経営戦略を実現するための新たな人事組織を立ち上げた積水ハウス。
次世代を担うビジネスリーダーを計画的・戦略的に育成するタレントパイプライン構築の取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

積水ハウス株式会社

事業内容

戸建住宅事業、賃貸住宅事業、建築・土木事業、リフォーム事業、不動産フィー事業、分譲住宅事業、マンション事業、都市再開発事業、国際事業

業種

建設業

従業員数

16,616名(2020年4月1日現在)

インタビューを受けていただいた方

安信 秀昭 様
増田 貴久 様

積水ハウス株式会社
人事部 人材開発室 室長(写真右)
人事部 人材開発室 課長(写真左)

インタビューの要約

経営戦略を実行するために計画的なビジネスリーダーを育成するという課題があった。
次世代リーダー発掘プログラム「SHINE! Challenge Program」を創設し、タレントパイプラインの構築に着手した。日本エス・エイチ・エルのアセスメントを用いて、高業績かつ光る人材を効率的に選抜できた。
経営戦略の実現のため、人事制度の変革にも取り組みたい。
今後は採用や育成含めて、様々な場面で日本エス・エイチ・エルのアセスメントを活用していきたい。

人事戦略を実行するため、タレントパイプライン構築と人事制度変革に着手。

これまでオペレーショナルな業務が中心であった人事部を、10年後、20年後を見据えて経営戦略に沿った人事戦略を担う専門組織にすべく、人材開発室という新たな組織が作られました。様々な人事課題を検討する中で、まずは①タレントパイプラインの構築と②職能資格を中心とした年功序列的な人事制度の変革を、大きな柱として取り組むことになりました。日本エス・エイチ・エルに相談したのは、このタレントパイプラインです。


社長をはじめ、取締役・執行役員、そして一番のキーポジションである支店長のサクセッションプランニングが課題です。私たちは、中堅・若手クラスの中から将来のビジネスリーダーになれるような人を早期に発掘して計画的に育成する、人材プールの作成を経営層に提案しました。
この課題の背景には、過去の反省がありました。営業中心の会社ですから、これまで支店長になる人はどちらかというと業績重視でした。そこで、マネジメント能力や人格など、より多角的に評価を行い、計画的に人材を育成し、登用する必要があると考えました。

人事戦略を実行するため、タレントパイプライン構築と人事制度変革に着手。

次世代リーダー発掘プログラム「SHINE! Challenge Program」

私たちの組織が発足する少し前に、支店長養成研修「経営塾」がスタートしました。支店長や部長になる登竜門のようなもので、受講生の選抜方法は上長推薦です。1年間でリベラルアーツや行動経済学、DX、イノベーションなどを大学教授、外部有識者から学びます。幅広く勉強してもらい、その成果を支店経営に活かしてもらうことがねらいです。

続いて、35歳以下の選抜研修を新たにスタートさせました。「Sekisui House Innovators and Entrepreneurs」の頭文字をとって、「SHINE! Challenge Program」と名付けました。15名限定で約1年間、多くの外部講師や社内の最先端にいる人からインプットを得ます。普段実務に専念している人たちに、視野を広げ、視座を高めてもらい、将来の積水ハウスの価値創造を考える機会を提供しています。全体を通して外部コーディネータに伴走してもらいながら、得た知識をどう活かすかアクション・ラーニングを行います。最終的には、研修を通じて得た経営課題からビジネスプランを作成し、経営陣の前で発表します。参加者からは、日常とは異なる視座で会社を考える機会が得られた、他の参加者からよい刺激が得られたとの声が寄せられました。

アセスメントで光る人材をどう見つけるか。

「SHINE! Challenge Program」は名前の通り、イノベーターやアントレプレナーの素養がある人を探して輝かせることを目的としています。そのイノベーター、アントレプレナーをどのように見つけるのかについて、日本エス・エイチ・エルのコンサルタントに相談して、選抜方法を決めました。

