サクセッションプランとは

サクセッションプランとは、将来組織のリーダーを担う人材を計画的に発掘、育成、選抜する仕組みです。経営トップや事業責任者など、組織の持続的な成長に欠かせないポジションにおいて、誰が役割を引き継ぐのかをあらかじめ定めておくことで、不測の事態にも備えられると同時に、戦略的な人材育成にもつながります。

サクセッションプランとは

サクセッションプランの必要性

サクセッションプランの必要性が世界中で高まっている主な理由は二つあります。一つ目は経営環境の不確実性が高まり、予期せぬリーダー交代が組織の大きなリスクとなっているから。二つ目はリーダー人材の獲得競争が激化し、自社内での育成が重要になっているからです。加えて、社会の価値観が多様化していることで、経営リーダーに求められる要件が急激に変化していることも影響を与えています。
ハーバードビジネスレビューシニアエディターのエベン・ハレル氏が行った研究では、退任するCEOの後任をすぐに見つけられない企業は平均で18億ドルの株主価値を失い、社外から採用されたCEOの平均報酬は社内出身のCEOの平均報酬よりも320万ドル高いことが述べられています。

サクセッションプランを行うべき組織

今すぐにでもサクセッションプランに着手すべき組織はどのような特徴を持っているのでしょうか。以下の6つのいずれかに該当する企業にとってサクセッションプランは重要課題と言えます。

サクセッションプランの進め方

次に、サクセッションプランの進め方についてです。サクセッションプランは以下のステップで構成されます。

1. 現状把握とキーポストの決定

経営層や人事が中心となり、経営戦略と連動した組織の将来像を描き、サクセッションプランの対象となるキーポストを決めます。キーポストには経営層や事業トップだけではなく、企業にとって必要不可欠な重要ポストを含める必要があります。キーポストが決まったら、各ポストについて後継者候補の有無を確認し、現状と将来像の人材ギャップを明確にします。

2. 後継者候補のアセスメントと選抜

従業員のなかから後継者候補をリストアップし、アセスメントを実施します。アセスメントを行うためには事前に各キーポストの人材要件を定義しておく必要があります。人材要件を定義するにあたって考慮すべき要素は、実績、コンピテンシー、ポテンシャルの3つです。実績は、業績、職務経験、保有資格、研修歴など今までの職務成果に関連する情報です。コンピテンシーは発揮された能力や行動特性です。定期的に行われる上司評価や360度評価によって得られる情報です。ポテンシャルは資質や潜在能力と呼ばれる保有している能力や才能です。仕事場面で顕在化していないことがある個人属性のため、アセスメント(認知能力測定、パーソナリティ測定、モチベーションリソース測定など)を使って測定する必要があります。

3. 育成プランの策定と実行

アセスメントによって選抜された後継者候補に対し、個々のスキルや経験のギャップを明確にし、それを埋めるための具体的な育成計画を作成します。例えば、戦略的視点を高めるためのプロジェクト参画、戦略的な異動による実務経験、メンタリング、外部研修など多様な方法を組み合わせます。育成の状況を上司や人事、キャリアコーチが定期的に確認し、必要に応じて柔軟に内容を見直すことが重要です。

4. メンテナンス

定期的に候補者の成長度合いや組織の状況変化を踏まえ、サクセッションプランが機能しているかを確認し、調整します。例えば、候補者が適切に育っているか、候補者の状況に変化はないか、重要ポストに変化がないか、部門責任者が役割を果たしているか、施策が経営や人事に貢献しているかなどをチェックします。必要に応じて対象ポストや候補者、育成方針の見直しを行い、仕組み全体の精度と実効性を高めていきます。ここでは経営層と人事が密に連携し、柔軟に対応することが求められます。

導入にあたっての注意点

一方で、サクセッションプランの導入にあたっては以下の点に注意が必要です。

導入にあたっての注意点

おわりに

サクセッションプランは未来の経営リーダーを育てる最も重要な人事施策の一つです。しかしながら、次の社長候補者を客観的な選抜と計画的な育成によって万全に準備できている企業は極めて少ないことが現状です。突発的に経営陣の交代を余儀なくされる場合のみならず、経営環境の変化に対応できる経営陣を育成し、円滑な後任への引継ぎを行うことは企業価値を向上させるうえで極めて重要です。
Insight Platformは、現在の複雑な経営環境に適応できる経営リーダー候補者の選抜に適したアセスメントツールです。オンラインで簡便に実施できるパーソナリティ測定と職務経験サーベイで、経営リーダーとしてのポテンシャルを測定し、人材選抜に対する有用なインサイトを提供します。

参考:Succession Planning: What the Research Says
Most organizations aren’t prepared. by Eben Harrell
From the Magazine (December 2016)
https://hbr.org/2016/12/succession-planning-what-the-research-says

はじめに

SHLのアセスメントは、民間企業だけでなく様々な公的機関や法人を含め、組織やチームのパフォーマンスを最大限にいかすために活用されています。ビジネス場面の利用だけでなく、過去には、南極レースに参加するメンバー選抜カーレーサー発掘プロジェクトのサポートなどにSHLアセスメントが活用された事例があります。
今回のコラムでは、SHLグループ本社があるイギリスの海軍におけるリーダー研究をご紹介します。

