アセスメント

Insight Platform

Insight Platform(Contextual Leadership)は、コンテクストと呼ばれるリーダーを取り巻く、よく直面する課題や外部環境の経験値とポテンシャルを掛け合わせて、一目で後継人材を可視化するサクセッションプランの支援ツールです。

測定項目 パーソナリティ(OPQ32r)
経験サーベイ
所要時間 40分

Insight Platform(Contextual Leadership)とは

キーポストの要件を設定し、候補者にアセスメントを行うことで、経験の有無×パーソナリティの適性、2つの観点から候補者を可視化します。
リーダーの成否にかかわるコンテクストという観点を取り入れることで、組織がより正確にリーダーを発掘、評価、選抜、育成できるようにします。

コンテクストを加味した判断

SHLが行った大規模な調査で、リーダーの成否にコンテクスト(環境や文脈)が重要な要素であることが分かりました。このコンテクストを考慮することで、画一的なアプローチをするよりも平均で4倍以上正確にリーダーを選抜できます。

変化に柔軟に対応

事業環境やそこで求められるリーダー像が変化してもコンテクストを設定しなおすことですぐに新たな候補者を特定することができます。柔軟かつ多様なリーダー像を素早く定義・発掘してアジャイルな組織体制を支援します。

Insight Platform(Contextual Leadership)

パーソナリティと経験を測定します。

  • パーソナリティ
  • 経験サーベイ

パーソナリティ

3つの行動に関する記述の中から、自分に最もよく当てはまっているものを1つ、次に最も当てはまっているものを1つ選びます。職務に関係する「受検者の典型的な、または好む行動スタイル」を測定し、各種行動特性の予測も行います。

お問い合わせ

ご不明な点がございましたら、担当コンサルタントまたは「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。

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Insight PlatformのContextual Leadershipは、サクセッションプランに特化したソリューションサービスです。
サクセッションプランを円滑に行うためには、対象となるリーダーポストの後継候補者を正しく選ぶこと、後継候補者となる可能性が高い人を選び後継者に育てることが必要です。
本コラムでは、Insight Platformがどのように円滑なサクセッションプランをサポートするのか、鍵となる概念のリーダーシップコンテクストがどのように使用されるのかについて、具体的な職種を例にご説明します。

Insight Platform – Contextual Leadershipとは

Insight Platform(インサイトプラットフォーム)とはSHLの人材可視化プラットフォームです。様々な人材アセスメントデータを用いて、正しい人事に関する意思決定を行うための洞察を得ることができます。インプットは人材アセスメントデータ、アウトプットは個人のアセスメント結果リポートと集団のアセスメント結果を用いた人材可視化(インサイト)によって構成されています。
Insight Platformは、現在5つの人事課題に対応したソリューションの機能(レンズ)を持っています。各レンズの概要は、以下のコラム「タレントマネジメントのためのソリューションプラットフォーム『Insight Platform』」をご覧ください。

5つの課題のうち、サクセッションプランの課題解決を目的としたレンズがContextual Leadershipです。

鍵となる概念「リーダーシップコンテクスト」

SHLのサクセッションプランソリューションの特徴は、リーダーシップコンテクストに基づいて人材とポストの適合度を予測する点にあります。
一般的なサクセッションプランにおけるアセスメントはリーダーシップコンピテンシーを測定するために行います。しかし、経営リーダー候補となる人材は概ね高いレベルのリーダーシップコンピテンシーを発揮しており、この情報だけで特定のリーダーポストの職務で成功できるかどうかを予測することは困難です。成熟した市場の先進国で販売会社の社長をやるのと、未開拓の新興国で販売会社の社長をやるのでは、同じ販売会社の社長という役割であっても解決すべき課題が大きく異なります。
このような役割を取り巻く環境の違いを説明するために見いだされたものがリーダーシップコンテクストです。既に複数のコラムで述べられていますが、SHLは3年間をかけて世界の約90組織、約9,000名のリーダーを対象とした大規模な調査を行い、リーダーの成功要因として大きな影響を与えているリーダーシップコンテクストを発見しました。
高いレベルのリーダーシップコンピテンシーを発揮していることが確認できれば、個別のポストに対する向き不向きは候補者の職務経験によって判断できるので、そこまで細やかな情報を必要ないと感じるかもしれません。まさにその通りなのです。リーダーシップコンテクストは、その職務経験における適合度を客観的に捉えることができる概念です。新しいリーダーポストで求められる役割や解決すべき課題がどのようなものかを客観的に捉え、誰が見ても合意できるよう役割と環境を整理するためにこの概念を利用します。

Contextual Leadershipのアセスメント

Contextual Leadershipでは2種類のアセスメントを行います。パーソナリティ測定OPQ32rと経験サーベイです。

OPQ32rはご存じの通り、質問紙形式のパーソナリティアセスメントです。パーソナリティ32因子を測定し、様々な実用尺度を算出します。本レンズにおいては、27項目のリーダーシップコンテクストの得点を算出します。これらの得点は各コンテクストへの適合度、つまりどれだけリーダーシップ課題をうまく解決できるポテンシャルを持っているかを表します。
経験サーベイは、27項目のリーダーシップコンテクストについて、今までの職務においてどれだけの経験を持つかをたずねます。リーダーの成否に大きな影響を与える文脈的な環境のもとでの職務経験の有無、強弱を確認するのです。

リーダーシップコンテクストの活用

サクセッションプランを実行するための最初のステップは、対象となるリーダーポストの要件を定義することです。Contextual Leadershipレンズでは、このリーダーポスト要件をプロファイルといいます。Insight Platformでは、はじめに27項目のリーダーシップコンテクストを使ってプロファイルを作成します。
27項目のリーダーシップコンテクストについてはコラム「リーダーシップコンテクストの選び方~サクセッションプランの実践」をご覧ください。

技術系リーダーポストのコンテクスト

特定のリーダーポストのプロファイルを作る際には、現在そのリーダーポストについている人、未来の役割変化について考えを持つ人などにインタビューを行い、インタビュー結果を統合し、最終的なプロファイルを作成します。
SHLはContextual Leadershipの利用顧客が選択したリーダーシップコンテクストを役割別に集計し情報を提供しています。今回は技術系3職種(IT・システム、ハードウェアエンジニアリング、研究開発)のリーダーポストを対象によく選択されているリーダーシップコンテクスト上位10項目ご紹介します。
これらの3職種で上位10位として選択されたリーダーシップコンテクストには共通項目が多くありました。結果は以下の通りです。


