激化するグローバル競争を勝ち抜くため組織体制を強化するジェイテクト。
タレントアセスメントを用いた経営人材の発掘と育成の取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。内容は取材時のものです。

株式会社ジェイテクト

担当部署名

人事部 人事企画室 企画グループ

事業内容

ステアリングシステム、軸受、駆動部品、工作機械、電子制御機器などの製造・販売

業種

製造業

従業員数

49,933名(2020年3月 連結)

タレントマネジメント課題

グローバルに活躍できる経営人材の発掘、育成
現在の業績と行動評価だけではなく、上位職におけるポテンシャルを加味した登用審査の実現
複数事業部門で、横串を通した人材評価制度の構築

導入したタレントマネジメントソリューション

管理職及び管理職候補者へのタレントアセスメントの実施(タレントセントラル:知的能力テストVerify、パーソナリティ検査OPQ、意欲検査MQ)
管理職のコンピテンシーモデリング (マッピング、データ分析)
OPQによる自社独自の管理職適性尺度の開発

得られた成果

管理職としてのポテンシャルを勘案した科学的な登用検討が、できるようになった。
どのような特性を持つ人材が管理職として活躍するのかを、データで明らかにすることができた。
事業部門独自の人事施策にもデータ活用が広がった。

目的/課題

ジェイテクトは、軸受メーカーの光洋精工と工作機械メーカーの豊田工機が合併し、2006年に発足した会社です。ステアリング、駆動、軸受、工作機械・メカトロなどの多様な領域でナンバーワン製品・オンリーワン技術を保有しているグローバルメーカーですが、グローバル企業としての組織基盤や体制が整っていませんでした。自動車関連事業を始めとして各事業ともグローバル競争は激化しており、事業をリードする強い経営人材の発掘育成が喫緊の課題でした。
 一方で、これまでの管理職登用は各評価実績を中心に登用しており、「複雑化する社会のニーズに応え、事業をリードする管理職として相応しい資質を持っているか」という点を踏まえた登用ができていないという課題がありました。

導入/経緯

「管理職としての資質」を測定するアセスメントツールの選定にあたって、予測妥当性の高さやグローバル対応(多言語で実施可能、世界中の比較データを持つこと)、育成施策への展開の容易さなどの観点で検討がなされました。グローバル対応ができる海外のアセスメント会社も検討した上で、アセスメントツールの品質の高さと日本での活用支援体制が整っているという点からSHLのアセスメントツール「タレントセントラル(知的能力検査Verify、パーソナリティ検査OPQ32、モチベーション検査MQ)」が選ばれました。
登用審査の導入前に、現管理職に対してタレントセントラルを実施し、第一線で活躍している人材の特性をデータで明らかにしました。全社共通の価値観「ジェイテクトウェイ」との対応関係も整理した上で、管理職の人材要件定義を行いました。
アセスメント結果から自社独自の管理職適性得点を算出し、各事業部門に共有することで、登用検討に客観的なポテンシャル情報を組み込む事ができるようになりました。

成果

事業部門に関わらずジェイテクトの将来を担う管理職の人材要件を明確化でき、科学的手法を用いた測定の仕組みを構築できたことが成果でした。この取り組みをきっかけに、これまで目的毎に異なっていた新卒採用から人材育成に関わる全てのアセスメントツールを一本化しました。これにより、各人事施策で比較可能なデータを入手・蓄積することができ、横断的にタレントマネジメントを改善していくことが可能となりました。
また、各事業部門で独自に行っている人材育成施策にもSHLのアセスメントが活用されるようになり、人材データの活用が活発になったのも大きな成果の一つです。

導入事例

「育成する昇格プログラム」と「ライセンス制度」を取り入れた、Jストリームのマネジャー育成。

「育成する昇格プログラム」と「ライセンス制度」を取り入れた、Jストリームのマネジャー育成。

動画配信サービスへのニーズ急上昇を受け、ビジネスチャンスに対応するため人事制度もアップデート。
Jストリームのマネジャー育成の取り組みをご紹介します。

※本取材は2021年8月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

株式会社Jストリーム

事業内容

(1)ネットワークシステムにおける、動画データ及び各種情報の提供サービス業
(2)ネットワークシステムを利用した会員情報管理、商取引、決済処理に関する受託業
(3)デジタルコンテンツ、出版物の企画・制作・販売及び賃貸業
(4)ネットワークシステムに関するハードウェア・ソフトウェア・付帯サービスの企画、開発、運営、制作、販売、輸出入・賃貸及び代理店業
(5)広告・宣伝に関する企画・制作及び代理店業
(6)1から5に関連するコンサルテーション、調査、分析、研究等

業種

情報通信業

従業員数

単体313名 グループ594名(2021年3月末時点)