はじめに

イギリス海軍のリーダー選抜の課題

イギリス海軍は、上級士官に関してある課題を抱えていました。海軍は、イギリスの他の民間組織と異なり、人事異動や再配置が頻繁に起こります。通常、上級士官が同じ役職にとどまるのは約3年ほどです。これまで、イギリス海軍は任命・昇進の決定を、ほぼ例外なく年次評価報告書のみに依存していました。
この方法は、個人業績の満足度を伝えるには効果的ですが、特定の役職に誰がより適しているか、個々の卓越した強みがどの分野にあるかを区別するにはあまり役に立たないという課題がありました。
今回研究を行ったのは、30年以上イギリス海軍に勤務する経験を持つマイク・ヤング大佐(博士・MBE;大英帝国勲章メンバー)で、イギリス海軍のリーダーシップ評価および育成アドバイザーとして、上級士官のサイコメトリックアセスメント実施、コーチング、能力開発施策の設計を行っています。

上級士官にSHLアセスメントを実施

今回の研究ではイギリス海軍の上級士官における①パフォーマンス評価、②ポテンシャル(将来性)、③昇進率と一般知能、パーソナリティ、モチベーションリソースとの関連性を調査しました。
具体的には、300名を超えるOF5からOF7(大佐から少将と同等の英国海兵隊の階級を含む)の正規士官に、SHLアセスメントである一般知能検査G+、パーソナリティ検査OPQ32r、意欲検査MQ、を受検してもらいました。
イギリス海軍では、成功するリーダーとそうでないリーダーを組織内で独自に研究して確立した「指揮・リーダーシップ・管理(the Command, Leadership, and Management (CLM))」のコンピテンシーモデルを持っており、このモデルにOPQとMQの関連因子をマッピングし、対象者の各種評価項目とSHLアセスメント結果との関連性を分析しました。

 CLMコンピテンシーモデル:
 Conceptualize(概念化):達成すべきことを理解し、それを明確に伝える
 Align(方向性を合わせる):コントロール可能な行動に集中する
 Interact(関わり合う):他者と協働し、他者を通じて業務を遂行する
 Create Success(成功を創造する):習慣的に成果を出す

結果

各因子と有意に相関があった項目は以下の通りです。

CLMモデル SHLアセスメントのマッピング ①パフォーマンス ②ポテンシャル ③昇進率
Conceptualize
(概念化)

達成すべきことを理解し、それを明確に伝える
G+ 一般知能
OPQ 創造的
OPQ 堅実
OPQ 概念性
OPQ 好奇心
OPQ 律義
MQ 興味 +
MQ 柔軟性 +
Align
(方向性を合わせる)

コントロール可能な行動に集中する
OPQ 几帳面 +
OPQ 説得性 +
OPQ 先見性 +
OPQ 指導性 ++
OPQ 批判的
MQ 権限
MQ 活力
Interact
(関わり合う)

他者と協働し、他者を通じて業務を遂行する
OPQ 人間への関心 ++
OPQ 協議性 ++
OPQ 友好性
OPQ 抑制
OPQ 独自性
MQ 帰属
MQ ステータス
Create Success
(成功を創造する)

習慣的に成果を出す
MQ 達成 + +
MQ 競争 +
MQ 没頭 ++ ++
MQ 失敗の恐怖 + ++
MQ 昇進 ++ ++
MQ 快適と安定
MQ 成長 ++

高:当該因子の高得点の特徴を持つ

低:当該因子の低得点の特徴を持つ

++/+ 有意に正の相関がある

–/- 有意に負の相関がある

論文のTable 6を元に筆者が作成

  1. パフォーマンスとの関連性:
    (OPQ)仕事を最後までやり遂げる
    (MQ)仕事に精力をつぎ込む、失敗しないために活動的になる、リスクがあっても気にしない
  2. ポテンシャル(将来性)との関連性:
    (OPQ)主導権を取ることを好む
    (MQ)目標を達成しないと気が済まない、失敗しないために活動的になる、昇進/キャリアアップによって意欲があがる
  3. 昇進率との関連性:
    (OPQ)新しいやり方を好む、ルールに縛られない、交渉を好む、長期的な視点を持つ、人を分析する、広く相談して意思決定する
    (MQ)変化や刺激を好む、流動的な環境を好む、目標を達成しないと気が済まない、人と比較されることで成果を出す、昇進/キャリアアップによって意欲があがる、能力開発やスキルアップで意欲があがる

全体として、マッピングされたアセスメントの各因子とパフォーマンス・ポテンシャル・昇進率には相関がみられ、CLMモデルがこれらの予測に有用であることが分かりました。
分解してみていくと、MQは優れた予測因子であることが示され、昇進の早い上級士官の重要な差別化要因であることが明らかになりました。これは、リーダーが「どう行動するか(How)」だけでなく、「なぜそう行動するのか(Why)」を理解することの重要性を浮き彫りにしています。こうした深い内面の動機を無視すると、一見有能に見えても、長期的に成功するための“内なる原動力”を欠いた人物を誤って昇進させてしまうリスクがあります。

いずれの指標とも関連性が見られなかった一般知能については、高次の思考を支える要素ではあるものの、それだけでは「優れたリーダー」と「少し良いリーダー」とを区別する決め手にはならないと解釈されました。むしろ、一般知能は“ある水準までは必要な基礎的能力”とされ、それ以上になると、より重要なのは他の要素であるようだと大佐は述べています。