基本的に人材開発室がプログラム参加者の15人を選んでいます。候補者は30歳前後から35歳ぐらいまでの社員約1,100名です。選抜基準は2つ。一つは人事考課などの実績、もう一つはポテンシャルです。日本エス・エイチ・エルのタレントアセスメント(知的能力検査、パーソナリティ検査OPQ、モチベーション検査MQ)を使ってポテンシャルを評価しています。特にOPQから算出されるマネジメント能力やアントレプレナーのポテンシャルに注目しています。

選抜基準の2つの評価を縦軸と横軸にとり(実績を縦軸、ポテンシャルを横軸)、各軸を3つのレベルに分けることで、9つの区分(9ボックス)を作り、右上の区分に入る人から15人を選んでいます。

アセスメントで光る人材をどう見つけるか。

日本エス・エイチ・エルには採用のアセスメントを長年提供してもらっており、何度も尺度や基準の見直しの相談をして、真摯に協力してもらいました。「SHINE!Challenge Program」の軸を作りたいとなったときに、他のアセスメントも検討しましたが、長年のデータ分析と活用の実績でわかったアセスメントツールの信頼性と妥当性の高さ、カスタマイズの柔軟性から日本エス・エイチ・エルのアセスメントを使うことに決めました。その後、担当コンサルタントと時間をかけて打ち合わせをしながら、選抜手法や評価軸の構造などを決めていきました。

採用でも引き続きご協力いただき、さらに進んだ人材データ分析を行いたいと思っています。また、育成の面では、現場からアセスメント結果をうまく使いたいという声もあがっています。職場風土を変革するために、上下関係や社員同士のコミュニケーションを改善したり、ダイバーシティを推進するため、アンコンシャスバイアスに気付かせたり、といった取り組みを進めています。その中でOPQ、MQを自己理解や他者理解の促進に使いたいと考えています。読みやすく、あつかいやすいレポートやユーザーインターフェイスでアセスメント結果を本人やマネジャーにフィードバックできるとありがたいですね。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 大阪オフィス 部長

岡松 太郎

中堅、若手社員の早期選抜は、今や多くのクライアントで取り組まれている重要テーマですが、SHINE! Challenge Programはオンラインアセスメントデータの活用先端事例と思います。自社で保有する業績指標(パフォーマンス)とSHLハイポテンシャルモデル(グローバル経営リーダーに必要な資質)を掛け合わせた人材選抜は、客観性と予測精度を担保できる仕組みと言えます。
また、入社時と現在でのアセスメントデータの変化や、業績、昇格スピード等の各種パフォーマンス指標との関連性など、多岐にわたり検証しながら進める機会をいただきました。
20年近く当社サービスをご利用いただいておりますので、私よりも当社サービスにお詳しい方々ですが、今後も全社的にご活用いただけるよう、支援させていただきます。

三菱自動車工業では、キーポストのサクセッションプランを作成し、パフォーマンスとポテンシャルの両軸により人材を発掘、評価し、動機づけや研修などの次世代リーダー育成プログラムを実施しています。その全容をご紹介します。

※本取材は2021年3月に行いました。ご担当者の役職およびインタビュー内容は取材時のものです。

三菱自動車工業株式会社

事業内容

(1)自動車及びその構成部品、交換部品並びに付属品の開発、設計、製造、組立、売買、輸出入その他の取引業。
(2) 産業用エンジン等及びその構成部品、交換部品並びに付属品の開発、設計、製造、組立、売買、輸出入その他の取引業。
(3)中古自動車及びその構成部品並びに交換部品及び付属品の売買。
(4)計量器等の販売。
(5)損害保険及び自動車損害賠償保障法に基づく保険の代理業。
(6)金融業。
(7)前各号に付帯関連する事業。

業種

自動車製造業

従業員数

14,407人名〔連結 32,171名〕(2019年度末現在)

インタビューを受けていただいた方

有吉 晋作 様

三菱自動車工業株式会社
人事本部 人事戦略部 マネージャー(タレントマネジメント)