共通項目を見ると、イノベーションによる利益創出をグローバルに行おうとする各社の戦略が見えてくるようです。また、不確実性の高さ、リーダーの交代、M&Aなど大きな環境変化のなかでビジネスを進めている状況を垣間見ることもできます。現在のグローバル企業におけるビジネスリーダーの環境を象徴している項目です。

おわりに

リーダーシップコンテクストとコンピテンシーの違い、そしてリーダーシップコンテクストがどのようにリーダー選抜に貢献するかについてご紹介しました。職務経験に基づく従来の人材選抜を踏襲しつつ、より客観的かつ科学的にサクセッションプランを実施するInsight Platformをより詳しく知りたい方は以下のウェビナー「成功率を上げるデータドリブンなリーダー選び~サクセッションプラン最新研究×最先端ツール「Insight Platform」【アーカイブ配信】」をご覧ください。

アセスメント

タレントセントラル

多言語に対応し、「知的能力」「パーソナリティ」「モチベーションリソース」を測定することができるWeb適性検査です。受検言語を問わず同一基準での得点算出が可能であり、上級管理職クラスとの比較等、様々な採点ノルムを有しています。採用だけでなく、登用、育成、サクセションプランでも活用可能です。

測定項目 知的能力(演繹的推理、数値的推理、帰納的推理、G+、機械理解)
パーソナリティ(OPQ32r)
モチベーションリソース(MQ)
所要時間 30分~

※実施科目の組み合わせによる

ノルム 一般集団/管理職クラス/上級管理職クラス 等

タレントセントラルとは

SHLグループがグローバル共通で展開しているWeb適性検査です。「知的能力」「パーソナリティ」「モチベーションリソース」を測定可能です。

多言語対応

最大39言語の受検・レポート出力に対応しています。受検言語とは異なる言語でのレポート出力、統一基準での採点に対応しており、複数カ国の受検者を公平に評価可能です。

本人用・人事用など
多様なレポート出力が可能

一度受検するだけで人事向けレポート、本人向けフィードバックレポート、リーダーシップレポート等、多数のレポートを出力可能です。

多様な採点ノルム

一般集団だけでなく、管理職クラス、上級管理職クラスと比較しての得点算出も可能です。採用だけでなく、社内登用、自社の特徴把握等にも利用できます。

タレントセントラル 搭載科目の特徴

知的能力(演繹的推理、数値的推理、帰納的推理、G+、機械理解)、パーソナリティ(OPQ32r)、モチベーションリソース(MQ)を測定します。

  • 知的能力
  • パーソナリティ
  • モチベーションリソース

モチベーションリソース

特定の仕事環境における記述に対し、どの程度動機づけられるかを回答し、受検者のモチベーションリソース(動機づけられる/動機が下がる要因)を測定します。

レポートサンプル

タレントセントラルで出力できるレポートの一部をご紹介します。

  • OPQ Profile
  • Universal Competency Report
  • Leadership Report

OPQ Profile

パーソナリティ検査で測定している「受検者の典型的な、または好む行動スタイル」32項目を可視化したレポートです。

OPQ Profile

Universal Competency Report

SHLがグローバル共通で展開している20個のコンピテンシーに対するポテンシャルを可視化したレポートです。各コンピテンシーのポテンシャルだけでなく、どのようなパーソナリティ傾向がプラス、または、マイナスに働いているか等も出力しています。

Universal Competency Report

Leadership Report

受検者のリーダーシップポテンシャルを業務型(マネジメント・フォーカス)、変革型(リーダーシップ・フォーカス)、2つの観点から出力しています。自社リーダーの特性把握に有効です。

Leadership Report

利用料金

実施科目、出力レポート、ご利用プランによって費用が変動します。

  • システム利用プラン
  • ビューロサービス

Webテストシステムの利用権をご提供し、各種運用をお客様の手元で行っていただくプランです。

システム利用プラン

年間使用権料

24万円/年

受検料・リポート出力料(※)

14,000円/名

当社事務にて、各種運用を行うプランです。

ビューロサービス

受検料・リポート出力料(※)

33,600

※知的能力G+、パーソナリティ検査を実施し、Universal Competency Reportを出力した場合の料金を例として記載しています。

大量受検、多数のレポート出力に併せた別プランもございます。
お気軽にお問い合わせください。

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ご不明な点がございましたら、担当コンサルタントまたは「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。

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アセスメント

WebMQ

「どのような要因(モチベーションリソース)が個人の意欲(モチベーション)を増減させるか」を予測し、やる気の源を特定して最大のパフォーマンスを引き出します

測定項目 意欲(モチベーションリソース)
所要時間合計 15分
ノルム 成人一般
実施形態 Web

MQとは

「どのような要因(モチベーションリソース)が受検者のモチベーションを増減させるか」を予測します。

パフォーマンスの予測力にも影響を及ぼすモチベーションリソースを定量化

時としてパフォーマンスにも大きな影響を及ぼすモチベーションリソースは、パーソナリティと比較して状況や環境によって変化する可能性があります。「その人が今まさに何を求めているか(もしくは、何に悩まされているか)」を定量化できるため、即時性の高い人事施策に応用することが可能です。

綿密な研究と調査による裏付け

SHLグループでは、基礎的な動機づけ理論を含む様々な学術研究と、大規模データによる妥当性調査をもとに、MQは開発されています。これによって、①個人を強く動機づける要因(やる気を起こさせる要因)、②個人の動機づけを損ねる要因(やる気をなくさせる要因)、③いずれの効果も与えない要因を特定することができます。

短時間で網羅的にモチベーションリソースを測定

15分の質問紙に回答するだけで、意欲に影響する環境要因を4領域18尺度に分類し、受検者のやる気がそれぞれの因子にどう反応しそうか、を測定できます。

MQの科目の特徴

モチベーションリソースを測定します。

4つの環境要因に関する記述の中から「自分が最もやる気になる仕事環境」を1つ、「自分が最もやる気がなくなる仕事環境」を1つ選択します。

意欲に影響する環境要因を4領域18尺度に分類し、受検者のやる気がそれぞれの因子にどう反応しそうかを測定します。

ご利用シーン

利用料金

受検料

2,500円/名

※上記費用に消費税はふくまれておりません。

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経営戦略を実現するための新たな人事組織を立ち上げた積水ハウス。
次世代を担うビジネスリーダーを計画的・戦略的に育成するタレントパイプライン構築の取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

積水ハウス株式会社

事業内容

戸建住宅事業、賃貸住宅事業、建築・土木事業、リフォーム事業、不動産フィー事業、分譲住宅事業、マンション事業、都市再開発事業、国際事業

業種

建設業

従業員数

16,616名(2020年4月1日現在)