これらの結果を用いて、イギリス海軍では、データに基づいたサクセッションプランや能力開発プランの意思決定を行えるようになりました。SHLではイギリス海軍に向けてオリジナルのリーダーシップ開発レポートも作成し、支援しています。

結果

おわりに

軍組織のリーダーにおけるサイコメトリックアセスメントとの関連性が示された興味深い事例です。ビジネスの組織とはミッションも体制も異なることは明らかですが、今回の上級士官のリーダー研究結果はビジネス場面にも通じる「リーダーとしての素養」として頷ける部分もあります。
民間企業であれ、軍隊であれ、組織運営は人が行う以上、介在する人の能力やスキル、意欲、人同士(チーム)の組み合わせで成果差が出ます。この捉えづらい人の能力やスキル、意欲を可視化する当社のアセスメントツールは、組織パフォーマンスの向上に深く貢献できます。
なお、論文の中では、今回の研究でなぜSHL社のアセスメントを評価ツールとして採用したか、信頼性や妥当性などに言及しながら説明しています。当社の評価ツールとしての品質を知る上でも参考になる論文かと思います。

参考文献:
Anchoring Talent Decisions in Science: Insights from Senior Leader Research in the Royal Navy
The Royal Navy Modernizes Leadership Development and Selection with SHL
General intelligence, personality traits, and motivation as predictors of performance, potential, and rate of advancement of Royal Navy senior officers

タレントマーケットプレイスとは何か

タレントマーケットプレイスは、企業内に「社内労働市場」を形成することを目的とした社内プラットフォームです。このプラットフォームは、従業員一人ひとりが持つスキルや経験、キャリアの目標、興味関心といった「タレント」の情報と、社内にある様々な業務やプロジェクト、空きポジション、さらには社内副業や勉強会といった「機会」を、AIなどの技術を活用して効果的にマッチングさせる仕組みを提供します。
このプラットフォームは、単に従業員の人材情報を一元管理・可視化することを主な目的とした、従来のタレントマネジメントシステムとは異なる概念を持っています。タレントマネジメントシステムが人事部門などによるデータ管理・分析に重点を置くのに対し、タレントマーケットプレイスは、タレント(従業員)と機会の能動的なマッチングを促進し、企業と従業員双方にとっての「適材適所」をより高い精度で実現することを目指します。これにより、従業員は自身の意志に基づいた多様な機会を探求し、企業は社内リソースを最適に活用できるようになります

タレントマーケットプレイスがもたらす効果

タレントマーケットプレイスは、企業と従業員の双方にメリットをもたらします。主な効果は以下の通りです。

企業側のメリット


従業員側のメリット

タレントマーケットプレイスがもたらす効果

タレントマーケットプレイスとSHLアセスメントとの親和性

このタレントマーケットプレイスの仕組みは、SHLのアセスメントと組み合わせることでより強力な効果を発揮します。TMP導入のフェーズに応じて最適なソリューションをご提案いたします。

  1. 人材データの拡充とマッチング精度向上:タレントマーケットプレイスの基盤は従業員のスキルや経験データです。SHLアセスメントによる個人の能力や行動特性の客観的な測定結果を加えることで、AIによる職務推薦の裏付けデータとして活用可能です。
  2. ハイポテンシャル人材の発掘・登用支援:SHLのアセスメントでは、経験・スキルのみならず成長余地や将来のポテンシャルを評価できます。中長期的なリーダー育成・異動の判断材料となります。
  3. 社員の納得感・キャリア自律の促進:アセスメントを通じて「自分はどのような強みを持ち、どんな職務に適性があるのか」を本人が理解することで、エンゲージメントと自己成長意欲が高まります。

おわりに

このタレントマーケットプレイスという仕組みは、近年日本でも導入を検討される企業が増えています。SHLでは組織の活性化・人材の流動性を高める様々なソリューションを提供しておりますので、ご関心がある方は是非お問い合わせください。

当社が積極的にタレントマネジメントに関する情報発信を始めた2020年と現在(2025年)を比較すると日本企業にタレントマネジメントの考え方は浸透し、具体的な取り組みを進める企業も増えてきました。しかしながら、依然としてその実践は大手企業に限られていることも現実です。
タレントマネジメントは、人手不足が深刻化する日本において多様な人材や多様な働き方を受け入れ戦力にしなければならない企業を強力にサポートするものであり、すべての企業にとって有益です。
ここで改めてタレントマネジメントを導入するうえでのポイントについて整理します。

1. 戦略と目標の明確化

膨大な手間とコストをかけてタレントマネジメントの制度とシステムを導入したけれど、何も変わらなかったという事態は避けたいものです。そのためには組織の戦略遂行のためにどのような問題を解決するのか、どのような組織と人材を開発するのか、人材をどのように活用するのかなどを明確にしなければなりません。
まずは組織人事戦略の確認が必要です。組織人事戦略は、経営戦略や事業戦略に基づいて策定されるもので、企業や事業のビジョン実現に不可欠な組織と人材のあり方を示します。
次に、組織人事戦略を実現するための具体的な目標設定をします。タレントマネジメントは手段であり、導入の目的と達成すべき目標を明確にすることが重要です。