インタビューの要約

次世代リーダー人材の不足、育成における透明性や中長期的視点の欠如などの課題を背景に、アライアンスへの加入のタイミングでタレントマネジメントを開始。
タレントマネジメントの主体となる人事諮問委員会を設置、キーポストのサクセッションプランを作成、人材の評価を行うキャリアコーチなどを軸にした、次世代リーダー育成施策を実施。
今後実現したいのは、若手世代からリーダーが育つ土壌の整備と、各部門人材育成との連携により、将来のビジネスリーダー育成に取り組む、全社的なタレントマネジメント。

次世代リーダー人材の不足感を背景に、 アライアンスのタレントマネジメントに参画。

私は購買部門でのバイヤー業務、生産管理部門での生産計画・物流の業務を経験したあと、かねてより希望していた人事部に異動しました。工場の人事業務、本社での新卒採用のマネージャー業務を経て、現在は人事戦略部に在籍し、タレントマネジメント領域を担当しています。

タレントマネジメントが導入された当時、複数の課題がありました。一つ目は、将来の経営を担うリーダー人材の不足感。経営的に堅調でなかった時期もあり、やや受け身の判断をするリーダー層のスタンスが強くなっていました。二つ目が、優秀人材の囲い込み。人員管理を徹底する中で、各部門はパフォーマンスの高い優秀人材ほど抱え込む傾向にあり、育成が停滞する傾向がありました。三つ目は、人材育成における透明性の欠如。客観的なファクトに基づく人選ではなく、特定の上長が主観的にリーダーを選ぶような形で人材育成がされていました。四つ目が、中長期視点の欠如。短期的に成果を出せる人材をリーダーとして選出しており、リーダーとなってからの活躍ポテンシャルが加味されていませんでした。

これらの課題を背景に、2016年にはルノー・日産アライアンスに加入し、三菱自動車もアライアンスのタレントマネジメントに参画することになりました。アライアンスのパッケージでタレントマネジメントを導入できたこともあり、比較的短期間でスムーズな導入を果たしました。

ここからは、タレントマネジメントの具体的な導入施策を紹介します。

1.人事諮問委員会の発足

タレントマネジメント活動の主体となる、人事諮問委員会を発足しました。経営陣がメンバーで、そこにアドバイザーとしてキャリアコーチ、事務局として人事が参加します。人事諮問委員会では、後述のサクセッションプランを議論し、後任候補としてノミネートされた方を次世代リーダー候補人材として特定します。

2.サクセッションプランの作成

議論の土台となるサクセッションプランについて紹介します。当社は、経営上重要なポストをキーポストとして特定しています。このキーポストのサクセッションプランを、キャリアコーチと各部門のトップ、現任者が共同で作ります。キャリアコーチは、このサクセッションプラン作成にあたり、候補者と繰り返し面談を行って、人物の評価をします。社内だけでサクセッションプランを作成すると人材パイプラインが枯渇することもあるため、Buy(採用)、Borrow(出向)などによりパイプラインの充実化に努めています。

3.次世代リーダー候補人材の発掘

パフォーマンスとポテンシャルの両軸で評価します。ポテンシャルの評価の1つは、キャリアコーチとの日々の面談です。奥底にある志の高さなどの評価軸をもとに、5年以内にNext Postに就けるかどうかを基準にポテンシャルを評価していただきます。また、SHLのアセスメントもファクトデータとして活用し、英語などの必須能力も確認します。こうしたポテンシャルとパフォーマンスの両面で認定した人材に対し、施策を行っていきます。

4.経営陣とのクロスインタビュー

施策の一つに、経営陣と次世代リーダー候補人材のクロスインタビューがあります。これは一見地味に思われるかもしれませんが、私はもっとも効果的な施策の一つと考えています。タレントマネジメントを一から始めるなら、まずここから始めることをお勧めします。次世代リーダー候補人材の中でも厳選した方に対して、経営幹部との1on1の面談機会を提供します。最大の目的は、経営幹部に人材をモチベートしていただくこと。話題は、現在・過去の業務、修羅場経験、将来のプランなど様々ありますが、最終的には必ずEncourage(激励と、支援の約束)していただく点をお願いしています。このような地道な声掛けや、経営幹部と話す機会を得たという特別感は、モチベーション形成の面で非常に重要と捉えています。

