組織と個の対等な関係の構築を目指して人事エコシステムを変革し続けるNEC。
採用ではジョブと応募者とのマッチングをさらに進化させました。
※本取材は2024年7月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。
日本電気株式会社
ITサービス事業、社会インフラ事業
電気機器
単独 22,210名、連結 105,276名、2024年3月31日現在

インタビューを受けていただいた方
松尾 敬信 様
日本電気株式会社
人材組織開発統括部 プロフェッショナル
インタビューの要約
時代に応じた価値を提供し続けるために、組織と個人が対等な「選び・選ばれる関係」の構築を目指す。
ジョブ型人材マネジメント制度の下、新卒採用もジョブ型に。職場受け入れ型インターンシップを拡充。
挑戦したい職種に文理問わず応募できる形に変えたことで、応募者数は増加し、従来であれば応募がなかった層を惹きつけることができた。
今後もリクルーター制度の変革やマッチング方法の見直しなど引き続きジョブ型マネジメント制度を進化させていく。
ネットワーク、IT、AIの技術の強みを軸に、時代に合わせた価値を提供する
私は、大学卒業後、他業界を経験後、2019年にNECに入社しました。現在は新卒採用チームのリードとともに、全社の文化変革を推進するカルチャー変革統括部も兼務しています。
NECは1899年に日本初の外資系合弁企業として設立されました。安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指すことをPurposeとしています。
NECは「ネットワーク」「IT」「AI」の三つのテクノロジーを用いて、国や企業、地方自治体など様々なお客様に対してソリューションを展開しております。「ネットワーク」領域では、海底ケーブル事業や宇宙との通信、「IT」領域では量子コンピューティング、「AI」領域では顔認証に代表される生体認証、日本語生成AIなどの活用があります。

ジョブ型人材マネジメント制度における採用
当社の人材戦略は、会社としての「適時適所適材」と個人の「キャリア自律」を実現し、「選び・選ばれる」関係の構築を通じて社会価値を創造し続けることです。今年度から全社員にジョブ型人材マネジメント制度を導入していますが、そのためには人事のエコシステム全体を変える必要があり、2018年頃から人事制度や働く環境をスピーディーに細かく変化させていきました。採用活動では、2018年からキャリア採用を強化しています。2023年度の新卒採用と中途採用の比率はおよそ1:1で、あわせて約1,200人の方に新たに仲間に加わっていただきました。また、適時適所適材を実現するための施策の一つとして、NEC Growth Careersという社内公募制度を拡大し、社内で様々なポジションを募集しています。
新卒採用を変革する施策として、ジョブマッチング採用への変革とインターンシップに注力しています。インターンシップはテーマ別(部門別)に学生を受け入れる職場受け入れ型として、およそ150のテーマを用意し、学生が興味を持った領域にチャレンジできる環境を構築しています。今年度は約1,000名の学生を受け入れる予定です。

新卒採用のプロセス全体を見直し、ジョブ型採用を導入
従来は、技術系の職種は理系学生を対象とした学校推薦による部門別採用とし、営業・スタッフ職や一部のSE職は、自由応募による文理不問の採用活動を行っていました。つまり、職種により応募できる範囲に制限がかけられていた状態でした。昨今の学生は、文系学生でも個人的にプログラミング知識を身に着けている方もいらっしゃったり、多様な選択肢の中で自由に企業を選択したいといったニーズもあり、当社が選ばれ続けるためには、応募方法や、文理といった専攻に関わらず、挑戦したいと思った職種に応募できる仕組みとすることがベストと考え、プロセス全体を見直すに至りました。これにより、文系学生でも、専門的な理系知識を必要としない技術系の職種に応募をすることができるようになったり、学校推薦でなくとも技術職に応募をすることが可能となりました。制度導入前は応募者が減少するのではないかと心配もありましたが、ふたを開けてみれば応募者が増加し、一部の職種については修士課程の学生の応募が増えるなど、ポジティブな変化がありました。企業が選択肢を提供することを応募者はポジティブに捉えたのだと思います。また、従来であれば別業界に行くような専門性の高い応募者が「その職種だったら受けてもいいかな」と、NECを選ぶことが増えたと感じています。