2. 人材要件の明確化

職務に必要な能力がわからなかったり、新しい事業や新設の部門、新しい職務に適した人材がわからなかったりといった悩みを抱えている方も多いかもしれません。高業績者の行動特性や新しいポストの職務内容を客観的かつ科学的に分析することで、人材要件を明らかにすることが大切です。
有力な情報源として職務記述書(ジョブディスクリプション)があげられます。これは職務分析によって作られ、職務内容や職責、職務遂行に求められる資格・知識・スキル・能力などが記載され、ジョブ型雇用の企業には必須のツールです。メンバーシップ型雇用の企業でも職務記述書の作成を進めることは有益です。

3. 社内の理解と協力

タレントマネジメントを成功させるには社内の協力が不可欠です。経営層だけでなく、各部門のマネジャーや全社員が納得し、施策を実行できるようにする必要があります。
新しい取り組みでは全員がすぐに賛成するとは限らないため、丁寧な説明が求められます。タレントマネジメントの目的、内容、方法、対象者、得られるメリット、発生しうる問題点とその対策、運用上の注意点、情報セキュリティ等をオープンかつわかりやすく説明し、社内の理解と協力を得られるようにしましょう。

4. フィードバックの実施

どのような施策を導入する場合でも参加者に対する建設的なフィードバックは極めて重要です。
例えば、サクセッションプランを導入する場合、後継候補者のアセスメント結果を人材委員会で検討するだけでなく、候補者本人にフィードバックすることで能力開発やエンゲージメントの向上につなげることができます。上司や部門責任者、メンターなどにアセスメント結果を正しく伝えることで、能力開発やキャリア開発、コミュニケーションの改善が期待できます。
人材可視化を目的に行う施策の場合、自ずと自己理解や相互理解が進みますので問題はありませんが、選抜や配置任用、チームビルディングなどにおいても、アセスメント結果に基づく「個人の強みや弱み」「指導の仕方」「コミュニケーションの取り方」などを関係者へフィードバックしましょう。社員一人ひとりを深く理解することは、組織が人材を活用するためだけでなく、働く人のやりがいやウェルビーイングにもつながります。

5. 検証と改善フローの構築

タレントマネジメントの導入はゴールではなく、スタート地点です。導入に際して設定した目標の達成に向け、客観的な検証を行い、必要に応じて改善を加えていきます。
導入後、想定とは異なる結果がでることもありますが、当初の目的と目標を忘れず、施策の最適化を進めていくことが求められます。常に最新の人材データを保持し、運用手順や手法を柔軟に見直す姿勢が重要です。
タレントマネジメントの効果を最大限に引き出すためには、検証と最適化を継続的に行うことが不可欠です。

おわりに

これらのポイントを踏まえて効果的にタレントマネジメント施策を運用している企業の事例は、導入事例(https://www.shl.co.jp/casestudy/)に多数掲載しております。ぜひご覧ください。

コンサルティング

人材要件定義コンサルテーション

職務遂行に必要なコンピテンシーをアセスメントデータ分析、インタビュー等で特定します。

人材要件定義とは?

選抜、配置、任用、能力開発などの人事施策を行うには適切な基準が必要です。人材要件を定義することで適切な基準と運用方法がわかります。

アセスメントデータの分析、高業績者へのインタビューなどを通じて各ポストの職務遂行に必要なコンピテンシーを特定します。調査対象の設定、調査(適性データ収集、データ分析、インタビュー、アンケートなど)の実施、コンピテンシーの決定、コンピテンシーの活用を支援します。

人材要件定義 2つのサービス

  • 人材要件定義支援
  • 人材要件定義のノウハウ提供

人材要件定義支援

特定の職種やポスト等の人材要件を定めるために、アセスメントを用いたデータ分析や経営者やキーポジションの方にインタビューを行います。定量的なデータと定性的なインタビューの情報を統合し、人材要件定義を作成します。今後必要とされる自社独自の人材要件とコンピテンシーのマッピング支援も行います。データ分析ではオリジナル尺度の作成も可能です。

人材要件定義のノウハウ提供

自社で要件定義を行うためのインタビュースキルトレーニングやアセスメントデータの統計分析手法のトレーニングを行います。当社の豊富な実績を元に、実践的なスキルや手法を学ぶことができます。 自社で主体的に要件定義を行うことで、今後の要件の変化にもすばやく対応することが可能です。

導入シーン

採用の求める人物像の作成や見直し

データを元に科学的に求める人物像を定義できます。経営戦略の転換や新たな事業で求める人材が変化した場合も、未来に必要な人材要件の定義が可能です。

昇格の選抜基準の作成

社内の人材選抜もその後のパフォーマンスの観点から妥当な選抜基準を作成することが可能です。

配置・配属の参考

社内の各ポストに求められる人材要件と社員の人材情報を結びつけ最適な配置を実現します。

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人材要件定義のご提案

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お問い合わせ

ご不明な点がございましたら、担当コンサルタントまたは「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。

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アセスメント

Insight Platform

Insight Platform(Contextual Leadership)は、コンテクストと呼ばれるリーダーを取り巻く、よく直面する課題や外部環境の経験値とポテンシャルを掛け合わせて、一目で後継人材を可視化するサクセッションプランの支援ツールです。

測定項目 パーソナリティ(OPQ32r)
経験サーベイ
所要時間 40分

Insight Platform(Contextual Leadership)とは

キーポストの要件を設定し、候補者にアセスメントを行うことで、経験の有無×パーソナリティの適性、2つの観点から候補者を可視化します。
リーダーの成否にかかわるコンテクストという観点を取り入れることで、組織がより正確にリーダーを発掘、評価、選抜、育成できるようにします。