5.各部門・各拠点への展開

三菱自動車本体の中でも部門ごとに諮問委員会、サクセッションプランを議論する場を作っていますが、同時に海外の各拠点にもキーポストのサクセッションプランを議論する委員会を設定しています。現在、ASEAN拠点を中心に人事諮問委員会を展開しています。まずは各拠点で完結するように委員会を開催していますが、今後は拠点間の人材交流や合同研修が実施できればと思います。タレマネは人材流動の比較的激しい海外の方がむしろ受け入れられやすくニーズも高いので、導入はスムーズに実施できています。

6.リーダーシップ・ディベロップメント・プログラム(LDP)の導入

リーダーシップ・ディベロップメント・プログラム(LDP)は、約半年間、計12日間の研修です。リーダー人材の基礎ビジネススキルやマインドセットの獲得を目的にしています。次世代リーダー候補人材やその候補者を中心に、部門・キャリアコーチの推薦によって、プログラム対象者を決定します。研修でのアクションラーニング、職場での実践をハイブリッドにしたプログラムです。経営層の課題認識やアセスメントの傾向を通じて見えてきた、当社のリーダー人材の弱みの部分を取り上げ、強化しています。研修の効果測定は難しいですが、短期的には研修で学びを得た項目のインプット状況を確認し、中長期的には今後この研修を通してリーダーがキーポストに任命されていくことが、研修成果の一つと考えています。

7.グローバル・キャリア・ディベロップメント・プログラム(GCDP)の導入

最後に、海外の短期派遣プログラムである、グローバル・キャリア・ディベロップメント・プログラム(GCDP)を紹介します。従来、海外拠点の現地語を学ぶ語学研修プログラムがありましたが、現地でのジョブと連動させた武者修行プログラムを加え、2020年度から新たに募集・選抜・派遣を行いました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、海外への渡航が限定されましたので、これから状況を見ながら実施数を増やしていく予定です。リーダー人材の属性として、キャリアの早期に海外経験をしている方は非常に多く、次世代リーダー候補人材の上位層では70%以上が海外赴任、駐在経験があります。経験の濃密さという観点で、リーダー育成に適しているプログラムと考えています。

導入後の課題と、潜在的な問題。

これらの施策の導入後、浮き彫りになった課題があります。まず、人材育成のための理想的なキャリアパスが実現しないことがありました。この点について掘り下げると、根本的にリーダーが育つ土壌ができていないという問題に行きつきます。優秀人材の抱え込みという課題もありますが、より日常のレベルまで踏み込むと、「(自身の)志は何か?」を社員に考えてもらう研修機会や、上司による日々の問いかけ、寄り添いも不足していたのではないかと思います。こうした環境が備わらないと、人材パイプラインが充実せず、リーダー育成が頭打ちになってしまうことが予想されます。

キャリアパスの実現のためには、上司と部下が相互に協力して高め合う環境を作り上げ、また各部門間でも人材の情報を共有し、現場での育成配置につなげてもらうなど、実態との乖離を埋めていく工夫が必要だと感じています。

今後は、一番下のジュニア世代から、全社でDevelopment Cultureを作ることがポイントだと考えています。まず新入社員~3年目あたりまでオンボーディングを行い、社会人の土台を作る。次のステップでは、事業部門においていずれかの専門性を身に付けることを目指し、高いパフォーマンスを発揮してもらう。その中から一部をマネジメント層に育て、さらに情熱を形成し高めたうえでビジネスリーダーを作り上げる、という育成の流れをイメージしています。