ジョブマッチング採用の継続的な改善で、人材戦略を実現する
今後の課題はたくさんあります。まずはリクルーターによるフォローの強化です。部門と職種を詳細に分けて募集をするジョブマッチング採用では、きめ細やかなフォローが必要となりますが、同時にマンパワーが必要となり、十分にフォローが行き届かない可能性が高まります。そのため、現在のリクルーター制度を大きく転換しなければならないと考えています。また、営業職の部門別採用への切り替えも大きなテーマです。その実現にはジョブと個人の志向性とのマッチング精度を高めつつも、学生の期待値と企業側の期待値の調整が極めて大切だと考えています。仮にマッチング精度を高めるために各ポジションに求められるケイパビリティを詳細に設定した場合では、当社であれば数百ポジションのジョブディスクリプションを一時期に一斉に公開し、学生はその中から1つのポジションを選択し応募しなければなりません。しかし、近年の学生は配属ガチャへの警戒感を抱きつつも、スピード感を持った就職活動を行いたいと考えていることが現実だと捉えています。例えば、社会課題解決のためにアフリカ諸国へテクノロジーを活用したソリューションを提供したいと考えているけれども、その国がケニアなのか南アフリカなのかは就職活動時点では決まっていないケースがほとんどです。そのため、企業は学生の期待値に応えたポジション設計と情報開示が必要となり、あまりに細かすぎると、逆に選ばれなくなる可能性もあるため、営業職の部門別採用をどの粒度で実行するかについては、市場の動向なども見極めた上で検討しなければならないと考えています。
その他にも、インターンシップのさらなる強化など、引き続き変革を推進していかなければならないと考えています。
日本エス・エイチ・エルは漠然とした相談にも丁寧迅速に対応してくださり、感謝しています。今まではインターンシップと本選考の参考情報としてアセスメントツールを使用していますが、今後はアセスメントデータの活用と選考プロセスを変革することへの積極的な提案を期待しています。
担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント
横山 武史
10年前、東京でのキャリアをスタートしたとき、最初に担当した企業の一つがNECでした。昨年、数年ぶりに担当に復帰して、松尾さんとやり取りをしたとき、日本の伝統的な大企業という印象が一変しました。NECが実行してきた「ジョブ型人材マネジメント制度」や「キャリア採用強化」、「NEC Growth Careers」などを通じて、確かに変革が進んでいると感じました。また、インターンシップの強化や、AIの利用を含めたマッチング方法の見直し、さらには部門側の工数削減など、様々な変革が推進されています。今後も変革を続けるNECの力になれるよう、全力でご支援していきたいと思います。
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時間 | テーマ | 主な内容 |
---|---|---|
13:00~14:05 | 基礎講義 | ・面接の目的、面接官の役割について ・面接に向けた準備、面接の流れ ・有効な質問、避けるべき質問 ・面接官の留意すべき点 |
14:05~15:05 | 演習(1) | ・面接映像を使用した評価演習 |
15:05~16:50 | 演習(2) | ・面接ロールプレイ演習「面接を体験する」 (複数回実施) |
16:50~17:00 | 総括 | ・まとめ、質疑応答 |
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はじめに
「当社の志望動機を教えてください」。採用面接では当たり前のように投げかけられる質問の一つです。あまたある企業の中から自社を選択して応募した理由は、純粋に面接官の気になるところでしょう。一方で、「面接 志望動機」とインターネットで検索すると対策があふれています。果たして面接で志望動機を聞く意義とは何でしょうか?今回はこの素朴な疑問について探索したいと思います。
対策できる「志望動機」の回答で評価を行うのは難しい
試しに、ChatGPTに「人事アセスメント会社の面接で志望動機を言うとしたらどんな内容がよいか」と聞いてみると、志望動機の構成例とその例文を出してくれました。①業界や会社への関心を伝える、②具体的なサービスや理念に触れる、③自分のスキルや経験が活かせる点をアピール・・・など5つの構成ポイントを一瞬にして教えてくれました。さらに、これらの要点をふまえて実際の例文を200字程度にまとめて出してくれます。応募者がこのような形で準備・理論武装した上で回答する「志望動機」を元に、なんらかの客観的な評価を行うことは難しいです。簡便に対策が可能であるため、「志望動機」の回答内容はばらつきづらく、志望意欲の強弱を見極めることは困難です。また、納得感のある回答で合理性を推し量ることも事前対策のために難しいです。
では、「志望動機」の質問をどのように面接で使うとよいのでしょうか?
1つ目は、意欲形成を行う質問として有用です。志望動機から価値観を掘り下げていく中で、応募者の価値基準が見えてきます。価値基準に合致する自社の特徴を伝えることで、応募者の意欲を高めることが可能です。
2つ目は、緊張をほぐすための質問として機能します。準備していることを準備したとおりにやってもらうことは、面接という緊張感のある場面でできるアイスブレイクの一つです。応募者の「想定内の質問」をまずは投げかけることで、よりリラックスした面接の雰囲気を醸成します。
「志望動機」を主観評価する場合に気を付けること
それでも、「志望動機」で評価を行いたい、行えると考える面接官もいらっしゃるかもしれません。主観的な評価はどんなことに対しても可能ですので、主観評価を前提にすれば志望動機も評価できます。
その上で、組織の採用選考を前提に以下の点には注意が必要です。
面接官は組織を代表して評価を行う選考官です。自分個人がその価値観や合理性に納得できるかは二の次で、あくまでも「組織の価値基準」に合うかどうかを判断すべきです。難しいですが、組織を代表した「主観評価」であることを肝に銘じて評価する必要があります。また、オンライン面接を実施する場合は、熱意が伝わりづらいという研究があります。熱意や入社意欲が低いと感じる場合でも、対面で会ってみるとまた異なる印象を持つ可能性がある点は注意が必要です。

おわりに
面接において、あまり意味をなさない質問は一部存在します(例えば、言質を取る質問など)。しかし、面接官が投げかける質問の多くは、質問それ自体よりも、その後の掘り下げ方によって多分に良し悪しが決まります。面接に一発必中のキラー質問はありません。よい面接とは、あくまでも、対話によって相手のスキルやポテンシャル、考え方などを掘り下げて応募者自身を理解することに尽きます。本コラムが人事ご担当者や面接官の参考になれば幸いです。