コンテクストを加味した判断

SHLが行った大規模な調査で、リーダーの成否にコンテクスト(環境や文脈)が重要な要素であることが分かりました。このコンテクストを考慮することで、画一的なアプローチをするよりも平均で4倍以上正確にリーダーを選抜できます。

変化に柔軟に対応

事業環境やそこで求められるリーダー像が変化してもコンテクストを設定しなおすことですぐに新たな候補者を特定することができます。柔軟かつ多様なリーダー像を素早く定義・発掘してアジャイルな組織体制を支援します。

Insight Platform(Contextual Leadership)

パーソナリティと経験を測定します。

  • パーソナリティ
  • 経験サーベイ

パーソナリティ

3つの行動に関する記述の中から、自分に最もよく当てはまっているものを1つ、次に最も当てはまっているものを1つ選びます。職務に関係する「受検者の典型的な、または好む行動スタイル」を測定し、各種行動特性の予測も行います。

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タレントの中居正広氏と女性とのトラブル報道に端を発する問題をめぐり、フジテレビは1月27日2度目の記者会見を行いました。10時間を超える異例の会見で私が感じたことは、経営トップの判断、言葉、行動により会社はいとも簡単に崩壊してしまうということでした。改めて経営トップの判断力の重要性を認識するとともに、いつ何時でも経営陣を刷新できるよう後継者を準備しておくこと、つまりサクセッションプランはすべての企業の最重要課題であると強く認識しました。

今回の問題はサクセッションプランの必要性を社会にはっきりと示す事例になりました。
経営陣の能力は企業に大きな影響を与えます。今回は経営幹部の判断がフジテレビの信用を失墜させ、会社崩壊の危機に追い込みました。
SHLのグローバルな調査では、CEOの後任探しが難航すると平均18億ドルの株主価値を失い、さらにCEOの指名が長期化すると業績が悪化すると指摘されています。今回の場合、社長の交代は円滑に行われましたが会長の後任は不在のままです。これはサクセッションプランが不十分であったことの証左と言えます。そしてこの体制はフジテレビの業績にさらなる悪影響を及ぼすでしょう。もし、会長不在が何ら影響を及ぼさないとしたら、今まで会長職を設けていたことの妥当性が問われます。
経営陣の刷新が絶対必要とは思いませんが、今回経営陣を総入れ替えしなかったことと後継者の準備が不十分であったことは関連していると考えます。

サクセッションプランの前提となるもの、経営陣の理想とビジョン

昨今、日本ではサクセッションプランを導入する大手企業が増えています。導入企業には共通の問題意識があります。さらなる成長のため、生き残りのため、経営を改革する必要に迫られているという点です。新しい事業を作り育て、経営を刷新する必要がある。だから、新しい理想とビジョンを実現するリーダー候補を選び育てるのです。
つまり、サクセッションプランは企業を存続させるために円滑な経営陣の引継ぎを行うためだけの手段ではなく、より高い理想、大きな目標に向かって企業を成長させるための手段とも言えます。
理想とビジョンを示すことができない経営陣にとってサクセッションプランは邪魔なものに映るでしょう。自らの権力維持を危うくするための取り組みに他ならないからです。

コンテクストとは

サクセッションプランを考えるにあたって「コンテクスト」について説明します。
コンテクストとはリーダーが活動する文脈的な環境、課題と言ってもいいでしょう。SHLはこれを4つ要素(役割、チーム、組織、外部環境)で捉えています。同じ企業であってもリーダーの役割によって異なる課題を持っています。つまり、コンテクストが異なるのです。各リーダーポストのコンテクストを知ることで、各ポストで直面する課題を乗り越える能力と経験を持つ候補者が誰であるかをきめ細やかに特定できるようになります。
このコンテクストを発見するためにSHLはグローバルリーダー9000名に対して3年間をかけた研究を行いました。この研究の結果、リーダーを登用する際にコンテクストを考慮すると、コンテクストを考慮しない時に比べて4倍以上の確率で正しい人材を登用できることがわかりました。また、製品、戦略、チーム、組織など何百のコンテクストの中から、どの階層のリーダーにおいてもパフォーマンスに影響を与える27のコンテクストを発見しました。

リーダーの成功に影響する27のコンテクスト

SHLがリーダーの成功に影響を与える27のコンテクストを4つの分野に分けました。

  1. 1. チームのパフォーマンスを推進する
  2. 2. 変革をリードする
  3. 3. リスクと評判をマネジメントする
  4. 4. 結果を出す

全27のコンテクストについてはコラム「リーダーシップコンテクストの選び方~サクセッションプランの実践」をご覧ください。
加えて、人材の特徴(パーソナリティ)がどのようなコンテクストに影響を及ぼすかを突き止めました。つまり、個人のパーソナリティとコンテクストとの適合度を見ることで、リーダーの成功の予測精度を大幅に向上させたのです。リーダーポストのコンテクストを特定すれば、候補者の中からそのポストで最も成功する可能性が高い人を選抜できます。不確実な未来に対応するため我々は複数の戦略上のシナリオをもっています。このような場合、戦略シナリオごとにリーダーとして最適な人材を準備することができます。コンテクストを用いることで不確実な未来に対応し、複数のシナリオを想定した後継者の準備が可能となります。