インタビューを受けていただいた方

田中 潤 様

株式会社Jストリーム
執行役員 管理本部 副本部長兼人事部長

インタビューの要約

コロナ禍において動画サービスへのニーズが急上昇。大きなビジネスチャンスと様々な環境変化に備えるため、人事制度全般のアップデートと人材育成の体系化を図る。
マネジャー育成の一環として、半年間のマネジャー教育を組み込んだ「育成する昇格プログラム」と、組織マネジャーのライセンス制度を導入。
研修は、リモートワークにおける人間関係構築の場も兼ねる。月1回、自由参加型の交流型研修を実施。
今後は、各本部が推進する独自の人材育成施策への支援と、社員のキャリア支援にも取り組んでいきたい。

動画配信事業に到来した大きなビジネスチャンス。 会社が次のステージに移るべき時期がきた。

私のキャリアは大手食品メーカーでの業務用原料の営業職からはじまりました。当時は営業が天職だと思っていましたが、29歳で人事に異動。人事の仕事は、企業をまたいだ共通の課題意識について情報交換し、互いに学び合える点が面白く、採用から人事制度設計まで様々な人事業務を担いました。その後営業子会社の役員を経験したものの、人事としてのキャリアに戻ることを求めて46歳で転職。2社目で10年ほど人事責任者を務め、縁あって今の会社に入社しました。


このコロナ禍で、我々の予想を超えて、急速に動画サービスが活用されるようになりました。Jストリームにとって大きなビジネスチャンスですが、同時に受注キャパシティの問題や、コンペティターの台頭といった脅威も発生します。会社全体が変わらないと、今後の大きな変化に対応できません。ステージが変わるときが訪れたのです。会社が変わる際には、経営が明確に方向性を示し、様々なサブシステムがそれに対応していく必要がありますが、人事は経営における極めて重要なサブシステムです。人事が半歩先を意識しながら、経営と一緒に変化すべき大事な時期だと思いました。

長らく抜本的には手を入れられていなかった人事制度全般のアップデートに着手しました。また、体系的な人材育成制度を入れ、最初の柱としてマネジャー育成のテコ入れをしました。マネジャーが人を育てるからです。これまでマネジャー向けに一律の研修は行っていませんでしたが、知識やスキルといった武器を提供せずに、ただ「頑張れ」では成り立ちません。マネジャーの仕事はどんどん複雑化する傾向にあるので、彼ら・彼女らに適切な武器を提供するのは会社の義務です。

マネジャーの「無免許運転」は危険。 「育成する昇格プログラム」と併せ、マネジャーのライセンス制度を導入。

マネジャーにあたる等級に昇格するためには、各本部の申請に対し、業績を参照し、執行役員以上が全員で審議して決議します。丁寧なプロセスですが、データやロジックは特にありませんでした。そこで今回、マネジャー候補層の育成の仕組み化をしました。

組織を持たないスペシャリストを含むすべてのマネジャーについて、昇格タイミングの半年前に各本部に候補者の申請をいただきます。その後、候補者には通知をし、半年間マネジャーに昇格するための育成プログラムを提供します。その結果、最終的に審査して、昇格する人を決議します。選別する昇格プログラムではなく、「育成する昇格プログラム」です。候補者を申請する際に、各上司はその人の課題を提出します。それも幹部が共有して、育成を見守ります。育成プログラムは、外部の講座への参加、アセスメント試験、人事部の主催する研修への参加などで、研修でのパフォーマンスを参考にして最終的に審査が行われます。

マネジャーの「無免許運転」は危険。 「育成する昇格プログラム」と併せ、マネジャーのライセンス制度を導入。

次に、組織を持つマネジャーに対してはマネジャーのライセンス制度の導入を行いました。組織をマネジメントするには、プレーヤーの業務とは違う能力が必要です。マネジメントについて学んだ人のみがライセンスを取得でき、部課長になれます。初年度の今年は既存の全マネージャーに対して実施しましたが、具体的には、①チームを動かすということ、②一対一のコミュニケーション、③仕事の生産性向上の3つを対象として、研修を行います。ライセンスは3年更新にして、3年後にまた異なる研修を受けていただきます。当然、新しくマネジャーになる人も、研修を受けていただく必要があります。管理職の「無免許運転」は危ないですからね。あわせて、部下評価をするための研修も、①目標設定②中間面談③評価の仕方④フィードバックの4段階に分けて行っています。