今後の展望としては、人材育成の道筋として部門のキャリアパスを充実させるべく、自動車メーカー特有のバリューチェーンを活かし、関係性の強い部門間での異動を仕組み化し、期限付きの異動やローテーションを整備することで、人材育成に寄与できればと考えています。他部署で人間関係を構築できる効果もあり、ストレッチアサインメントにも繋がりやすくなるはずです。また、管理職になってからのジョブローテーションは、組織のパフォーマンスを一時的に落としてしまうリスクもあるので、キャリア早期での育成目的異動を計画的に実施しておくことが組織開発面でも有効です。

その他にも、キャリア開発のPDCAを回す施策として、上司が部下を育てるためのスキル、例えばキャリア研修や1on1研修などを提供したいです。また、部門とのタレントレビューの機会をつくり、各部門にも人材の情報を共有することで、ストレッチアサインメント、ジョブローテーション等、部門の中での人材育成につなげていくことを考えています。

これから変革期を迎える自動車メーカーの中で、社会課題の解決に向けて新しい価値を提供できるリーダーの育成に貢献したいです。部門が10年先を見てビジネスを考えているなら、人事はさらにその先の20年先を見て人材育成のアシストをする必要があり、その点が人事の付加価値であり存在価値だと思いますので、そういう人事になりたいです。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング2課 課長

横山 武史

多くの企業が次世代リーダー育成の重要性を認識していますが、それを仕組み化している企業は多くありません。三菱自動車工業はアライアンスのパッケージがあったとはいえ、異例の早さでタレントマネジメントを導入しました。私は三菱自動車工業にタレントマネジメント部が発足した2017年から本件の導入支援を担当させていただきました。この経験での学びは「まず始めてみることの大切さ」です。自社用に調整しながら速やかに導入し、今もなお改善を繰り返しています。
現在は、人材のポテンシャルを測定するアセスメントと、アセスメント結果をフィードバックするキャリアコーチのトレーニングをご提供しておりますが、これからは有吉さんのおっしゃる20年先を見据えたタレントマネジメントに貢献できるよう取り組んでまいります。

激化するグローバル競争を勝ち抜くため組織体制を強化するジェイテクト。
タレントアセスメントを用いた経営人材の発掘と育成の取り組みをご紹介します。

※本取材は2020年9月に行いました。内容は取材時のものです。

株式会社ジェイテクト

担当部署名

人事部 人事企画室 企画グループ

事業内容

ステアリングシステム、軸受、駆動部品、工作機械、電子制御機器などの製造・販売

業種

製造業

従業員数

49,933名(2020年3月 連結)

タレントマネジメント課題

グローバルに活躍できる経営人材の発掘、育成
現在の業績と行動評価だけではなく、上位職におけるポテンシャルを加味した登用審査の実現
複数事業部門で、横串を通した人材評価制度の構築

導入したタレントマネジメントソリューション

管理職及び管理職候補者へのタレントアセスメントの実施(タレントセントラル:知的能力テストVerify、パーソナリティ検査OPQ、意欲検査MQ)
管理職のコンピテンシーモデリング (マッピング、データ分析)
OPQによる自社独自の管理職適性尺度の開発

得られた成果

管理職としてのポテンシャルを勘案した科学的な登用検討が、できるようになった。
どのような特性を持つ人材が管理職として活躍するのかを、データで明らかにすることができた。
事業部門独自の人事施策にもデータ活用が広がった。

目的/課題

ジェイテクトは、軸受メーカーの光洋精工と工作機械メーカーの豊田工機が合併し、2006年に発足した会社です。ステアリング、駆動、軸受、工作機械・メカトロなどの多様な領域でナンバーワン製品・オンリーワン技術を保有しているグローバルメーカーですが、グローバル企業としての組織基盤や体制が整っていませんでした。自動車関連事業を始めとして各事業ともグローバル競争は激化しており、事業をリードする強い経営人材の発掘育成が喫緊の課題でした。
 一方で、これまでの管理職登用は各評価実績を中心に登用しており、「複雑化する社会のニーズに応え、事業をリードする管理職として相応しい資質を持っているか」という点を踏まえた登用ができていないという課題がありました。