コンテクストを選ぶ

今回の会見で、清水賢治新社長の選任理由はフジテレビの編成、経営企画、他社、持ち株会社とオールラウンドな経験があること、と説明がありました。他の候補者との比較や決め手となった個別的な事情の説明はありませんでしたし、その点を質問する記者もおりませんでしたので、詳細な検討内容は不明ですが、現在の危機的状況を打開できるリーダーシップを持っていることが理由として述べられていなかったことに一抹の不安が残ります。

27のコンテクストの中から、私が考えるフジテレビ経営陣の現在のコンテクストは以下の7つです。

  • 変革をリードする
  • 新しい戦略を立案し、推進する
  • 不確実性が高くあいまいな状況で業務を遂行する
  • 頻繁なリーダー交代に適応する
  • リスクと評判をマネジメントする
  • 人や業務の安全とセキュリティを確保する
  • 対外的に組織を代表する

27のコンテクストの中ですべてのリーダーのパフォーマンスに悪影響を及ぼすものが4つあるのですが、そのうちの2つがフジテレビ経営陣のコンテクストに含まれます。その2つとは、頻繁なリーダー交代に適応する、不確実性が高くあいまいな状況で業務を遂行する、です。これらのコンテクストに直面するリーダーの多くが実際にパフォーマンスの問題に悩まされています。ましてや既に逆境にいるフジテレビの経営リーダーですから、これらから道は茨の道であることは確実です。

おわりに

今回のフジテレビ問題ははからずも多くの企業に経営リーダー選抜の重要性を深く考えさせる機会となりました。VUCAの時代の経営リーダーは、今まで経験したことのない想定外の問題に対応し、新しい課題を遂行していくことが求められます。
私たちは日本企業が新しいリーダーを発掘し、育成するためサクセッションプランに貢献いたします。

日本では企業の雇用形態がメンバーシップ型からジョブ型へ変化しはじめたところですが、既にジョブ型雇用が一般的な欧米企業では新しい組織人事のモデルが生まれています。
キーワードは「スキルベース」です。職務を中心にする人事からスキルを中心にする人事への大きな変革がはじまっています。
本コラムでは、新しい人事の概念であるスキルベースについて解説します。

スキルベースの組織とは

スキルベースの組織とは、ジョブではなくスキルを中心とした人事管理を行う組織です。ジョブを一人の人が行う組織の最小単位と捉えるのではなく、一つのジョブをスキルの集合体と捉え、スキルと人を結び付ける考え方です。今までであれば一つのジョブと捉えられていた一連の作業を細分化して、スキルによって分類し、ある人が保有しているスキルに応じてジョブ自体を柔軟に変えてしまう組織人事のあり方です。
ここでいうスキルとは、プログラミング、コーディング、データ解析、外国語などのハードスキルだけではなく、コミュニケーション、リーダーシップ、クリティカルシンキング、完遂能力、回復力などのソフトスキルを含んでいます。


なぜ、スキルベースが必要なのか

欧米でスキルベースが普及していく背景は以下の5つに要約できます。
  1. 従業員の福祉に貢献する
    コロナ禍を経て、人々は単に生活のための給料をもらうだけでなく、社会貢献と自身の成長を実感でき、人として尊重される企業で働きたいと強く考えるようになりました。スキルベースを導入することで従業員一人一人の強みを生かすことができ、スキルトレーニングによってエンプロイヤビリティを向上させることもできます。
  2. 市場や戦略の変化
    スキルから仕事を再編成すれば、組織は変化する環境に対して迅速に対応できるようになります。コロナ禍で職務の変更を余儀なくされた人が多くいました。多くの人は新たな職務への適応に時間がかかったはずです。スキルベースを導入していれば、各従業員の持つスキルに基づいて新たな職務を創出し、より早く成果を出すことができていたでしょう。
  3. 人材不足
    スキルベースでは、学歴や経験といった従来の指標にとらわれず人材の能力や学習・適応能力に注目して人を選ぶため、従来では採用できなかった人材を採用したり、候補者として社内選抜したりすることが可能です。スキル重視の企業は人材パイプラインを9.4倍増やすことができます。
  4. デジタル技術革新のスピード
    生成AIの発達により職務の一部をAIに担わせることができるようになりました。職務に求められる役割とスキルが変化しているのです。私たちは人が行うべきタスクを再編成し、新しい職務を作り出さなければなりません。スキルベースはこのような職務の再編成に適したモデルです。
  5. 働き方の多様性に対応する
    多くの人が自分のスキルを武器にしたフリーランスやプロジェクトベースの仕事をはじめています。また、企業で働く人であっても職務記述書に書かれた仕事だけをしている人は少数派です。特にエグゼクティブの大半は担当する部門や職務領域を超えて仕事をしています。

スキルベースの実践

スキルベースの実践においてはじめに着手すべき人事施策は3つあります。

スキルベースの採用
スキルベースの選考プロセスを構築します。採用基準としては、資格や職務経験よりも、スキルや能力、適性を優先します。これにより未経験者を選考の対象とできるため応募者が増加し、採用人数を増やすことができます。 選考ではスキルベースのアセスメントや行動面接を活用し、スキル要件に照らして評価を行います。


スキルベースの人事異動、登用任用
現有社員は組織と仕事の知識を持っており、自社のビジネスを熟知しています。外部から採用する人材に比べて即戦力になる可能性が高いことがわかっています。 スキルベースの社内公募や人事異動を活発に行うことで社内の人材流動性を高めることができます。社内の人材流動性を高めることは従業員のエンゲージメント向上、定着率向上、雇用コスト削減など、多くのメリットにつながります。