リモートワークでのコミュニケーションの希薄化を補うのも、研修の役割。 「楽しかった」と思える研修が、人の学びを促進する。

近年採用数を増やしており、現在コロナ禍以降に入社した社員が全体の2,3割を占めます。彼ら・彼女らにヒアリングをすると、部署の人や業務の関係する人とはオンライン会議で接点が持てるが、その他の人間関係が広がりにくいとのこと。確かに、従来のように出社時にたまたま出会うとか、飲み会で一緒になるといった機会は生まれにくくなりました。既存社員同士は関係性を維持できるが、新しく入社した方が人間関係を構築するための対策は必要です。しかし、とってつけたようなイベントを開催しても仕方がない。我々は、研修を人間構築の場にしようと考えました。

そこで、マネジャーに特化した研修の他、誰でも手を上げれば参加できるような研修を毎月行うようにしました。基本的に交流型の研修ですが、雑談に終始してはもったいないので、参加しやすく興味を集めやすいテーマを毎回決めて、半分くらいの時間は皆でディスカッションするような構成にしています。たとえば、直近ではストレスマネジメントをテーマとした研修を行いました。参加してくれたある管理職の方は、「人の喜びは学びと交流ですね」と感想をくれました。学びが喜びになれば学習が自走しますので、人事部としても大変喜ばしいことだと思います。

気を付けている点は、非常に多忙な中、時間を割いて参加してくれる社員の期待を裏切らない研修にすること。特に、研修は「楽しかった」と思えるものであることをモットーとしています。楽しみながら前のめりに参加をするほうが、学びがあります。人事部でファシリテーションを行う場合も、それを意識しています。

今後ですが、具体的なところでは研修の効果検証を行う必要があると思っています。現状ではアンケートなどで反応を見ていますが、今後は一定の規模で様々なサーベイを行い、人材育成にデータを活用していくことも検討したいと思っています。日本エス・エイチ・エルは採用での支援が中心ですが、何かアイデアがあればぜひご提案いただきたいです。

人材育成の分野で今後行いたいことは、各本部内の独自の人材育成の支援。人事部は、ベーシックなスキル・態度の教育を中心に担っていきます。業務直結のスキルに関しては、本部内で教育プロジェクトを立ち上げているところもありますので、各本部が独自性をもって人材育成を行うために、人事として情報提供などを通じて支援したいと思っています。

最後は、社員のキャリアの支援。私自身も関心の深いテーマですし、社内のニーズもあります。メンバーからのキャリア相談は、個別性が強くマネジャーも苦労する傾向があります。そこに対して、人事部として何か取り組みをしていきたいなと思っています。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

深津 寛

「育成する昇格プログラム」という取り組みは、コンサルタントとして新たな視座を得ただけでなく、一個人としても共感を覚えるものでした。育成しながら昇格へ導くという考え方は、人的な制約の中で変革を迫られる多くの組織に示唆を与えてくれるものです。
インタビューの中で、「キャリア支援を今後のライフワークとしたい」というお話をされていたのが強く印象に残っています。根底にある、社員一人一人と親身に向き合いたいという田中さんのお気持ちがとてもよく伝わってきました。今後も様々な人事課題の解決のためお力になる所存です。

「新しい楽しさ・豊かさを お客様に発見していただけるモノ造りを」を経営理念とするサッポロビール。
変革を推進する経営リーダーを継続的に生み出す人財育成の仕組みづくりに取り組みました。

※本取材は2023年8月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

サッポロビール株式会社

事業内容

ビール・発泡酒・新ジャンル・ワイン・焼酎などの製造販売、洋酒の販売、他

業種

食料品

従業員数

約2,400名(2023年5月)

インタビューを受けていただいた方

小林 志野 様 小山 祐介 様

サッポロビール株式会社
人事部 キャリア形成支援グループ グループリーダー 兼 サッポロホールディングス株式会社 人事部 (写真右)
サッポロビール株式会社 人事部 キャリア形成支援グループ 兼 キャリアサポーター (写真左)

インタビューの要約

人事制度改革に伴い、サクセッションプランへの課題意識が高まり、サッポログループ内で先駆けて仕組みづくりに着手。
将来の経営者に求める要件を明確化し、次の経営者候補を対象にアセスメントを実施。
結果のフィードバックから、戦略的配置、社外研修への派遣、継続的な1on1によって対象者を育成。
今後も継続的な改善を行い、グループにも展開していく。

次世代の経営人財候補を育成するサクセッションプランを構築する。

私達は、人事部キャリア形成支援グループに所属し、人財育成やキャリア開発の支援がミッションです。サッポロビールの行動規範である「自分のキャリアは自分で切り拓く」という人財育成ビジョンにそって、経営人財育成に取り組んでいます。