インタビューを受けていただいた方

安信 秀昭 様
増田 貴久 様

積水ハウス株式会社
人事部 人材開発室 室長(写真右)
人事部 人材開発室 課長(写真左)

インタビューの要約

経営戦略を実行するために計画的なビジネスリーダーを育成するという課題があった。
次世代リーダー発掘プログラム「SHINE! Challenge Program」を創設し、タレントパイプラインの構築に着手した。日本エス・エイチ・エルのアセスメントを用いて、高業績かつ光る人材を効率的に選抜できた。
経営戦略の実現のため、人事制度の変革にも取り組みたい。
今後は採用や育成含めて、様々な場面で日本エス・エイチ・エルのアセスメントを活用していきたい。

人事戦略を実行するため、タレントパイプライン構築と人事制度変革に着手。

これまでオペレーショナルな業務が中心であった人事部を、10年後、20年後を見据えて経営戦略に沿った人事戦略を担う専門組織にすべく、人材開発室という新たな組織が作られました。様々な人事課題を検討する中で、まずは①タレントパイプラインの構築と②職能資格を中心とした年功序列的な人事制度の変革を、大きな柱として取り組むことになりました。日本エス・エイチ・エルに相談したのは、このタレントパイプラインです。


社長をはじめ、取締役・執行役員、そして一番のキーポジションである支店長のサクセッションプランニングが課題です。私たちは、中堅・若手クラスの中から将来のビジネスリーダーになれるような人を早期に発掘して計画的に育成する、人材プールの作成を経営層に提案しました。
この課題の背景には、過去の反省がありました。営業中心の会社ですから、これまで支店長になる人はどちらかというと業績重視でした。そこで、マネジメント能力や人格など、より多角的に評価を行い、計画的に人材を育成し、登用する必要があると考えました。

人事戦略を実行するため、タレントパイプライン構築と人事制度変革に着手。

次世代リーダー発掘プログラム「SHINE! Challenge Program」

私たちの組織が発足する少し前に、支店長養成研修「経営塾」がスタートしました。支店長や部長になる登竜門のようなもので、受講生の選抜方法は上長推薦です。1年間でリベラルアーツや行動経済学、DX、イノベーションなどを大学教授、外部有識者から学びます。幅広く勉強してもらい、その成果を支店経営に活かしてもらうことがねらいです。

続いて、35歳以下の選抜研修を新たにスタートさせました。「Sekisui House Innovators and Entrepreneurs」の頭文字をとって、「SHINE! Challenge Program」と名付けました。15名限定で約1年間、多くの外部講師や社内の最先端にいる人からインプットを得ます。普段実務に専念している人たちに、視野を広げ、視座を高めてもらい、将来の積水ハウスの価値創造を考える機会を提供しています。全体を通して外部コーディネータに伴走してもらいながら、得た知識をどう活かすかアクション・ラーニングを行います。最終的には、研修を通じて得た経営課題からビジネスプランを作成し、経営陣の前で発表します。参加者からは、日常とは異なる視座で会社を考える機会が得られた、他の参加者からよい刺激が得られたとの声が寄せられました。

アセスメントで光る人材をどう見つけるか。

「SHINE! Challenge Program」は名前の通り、イノベーターやアントレプレナーの素養がある人を探して輝かせることを目的としています。そのイノベーター、アントレプレナーをどのように見つけるのかについて、日本エス・エイチ・エルのコンサルタントに相談して、選抜方法を決めました。

基本的に人材開発室がプログラム参加者の15人を選んでいます。候補者は30歳前後から35歳ぐらいまでの社員約1,100名です。選抜基準は2つ。一つは人事考課などの実績、もう一つはポテンシャルです。日本エス・エイチ・エルのタレントアセスメント(知的能力検査、パーソナリティ検査OPQ、モチベーション検査MQ)を使ってポテンシャルを評価しています。特にOPQから算出されるマネジメント能力やアントレプレナーのポテンシャルに注目しています。

選抜基準の2つの評価を縦軸と横軸にとり(実績を縦軸、ポテンシャルを横軸)、各軸を3つのレベルに分けることで、9つの区分(9ボックス)を作り、右上の区分に入る人から15人を選んでいます。

アセスメントで光る人材をどう見つけるか。

日本エス・エイチ・エルには採用のアセスメントを長年提供してもらっており、何度も尺度や基準の見直しの相談をして、真摯に協力してもらいました。「SHINE!Challenge Program」の軸を作りたいとなったときに、他のアセスメントも検討しましたが、長年のデータ分析と活用の実績でわかったアセスメントツールの信頼性と妥当性の高さ、カスタマイズの柔軟性から日本エス・エイチ・エルのアセスメントを使うことに決めました。その後、担当コンサルタントと時間をかけて打ち合わせをしながら、選抜手法や評価軸の構造などを決めていきました。

採用でも引き続きご協力いただき、さらに進んだ人材データ分析を行いたいと思っています。また、育成の面では、現場からアセスメント結果をうまく使いたいという声もあがっています。職場風土を変革するために、上下関係や社員同士のコミュニケーションを改善したり、ダイバーシティを推進するため、アンコンシャスバイアスに気付かせたり、といった取り組みを進めています。その中でOPQ、MQを自己理解や他者理解の促進に使いたいと考えています。読みやすく、あつかいやすいレポートやユーザーインターフェイスでアセスメント結果を本人やマネジャーにフィードバックできるとありがたいですね。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 大阪オフィス 部長

岡松 太郎

中堅、若手社員の早期選抜は、今や多くのクライアントで取り組まれている重要テーマですが、SHINE! Challenge Programはオンラインアセスメントデータの活用先端事例と思います。自社で保有する業績指標(パフォーマンス)とSHLハイポテンシャルモデル(グローバル経営リーダーに必要な資質)を掛け合わせた人材選抜は、客観性と予測精度を担保できる仕組みと言えます。
また、入社時と現在でのアセスメントデータの変化や、業績、昇格スピード等の各種パフォーマンス指標との関連性など、多岐にわたり検証しながら進める機会をいただきました。
20年近く当社サービスをご利用いただいておりますので、私よりも当社サービスにお詳しい方々ですが、今後も全社的にご活用いただけるよう、支援させていただきます。

グローバルリーダー育成に力を入れるマツダ。グローバルリーダーを早期発見・早期育成するタレントパイプラインの仕組みづくりとグローバルリーダーシップ研修の取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年11月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