導入/経緯

「管理職としての資質」を測定するアセスメントツールの選定にあたって、予測妥当性の高さやグローバル対応(多言語で実施可能、世界中の比較データを持つこと)、育成施策への展開の容易さなどの観点で検討がなされました。グローバル対応ができる海外のアセスメント会社も検討した上で、アセスメントツールの品質の高さと日本での活用支援体制が整っているという点からSHLのアセスメントツール「タレントセントラル(知的能力検査Verify、パーソナリティ検査OPQ32、モチベーション検査MQ)」が選ばれました。
登用審査の導入前に、現管理職に対してタレントセントラルを実施し、第一線で活躍している人材の特性をデータで明らかにしました。全社共通の価値観「ジェイテクトウェイ」との対応関係も整理した上で、管理職の人材要件定義を行いました。
アセスメント結果から自社独自の管理職適性得点を算出し、各事業部門に共有することで、登用検討に客観的なポテンシャル情報を組み込む事ができるようになりました。

成果

事業部門に関わらずジェイテクトの将来を担う管理職の人材要件を明確化でき、科学的手法を用いた測定の仕組みを構築できたことが成果でした。この取り組みをきっかけに、これまで目的毎に異なっていた新卒採用から人材育成に関わる全てのアセスメントツールを一本化しました。これにより、各人事施策で比較可能なデータを入手・蓄積することができ、横断的にタレントマネジメントを改善していくことが可能となりました。
また、各事業部門で独自に行っている人材育成施策にもSHLのアセスメントが活用されるようになり、人材データの活用が活発になったのも大きな成果の一つです。

「新しい楽しさ・豊かさを お客様に発見していただけるモノ造りを」を経営理念とするサッポロビール。
変革を推進する経営リーダーを継続的に生み出す人財育成の仕組みづくりに取り組みました。

※本取材は2023年8月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。

サッポロビール株式会社

事業内容

ビール・発泡酒・新ジャンル・ワイン・焼酎などの製造販売、洋酒の販売、他

業種

食料品

従業員数

約2,400名(2023年5月)

インタビューを受けていただいた方

小林 志野 様 小山 祐介 様

サッポロビール株式会社
人事部 キャリア形成支援グループ グループリーダー 兼 サッポロホールディングス株式会社 人事部 (写真右)
サッポロビール株式会社 人事部 キャリア形成支援グループ 兼 キャリアサポーター (写真左)

インタビューの要約

人事制度改革に伴い、サクセッションプランへの課題意識が高まり、サッポログループ内で先駆けて仕組みづくりに着手。
将来の経営者に求める要件を明確化し、次の経営者候補を対象にアセスメントを実施。
結果のフィードバックから、戦略的配置、社外研修への派遣、継続的な1on1によって対象者を育成。
今後も継続的な改善を行い、グループにも展開していく。

次世代の経営人財候補を育成するサクセッションプランを構築する。

私達は、人事部キャリア形成支援グループに所属し、人財育成やキャリア開発の支援がミッションです。サッポロビールの行動規範である「自分のキャリアは自分で切り拓く」という人財育成ビジョンにそって、経営人財育成に取り組んでいます。

2020年の人事制度改訂により、支援型のマネジメントをキーワードとする様々な施策を開始しました。その1つ、「人財育成会議」では、半期に1回各部署の役職者が一堂に会して、メンバー一人ひとりの強みや育成課題を話し合い、育成方針を決めています。従来、各事業会社の社長に経営リーダー候補を年に一度確認していましたが、組織としての体系的な育成施策はなく、経営全体で共有することもほぼありませんでした。変化の激しい時代、次世代の経営人財候補にも「人財育成会議」と同様の取り組みが必要という課題意識が高まり、将来的にはサッポログループ全体での取り組みも視野に、まずはサッポロビールにおいて経営人財育成の仕組みづくりに着手しました。