2020年の人事制度改訂により、支援型のマネジメントをキーワードとする様々な施策を開始しました。その1つ、「人財育成会議」では、半期に1回各部署の役職者が一堂に会して、メンバー一人ひとりの強みや育成課題を話し合い、育成方針を決めています。従来、各事業会社の社長に経営リーダー候補を年に一度確認していましたが、組織としての体系的な育成施策はなく、経営全体で共有することもほぼありませんでした。変化の激しい時代、次世代の経営人財候補にも「人財育成会議」と同様の取り組みが必要という課題意識が高まり、将来的にはサッポログループ全体での取り組みも視野に、まずはサッポロビールにおいて経営人財育成の仕組みづくりに着手しました。

次世代の経営人財候補を育成するサクセッションプランを構築する。

要件定義とアセスメントの実施により、コンピテンシーポテンシャルを可視化。

具体的には、8つのステップで実施しました。ステップ1は全体構想の検討。年2回の経営人財育成会議を軸とし、対象層を喫緊の課題である次の経営者候補としました。会議体の委員長を社長、委員長代行を人事担当役員、事務局を人事部長、人事グループリーダー、キャリア形成支援グループリーダーが担当します。当時の人事担当役員はサクセッションプランへの課題意識が強く、この取り組みを強く牽引してくれました。

ステップ2は人財要件の策定。経営人財に求める要件の明確化のため、役員全員で他社事例やSHLから提供された情報などをもとに様々な議論をしました。最終的にサッポロホールディングスで既に策定されていた経営人財に求められる6 要件を採用しました。数年前に作成されていますが、検討の結果、有効な要件であると判断しました。

ステップ3は選抜プロセスの策定。まず候補者案を人事部で作成し、役員一人ひとりと個別に検討を行い、第一回目の経営人財育成会議で共有し、最終的な候補者を決定しました。

ステップ4はアセスメント実施。ステップ3で決定した候補者に対し、SHLのタレントセントラルでパーソナリティ検査とモチベーション検査を実施しました。外部アセスメント導入の目的は、2つ。1つ目は候補者の自己理解促進です。これまで社内の指標のみだった評価指標から、世間の同等職務レベルのデータと客観的に比較することで、より成長を支援できると考えました。2つ目は経営や人事が、候補者の顕在化されていない行動特性やモチベーション傾向を把握し、より適切な配置・育成・登用に繋げることでした。SHLコンピテンシーと当社の経営人財要件との紐づけも行い、アセスメント結果からコンピテンシーの可視化ができるようになりました。

本人に育成計画をフィードバック。成長を促すために異動や外部研修を実施。

ステップ5はフィードバック。各役員から、アセスメント結果と経営人財育成会議内で話された各候補者の育成計画を本人にフィードバックしました。以降は経営人財会議の合間に定期的に1on1を実施して、継続的な成長支援をしています。フィードバック実施にあたり、日本エス・エイチ・エルに依頼して事前に役員向けのフィードバック研修も行いました。アセスメント結果をよく理解するために、役員も全員アセスメントを受検しています。

ステップ6は戦略的異動。経営人財育成会議では、候補者を育成するための経験や配置案が話題に出てきます。異動は別のセクションが担当していますが、定期異動では前年の経営人財育成会議の内容を踏まえた、大胆な異動が行われたと感じました。

ステップ7は外部研修派遣。ステップ6の戦略的配置とほぼ同時並行に行いました。経営人財育成会議で議論し、必要と判断した人には、適切なプログラムを選定して研修に派遣しています。

本人に育成計画をフィードバック。成長を促すために異動や外部研修を実施。

最後のステップ8は対象者層の拡大です。初回である2021年は次の経営者候補を対象に1年間実施してきましたが、2022年は次の次の経営者候補を対象とすることにしました。2年目はステップ3からのサイクルを、もう1回転行いました。
今年で3年目ですが、今後もこの年間サイクルを確実に回し改善していくことが重要だと感じています。また、次の経営者の計画的な育成はサッポログループの共通課題ですので、サッポロビールの取り組みで上手く行っている部分を他の事業会社に役立てていただけるように、協力していきたいと考えています。

エス・エイチ・エルのコンサルタントには、当社の要望を聞きながらいろいろなご提案をしていただきました。ウェビナーを通じた他社情報の提供や、個別の情報交換会のセッティングなど様々な面でのサポートもありがたかったです。グループ企業への横展開や新入社員のオンボーディングなど、新たな始まった取り組みも引き続きご支援いただきたいと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

清水 智昭

今回のお取り組みはサクセッションプランニングを新たにスタートされる企業様にとってガイドラインとなる好例です。会議体の発足からアセスメントフィードバックの一連のプロセスに加え、実際の異動配置や研修派遣など具体的な施策が展開された点は特筆すべきポイントです。重要なのは「ボードメンバーの巻き込み」と「人財に関する対話機会の創出」です。会社のボードメンバーが自部門の管轄を越えて、次世代を担う人財をどのように創出していくか対話することが、施策実施までのプロセスにおいてキーポイントであったと感じています。次世代リーダーの戦略的な発掘/育成は多くの企業様での喫緊の課題であると思います。手始めに、一度膝をつきあわせて「次の担い手」を話し合う。すると自然とそれがサクセッションプランニングの入り口になるのではないでしょうか。