マツダ株式会社

事業内容

乗用車・トラックの製造、販売など

業種

製造業

従業員数

単体 23,203名 (男性: 20,947名 女性: 2,256名)
連結 50,479名

※2020年3月31日時点

インタビューを受けていただいた方

竹下 可奈子 様

マツダ株式会社
人事本部 人材開発部 組織開発グループ

インタビューの要約

海外販売会社の社長候補探しが難航し、グローバルリーダーの早期発掘・早期育成の課題が顕在化した。
GLDC(グローバルリーダー育成委員会)を立ち上げ、グローバルでのリーダーシップパイプラインの仕組みづくりを行った。半年に1回各領域の統括役員が参加し、タレントリストを元に育成計画を立案する。
次いで、GLDP(グローバルリーダー研修)を立ち上げ、業務と並行してグローバルリーダーを疑似体験できるようなプログラムを立案、運営した。SHLのアセスメント・育成計画・集合研修・約半年間のプロジェクトワーク・スキップレベルミーティング・リベラルアーツ社外セミナーの6つの施策を実施した。
今後は、より全社で一貫した評価基準で人材選抜を行い、参加者の動機付けを行いながらプログラムも効果的に運用していきたい。

突然空いた海外販売会社の社長ポジション。後継者探しに苦労した。

2014年当時、マツダグループのとある海外販売会社の社長ポジションが急に空き、後継者をすぐに探さなくてはいけないという出来事がありました。その販売会社では基本的に現地の社員が社長になっていましたので、すぐに現地の候補者たちと面談を行いました。しかし、面談の結果、すぐに社長になれるほど育っていないことがわかり、そこの販売会社外で後継者を探すことになりました。しかし、マツダグループの他拠点で、探そうとしたものの、どこに、どのような優秀人材がいるのかみえず、大変苦労しました。この出来事から、二つの問題点が浮き彫りになりました。一つは、海外拠点の社長候補が育っていないという問題、二つ目が、グローバルリーダー候補がグローバルにシェアされていない、また各拠点ごとの育成、活用にとどまっているという点です。

グローバルベースでリーダー候補者を早期に発掘・育成すべき、という課題意識に対して、優秀人材の見える化と計画的育成の仕組みづくりに取り組みました。まず、2014年にGLDC<Global Leadership Development Committee>、日本語ではグローバルリーダー育成委員会が立ち上がりました。続く2015年にはGLDP<Global Leadership Development Program>、グローバルリーダー研修がスタートしました。

突然空いた海外販売会社の社長ポジション。後継者探しに苦労した。

GLDC:個人にフォーカスしたリーダーシップパイプラインの実現。

委員会のゴールは、重要なポジションの候補者が常に充足され、ベストな人材をアサインできる、そういった環境の実現です。これによってリーダーシップパイプラインが連綿と続く状態にするということをゴールに置いています。

過去にも、グローバルの人材育成を目的とした会議体もありましたが、ポジションマネジメント型でした。ポジションにフォーカスするため、若手人材の早期選抜育成には、限界がありました。このGLDCでは、個人にフォーカスすることで、早期の優秀人材の選抜・育成を活性化しようとしたわけです。リストも人ベースになっており、委員会で共有している約60名のタレントリストでは、その人のターゲットポジション、ポジションまでに必要な経験、強み・育成課題、その対応策などが記載されています。

委員会の委員は、各領域の統括役員が担っており、審議される対象は、マーケティング・販売と、経営企画、財務領域の課長部長層に限っています。もともと、海外の販売会社の社長後継が育っていないという問題意識から発足したので、海外販売会社のトップになりうる人材がいるこれら領域に限っています。開催は、半年に一回。①人材の特定。②育成計画立案、③実行とフォロー、④評価のプロセスがあります。

各領域の統括役員が育成したい人材を特定し、部門の責任で育成計画を立案します。この計画立案において我々が重要視していることはできる限り多様なストレッチ経験をさせることです。クロスファンクション(領域をまたいだ経験)、クロスリージョン(国をまたいだ経験)、最後にハイヤーポジション(経営ポジションの経験)です。経営者になると、担当する領域は広がり、国境もこえた広い視野でビジネスを捉える必要が出てきます。多様な価値観に触れる機会も増えてきます。それを若いうちに早めに経験させたいという思いがあります。立てた育成計画を実現させるために、他本部、海外へ異動させたい人材がいれば、会議の中で取り上げ、委員会のネットワークを使ったポジションマッチングを検討します。ただ、現実のところ、成立ぎりぎりまで話は進むものの、最終的にはビジネスニーズやプライベートな理由で、成立できないケースが多いのも悩みです。どうすれば、育成目的のアサインメントを次々成立させることができるのか、仕組みを今後も考えていかなくてはいけません。評価については、取り組もうとしてまだできていない課題です。

GLDP:ストレッチの機会を疑似体験するグローバルリーダー研修。

実際の異動は難しい場合もあるので、ストレッチの機会を疑似的にでも提供するべく立ち上げたのがGLDP、グローバルリーダー研修です。先ほどの3軸(クロスリージョン、クロスファンクション、ハイヤーポジション)を疑似的に体験するため、プロジェクトチームは多国籍、多領域のメンバーで構成され、経営者視点でプロジェクトワークに取り組んでもらいます。参加者は20名程度、グローバルリーダー候補で各領域の統括役員が選抜しています。もともと委員会と同様に対象領域を限定していましたが、一部対象を広げ、今後は全社に展開する予定です。

研修は、約1年間、業務を離れることなく参加してもらうプログラムになります。まずは、SHLのアセスメントから始まり、次に育成計画、集合研修、約半年間のプロジェクトワーク、スキップレベルミーティング、リベラルアーツ社外セミナーの6つの施策から構成されています。

SHLのアセスメントはオンラインで360度、能力テスト、OPQ、対面でロールプレイとインタビューを実施しています。研修開始時に各参加者に受検してもらっていますが、SHLはグローバルに展開されているので、参加者は現地の言葉で受検できます。また、グローバルで同じ物差しで定量的に結果が出てくるのでとても助かっています。このアセスメントの目的は二つ。まず一つ目は、自己認識を向上させるということ。二つ目に、マツダのリーダーに求められるリーダーシップにおける育成課題や強みの明確化です。結果は、マツダのグローバル経営リーダー要件に合わせて出るようカスタマイズをしていただいています。アセスメントの結果は、参加者本人だけでなく、上司もアセッサーから直接フィードバックをもらっています。事務局からは、各部門で活用してください、とお任せしたのですが、事後調査をしたところ、日々の業務に追われ、うまく活用しきれていない人がいるということがわかりました。せっかくの貴重なデータを活用しきれていないのはもったいない、ということで、2019年度から追加で個別育成計画という施策を導入しました。

