかった。「本人から直接話を聞けていませんので現時点でお伝え出来ることは以上です」と締めた。

矢島が連絡を試みた相手が自分だったという事実を、守田は飲み込んだ。謙虚さが高いゆえに、自分の不作為を正直に認める準備はある。しかし部下への面倒みが、その言葉を慎重にさせている。今ここで言うべきか、言わなくていいのか。守田の沈黙はそのせめぎ合いだった。

基山が短く口を開いた。「承認を得ず設定変更したことは事実です。また、矢島が検知したとされるシステムの脆弱性については、私の認識では問題のないログパターンです。過去にも同様のアクセス記録が出たことがあり、システム開発課が確認済みのものと理解しています」
淡々と、確信を持って言い切った。

自分の実績も立場も前に出さない。しかし技術的な判断については、自分の認識を静かに、しかし確実に置く。他者の事情には立ち入らない。矢島という人間への関心はなく、あるのは技術的な事実への関心だけだ。

【フェーズ2:原因究明と再発防止の議論】

合規が口を開いた。「規程上の整理をさせてください」変更管理規程の該当条項を示し、矢島の行為が規程違反に当たることを確認した。「ただし本日の目的は処分の決定ではありません。原因究明と再発防止策の確認です。規程違反の事実は記録しますが、処分については本人からのヒアリングを経て別途判断するという理解でよいですか」と場に確認した。

自分の専門領域である規程の解釈を押しつけるのではなく、場全体の認識を揃えようとする。感情的な配慮よりも、手順の遵守を重視する。規程と手順を守ることが、合規にとっての「他人への配慮」の形なのかもしれない。

「その通りです」と独崎が短く返した。

奉田が静かに手を挙げた。「一点よいですか。矢島さんはなぜそうしたのか、本人の言葉をまだ誰も聞いていません。メールと社内ログだけで原因を確定することに、私は少し慎重でありたいと思っています。皆さんはどうお考えですか」

自分の判断を前に出さず、場に問いかける。「私は慎重でありたい」という言い方に、奉田の3因子が凝縮されている。結論を急がない。みんなの意見を聞きたい。そして不在の矢島のことが、ずっと頭にある。

守田がここで静かに口を開いた。「矢島が連絡を試みた相手の中に、私も含まれています」
会議室が少し静まった。
「金曜の夜に電話が繋がらず、メールを読んだのは土曜の朝でした。適切に対応できませんでした。すみませんでした」と短く述べ、そして一言だけ付け加えた。「矢島がなぜ独断したか、私には少し想像できます」それ以上は言わなかった。

自分の不作為を認めることに躊躇いはない。誰かに相談して決めたわけでも、場の空気を読んで言ったわけでもない。部下への面倒みが、沈黙を破らせた。「想像できます」という言葉の先には、矢島が一人で夜間に抱えた状況への深い理解があった。

基山が「連絡体制の問題は別途整理すべきです。今日の議題はスマートメトリクス社への説明内容です」と言った。
「基山さんのおっしゃる通り、時間の問題もあります」と江末が引き取った。「原因については、承認フローを経なかったこと、夜間の緊急連絡体制が機能しなかったこと、この二点を説明する形でよいと思いますが、いかがでしょうか」

【フェーズ3:急転と収束】

会議室のドアがノックされ、源田が入ってきた。
「矢島が検知したアクセス異常は本物でした」静かな声だった。
デバッグ用のAPIエンドポイントがパイロット版に残存していたこと、認証なしでデータにアクセスできる状態だったこと、週明けのピーク時にスマートメトリクス社400名分のデータが外部から参照可能になっていた可能性が高いこと。「矢島の設定変更がなければ、より大きな事故につながっていた可能性が高いです」
報告を終えると、源田は口を閉じた。沈黙が続いた。

基山が口を開いた。「私の認識が誤っていました」
それだけだった。言い訳も補足もなかった。

自分の誤りを認めることに、基山は躊躇わなかった。謙虚さが高いとは、自分の業績を誇らないだけでなく、自分の誤りを静かに認めることでもある。感情的な動揺もなく、ただ事実として置いた。その一言が、会議室の空気を変えた。

奉田が「矢島さんを呼びましょう」と言った。「本人の話を聞かずに今日の会議を終わらせるべきではありません」

合規が少し間を置いてから言った。「規程違反の事実は変わりません。ただし矢島さんの判断には相応の根拠があったことが確認されました。その事実は処分の判断において記録に残すべきです」事実が変われば結論も変える。

「ちょっと、待ってください」と統川が口を開いた。「システムに大きなデータ漏洩の可能性があったということを先方にお伝えすることは、かえって不安を煽ることにならないでしょうか。障害の説明と再発防止策に絞った方が、関係修復には有効だと思うのですが」
顧客への共感から来る躊躇いだった。悪意ではなく、相手を傷つけたくないという気持ちが、その言葉を引き出していた。

江末が静かに、しかしはっきりと返した。「統川さん、それは逆です。問題の全容を正しく速やかに伝えることのほうが、長い目で見て顧客の信頼につながる。後から出てくるほうがずっと傷が深い。そう思いませんか」
統川は「……そうですね」と短く答えた。