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配属

科学的知見を元に適材適所を実現する配属をサポートします。

適材適所を実現する配属

配属先に求められる人材要件と社員の人材情報を結びつけ最適な配置を実現することで、組織の生産性と社員のエンゲージメントを向上させます。配属先の人材要件定義や既存社員の人材ポートフォリオ作成などを実施、配属する人材のアセスメントデータを取得します。これらを掛け合わせ、適材適所を実現する配属をサポートします。

配属に役立つサービス

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リーダー育成

マネジャーや管理職のスキルの棚卸、育成計画、個々のアセスメントと能力開発ポイントのフィードバックまで支援します。

組織的なリーダー育成とは

組織の鍵となるマネジャーのスキルや個々の強み・弱みを把握、能力開発ポイントと育成計画をアセスメントを用いて科学的に支援します。今いるリーダーの現状把握と育成計画をセットで準備することで、組織的なリーダー育成を実行できます。オンラインアセスメントからシミュレーション演習、それらを複合したアセスメントセンターなど、多様な手法を用いて初級管理職から上級管理職まであらゆる範囲のリーダー層の育成をサポートします。

リーダー育成に役立つサービス

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ハイポテンシャル人材

次世代の経営や事業を担うハイポテンシャル人材の発掘と育成を支援します。

ハイポテンシャル人材とは?

ハイポテンシャル人材プログラムの設計と運用を支援します。ハイポテンシャル人材の要件定義、選抜基準の設定、選抜方法の開発と設計、アセスメントの実施、アセスメント結果のフィードバック、選抜された候補者への能力開発施策の立案と運用などを行います。SHLグループの研究により確立されたハイポテンシャル人材モデルと、数万人規模の世界の管理職・経営職のデータとの比較分析により、最適なハイポテンシャル人材の発掘と育成が可能です。

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サクセッションプラン

SHLグループの知見を活かし、重要なポジションや役職の後継者の戦略的配置、育成を支援します。

サクセッションプランとは?

重要なポジションや役職の後継者の育成や人材配置を計画的に行う組織戦略を指します。アセスメントによるポテンシャル測定、ポジションごとに求められる要件と候補者の経験を可視化し、適切な後継者計画のサポートをします。SHLグループの研究から得られたリーダーシップの成否を分けるコンテクストを元に、リーダーシップの経験とポテンシャルの情報を駆使して、ポジションに最適な候補者リストを可視化するプラットフォームを提供します。

サクセッションプランに役立つサービス

大なり小なり人間関係の問題を抱えている組織は多いです。「部下に指示したはずなのに、その通りに動いてくれなかった。」「AさんとBさんは喧嘩腰で討論している姿をよく見る。」など、皆さんにも覚えがあるかもしれません。 人間関係は、対話の中身に大きな影響を受けます。組織開発研究の第一人者である中村和彦先生の著書を参考に、人間関係を成熟させる対話のあり方をお伝えします。

対話の中にある「コンテント」と「プロセス」

対話にはコンテントとプロセスという2つの側面があります。話されている内容(What)はコンテントです。お互いに同じ内容を聞いていますので、参加者間に認識の齟齬が生まれることは多くないでしょう。
対話には、もう一つ「プロセス」という側面が存在します。人と人との間に起こっていること(How)を示す要素です。例えば表情、参加者間の関係性、各参加者が考えていることなど、対話を取り巻く様々な要素がプロセスに含まれます。
氷山モデルで表されることが多く、コンテントはほぼ表面化しています。一方プロセスは、表情や声色などの表面化された要素もありますが、各参加者の思いや場の空気感などは水面下で発生し、変化していきます。


部下に響かせるためには、プロセスに目を向けるべき

対話中は、その内容(コンテント)に意識を向けがちです。しかし、プロセスはコンテント以上に相手へ影響を与えています。近年の心理学研究では、「情報が伝わった時、受け手がどのように意味づけしたのかが重要である」という考えが注目されています。
例えば、上司が十分に検討し、意図を持ったうえで部下に指示を出したとします。部下は「はい。」と答えました。それを聞いて、上司は「情報伝達が完了した。」と認識するでしょう。
しかし、部下自身の認知の癖や上司との関係性によって、受け取り方は異なります。「自分だったらそんな判断しないのに。」「とりあえず言われた通りにやればいいんでしょ。」など、時には上司の予想だにしない意味づけを行っているかもしれません。
情報の送り手と受け手で意味づけた内容に開きがあるほど、当初の指示が正しく遂行される可能性は減るでしょう。一方的な情報の伝達だけでは不十分です。プロセスに目を向け、部下の思いや認識などに踏み込んだ対話を行うことで、はじめて部下の認知に影響を与えるコミュニケーションがとれるのです。