マツダウェイの「共育」を大事にする研修プログラム

個別育成計画は2019年度から始まり、今力を入れて取り組んでいます。アセスメントの結果から見えてきた育成課題もしくは強みに対し、アクションプランを立ててOJTを通して1年間実行していきます。直属の上司だけでなく、経営者である本部長からフィードバックをもらい、アクションプランを立てています。経営者視点からのフィードバックをもらうことで、参加者の育成の質をさらに高められているのではと思います。また、この過程で、本部長や人事側もリーダー候補者を深く知ることができました。

集合研修は、海外メンバーも集めて、本社で約一週間実施します。外部講師による座学、マツダの理解を深めるセッション、役員との対話で構成されています。2019年度には、海外拠点から参加するメンバーから拠点の紹介や、取り組み課題をプレゼンしてもらいました。別拠点でも、皆同じ悩みを持っており、課題やベストプラクティスを共有できたことが参加者にとても好評でした。来年度は全領域から参加者がいる予定なのでお互いに学びあいながら視野を広げるチャンスを作りたいと思っています。マツダウェイにある「共育」=互いに教えあい、成長しあう取り組みがこの研修の根幹にあります。仲間同士でともに育てあえるようにと、メンバー同士のアセスメント結果共有も行っております。また、研修の最後には、自身が思う各チームメンバーの強みや育成課題をそのメンバーに伝える、という取り組みもしています。半年間一緒に頑張ってきた仲間からのフィードバックは、心に残るものがあるのではないでしょうか。

スキップレベルミーティングは、参加者と役員の一対一の面談です。目的は、参加者の視座向上、視野拡大と、役員と参加者のネットワーク構築です。フリートーク形式で、参加者が話したい内容を考えて面談を行いますが、毎年のアンケート調査では、参加者にとって一番好評な施策の一つです。一方で、参加者によって内容のレベルにばらつきがあり、期待するような成長につながっているか不明という役員からのフィードバックもありました。そこで個別育成計画の内容について面談の中でふれてもらうなど、一部ガイドを付けました。

この研修プログラムは、私自身にとってもやりがいがあります。役員とのやり取りを通して、高い視点に触れることができ、参加者を通して、多領域や海外拠点のことも知って、ネットワークを構築できます。将来の会社を背負うマネジメントの方の成長機会に、微力ながら携われることにやりがいを感じながら、これからもプログラムを進化させるとともに、私自身も成長していきたいと思います。

現在、参加者選抜を役員、各部門、各海外拠点に委ねているため、全社で一貫した基準はなく、主観的評価によるいわば一本釣り選抜のような状態です。今後はリーダー要件の活用や選抜目的でのアセスメント導入などを検討していきたいと思います。また、選抜で英語がネックになっている点も課題です。特に、開発・製造領域では、優秀人材であるにもかかわらず、英語ができないため研修に選抜されないこともあります。早くに海外赴任を経験させるなど、若いうちからの英語力向上に取り組む必要があります。動機づけにも課題があり、選抜研修がゆえに、上司に言われてきましたというやらされ感のまま参加する人もいました。モチベーションは研修の成果に大きく影響します。対応策として、2019年度はプログラムの開始時に三者面談、上司、本人、人事で、個別に説明会を実施して、上司への期待、本人への動機づけを行いました。その甲斐あってか、前年の参加者よりもモチベーション高く参加している人が多い印象でしたので、今後もそれを続けていこうと思っています。まだまだ課題も多い状態ですが、毎年改善しながらプログラムを作って行きたいと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 大阪オフィス 部長

岡松 太郎

次世代リーダーの育成は、今や多くの企業で取り組まれている重要テーマですが、誰を選抜しどのように育成するかは各社とも試行錯誤の連続です。マツダグローバルリーダー研修(GLDP)において、当社は2015年からグローバル体制で側面的支援をさせていただいております。2020年現在は、新たにリーダー要件の見直しに着手されるなど、更なるブラッシュアップも検討されています。ご担当の竹下さんは海外でのご経験も長く、グローバルとローカルの絶妙なバランスをお持ちの方と、常々感じております。人材選抜、育成については、日本と海外ではその捉え方の違いもある中、常に全体最適を目指して、改善を重ねていらっしゃいます。今後も、候補者の選抜・測定はもちろん、育成プログラム終了後の効果検証など、あらゆるシーンで、SHLグループの知見と各種アセスメントでマツダの人事・経営戦略のお役に立てるよう努めてまいります。

「新しい楽しさ・豊かさを お客様に発見していただけるモノ造りを」を経営理念とするサッポロビール。
変革を推進する経営リーダーを継続的に生み出す人財育成の仕組みづくりに取り組みました。

※本取材は2023年8月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

サッポロビール株式会社

事業内容

ビール・発泡酒・新ジャンル・ワイン・焼酎などの製造販売、洋酒の販売、他

業種

食料品

従業員数

約2,400名(2023年5月)

インタビューを受けていただいた方

小林 志野 様 小山 祐介 様

サッポロビール株式会社
人事部 キャリア形成支援グループ グループリーダー 兼 サッポロホールディングス株式会社 人事部 (写真右)
サッポロビール株式会社 人事部 キャリア形成支援グループ 兼 キャリアサポーター (写真左)

インタビューの要約

人事制度改革に伴い、サクセッションプランへの課題意識が高まり、サッポログループ内で先駆けて仕組みづくりに着手。
将来の経営者に求める要件を明確化し、次の経営者候補を対象にアセスメントを実施。
結果のフィードバックから、戦略的配置、社外研修への派遣、継続的な1on1によって対象者を育成。
今後も継続的な改善を行い、グループにも展開していく。

次世代の経営人財候補を育成するサクセッションプランを構築する。

私達は、人事部キャリア形成支援グループに所属し、人財育成やキャリア開発の支援がミッションです。サッポロビールの行動規範である「自分のキャリアは自分で切り拓く」という人財育成ビジョンにそって、経営人財育成に取り組んでいます。

2020年の人事制度改訂により、支援型のマネジメントをキーワードとする様々な施策を開始しました。その1つ、「人財育成会議」では、半期に1回各部署の役職者が一堂に会して、メンバー一人ひとりの強みや育成課題を話し合い、育成方針を決めています。従来、各事業会社の社長に経営リーダー候補を年に一度確認していましたが、組織としての体系的な育成施策はなく、経営全体で共有することもほぼありませんでした。変化の激しい時代、次世代の経営人財候補にも「人財育成会議」と同様の取り組みが必要という課題意識が高まり、将来的にはサッポログループ全体での取り組みも視野に、まずはサッポロビールにおいて経営人財育成の仕組みづくりに着手しました。