次世代の経営人財候補を育成するサクセッションプランを構築する。

要件定義とアセスメントの実施により、コンピテンシーポテンシャルを可視化。

具体的には、8つのステップで実施しました。ステップ1は全体構想の検討。年2回の経営人財育成会議を軸とし、対象層を喫緊の課題である次の経営者候補としました。会議体の委員長を社長、委員長代行を人事担当役員、事務局を人事部長、人事グループリーダー、キャリア形成支援グループリーダーが担当します。当時の人事担当役員はサクセッションプランへの課題意識が強く、この取り組みを強く牽引してくれました。

ステップ2は人財要件の策定。経営人財に求める要件の明確化のため、役員全員で他社事例やSHLから提供された情報などをもとに様々な議論をしました。最終的にサッポロホールディングスで既に策定されていた経営人財に求められる6 要件を採用しました。数年前に作成されていますが、検討の結果、有効な要件であると判断しました。

ステップ3は選抜プロセスの策定。まず候補者案を人事部で作成し、役員一人ひとりと個別に検討を行い、第一回目の経営人財育成会議で共有し、最終的な候補者を決定しました。

ステップ4はアセスメント実施。ステップ3で決定した候補者に対し、SHLのタレントセントラルでパーソナリティ検査とモチベーション検査を実施しました。外部アセスメント導入の目的は、2つ。1つ目は候補者の自己理解促進です。これまで社内の指標のみだった評価指標から、世間の同等職務レベルのデータと客観的に比較することで、より成長を支援できると考えました。2つ目は経営や人事が、候補者の顕在化されていない行動特性やモチベーション傾向を把握し、より適切な配置・育成・登用に繋げることでした。SHLコンピテンシーと当社の経営人財要件との紐づけも行い、アセスメント結果からコンピテンシーの可視化ができるようになりました。

本人に育成計画をフィードバック。成長を促すために異動や外部研修を実施。

ステップ5はフィードバック。各役員から、アセスメント結果と経営人財育成会議内で話された各候補者の育成計画を本人にフィードバックしました。以降は経営人財会議の合間に定期的に1on1を実施して、継続的な成長支援をしています。フィードバック実施にあたり、日本エス・エイチ・エルに依頼して事前に役員向けのフィードバック研修も行いました。アセスメント結果をよく理解するために、役員も全員アセスメントを受検しています。

ステップ6は戦略的異動。経営人財育成会議では、候補者を育成するための経験や配置案が話題に出てきます。異動は別のセクションが担当していますが、定期異動では前年の経営人財育成会議の内容を踏まえた、大胆な異動が行われたと感じました。

ステップ7は外部研修派遣。ステップ6の戦略的配置とほぼ同時並行に行いました。経営人財育成会議で議論し、必要と判断した人には、適切なプログラムを選定して研修に派遣しています。

本人に育成計画をフィードバック。成長を促すために異動や外部研修を実施。

最後のステップ8は対象者層の拡大です。初回である2021年は次の経営者候補を対象に1年間実施してきましたが、2022年は次の次の経営者候補を対象とすることにしました。2年目はステップ3からのサイクルを、もう1回転行いました。
今年で3年目ですが、今後もこの年間サイクルを確実に回し改善していくことが重要だと感じています。また、次の経営者の計画的な育成はサッポログループの共通課題ですので、サッポロビールの取り組みで上手く行っている部分を他の事業会社に役立てていただけるように、協力していきたいと考えています。

エス・エイチ・エルのコンサルタントには、当社の要望を聞きながらいろいろなご提案をしていただきました。ウェビナーを通じた他社情報の提供や、個別の情報交換会のセッティングなど様々な面でのサポートもありがたかったです。グループ企業への横展開や新入社員のオンボーディングなど、新たな始まった取り組みも引き続きご支援いただきたいと思います。