プロセスに目を向けることのメリット

プロセスに目を向けることで、大きく2つの効果が得られます。
  1. お互いの開放領域を広げることができる
  2. 上図は「ジョハリの窓」という理論を図示したものです。対話のコンテントとプロセスをこれに当てはめてみます。まずコンテントは開放(Open)の領域に入ります。プロセスの中で各自が思った内容については、共有しない限りは盲点(Blind)もしくは隠れている(Hidden)領域に入ります。
    開放領域が狭い関係性では、お互いにすれ違ったり、ストレスを抱えたりします。プロセスに目を向けてお互いに開示することで、開放領域を広げてすれ違いを防ぎ、信頼関係を深める効果が得られます。
  3. 対話の内容を真に共有し、行動変容を促すことができる
  4. 上述した指示出しの例では、上司は部下に一方的な命令のみを伝え、プロセスの部分には一切目を向けませんでした。これだと指示が曲解されるだけでなく、今後の人間関係の不和が生じる可能性すら抱えてしまいます。
    一方的な命令よりも、自分が意味づけて納得したほうが、行動に移す心理的ハードルは下がるものです。部下も考えを伝えお互いに思いや認識を開示し合い、相互に共有することで、はじめて行動変容につながるのです。

プロセスに焦点を当てる時間を設けましょう

今までプロセスに目を向ける機会が少なかった方は、まず相手の表情、声色、仕草などを意識してみましょう。そして対話や指示の後に、プロセスについて感じたことを相互にフィードバックする時間を取ってみてください。数分間で構いません。
 「いつもより浮かない表情をしているね。気になったことはある?」「今までの指示の出し方について、どう感じていた?」などの声かけから始めてみると良いでしょう。
参考文献:中村和彦(2021). マネジャーによる職場づくり 理論と実践 日本能率協会マネジメントセンター

3月8日は国際女性デーでした。これに合わせて英エコノミスト誌ではOECD(経済協力開発機構)29か国の中でglass-ceiling index (GCI)=ガラスの天井指数なる女性の働きやすさ指数を発表しています。GCIは、主に富裕国で構成されるOECD加盟国において、女性が職場で平等な待遇を受ける可能性が最も高い国と最も低い国を毎年評価するものです。2024年、日本は29か国中27位と下位3番目でした。男女の労働参加率や給与の差、育児休暇の取りやすさなど10の指標に基づき分析しており、中でも日本は企業の管理職に占める女性の割合が14.6%(OECD平均は34.2%)と低く、多くのマスメディアでも取り上げられました。
日本がこのような評価であることを念頭に置きながら、今回はSHLグループのコラムを一部ご紹介しつつ、女性のリーダーシップについて考えたいと思います。

リーダーポジションにおける多様性促進のために

この30年間で、特に高所得国においてより多くの女性が管理職のポジションを占めるようになりましたが、それでもなお、管理職における男性との人数差を縮めるまでには、まだ長い道のりがあります。組織内のリーダーたちは、女性の昇進に関する意思決定時にステレオタイプに頼る傾向が強いものの、優れたピープルマネジャーとなる要素のいくつかは、女性が強いポテンシャルを持つことが客観的データから分かっています。
SHLグループのホワイトペーパー「The New Era in People Management」では、性別によるパーソナリティの傾向に言及しています。男性は長期的な視点を持ち、他者に影響を与える傾向があり、女性は他者の行動に理解と共感を示し、適応し、つながりを求める傾向があると報告されています。一般論ではありますが、女性のこれらの特徴を見極め、育成し、適切に配置すれば、優れたピープルマネジャーを育てることができます。
実際、リーダーシップのジェンダーダイバーシティが上位25%に入る組織は、ボードメンバーに女性がいない組織よりもROEが47%高いと報告されています。にもかかわらず、昇進の可能性があると見なされるのは女性より男性の方が多いのです。その理由は、昇進の可能性が「男性的」とみなされる特徴と関連づけられ、重視されているからです。個人の特性よりも、これらの特徴によって採用や昇進が行われており、結果的に男性のほうが成長機会を得やすい傾向にあります。