次世代の経営人財候補を育成するサクセッションプランを構築する。

要件定義とアセスメントの実施により、コンピテンシーポテンシャルを可視化。

具体的には、8つのステップで実施しました。ステップ1は全体構想の検討。年2回の経営人財育成会議を軸とし、対象層を喫緊の課題である次の経営者候補としました。会議体の委員長を社長、委員長代行を人事担当役員、事務局を人事部長、人事グループリーダー、キャリア形成支援グループリーダーが担当します。当時の人事担当役員はサクセッションプランへの課題意識が強く、この取り組みを強く牽引してくれました。

ステップ2は人財要件の策定。経営人財に求める要件の明確化のため、役員全員で他社事例やSHLから提供された情報などをもとに様々な議論をしました。最終的にサッポロホールディングスで既に策定されていた経営人財に求められる6 要件を採用しました。数年前に作成されていますが、検討の結果、有効な要件であると判断しました。

ステップ3は選抜プロセスの策定。まず候補者案を人事部で作成し、役員一人ひとりと個別に検討を行い、第一回目の経営人財育成会議で共有し、最終的な候補者を決定しました。

ステップ4はアセスメント実施。ステップ3で決定した候補者に対し、SHLのタレントセントラルでパーソナリティ検査とモチベーション検査を実施しました。外部アセスメント導入の目的は、2つ。1つ目は候補者の自己理解促進です。これまで社内の指標のみだった評価指標から、世間の同等職務レベルのデータと客観的に比較することで、より成長を支援できると考えました。2つ目は経営や人事が、候補者の顕在化されていない行動特性やモチベーション傾向を把握し、より適切な配置・育成・登用に繋げることでした。SHLコンピテンシーと当社の経営人財要件との紐づけも行い、アセスメント結果からコンピテンシーの可視化ができるようになりました。

本人に育成計画をフィードバック。成長を促すために異動や外部研修を実施。

ステップ5はフィードバック。各役員から、アセスメント結果と経営人財育成会議内で話された各候補者の育成計画を本人にフィードバックしました。以降は経営人財会議の合間に定期的に1on1を実施して、継続的な成長支援をしています。フィードバック実施にあたり、日本エス・エイチ・エルに依頼して事前に役員向けのフィードバック研修も行いました。アセスメント結果をよく理解するために、役員も全員アセスメントを受検しています。

ステップ6は戦略的異動。経営人財育成会議では、候補者を育成するための経験や配置案が話題に出てきます。異動は別のセクションが担当していますが、定期異動では前年の経営人財育成会議の内容を踏まえた、大胆な異動が行われたと感じました。

ステップ7は外部研修派遣。ステップ6の戦略的配置とほぼ同時並行に行いました。経営人財育成会議で議論し、必要と判断した人には、適切なプログラムを選定して研修に派遣しています。

本人に育成計画をフィードバック。成長を促すために異動や外部研修を実施。

最後のステップ8は対象者層の拡大です。初回である2021年は次の経営者候補を対象に1年間実施してきましたが、2022年は次の次の経営者候補を対象とすることにしました。2年目はステップ3からのサイクルを、もう1回転行いました。
今年で3年目ですが、今後もこの年間サイクルを確実に回し改善していくことが重要だと感じています。また、次の経営者の計画的な育成はサッポログループの共通課題ですので、サッポロビールの取り組みで上手く行っている部分を他の事業会社に役立てていただけるように、協力していきたいと考えています。

エス・エイチ・エルのコンサルタントには、当社の要望を聞きながらいろいろなご提案をしていただきました。ウェビナーを通じた他社情報の提供や、個別の情報交換会のセッティングなど様々な面でのサポートもありがたかったです。グループ企業への横展開や新入社員のオンボーディングなど、新たな始まった取り組みも引き続きご支援いただきたいと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

清水 智昭

今回のお取り組みはサクセッションプランニングを新たにスタートされる企業様にとってガイドラインとなる好例です。会議体の発足からアセスメントフィードバックの一連のプロセスに加え、実際の異動配置や研修派遣など具体的な施策が展開された点は特筆すべきポイントです。重要なのは「ボードメンバーの巻き込み」と「人財に関する対話機会の創出」です。会社のボードメンバーが自部門の管轄を越えて、次世代を担う人財をどのように創出していくか対話することが、施策実施までのプロセスにおいてキーポイントであったと感じています。次世代リーダーの戦略的な発掘/育成は多くの企業様での喫緊の課題であると思います。手始めに、一度膝をつきあわせて「次の担い手」を話し合う。すると自然とそれがサクセッションプランニングの入り口になるのではないでしょうか。

タレントの中居正広氏と女性とのトラブル報道に端を発する問題をめぐり、フジテレビは1月27日2度目の記者会見を行いました。10時間を超える異例の会見で私が感じたことは、経営トップの判断、言葉、行動により会社はいとも簡単に崩壊してしまうということでした。改めて経営トップの判断力の重要性を認識するとともに、いつ何時でも経営陣を刷新できるよう後継者を準備しておくこと、つまりサクセッションプランはすべての企業の最重要課題であると強く認識しました。

今回の問題はサクセッションプランの必要性を社会にはっきりと示す事例になりました。
経営陣の能力は企業に大きな影響を与えます。今回は経営幹部の判断がフジテレビの信用を失墜させ、会社崩壊の危機に追い込みました。
SHLのグローバルな調査では、CEOの後任探しが難航すると平均18億ドルの株主価値を失い、さらにCEOの指名が長期化すると業績が悪化すると指摘されています。今回の場合、社長の交代は円滑に行われましたが会長の後任は不在のままです。これはサクセッションプランが不十分であったことの証左と言えます。そしてこの体制はフジテレビの業績にさらなる悪影響を及ぼすでしょう。もし、会長不在が何ら影響を及ぼさないとしたら、今まで会長職を設けていたことの妥当性が問われます。
経営陣の刷新が絶対必要とは思いませんが、今回経営陣を総入れ替えしなかったことと後継者の準備が不十分であったことは関連していると考えます。