江末が続けて基山に向いた。「もう一点確認が必要です。矢島さんが設定変更する前に受検完了した人のデータは大丈夫だったのかを確認しておく必要があります。基山さん、お願いできますか」

基山が源田に視線を向ける前に、源田が口を開いた。「確認済みです。設定変更前に受検を完了したデータに、外部からのアクセス記録はありませんでした」
聞かれる前に答えた。自分の領域のことは自分が責任を持って把握していた。

この場に来たのは、誰かに言われたからではない。自分が必要だと判断したからだ。誰かに相談したわけでも、場の空気を読んだわけでもない。ただ、この会議で困っている人間がいることはわかっていた。

江末が「わかりました。これで先方への説明はできます」と言った。

独崎が最後に口を開いた。
「今回の根本原因は矢島さん個人の判断にあるのではなく、夜間担当者が緊急事態に直面したとき、組織として支える体制がなかったことです」
はっきりと言い切った。「基山さん、夜間緊急連絡体制の見直し案を今週中にお願いします。あわせて、変更管理規程の見直しには私も署名します」
自分の責任範囲を、自分で引き取った。

感情を排した判断だからこそ、矢島個人ではなく体制の問題を正確に指摘できた。面倒みが低いとは、冷たいということではない。個人の事情に引きずられず、問題の本質を見る、ということでもある。自分で決めて、自分で責任を取る。独崎という人間の一貫性が、この場面でもっとも鮮明に出た。

源田がここで小さくうなずいた。それだけだった。

その後

月曜夕方のスマートメトリクス社への説明は、予想以上にうまく運んだ。
統川と江末は、ログインエラーの経緯と影響範囲を丁寧に説明した上で、矢島がシステムの脆弱性を検知しそれを防ごうとして設定変更に踏み切ったこと、その判断が結果的に大規模なデータ漏洩を回避したことを、事実として伝えた。江末の言葉通りだった。全容を正直に伝えたことが、かえって顧客の信頼を引き戻した。「そういう担当者がいてくれたんですね」という言葉が、ミーティングの最後に出た。

矢島が出社したのは翌日の火曜だった。
守田が午前中に時間を作り、金曜夜の状況を改めて矢島から直接聞いた。矢島が連絡を試みていたこと、時間的制約の中で判断したこと、変更後にログと報告メールを残していたこと。守田はすべてを聞いた後、「緊急連絡に答えられず申し訳なかった」と短く言った。矢島には十分だった。

同じ日の夕方、独崎が情報システム部に立ち寄った。矢島を見つけると、一言だけ言った。「夜間に一人で判断させた体制に問題があった。それは組織の責任です」それだけ言って、立ち去った。
翌日、変更管理規程の見直し提案書に、独崎の署名が入った。自分で決めて、自分で責任を取る。それが独崎という人間だった。

基山はその週のうちに夜間緊急連絡体制の見直し案を独崎に提出した。源田のシステム開発課が今回のパイロット版に残存していた設定漏れを全件洗い出し、修正を完了させた。

奉田は一連の経緯を人事記録に残した。矢島の規程違反の事実と、その背景にあった状況と、組織の体制上の問題と、その後の対応を。処分は厳重注意とした。ただし記録には、矢島の行動が結果的に大きな事故を防いだという事実も、併記された。

その後

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回はOPQの「他人への配慮」3因子から8人のキャラクターを設定し、インシデントの事後対応という緊張感のある場面で、それぞれの持ち味を描いてみました。

謙虚さ・協議性・面倒みの3因子は、良い人かどうかを測るものではありません。面倒みはやさしさに関わる因子ですが、低ければ冷たい人、というわけではない。今回の独崎は、感情に動かされないからこそ、問題の本質を見抜き、自分の責任を真正面から引き受けました。
一方、面倒みが高い統川が示した「顧客を傷つけたくない」という誠実さと配慮が、情報を隠す方向に向かいかけた。上司である江末の一言がなければ、顧客への説明は不完全なものになっていたかもしれません。配慮が高いことも、それだけでは十分ではない。
守田の沈黙と、基山の一言と、源田の行動は、三者三様の「他人への配慮」の形でした。言葉にならない配慮もあれば、言葉にしない配慮もある。そして少ない言葉で、大きな責任を引き取ったのが独崎でした。

次回は「関心領域」編です。具体的事物、データ、美的価値、人間という4つの因子が、新たな職場の一幕を彩ります。どうぞお楽しみに。

清田 茂

このコラムの担当者

清田 茂

日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員

創業期メンバーとして入社以来30年、HRコンサルタントとして日本の人事アセスメント界を牽引。大手を中心にコンピテンシーモデリングから選抜設計、サクセッションプラン構築まで広範なプロジェクトを完遂。特に経営層との対話を通じた次世代リーダー育成に高い実績を持つ。 2002年取締役、2020年より執行役員として直販部門を統括。最前線で「人と仕事と組織の最適化」を追求する傍ら、SHLグループのグローバル知見の国内導入も推進。

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