リスキリング
経営戦略、事業戦略や人材戦略が変われば、組織の能力やスキル要件も変わります。 社員のスキル、能力、ポテンシャルを個別に把握できれば、より効率的にリスキリングの施策を打つことができます。また、変化に対応できる人材を把握し、個別の状況にあったリスキリングを行えば、育成投資の効果を高めることができます。

スキルベースの問題点

スキルベースは単にスキルによる人事管理というだけでなく、人事管理の根幹に影響を及ぼす大きな変革です。導入にあたっては以下の問題点があります。
「スキルベースモデル導入の主な障壁」(デロイト、2022年)
  1. 旧来の考え方と慣行
  2. スキルに見合った報酬を与えることの難しさ
  3. 変化のスピードへの対応
  4. スキルをビジネスの優先順位に合わせることができない
  5. スキルによるマネジメントの複雑さと難しさ
  6. スキルの共通定義や分類法の欠如
  7. スキルに基づいてパフォーマンスを評価できない
  8. スキルデータの不足
  9. 効果的なスキル関連テクノロジーの欠如
  10. 採用担当者や受入れ部門のマネジャーが、スキルのある人材の見つけ方とスキルの評価方法を知らない


終わりに

私たち日本企業がジョブ型雇用の利点を活用しようと人事変革を進めている中、欧米企業はジョブで人を縛ることが組織運営の柔軟性を損なうとスキルベースというモデルを生み出しました。スキルベースの根底には、人それぞれの強みを生かすために職務を柔軟に変えるという発想があります。この発想、どこかで聞き覚えがあります。そうです。日本のメンバーシップ雇用の考え方です。組織のメンバーとして雇用した人材を生かすために柔軟に異動させ、仕事を作り、定年までその人の能力を最大限に活用しようとするこの考え方です。しかし、メンバーシップ型雇用は人材育成に時間がかかり、急激に変化する環境には適応しづらいモデルです。その点がスキルベースとの違いと私は考えます。
スキルベースの導入にはアセスメントが不可欠です。スキルベースについて詳しく知りたい方は以下のリンクからeブックをご覧ください。
https://www.shl.com/hr-priorities/skills-based-organizations/

参考:
SHL ebook「How to build a skills-based organization」
Deloitte(2022)「The skills-based organization: A new operating model for work and the workforce」

以前のコラムで「パワースキル」という新しいフレームワークと、各スキルの地域や業界別の分布をご紹介しました。従来のコンピテンシーとは異なる、新たな観点として注目を集めているスキルアプローチですが、今回は組織内でスキルをどのように活用するかを、SHLグループのe-book「How to build a skills based organization」より一部抜粋してご紹介します。

なぜスキルベースの組織なのか

現在、人事は事業戦略の変化に合わせて人材を素早く効果的に活用することに苦慮しています。組織はスキルを特定し、測定し、配置するための体系的な、あるいは有用な方法を持っていません。人材とスキルを中心に仕事を組織化する、つまり、スキルベースの組織を作ることで、生産性、パフォーマンス、アジリティ(敏捷性)を最大化することができるのです。スキルを理解し、管理するシステムを構築することで、人事はすべての人材業務に一貫した戦略を適用することができ、優先事項や経済状況、人材市場の変化に事業が適応できるようになります。
調査によればスキルベースの組織は、以下の傾向があります。

スキルへの移行にあたり検討すべきポイント

具体的な移行のプロセスは組織によって異なりますが、ここでは有意義な変化を起こすために検討すべき4つのポイントをご紹介します。

1. 「なぜ」から始め、成功をイメージする
自問自答してみてください。なぜスキルベースへ移行するのか?スキルによって最終的に何を達成したいか?スキルアプローチに取り組む理由はたくさんあります。しかし、目的を明確にすることで、焦点を絞ることができます。成功とはどのようなものかを考えてみてください。どのようなKPIか確認し、それがどのようにビジネスに役立つのですか?

2. 組織を結束させる
スキルベースの組織作りは、一人でできるものではありません。組織内の他の利害関係者と目標や戦略を共有し、一緒に取り組む必要があります。上級リーダーから一般社員まで組織内のあらゆるレベルの人々が、このアプローチの利点を理解し、移行中および移行後に果たす役割を把握しているようにしましょう。

3. 道具を揃える
どのような形であれ、スキルアプローチに取り組む上では、スキルを正確に識別し、測定し、マッピングする必要があります。ここにアセスメントを導入することで、従業員のスキルを客観的に測定し、タレントマネジメントに関する迅速で十分な情報に基づいた意思決定が可能になります。まずは、スキルを記述しマッピングするための共通言語を見つけます。SHLのスキル分類法は、科学的な根拠に裏付けられたフレームワークに基づいています。次に、スキルを測定するツールが必要です。SHLのGlobal Skills Assessment(グローバル・スキルズ・アセスメント)は、わずか15分で96のビジネススキルを測定することができます。

4. 成功を祝う
すべての前進は進歩です。小さな成功や前進はあまりに簡単に忘れてしまうものです。こうした小さな成功の棚卸しをし、次のステップへの活力とすることが重要です。