女性がリーダーシップパイプラインで離脱する背景

リーダーシップパイプラインの途中で女性が減少する原因となる、多くのミクロな課題も存在します。
女性のキャリアを促進する最も効果的な手段として、あらゆるレベルの女性がフレックスタイム制を挙げています。女性リーダーは、家庭の事情で自発的に休職・退職する割合が男性よりはるかに高い傾向にありますが、機会があれば仕事に戻りたいと考える人がほとんどです。可視化されず、無視され、見過ごされ、過小評価されていると感じている女性の体験談の多くは、耳に入る機会すらありません。彼女たちはテーブルに着いていたとしても、必ずしも意見を聞かれているわけではなく、事業の方向性に影響を与える意思決定に加わっているわけでもないのです。
柔軟な仕事環境の他にも、家庭での公平なパートナーシップやアセスメントを活用して人材戦略に女性を組み込むことなど、女性の活躍を後押しするヒントは他にもあります。
67%の組織がDEI(Diversity, Equity, and Inclusion)への投資を維持または増加させています。変革にあたっては、達成すべき目標とその障壁がどのようなものであるか正確に理解し、経営層を含め組織全体で継続的に努力しコミットすることが重要です。

性別による機会損失をなくそう

世界的にみても、まだまだリーダーポジションに占める女性の割合に課題があります。日本の現状は輪をかけて深刻です。DEIは必ずしもジェンダーだけの問題ではありませんが、こと日本において目下の課題はジェンダーダイバーシティと言えるでしょう。先述したように、ダイバーシティ推進によって組織力の向上は多く報告されており、組織が取り組むべき合理性を示しています。
女性の組織における更なる活躍に焦点が当てられがちですが、仕事中心が当たり前と捉えられていた男性がより家事育児に取り組むことも同様の文脈で扱われるべきでしょう。性別に関係なく、能力やポテンシャルがある人が適切な立場で存分にその力を発揮し、また、ジェンダーにとらわれず家庭や育児に関わりたいと思う誰もがそのようにできる社会であってほしいと願います。
SHLのアセスメントとインサイトは、人材の客観的判断を可能にし、こうした社会の実現の一助となりえます。

※ https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/global-talent-trends/
  https://www.ilo.org/infostories/en-GB/Stories/Employment/beyond-the-glass-ceiling#beyond

なぜ、部長職にアセスメントを実施する企業が増えているのか

最近、部長職を対象としたアセスメントを実施する企業が増えています。
人材版伊藤レポートは一つの大きなきっかけとなりました。大手企業の経営陣が人的資本経営の重要性に気づき、実践に向けて動きだしたことが影響しています。もちろん、現在の大きな環境変化により世界中のあらゆる企業が経営改革を余儀なくされていることは言うまでもありません。
各社が検討を進めている施策の代表的なものは、人材ポートフォリオ作成、トップマネジメントを含むキーポストのサクセッションプラン、ハイポテンシャル人材プログラム(選抜型研修、次世代リーダー育成等)、部長以上を対象にしたコーチングなどです。しかし、これらの施策を正しく作り、運用していくためには自社の問題を明確にしなくてはなりません。
今回のコラムでは、部長職のアセスメントの目的と方法について説明します。

部長職アセスメントの目的

部長(部長候補者を含む)をアセスメントする目的を大きく分類すると、選抜、能力開発、キャリア開発、人材可視化の4つに分かれます。主要な2つの目的(選抜と能力開発)について詳しく述べます。

選抜目的では、採用を除くと以下の4つが主な取り組みです。
1.昇進要件の評価
昇進試験としてのアセスメントです。部長要件を満たすかどうかの評価に使います。昇進試験の場合、部長職の人材要件、部長に該当する等級要件に定義されたものが基準となるため、必ずしもライン部長や経営リーダーとしてのポテンシャルを評価しているわけではありません。あくまで昇進基準を満たすかどうかを判断するための参考資料となります。

2.ライン部長としての評価
ライン部長としてのポテンシャルやコンピテンシーを評価するためのアセスメントです。ライン部長の仕事は企業や部署を問わず類似した要素を持つため、共通のコンピテンシーを定義できます。客観アセスメントを行えば、部長候補のライン部長へ登用、現職の部長の別部長ポストへの異動の成功率を高めることができます。

3.ハイポテンシャル人材(経営リーダー候補者)としての評価
ハイポテンシャル人材を発掘育成する究極の目的は将来の社長を準備することです。経営リーダーになるための育成プログラム(ハイポテンシャル人材プログラム)に参加させる人材を現職の部長から選抜するためにアセスメントを利用します。選抜基準は経営リーダーとしてのポテンシャルの高さです。ポテンシャルは、能力、アスピレーション、エンゲージメントの3つの側面で評価します。9ボックスグリッドを活用し、ハイパフォーマーの中からハイポテンシャル人材を特定します。