担当コンサルタント

日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント

清水 智昭

今回のお取り組みはサクセッションプランニングを新たにスタートされる企業様にとってガイドラインとなる好例です。会議体の発足からアセスメントフィードバックの一連のプロセスに加え、実際の異動配置や研修派遣など具体的な施策が展開された点は特筆すべきポイントです。重要なのは「ボードメンバーの巻き込み」と「人財に関する対話機会の創出」です。会社のボードメンバーが自部門の管轄を越えて、次世代を担う人財をどのように創出していくか対話することが、施策実施までのプロセスにおいてキーポイントであったと感じています。次世代リーダーの戦略的な発掘/育成は多くの企業様での喫緊の課題であると思います。手始めに、一度膝をつきあわせて「次の担い手」を話し合う。すると自然とそれがサクセッションプランニングの入り口になるのではないでしょうか。

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テスト

パーソナリティから知的能力まで、あらゆる目的に合わせて多様な適性テストを提供しています。

「良い適性検査」とは?

良いテスト、良い適性検査の必須条件は「信頼性(測定の精度が高いか)」と「妥当性(測りたいものが測れているか)」です。アセスメントのリーディングカンパニーであるSHLは、これらを備えた質の高い適性検査を幅広く提供しています。パーソナリティ、価値観、意欲、知的能力など、人材要件や目的に応じて最適なアセスメントをご提案します。

テストに役立つサービス

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リクルーター

誰をマッチングすべきか?どう学生をフォローするか?リクルーターの活動も当社の知見でサポートします。

より良いリクルーター活動の支援

人材獲得競争が激しさを増す中、応募者と密に接点を持つリクルーターの存在は採用に欠かすことができないものとなっています。我々はリクルーターとしての適切な振る舞いや情報提供の仕方に関するトレーニングを提供できます。また、アセスメントを元に応募者とリクルーターのよりよいマッチングもサポートします。

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内定者フォロー

採用選考だけでなく、内定者の面談や研修でもアセスメントが活用できます。

内定者フォローとアセスメント

人材採用は内定がゴールではありません。きちんと入社し、一人ひとりが意欲を持って仕事に取り組めるよう、選考で実施したアセスメントデータが活用できます。我々はフィードバック用の適性検査帳票の提供や研修の実施を支援します。アセスメントによる内定者の特徴把握は、自己理解を深めて意欲形成につなげるだけでなく、入社後の配属情報としてミスマッチを防ぐ参考資料としても活用できます。

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配属

科学的知見を元に適材適所を実現する配属をサポートします。

適材適所を実現する配属

配属先に求められる人材要件と社員の人材情報を結びつけ最適な配置を実現することで、組織の生産性と社員のエンゲージメントを向上させます。配属先の人材要件定義や既存社員の人材ポートフォリオ作成などを実施、配属する人材のアセスメントデータを取得します。これらを掛け合わせ、適材適所を実現する配属をサポートします。

配属に役立つサービス

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リーダー育成

マネジャーや管理職のスキルの棚卸、育成計画、個々のアセスメントと能力開発ポイントのフィードバックまで支援します。

組織的なリーダー育成とは

組織の鍵となるマネジャーのスキルや個々の強み・弱みを把握、能力開発ポイントと育成計画をアセスメントを用いて科学的に支援します。今いるリーダーの現状把握と育成計画をセットで準備することで、組織的なリーダー育成を実行できます。オンラインアセスメントからシミュレーション演習、それらを複合したアセスメントセンターなど、多様な手法を用いて初級管理職から上級管理職まであらゆる範囲のリーダー層の育成をサポートします。

リーダー育成に役立つサービス

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ハイポテンシャル人材

次世代の経営や事業を担うハイポテンシャル人材の発掘と育成を支援します。

ハイポテンシャル人材とは?

ハイポテンシャル人材プログラムの設計と運用を支援します。ハイポテンシャル人材の要件定義、選抜基準の設定、選抜方法の開発と設計、アセスメントの実施、アセスメント結果のフィードバック、選抜された候補者への能力開発施策の立案と運用などを行います。SHLグループの研究により確立されたハイポテンシャル人材モデルと、数万人規模の世界の管理職・経営職のデータとの比較分析により、最適なハイポテンシャル人材の発掘と育成が可能です。