サクセッションプランの前提となるもの、経営陣の理想とビジョン

昨今、日本ではサクセッションプランを導入する大手企業が増えています。導入企業には共通の問題意識があります。さらなる成長のため、生き残りのため、経営を改革する必要に迫られているという点です。新しい事業を作り育て、経営を刷新する必要がある。だから、新しい理想とビジョンを実現するリーダー候補を選び育てるのです。
つまり、サクセッションプランは企業を存続させるために円滑な経営陣の引継ぎを行うためだけの手段ではなく、より高い理想、大きな目標に向かって企業を成長させるための手段とも言えます。
理想とビジョンを示すことができない経営陣にとってサクセッションプランは邪魔なものに映るでしょう。自らの権力維持を危うくするための取り組みに他ならないからです。

コンテクストとは

サクセッションプランを考えるにあたって「コンテクスト」について説明します。
コンテクストとはリーダーが活動する文脈的な環境、課題と言ってもいいでしょう。SHLはこれを4つ要素(役割、チーム、組織、外部環境)で捉えています。同じ企業であってもリーダーの役割によって異なる課題を持っています。つまり、コンテクストが異なるのです。各リーダーポストのコンテクストを知ることで、各ポストで直面する課題を乗り越える能力と経験を持つ候補者が誰であるかをきめ細やかに特定できるようになります。
このコンテクストを発見するためにSHLはグローバルリーダー9000名に対して3年間をかけた研究を行いました。この研究の結果、リーダーを登用する際にコンテクストを考慮すると、コンテクストを考慮しない時に比べて4倍以上の確率で正しい人材を登用できることがわかりました。また、製品、戦略、チーム、組織など何百のコンテクストの中から、どの階層のリーダーにおいてもパフォーマンスに影響を与える27のコンテクストを発見しました。

リーダーの成功に影響する27のコンテクスト

SHLがリーダーの成功に影響を与える27のコンテクストを4つの分野に分けました。

  1. 1. チームのパフォーマンスを推進する
  2. 2. 変革をリードする
  3. 3. リスクと評判をマネジメントする
  4. 4. 結果を出す

全27のコンテクストについてはコラム「リーダーシップコンテクストの選び方~サクセッションプランの実践」をご覧ください。
加えて、人材の特徴(パーソナリティ)がどのようなコンテクストに影響を及ぼすかを突き止めました。つまり、個人のパーソナリティとコンテクストとの適合度を見ることで、リーダーの成功の予測精度を大幅に向上させたのです。リーダーポストのコンテクストを特定すれば、候補者の中からそのポストで最も成功する可能性が高い人を選抜できます。不確実な未来に対応するため我々は複数の戦略上のシナリオをもっています。このような場合、戦略シナリオごとにリーダーとして最適な人材を準備することができます。コンテクストを用いることで不確実な未来に対応し、複数のシナリオを想定した後継者の準備が可能となります。

コンテクストを選ぶ

今回の会見で、清水賢治新社長の選任理由はフジテレビの編成、経営企画、他社、持ち株会社とオールラウンドな経験があること、と説明がありました。他の候補者との比較や決め手となった個別的な事情の説明はありませんでしたし、その点を質問する記者もおりませんでしたので、詳細な検討内容は不明ですが、現在の危機的状況を打開できるリーダーシップを持っていることが理由として述べられていなかったことに一抹の不安が残ります。

27のコンテクストの中から、私が考えるフジテレビ経営陣の現在のコンテクストは以下の7つです。

  • 変革をリードする
  • 新しい戦略を立案し、推進する
  • 不確実性が高くあいまいな状況で業務を遂行する
  • 頻繁なリーダー交代に適応する
  • リスクと評判をマネジメントする
  • 人や業務の安全とセキュリティを確保する
  • 対外的に組織を代表する

27のコンテクストの中ですべてのリーダーのパフォーマンスに悪影響を及ぼすものが4つあるのですが、そのうちの2つがフジテレビ経営陣のコンテクストに含まれます。その2つとは、頻繁なリーダー交代に適応する、不確実性が高くあいまいな状況で業務を遂行する、です。これらのコンテクストに直面するリーダーの多くが実際にパフォーマンスの問題に悩まされています。ましてや既に逆境にいるフジテレビの経営リーダーですから、これらから道は茨の道であることは確実です。

おわりに

今回のフジテレビ問題ははからずも多くの企業に経営リーダー選抜の重要性を深く考えさせる機会となりました。VUCAの時代の経営リーダーは、今まで経験したことのない想定外の問題に対応し、新しい課題を遂行していくことが求められます。
私たちは日本企業が新しいリーダーを発掘し、育成するためサクセッションプランに貢献いたします。

CNNによれば、今年のWikipediaの人気ページ上位は、アメリカ大統領選に関わる記事が多かったようです。世界に影響を与えるアメリカのトップを決める選挙は全世界の関心事でした。
今年最後の本コラムでは、毎週発信する記事のうち、今年最も読まれたコラムトップ10を振り返り、人事担当者の関心事を探ります。

2024年掲載の人気記事トップ10

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  9. ハイポテンシャル人材に求められる3つの要件
  10. タレントマネジメントのためのソリューションプラットフォーム「Insight Platform」

  11. ※太字は今年公開された記事です。
キーワードは「スキルベース」、「ハイポ」、「サクセッションプラン」トップ10の中でも、今年公開された記事に着目するとキーワードが浮かび上がってきます。
1つ目は「スキルベース」です。「スキル」という言葉が昨今HR領域で耳にする機会が増えました。日本ではジョブ型人事が先進事例として紹介されることが多いですが、そのジョブ型のさらに先を行く「スキルベース」の組織に関する解説に注目が集まりました。
2つ目は「ハイポテンシャル人材」です。このテーマは10年近く前から当社が発信していましたが、改めてハイポテンシャル人材の基本要件を解説する記事が人気でした。実際にハイポテンシャル人材の発掘や育成の具体的施策に着手する企業が増えているのかもしれません。
3つ目は「サクセッションプラン」です。このテーマに関わる記事は多数執筆していますが、今回人気を集めたのは「Insight Platform」というサクセッションプランを具現化する新規性の高い当社サービスのご紹介記事でした。次世代リーダーや後継者育成として、ある程度概念的に浸透しつつあるテーマですが、サクセッションプランで成功確率を高める「リーダーシップコンテクスト」という独自のサーベイを搭載した先進性が注目されたようです。

おわりに

今回解説したキーワードは2025年も更に注目をされると予想します。いずれもSHLグループが深い知見を持つテーマです。最新事例や自社への適用を検討している方はぜひ当社までご相談ください。