4.上位職のサクセッサーとしての評価
サクセッサーとして上長から推薦された部長に対して、アセスメントを実施して上位職に対するポテンシャルを評価します。部長としての業績や働きぶりをよく知っている上司の評価に加えて、アセスメントを用いることで客観的に上位職に対する適合度を把握できます。ハイポテンシャル人材選抜とサクセッサー選抜は区別せずに行う場合もありますが、厳密な違いは、ハイポテンシャル人材が経営トップを目指しこれから様々な修羅場経験をするリーダー人材選抜であるのに対して、サクセッサー選抜は特定の上位職ポストに対する人材選抜であることです。
次は能力開発目的についてです。
アセスメントは測定するためのツールですから、それだけでは能力開発に何の効力も持ちません。アセスメント結果を本人にフィードバックすることではじめて能力開発に貢献できます。
アセスメントは人間ドックと似ています。人間ドックでは腹囲測定、血圧測定、血液検査による血糖と脂質からメタボリックシンドロームかどうかを判定します。メタボリックシンドロームに該当すると判定された場合は保健師との面談で治療や健康改善の計画が作られます。
アセスメントでは、認知能力測定、パーソナリティ検査、インタビューによるリーダーシップコンピテンシーから部長職としての適性を判定します。検査結果はフィードバック担当者との面談により本人へ返され、部長職としての強みと弱みを認識します。そのうえで、業績の改善や上位職への準備などの目的に合わせた能力開発計画が作られます。

アセスメントを選抜で活用する

アセスメントを選抜で使う場合、人材要件の明確化(選抜基準の明確化)と人材要件に適したアセスメントの選択が必要です。

部長の人材要件は、リーダーシップコンピテンシーに基づいて定義することが一般的です。
SHLリーダーシップモデルではリーダーにとって重要な4つの機能に対して、マネジメント・フォーカスとリーダーシップ・フォーカスに分けてコンピテンシーを定義しています。
・マネジメント(業務型)は、システムをうまく動かし続けることや、特定目的に対して信頼できるパフォーマンスをあげることに焦点を当てます。
・ リーダーシップ(変革型)は、システムの方向性を創り出し、発展・変化させることや、人と組織の両方を鼓舞して期待以上の成果を達成することに焦点を当てます。

人材要件が決まったら、適切なアセスメントを選びます。
アセスメントを選ぶ際の主なポイントは以下の通りです。
・利用目的に合致していること
・適切に定められた人材要件を測定できること
・部長職の受検に適したアセスメントであること
・実施から結果活用まで運用しやすいこと

参考までにアセスメントの妥当性に関するメタ分析を掲載します。左側の数値は妥当性係数を表し、数値が大きければ大きいほど強力なアセスメントであることを表します。
<表:もっとも一般的な選抜手法の予測力>

アセスメントを能力開発で活用する

能力開発のためにはアセスメント結果のフィードバックが不可欠です。
フィードバックを行うための最も重要な準備は、フィードバック担当者がアセスメントとフィードバックに関する専門的なトレーニングを受講することです。フィードバック担当者に適した人として、外部の専門家、人事担当、社内トレーナー、直属の上司などがあげられます。受検者本人と職務内容、アセスメントとフィードバックを全て理解している人が最適です。
フィードバックは、導入(目的、所要時間、機密性、アセスメント内容)の説明から入り、職務内容と求められるコンピテンシーの確認を行います。そのうえで、アセスメント結果を伝え、実際の職務行動にどのような影響を及ぼしているかを確認します。アセスメント結果と職務の関連について、行動を振り返ることで自己理解を促し、強みと弱みのついての正しい認識を持ってもらいます。
人間ドックの保健師面談では問題点を見つけ改善することに焦点が置かれますが、アセスメントのフィードバックでは長所・強みを見つけ、この特徴をパフォーマンスの向上につなげることに焦点を置きます。もちろん短所・弱みが明らかにパフォーマンス向上の阻害要因となっている場合は改善に焦点を当てることもあります。ここまでがフィードバックで行うことです。一般的な所要時間90分です。
フィードバックが終了したら、能力開発計画を作成し、職場での行動計画を実践します。この部分をサポートするのは専門のコーチや直属の上長です。

まとめ

言うまでもなく、部長職は企業のパフォーマンスと成長に大きな影響を与える重要な役割です。現在の部長職のパフォーマンスはそのまま組織のパフォーマンスに転換されるといっても言い過ぎではないでしょう。また、現在の部長職は次の経営リーダー候補者ですから、未来の会社を託す方々でもあります。
部長職のアセスメントを選抜として活用する場合は、事前に対象となる職務やポストのコンピテンシーを明確にして、適切なアセスメントを選ぶことが重要です。能力開発として活用する場合は、フィードバックを行うことで求められるコンピテンシーを本人との対話によって合意し、職務行動の振り返りから自己理解を促すことが重要です。特に能力開発において各部長の個性を前提に本人にとって最適な方法でパフォーマンスを高めることができるよう、求められるコンピテンシーを柔軟に捉えることが大切です。