おわりに

「人材をより事業戦略に合致させたい」。これは、スキルベースのアプローチに移行する組織に共通する理由です。事業戦略や人材戦略をスキル要件に置き換えることは、最初は難しく感じられるかもしれません。しかし この情報があれば、戦略的な採用、配置、リスキリングなどの活動を通じて、事業を助けることができます。

e-bookでは、この後、スキルベースの組織への移行をどこから開始すべきか、そしてスキルアプローチへ移行する上での障害と対処法についても言及しています。詳細はこちら からご覧ください。

以前から「VUCAの時代」と言われていましたが、ここ数年の世界の出来事を振り返ると、まさにその言葉通りのような時代であると感じます。パンデミック、地政学的リスクの高まり、AIなどのテクノロジーの目覚ましい発展と普及は、世界が常に不確実性にあふれていることを私たちに実感させました。
このような世界で、組織はどのようなリーダーシップが必要となるのでしょうか?
今回は、SHLグループのコラム「Effective leadership in a world of geopolitical upheaval—a contextual challenge for organizations(地政学的な動乱の世界における効果的なリーダーシップ-組織における文脈上の課題)」から、特に地政学的に不確実な世界のリーダーにとって重要なコンテクストを6つご紹介し、直面する課題について考察します。

リーダーのコンテクスト(文脈)が重要

組織は、さまざまな状況で機敏に対応し、変化に適応して成長できる人材を適切に配置することが重要です。
SHLは、9,000人のグローバルリーダーを対象に3年間の調査を行い、リーダーの成功にはコンテクスト(文脈)が重要であるということを明らかにしました。コンテクストとは、リーダーが活動するコンテクスチュアル(文脈的)な環境のことで、リーダーが働かなければならない業界や場所、ビジネスの優先順位を含む組織、チーム、職務特性や心理的要求を含む役割といった外部環境が含まれます。
リーダーを選抜する際、より広く仕事の背景を考慮に入れると、「画一的な」アプローチよりも平均で4倍正確な予測が得られます。パフォーマンスの高いリーダーをより正確に予測することで、リーダーのパフォーマンスが平均 22% 向上し、それが売上・純利益ともに4%の増加につながります。

この調査では、ダイバーシティに関連する別の注目すべき成果もありました。世界中の組織がリーダーのパフォーマンスの成否に最も重要であると特定した27の課題のうち 21 項目において、女性の方が男性よりも強みがあるという結果が得られました。コンテクストは、特定の課題に誰が最適であるかを評価する非常に柔軟かつ強固な方法です。それだけでなく、コンテクストを活用することで、潜在的な可能性のある人材のターゲットを広げ、人材プールに存在する可能性のある隠れた逸材を組織が見逃さないようにすることができるのです。

不確実な世界で特に重要となるコンテクストとは

SHLは、リーダーが直面する約300の課題から、リーダーの成功に影響を与える最も重要な27のコンテクストを抽出しました。コンテクストは「チームのパフォーマンスを推進する」、「リスクと評判をマネジメントする」、「変革をリードする」、「結果を出す」の4つのグループに分類されます。
これらの中には、時間の経過や新たな課題の出現に伴って重要性が高まったり薄れたり、ある時点での組織の優先順位や目標に固有のコンテクストがあります。しかし、今日の地政学的に不確実な世界の状況に鑑みると、次の6つのコンテクストが前面に出てくる可能性があります。

・不確実性が高くあいまいな状況で業務を遂行する
当然ですが、不透明で、想定外の変化がありうる環境で活動する能力は、極めて重要です。

・人や業務の安全とセキュリティを確保する
事業やオペレーションの一部が不安定な場所にある場合、地域紛争、政治、環境問題、インフラの課題などを乗り切る能力が最も重要になります。サイバー攻撃の脅威に対処する仕組みの構築も、組織にとって注力すべき重要な点です。

・急速に変化する製品、サービス、プロセスに対応する
これは、サプライチェーンマネジメントに関わる問題に一部関連しています。確立されたサプライチェーンラインが中断された場合、組織は代替プロセスを迅速に再検討する必要があります。

・高いリスクをとる状況下で業務を行う
混乱や予期せぬ事態は、組織が大きな決断を迫られることを意味します。例えば、事業を別の地域に迅速にシフトしたり、突然紛争状態になっている国に新商品を一か八か投入したりすることが考えられます。長期的には大きな市場機会となりえます。

・リスクを嫌う状況下で業務を行う
混乱によって、組織は新たなグローバルな機会を模索することになるかもしれません。このような新しい環境では、規制が強化されたり、他の「官僚的」なステークホルダーとの関係を調整したりする必要が生じる可能性があります。これまでのビジネスの進め方とはかなり異なる可能性があります。

・地理的拡大を通じてビジネスを成長させる
特定の国・地域における地政学的な課題によって、組織は、製造拠点や製品・サービスの市場として、新たな地域を検討する必要に迫られるかもしれません。

コンテクストとリーダーの特性をそれぞれ見極める

今回は地政学的状況に伴う不確実性にフォーカスして、より密接に関わるコンテクストをご紹介しました。
ただ、組織や事業が直面するコンテクストはこの一面だけではありません。それぞれの環境における特定のコンテクストを理解し、最適な組み合わせの人材を測定することで、混沌とした世界で組織を発展させる将来のリーダーを発掘することが可能です。
なかなか予測が難しい未来のリーダーを選抜・育成する際は、成功確率を高めるためにコンテクストという考え方をぜひ取り入れていただければと思います。