サクセッションプランを成功させるためには、特定のリーダーポストに適した後継者を選び、常に後継者席に人がいる状態を作る必要があります。
一般的に後継者選抜の基準として用いられるものは、リーダーシップコンピテンシーです。リーダーシップコンピテンシーはリーダーの役割において共通に求められる人材要件ですが、特定のリーダーポストでうまく職務を遂行できるかどうかを予測するのに十分な指標とは言えません。リーダーを取り巻く環境は多様であり、各リーダーの解決すべき課題もそれぞれだからです。
この問題を解決するための新しい概念として、SHLはリーダーシップコンテクストを見出しました。リーダーシップコンテクストとは、リーダーを取り巻く文脈的な環境のことです。SHLの広範な研究によりリーダーシップコンテクストはリーダーの成功に大きな影響を及ぼすことがわかりました。
コンテクストを基準として選抜されたリーダーは、従来の方法によって選抜されたリーダーよりもパフォーマンスが約20%高いのです。優れたリーダーは置かれた環境で求められるリーダーシップを効果的に発揮し、その環境におけるビジネス課題を解決するのが得意であるということがわかります。リーダーの選抜も適材適所が重要なのです。
本コラムでは、サクセッションプランを行う際にリーダーの選抜基準としてリーダーシップコンテクストをどのように選べばよいかについて述べます。


27項目のリーダーシップコンテクスト

SHLのリーダーシップ研究によって見出された重要なリーダーシップコンテクストについて紹介します。SHLはリーダーの成功に大きな影響を及ぼすコンテクストを27個定義しました。コンテクストを抽出したリーダーシップ研究に関する詳細は、コラム「アサインメントは文脈を捉えよ ~次世代リーダー育成 先端研究~」をご覧ください。

チームのパフォーマンスを推進する
  • 人材を最大限に活用する
  • 創造性と革新を推進する
  • ネットワークパフォーマンスを向上させる
  • 地理的に散らばったチームをリードする
  • グローバル/異文化のチームをリードする
  • 協力し合わない風土を変える
  • 揉め事の多い風土を変える


  • 変革をリードする
  • 新しい戦略を立案し、推進する
  • 急速に変化する製品、サービス、プロセスに対応する
  • 不確実性が高くあいまいな状況で業務を遂行する
  • 合併や買収でリードする
  • 頻繁なリーダー交代に適応する


  • 結果を出す
  • 高い利益率を実現する
  • イノベーションでビジネスを成長させる
  • 市場シェアを伸ばしてビジネスを成長させる
  • コスト競争力でビジネスを成長させる
  • 地理的拡大を通じてビジネスを成長させる
  • 独立採算の事業を経営する
  • 製品・サービスの幅広いポートフォリオをマネジメントする
  • 卓越した顧客サービスを提供する共通する
  • 共通する業務やサービスを集約して果たすチームをリードする


  • リスクと評判をマネジメントする
  • 高いリスクをとる状況下で業務を行う
  • リスクを嫌う状況下で業務を行う
  • リソースがかなり制限された中で運営する
  • 人や業務の安全とセキュリティを確保する
  • 対外的に組織を代表する
  • 環境の持続可能性を確保する
  • リーダーポストの要件を定義する

    サクセッションプランで後継者を選抜するためには、リーダーの選抜基準を作る必要があります。SHLのサクセッションプラン・ソリューションではリーダーシップコンテクストによってリーダーの基準(プロファイル)を作ります。
    プロファイルを作る際には主要な関係者へインタビューを行います。主要な関係者の筆頭はサクセッションプランの対象となっているリーダーポストの現職者です。その他には上司やボードメンバー、人事などへインタビューします。
    コンテクストを選ぶにあたって、現在に焦点を当てるのか、未来(1~2年後)に焦点を当てるのかを検討します。3年以上の長期的視点を持つべきではありません。環境変化に適応する新しいリーダーを輩出し続けることがサクセッションプランの目的だからです。現在から2年先までの役割、職務、組織が直面するビジネス上の課題に合ったコンテクストを選択します。
    今は存在しない役割のプロファイルを作る場合、最も重要なステップは新しい役割を作る理由、目的、その役割が直面する重要課題を理解している関係者に対するインタビューです。ジョブディスクリプションがある場合は参考にするとインタビュー内容がより具体的になります。

    適切なコンテクストの数

    コンテクストはリーダーが解決すべきビジネス課題と捉えることができます。役割の複雑性が高まれば高まるほど、該当するコンテクストの数は増えます。極端な言い方をすれば27個すべてのコンテクストに該当するリーダーポストがあるかもしれません。現実に世界は複雑になっており、リーダーが解決すべき課題は増加しています。
    しかし、コンテクストを10個以上選択することはできる限り避けなくてはいけません。推奨するコンテクストの数は7個以下です。リーダーの成功と解決すべき課題の数との関係に関する研究から、リーダーが抱える課題の数が7個を超えるとパフォーマンスが急激に低下することがわかっています。
    プロファイルのコンテクストが10個以上あるということは、誰がリーダーとなっても成功するのが難しいポストだということを示しています。本当に10個以上となった場合は役割の再設計を検討するか、万全のサポート体制を上層部とともに作ることをお勧めします。

    難易度の高いコンテクスト

    誰がリーダーになったとしても難しいコンテクストが存在します。以下4つのコンテクストはリーダーのパフォーマンスに悪い影響を及ぼすことがわかっています。

  • 頻繁なリーダー交代に適応する
  • 不確実性が高くあいまいな状況で業務を遂行する
  • 協力し合わない風土を変える
  • 揉め事の多い風土を変える


  • これらすべてのコンテクストに直面しているリーダーの約7割が業績の問題で苦しんでいるというデータがあります。もし、プロファイルに4つの課題がすべて含まれている場合、慎重に人材選抜を行う必要があります。また、この場合も役割の再設計やサポート体制の構築が重要になります。

    おわりに

    SHLのサクセッションプラン・ソリューションでは、今回ご紹介したコンテクストによるリーダーの選抜基準をパーソナリティ検査OPQと経験サーベイによって測定します。OPQで各コンテクストに対応するポテンシャルを予測し、経験サーベイで各コンテクストにおける職務経験の有無を測定します。この手法が各リーダーポストに対するきめ細やかな適性の予測を可能にしています。

    最後に私が自分の役割を考慮して選択したコンテクストをご紹介します。
    私は執行役員として、直販営業、マーケティング、SHLグループサービスの開発運営、海外とのブリッジを担当しています。選択したコンテクストは以下の通りです。

  • 人材を最大限に活用する
  • 急速に変化する製品、サービス、プロセスに対応する
  • 市場シェアを伸ばしてビジネスを成長させる
  • 高い利益率を実現する
  • リソースがかなり制限された中で運営する